ポーンエンディング2
エンドゲーム1を見たみなさんはいかにチェスのエンディングが難しいか理解したかと思います。
盤面にはキングと数個のポーンしかないのにあそこまで難解なのです。
もし質問があれば遠慮無くどうぞ。
地雷(Mined Squares)
ある場合に対応しあうペアのマスを「地雷」と表現します。
その地雷のマスには決して最初に足を踏み入れてはなりません。その場合、ツークツワンクに陥ってしまうからです。
そのマスの横で待機するか、地雷を避ける必要があります。
以下の2つの例、図1・図2を見てください。
図1
ここで、白は「アンタッチャブルポーン」つまり、不可触ポーンと呼ばれるものを持っています。
白キングはb3,c3,d3の間を行き来し、黒キングはc7,b7,a7を同様に行き来します。
この局面ではc4及びb6が地雷になっているために、お互いにポーンをアタックすることができません。
図2 白先
この局面ではe6とc5が地雷となっています。
白は相手に強制的に地雷を踏ませることで勝つことができます。
1. Kf6! Kb5
どのようなディフェンスも望みはありません。
1...Kc7 2. Ke7 Kc8 3. Kxd6
白キングはd6のポーンを奪いとり、同時にd5ポーンの重要なマスを支配します。
2. Ke7! Kc5 3. Ke6+-
図3 黒先
白の唯一の勝ち筋はキングによってd6のマスを奪うことにあります。
クイーンサイドにおける反撃を維持するために、黒キングを遠ざけつつキングを動かすことが重要です。
a6とb4とが対応しあうマスだということに気づくことができるでしょうか?
1... Kb7 2. Kb3! Ka6 3. Kb4! Kb7
次にどうするかが最大の鬼門かもしれません。
d4とb5によるツークツワンクには十分警戒しなければなりません。つまり、d4のマスが地雷だということです。
d4を回避しながら手をすすめる必要があります。
4. Kc4 Ka6 5. Kd3!! Ka5 6. Ke4! Kb5 7. Kd4 Ka4 8. Ke5 Kxa3 9. Kd6+-
図4 白先
Alekhine - Yates
Hamburg 1910
1. Kd4? Ke6=; このように、d4とe6は地雷です。
1. Kb4? としても、1...Ke6 2. Kxb5 Kxe5 3. Kxa4 Ke4 4. b4 Kxe3 となり、クイーンとルークポーンVSクイーンの局面になりますが、理論的にはドローです。
1. Kd3 Kd7 (1...Ke6? 2. Kd4+-) 2. e4! f4 3. Ke2 Ke6 4. Kf2!! 黒投了
e4の白ポーンと黒のf4ポーンがあるということは、最初の方でも説明した通り、f3とe5が地雷となっています。
白キングは先にf3に入ることを避け、一手待ちます。
ついでに言っておけば先にe4をついても問題はないです。1. e4 f4 2. Kd3 Ke6 3. Ke2
図5 白先
Kobese - Tu Hoang Thai
Yerevan ol 1996
このポジションはドローですが、白は最後のトラップを仕掛けます。(この局面がドローであることはビショップキングルークポーンVSキングにおける基礎知識があれば理解できると思います。8列目のマスの色とビショップの存在するマスの色が違えばドローとなります)
そして、それは成功しました。
1. Bd1+!? 2. Kh4??
1....Kg6! が必要です。h5からg4を突くのが狙いの手です。
2. Bg4 h5 3. Kf5! hxg4 hxg4 黒投了
1. Bf5 には 1...g4! 2. hxg4 Kg5 白が次に何をしても 3...h5 があり、ドローになります。
トライアングレーション(Triangulation)
トライアングレーションはキングのテンポを遅らせる目的で使います。
図6 白先
d5とd7のマスがそれぞれ対応しています。これが黒の手番であれば白の簡単な勝ちになることはわかると思います。
白はc6のポーンをつくことでブレイクを狙っていますが、黒のキングがそれを防いでいます。
しかし、黒キングの動きは制限されているので、白のキングのテンポを遅らせることで簡単に勝つことができます。
1. Ke5!
1. c6? はミス。1...Kc8! (1...bxc6? 2. Kc5 Kd8 3. Kd6!+-)
2. Kd6 Kb8! 3. Kd7 bxc6=
1...Kc6 2. Kd4 Kd7 3. Kd5
これで白は目的を達成しました。図6と同じ局面ですが、手番が逆になっています。
このように、キングが三角形をつくるように動くことからトライアングレーションと言います。
3...Kc8 4. Ke6!(オポジションを取ります) 4...Kd8 5. Kd6 Kc8 6. Ke7 Kb8 7. Kd7 Ka8 c6+-
このようなポジションは非常によく出てきます。
図7
Fahrni - Alapin
1912
キングはd5とc8に存在していますが、チェス盤を用意してポーンだけをおいて見てください。
まずは対応するマスについて論じることにします。
d6-d8およびc5-c7がそれぞれ対応するマスであることは明らかです。d6, d5, c5、黒の場合はd8, c8, c7が対応するマスとして機能します。
このようにして、明確な対応から新たな対応関係を把握していきます。
白キングがd4かd4にいくことで、黒にc7かc8のポジションにいくことを強制し、対応するマスを奪うことで白が勝つことが可能になります。
1. Kc4(Kd4)! Kd8 2. Kd4(Kc4)! Kc8 3. Kd5! Kd8
4. Kd6 Kc8 5. c7+-
図8 白先
Find two wining plans.
このプロブレムにおいて、作者は以下の手順を示しています。
1. Kd4 Kc6 2. Kc4 (2. g5? fxg5!=)
2...Kd6 3. Kb5!
敵を側面から追い詰め、このポジションは勝ちとなります。しかしながら、この作戦はややリスクが高いとも言えます。
読む変化も多くなってしまいます。
3...Ke5 4. Kc6 Kf4 (4...h5 5. gxh5 Kxf5 6. Kd5!+-) 5. Kd6 Kxg4 6. Ke6+-
3...Kd5! 4. Kb6!
白は再びオポジションを取り返します。h4-h5の手があるおかげで、白はこのテンポを保つことができます。
4...Kd6 5. Kb7 Kd7 6. h5 Kd6 7. Kc8 Ke5 8. Kd7 Kf4 9. Ke6+-
さて、実を言えばこのポジションは多くの勝ち筋があるのですが、そのいずれもd5のマスが鍵となっています。
もし、h5が既に突かれている状態であれば、鍵は6ランクすなわち、c6, d6, e6となります。
ポーンストラクチャーが変化したとき、それに呼応してキースクエアも変化します。対応するマス(corresponding squares)も同様です。
他の勝ち筋としては、1. Kf4 Ke7 2. Kf3 Kd7 Ke3! Kd6 4. Ke4! Kc6 5. Kf4 Kd6 6. g5+- などがあります。
図9 黒先
Yudasin - Osnos Leningrad 1987
このポジションで黒が勝つことは可能でしょうか?
1...Ke4 2. Ke2 f4 3. Kf2 f3
4. Kf1 Kf5! 5. Ke1 Ke5 6. Kf1 Ke4
最終更新:2011年07月30日 13:19