総括所見:デンマーク(第2回・2001年)


CRC/C/15/Add.151(2001年7月10日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2001年5月22日に開かれた第699回~第700回会合(CRC/C/SR.699 and 700参照)において、1998年9月15日に受領したデンマークの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.6)を検討し、2001年6月8日に開かれた第721回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、子どもの状況に関する理解をより明確なものとすることを可能にしてくれた、締約国の第2回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/DEN/2)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、報告書が、グリーンランドおよびファロー諸島の子どもの状況に関する十分な情報を記載しておらず、かつ条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがっていなかったことを遺憾に思うものである。委員会は、締約国との間に持たれた建設的かつ開かれた対話を心強く思うとともに、議論の際に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎する。委員会は、条約の実施に直接関与する代表団が出席してくれたことにより、締約国における子どもの権利についていっそう十全な評価が行なえたことを認知するものである。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、子どもの権利条約の実施における全般的進展について締約国を称賛する。委員会の第1回総括所見および勧告(CRC/C/15/Add.33)を子どものための立法、政策およびプログラムに適用しようとした締約国の努力が留意されるところである。
4.委員会は、国際協力および開発援助の分野における締約国の傑出したコミットメントに、評価の意とともに留意する。これとの関連で、委員会は、締約国が、主として後発開発途上国への支援として、国内総生産の相当割合を対外援助に配分していることに留意するものである。
5.委員会は、保育施設の質を向上させるため、法律により導入され、かつ自治体および教育専門家と協力しながら行なわれている、子どものケアに関する取り組みを歓迎する。
6.委員会は、子どもに対して体罰を用いる親の権利が1997年に廃止されたことに、満足感とともに留意する。委員会は、この新法について親に情報を提供するために行なわれた全国規模の意識啓発キャンペーンについて、さらなる満足感を表明するものである。委員会は、キャンペーンのフォローアップとしてマイノリティ言語による資料を含める取り組みに留意する。
7.委員会は、国家子ども評議会が1998年に法律によって常設機関とされ、かつ、条約の原則および規定に照らして締約国における子どもの状況を独立の立場から評価する権限を与えられたことに、満足感とともに留意する。
8.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を1997年に批准したことに、満足感とともに留意する。批准によって養子縁組法の改正が必要となり、とくに自己の養子縁組への子どもの参加の拡大が確保されることとなった。委員会はさらに、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO条約(第182号)および就業が認められるための最低年齢に関するILO条約(第138号)を批准したことに留意する。
9.委員会は、締約国が最近、第2回デンマーク若者議会の開催の便宜を図ったことに留意するとともに、若者議員の決定および勧告を検討しかつ回付する内閣の取り組みを歓迎する。

