オープニングを選ぶ
さて、ある程度の力と知識がついた人は、そろそろ自分の得意戦法を持ってみましょう。
勝つためには自分の得意な局面に持っていくのが普通ですし、そうしなければ勝てそうにない相手もいます。
とは言っても、奇襲戦法のような序盤の原則から外れたオープニングでは、強くなろうとする人にはオススメできません。
ここでは、いくつか定跡を分類してみましょう。
オススメ定跡の項で、いくつかの定跡については簡単な解説を交えて紹介したいと思います。
1. e4 キングポーン・オープニング
1. d4と比較して、より攻撃的ですがポーンがどの駒にも守られていないので、やや危険です。
管理人はチェスを覚えてからずっと初手は1. e4でした。今ではチェスの幅を広げようと1. d4にも挑戦しています。
1...c5 シシリアン・ディフェンス
統計上、1. e4に対して最も多い返しです。それだけこの定跡が優秀であるということですが、逆に研究が非常に進んでいるのである程度強い相手だと簡単に潰されてしまいます。そのぶん、マスターすればこれ以上ないくらいに強力な武器になるでしょう。
黒はセンター及びクイーンサイドからの反撃を狙っています。
2. Nf3 他の選択肢は 2. d4、2. Nc3など
- 2...d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 a6 ナイドルフ・ヴァリエーション
シシリアン・ディフェンスにおいては最も人気で最も激しいヴァリエーションと言えますが、あまりにも有名すぎて得意戦法にするには異常なまでの労力を要求されるオープニングです。
元世界チャンピオン、カスパロフの得意戦法でした。
- 2...Nc6 3.d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 e5 スベシニコフ・ヴァリエーション
比較的最近になって見かけるようになったオープニングです。
黒はd5に大きな弱点を作りますが、ピースの位置とクイーンサイドのスペースによるアドバンテージでバランスを保っています。
- 2...d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 Nc6 6. Bg5 e6 リヒター・ラウザー
管理人はこの定跡にはそれほど詳しくないですが、一昔前に流行った定跡です。
- 2...d6 3 d4 cxd4 4 Nxd4 Nf6 5 Nc3 g6 ドラゴン・ヴァリエーション
g2ビショップの利きを活かして、クイーンサイドからのアタックを目指すオープニングです。
大抵の場合、黒の攻撃が速いか、白のキングサイドアタックが速いかという勝負になります。
- 2...d6 3 d4 cxd4 4 Nxd4 Nf6 5 Nc3 e6 シェベニンゲン
これもそんなに詳しくないです。
1...e5
ペトロフ・ディフェンス、ツーナイツ・ディフェンス、ルイ・ロペス、スコッチゲームなどに変化します。
センターポーンを突き返す非常に強力な手です。まず、1. e4に対する最善手と言っても過言ではありません。
が、白には選択肢が多い上に黒もやや危険なので、自信が無い人にはオススメできません。
- 2. Nf3 Nc6 3. Bb5 a6 ルイ・ロペス
最も歴史が古い定跡のひとつですが、現在でもマスターに愛用されています。
実際、黒番での勝率もそれほど悪くありません。
- 2.Nf3 Nf6 3. Nxe5 d6 4. Nf3 Nxe4 ペトロフ・ディフェンス
マスター間でのドロー率がすごく高い定跡です。黒を持っても白を持っても指しやすいとおもいます。
- 2. Nf3 Nc6 3. Bc4 Nf6 ツーナイツ・ディフェンス
1...e5と指すのであれば必ず覚えておくべき定跡です。
- 2. Nf3 Nc6 3. d4 exd4 4. Nxd4 スコッチゲーム
カスパロフの功績によって一時期注目を浴びた定跡です。
最近のマスターの試合では見かけることは比較的少ないですが、トップマスターでも愛用している人はいます。
1...e6 フレンチ・ディフェンス
これもよく指されるオープニングです。
2...d5とついてセンター及びクイーンサイドからの反撃を主な方針とします。
c8のビショップが活用しにくいのが難点です(もっとも、あまり気にしないのが正解らしいですが)。
1...c6 カロカン・ディフェンス
現世界チャンピオン、アナンドがこの定跡を用いてシロフ相手に二勝をあげました。
現在では最も人気の高い定跡のひとつです。
激しい変化が少ないので、得意戦法とする人は多いです。
