奇襲戦法その一

ソコリスキーオープニング

1. b4

別名「オランウータン」。ソ連のGMソコリスキーにちなんだ名前です。
白は最初からクイーンサイドの勝負を企てています。決してオープニングの原則に背く手ではありません。

1...e5

1...d5 と指す人はあまりいないと思います。他に考えられる手は 1...Nf6 。

2. Bb2

他には 2. b5 がある。この定跡ではよく見る手で、黒のナイトの出を防いでいます。
狙いは c4 d4 a4 を突いてのポーンラッシュ。

2...Bxb4!

昔はセンターポーンと端のポーンを交換するので悪いと言われていました。しかしながら、現在ではソコリスキーに対抗する最善の手であると考えられています。

3. Bxe5 Nf6

3...Nc6?? に対しては 4.Bxg7+- 実は、これで勝負が決まってしまった実戦譜がいくつかあります。

4. c4!

ポイントの手。遅かれ早かれ c4 は突かないと白にとって勝負になりません。
他には 4. e3 や 4.Nf3 があります。どちらも悪い手ではありません。

4...O-O
5. Nf3 Re8
6. e3 Nc6
7. Bb2


7...d5!

ここで黒にはいくつかの候補手がありますが、これが最も強力です。他の手では後手をとってしまいます。

8. exd5 Nxd5
9.Be2 Qd6=/+

黒はキングサイドを狙い、白はキャスリングから d4 とポーンを突いてクイーンとルークで黒のクイーンサイドを攻撃します。
黒のナイトの位置が良く、この局面は若干黒がいいですが、勝負はこれからといったところです。

今ここに書いたのは黒が最善に受けた場合であることを忘れないでください。
このオープニングがなかなか侮れず、b2 のビショップが上手く働くと手がつけられなくなります。

実践例を紹介しましょう。
1958年に行なわれたソコリスキーの試合です。

White "Alexey Sokolsky"
Black "Strugatsch"

1. b4 e5 2. Bb2 f6

昔は f6 が最善だと思われていました。ビショップの効きを止め、e5 のポーンを守る一石二鳥の手です。
そのかわり、キングサイドが弱くなります。

3. e4!?

Tartakower Gambit と呼ばれるバリエーションです。弱くなったキングサイドにアタックをしかけます。

3...Bxb4 4. Bc4 Nc6 5. f4 exf4 6. Nh3 Nge7 7. Nxf4 Na5

非常に難しい場面です。Qh5+ が常に見えていて、黒は慎重に指さなければなりません。

8. Bxf6?!

鬼手。決して良い手ではないが、相手に与えるショックは相当なものだと思います。実戦的な一手。
8. Qh5+ が最も無難な手です。以下 8...g6 9. Qb5! Nxc4 10.Qxc4 a5 11.Bxf6+/-

8...Rf8

8...gxf6?? に対しては 9. Qh5+ Ng6 10. Nxg6 で白の簡単な勝ち。

9. Nh5 Nxc4

9...Rxf6 も可能な手ですが、深く正確な読みを要求されます。

10. Nxg7+ Kf7 11. O-O Kg8 12. Qh5


次の狙いは当然 Qg5。
12. Qg4 では 12...Ng6! 13. Nh5 (13. Bxd8?? Bc5+ 14. Rf2 Rxf2 15. c3 Rf4+-+) c6-/+

12...Rxf6?

ここでは非常に発見しにくい好手がありました。
12...d5!! 13. Qg5 Ng6! 14. Bxd8 Bc5+ 15. Rf2 Bxf2 16. Kh1 Kxg7-/+

13. Rxf6 Ng6 14. Rxg6! hxg6 15. Qxg6 Kh8??

15...Ne5 が最善手。
以下、16. Qg3 Kh7! 17. Qxe5 Qh8=

16. Ne8!


他の手では、クイーンによる守りがあります。

16...Qe7?? 17. Nf6 1-0

受けを間違えた黒が潰れてしまいました。白がかけるキングサイドへの圧力に黒がパニックを起こしてしまっている状態です。
このように、激しい攻撃は相手の精神状態を著しく不安定にさせます。チェスは盤上だけでなく、心理戦でもあるのです。
こうなってしまっては、どうしようもありません。






最終更新:2011年02月07日 06:06
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