C.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置

報告
10.委員会は、報告書が、グリーンランドおよびファロー諸島の子どもの状況に関する十分な情報を記載しておらず、かつ条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがっていなかったことを遺憾に思う。
11.委員会は、次回の定期報告書がグリーンランドおよびファロー諸島の子どもの状況に関する十分な情報を記載し、かつ条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがうことを確保するため、締約国があらゆる効果的な措置をとるよう勧告する。
留保
12.委員会は、締約国が、手続法に関する常任委員会を通じ、条約第40条2項(b)(v)に対する留保を見直す手続を開始したことに留意する。
13.ウィーン世界人権会議のウィーン宣言および行動計画(1993年)に照らし、委員会は、締約国に対し、条約第40条2項(b)(v)に対する留保を撤回する目的で、当該留保の見直しの手続を完了させるよう奨励する。
立法
14.委員会は、法務大臣が、子どもの権利条約を含む中核的国際人権条約をデンマーク法に編入することに関わる利点および不利益について検討するための人権専門家委員会を設置したことに留意する。委員会は、専門家委員会の勧告がまだ完成していないことには留意しながらも、国内法における子どもの権利条約の法的地位について依然として懸念を覚えるものである。
15.委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約を含む中核的国際人権文書を国内法に編入することを検討するよう、奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、すべての国際人権文書を平等に重視するよう促すものである。締約国は、この問題に関する専門家委員会の勧告および政府の決定についての情報を次回の定期報告書に記載するよう、勧告される。
国際人権文書の批准
16.委員会は、締約国が現在、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約への加入の可能性を検討していることに留意する。
17.委員会は、締約国に対し、同条約に加入するよう奨励する。
調整
18.省庁間子ども委員会の委任事項が1997年に更新されたことには留意しながらも、委員会は、条約がまだ省庁間委員会の活動の枠組みとして定められていないことを依然として懸念する。委員会はまた、子ども政策および子どもプログラムの一般的考慮事項に条約を明示的に含めるために締約国が行なった努力が不十分であることも懸念するものである。
19.委員会は、締約国に対し、条約を省庁間委員会の活動の枠組みとして定めることを検討するよう、奨励する。加えて、締約国は、子どもの権利条約に基づく、子どものための包括的戦略の策定を検討するよう奨励されるところである。
データ収集
20.委員会は、現行のデータ収集機構が、条約のすべての側面に関する細分化されたデータの収集を確保し、かつ、達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の効果の評価を効果的に行なうには不十分であることに、懸念とともに留意する。
21.委員会は、条約の実施に関して達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の効果の評価を効果的に行なうため、締約国が、データ収集システムを強化しかつ指標を開発するよう、勧告する。データ収集システムが、条約が対象とするすべての分野を編入し、かつ、とりわけ脆弱な立場に置かれている子どもをとくに重視しながら18歳未満のすべての子どもを網羅することを確保するための努力が行なわれるべきである。
独立の苦情申立て機構
22.委員会は、締約国が、オンブズマン事務所および電話ホットライン等を通じ、自己の権利侵害に関する子どもの苦情申立てを促進するための多くの取り組みを設けてきたことに留意する。しかしながら委員会は、締約国内のすべての子どもにとってのこれらの苦情申立て機構のアクセス可能性および利用可能性について、依然として懸念を覚えるものである。
23.委員会は、子どもの権利侵害に関する苦情申立てに対応し、かつこのような侵害に対する救済を提供するための独立した苦情申立て機構がすべての子どもにとって容易にアクセスできかつ利用者にやさしいものとなることを確保するため、締約国があらゆる効果的措置をとるよう提案する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもによる苦情申立て機構の効果的利用を促進するための意識啓発の取り組みを強化するよう、奨励するものである。子どものために別個の苦情申立て機構を設けることへの消極的姿勢には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、国家子ども評議会の権限を強化して個別の事案および子どもからの苦情への対応を含めることを検討するか、オンブズマン事務所内に子どもの権利担当部署を設置するよう、奨励する。
条約およびその原則の普及
24.委員会は、学校においておよび子どもとともに働く専門家(教員、学校管理者および警察職員を含む)の間で、インターネット等も通じ、条約の原則および規定を普及するために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家が条約およびそこに掲げられた原則について十分な意識を有していないことを、依然として懸念するものである。
25.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を体系的にかつ継続的に普及し、かつ、条約が学校カリキュラム、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く、社会のあらゆるレベルの専門家集団および行政機関の研修活動に体系的に編入されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。

2.一般原則

差別の禁止
26.委員会は、とくに刑法改正ならびに民族的マイノリティと警察に関するパンフレットの作成および配布を通じ、差別の禁止を促進するために締約国がとった措置を認識する。しかしながら委員会は、一部集団の子ども、とくに民族的マイノリティに属する子ども、子どもの難民および庇護希望者、移住者家族に属する子ども、障害のある子どもならびに社会的および経済的に不利のある家族に属する子どもに対する事実上の差別および排外主義的感情が、教育制度におけるものも含めて引き続き懸念の対象となっていることに、留意するものである。
27.条約第2条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、とくに継続的な意識啓発キャンペーンを組織することにより、マイノリティ集団、とくに移住者家族に属する子ども、子どもの難民、障害のある子どもならびに社会的および経済的に不利のある家族に属する子どもに対する態度の変革ならびに事実上の差別および排外主義的感情の解消のための措置(民族平等委員会を通じての措置を含む)を強化するよう、勧告する。
子どもの最善の利益
28.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則(第3条)が、締約国の政策およびプログラムの実施において全面的に適用されかつ適正に統合されていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、しばしば親の権利のほうが子どもの最善の利益よりも重要だと考えられていることに留意するものである。
29.委員会は、子どものための法律、政策およびプログラムならびに子どもに関わるあらゆる司法上および行政上の決定における子どもの最善の利益の原則の実施を確保するため、締約国がさらなる努力を行なうよう勧告する。
子どもの意見の尊重
30.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利について法律にさまざまな規定が置かれていること、および、この点に関わる法定最低年齢が12歳であることを認識する。しかしながら委員会は、条約第12条の実施が不十分であること、および、12歳未満の子どもは意見を聴かれる権利を有しないことを、依然として懸念するものである。
31.委員会は、裁判手続のみならず、子ども保護サービス、監護手続および子どもの施設措置に関するものを含むさまざまな行政上の決定においても条約第12条の効果的実施を確保するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。さらに、締約国は、子どもの発達しつつある能力にしたがって、かつ条約第12条に照らし、12歳未満の子どもの意見の尊重を効果的に促進しかつ奨励するよう促されるところである。