その他
1...Nf6 アリョーヒン・ディフェンス
ある意味では奇襲戦法のひとつです。
シークレット・ウェポンとして使うマスターも数多く存在します。
1...d6 2. d4 Nf6 ピルツ・ディフェンス
柔軟性が高いオープニングではありますが、黒は白に一方的な攻撃を許してしまいます。
守って勝ちたい人にはオススメ。
1...d5 スカンジナビア・ディフェンス
クイーンが早くにセンターに出てくるので悪いとされていますが、実際にはそれほど悪くはありません。
チェスを始めたばかりの人はこの戦法を得意技にしようという傾向が見られます(管理人の偏見かもしれませんが)。
1. d4 クイーンポーン・オープニング
d4ポーンにクイーンによる「ひも」がついているので、1.e4に比べるとややおとなしいオープニングといえます。
1...d5 2. c4 dxc4 クイーンズギャンビット・アクセプテッド
特にアマチュアでこれを得意とする人はあまりいない気がします。
マスターだとニシペアヌやドミンゲスが使っています。
以下、3. Nf3 Nf6 4. e3 e6 5. Bxc4 c5 6. O-O a6 と続きます。
1...d5 2. c4 クイーンズギャンビット・ディクラインド
代表的なところではタラッシュやスラブに変化します。
アルビン・カウンターギャンビットやチゴリン・ディフェンスなんかもこれの一種です
- 2...c6 3. Nf3 Nf6 4. Nc3 スラブ・ディフェンス
おそらく2009年以降、最も出現頻度が高いオープニングのひとつです。
世界チャンピオンであるアナンドが使用し、マスター間で支持を得ました。
- 2...e6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 c6 セミ・スラブ
スラブの派生型です。これも人気は高く、カリヤキンの得意技。
カスパロフが若いときに愛用していました。
使う人はそれほど多くないので、得意戦法にするにはオススメできる定跡。
- 2...e6 3. Nc3 Nf6 4. Nf3 c5 セミ・タラッシュ
タラッシュの派生型です。
タラッシュとの違いは孤立ポーンを残してそれを利用して戦うか、孤立ポーンをつくらせてそこを突いて戦うかだと思います。
それほど詳しくはありませんが...。
1...Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 d5 グリュンフェルト・ディフェンス
マスター間では使われることの多い定跡のひとつです。
現在進行形で研究が進んでおり、最もホットな定跡であるとも言えるでしょう。
ただし、やや玄人向けの定跡である感じはします。
1...Nf6 2. c4 e6 3. g3 d5 4. Bg2 カタラン
2. c4ではなく、2. Nf3や 2. g3から入ることで、ブタペスト・ギャンビットやアルビン・カウンターギャンビットを防ぐ手段として機能する可能性はあります。
最近では目にする機会は少ないので、狙い目かもしれません。
4...dxc4と取るかどうかは好みが分かれるところです。
1...Nf6 2. c4 e6 3. Nf3 b6 4. g3 Bb7 5. Bg2 クイーンズ・インディアン・ディフェンス
この定跡については全くと言っていいほど知りません。
今度、勉強する必要がありそうです。
1...Nf6 2. c4 e6 3. Nc3 Bb4 ニムゾ・インディアン
これもそんなに詳しくありませんが、得意としているプレイヤーは多いです。
黒はビショップとc3のナイトを交換し、白のポーン・ストラクチャーを崩しにかかります。
1...Nf6 2. c4 g6 3. Nc3 Bg7 4. e4 d6 5. Nf3 O-O 6. Be2 e5 キングズ・インディアン・ディフェンス
あまりにも強力すぎる返し技。相手が知らないならば、ほとんど必勝戦法とも言えるでしょう。
ほとんどの場合、黒はキングサイドアタックし、白はクイーンサイドアッタクするという殴り合いに発展します。
世界チャンピオンだったフィッシャーや、カスパロフがこれを使って勝ちまくったので、白からも様々な対抗案が出てきました。
1. c4 バード・オープニング
普通は1. e4 か1. d4から入るので、相手の研究を外すことが期待できます。
ただし、2. d4とすると、1. d4とは大差ないことに注意。
1. Nf3 レチ・オープニング
絶対に悪手にはならない手。
別の言い方をすれば、様子見の手です。
最終更新:2011年07月10日 01:28