3.家庭環境および代替的養護

親の指導および責任
32.ひとり親を対象とする金銭的援助および特別援助のプログラム(自治体レベルのものを含む)が確立されたことには留意しながらも、委員会は、ひとり親家族に属する子どもが脆弱な状況に置かれていることを依然として懸念する。民族的マイノリティの家族に属する子どもの状況についても懸念が表明されるところである。
33.委員会は、締約国が、ひとり親家族および民族的マイノリティの家族を支援するプログラムおよび取り組みを強化するよう、勧告する。
家庭における児童虐待およびネグレクト
34.委員会は、性的虐待に関する省庁間作業部会の提案の実施を含め、子どもの虐待およびネグレクトに対応するためにとられたさまざまな措置に留意する。しかしながら委員会は、この現象の規模および実施されたさまざまな措置の効果に関する情報が存在しないことを依然として懸念するものである。
35.委員会は、締約国が、児童虐待(性的虐待を含む)およびネグレクトのあらゆる事案の通報および付託に関する効果的システム、とられたさまざまな措置の成果の定期的評価、ならびに、子どもにさらなるトラウマを負わせることを回避するための、十分な訓練を受けた専門家による、子どもにやさしい部門横断型の手続を確保するための法律を含む、包括的な政策を策定しかつ実施するよう、勧告する。

4.基礎保健および福祉

思春期の健康
36.締約国の努力には留意しながらも、委員会は、思春期の子どもが直面している健康上の問題、とくに、とりわけ10代の女子の間で多数発生している摂食障害、薬物、アルコールおよびタバコの濫用ならびに自殺について、依然として懸念する。
37.委員会は、締約国が、とくに若者の自信を強化し、かつ健康に悪影響を及ぼす可能性がある行動を防止するための予防教育、カウンセリングおよびリハビリテーション・プログラムを通じて、思春期の身体的および精神的健康に関わるこれらの懸念に対応するための努力を強化するよう、勧告する。

5.教育、余暇および文化的活動

施設における子どもへの暴力
38.この点に関して締約国が行なっている活動は認知しながらも、委員会は、学校におけるいじめの水準がやや高いこと、および、保育施設その他の施設における虐待(性的虐待を含む)からの子どもの保護が不十分であることを、依然として懸念する。
39.委員会は、締約国が、この点に関する国家子ども評議会の勧告を考慮に入れ、かつ子どもの参加を得ながら、学校における暴力およびいじめを防止しかつこれと闘うための措置を強化するよう、勧告する。さらに、締約国は、子どもに対する犯罪について有罪判決を受けた者が子どものためのケア施設その他の施設で働くことを防止するために必要な措置をとるよう、奨励されるところである。

6.特別な保護措置

少年司法の運営
40.少年司法の分野における締約国の努力には留意しながらも、委員会は、15~17歳の子どもが成人用の拘禁施設に収容され、かつ独居拘禁下に置かれる可能性があることを依然として懸念する。
41.委員会は、締約国に対し、少年司法を規律する法律および政策が条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のようなこの分野における他の関連の国際基準に全面的に一致することを確保するため、当該法律および政策を見直すよう促す。条約第3条、第37条、第40条および第39条に照らし、委員会はさらに、子どもが拘禁施設で成人から分離され、かつ子どもが独居拘禁の対象とされないこと(これが子どもの最善の利益にかない、かつ裁判所による審査の対象とされる場合を除く)を確保するため、締約国があらゆる効果的措置をとるよう勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、法律に抵触した子どもの更生および再統合のためのプログラムを強化するよう、奨励する。
性的虐待および搾取
42.委員会は、性的虐待に関する情報収集システムを最近確立したことを含め、性的虐待および搾取を防止しかつこれと闘うための締約国が行なっている努力を認識する。委員会は、子どもの虐待および搾取に関する意識が欠けており、かつ児童ポルノに対応するための努力が不十分であることを懸念するものである。委員会はまた、虐待の被害を受けた子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家(警察官、弁護士およびソーシャルワーカーを含む)を対象とした研修の必要性があることにも留意する。
43.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、これらの現象を防止しかつこれと闘うための現行の政策および措置(ケアおよびリハビリテーションを含む)を強化するための努力を増強するよう、勧告する。委員会は、締約国が、虐待および搾取の被害を受けた子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家の研修を導入しかつ(または)強化するため、あらゆる適当な措置をとるよう勧告するものである。
44.委員会は、社会の規範および規則への適応の面で困難を経験している可能性がある15~17歳の子ども、とくに法律に抵触したこれらの子どものための支援を提供する法案が提案されたことに留意する。しかしながら委員会は、このような子どもの状況について依然として懸念を覚えるものである。
45.委員会は、締約国に対し、これらの子どもおよびその親に対して十分な支援を提供する努力を継続し、かつ必要なときは強化するよう、奨励する。

7.選択議定書の批准

46.委員会は、締約国が、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書に署名していることを認識する。
47.委員会は、締約国に対し、両選択議定書を可能なかぎり早期に批准するよう奨励する。

8.文書の普及

48.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年1月20日)。