総括所見:ニュージーランド(第1回・1997年)


CRC/C/15/Add.71 (1997年1月24日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1997年1月20日および21日に開かれた第363回会合~第365回会合(CRC/C/SR.363-365) においてニュージーランドの第1回報告書(CRC/C/28/Add.3) を検討し、以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、委員会のガイドラインにしたがって詳細な報告書を作成したこと、および、ニュージーランド政府が事前質問票(CRC/C/Q/NZ.1) に対する文書回答を提出したことについて、締約国に評価の意を表する。委員会は、報告書の検討の過程およびその後に代表団が提供した補足情報および締約国の代表団との建設的対話に、満足感とともに留意するものである。

B.積極的な側面

3.委員会は、従来の家族間暴力関連法に基づいて利用可能だったもの以上に家族間暴力の犠牲者の保護を強化した1995年家族間保護法が採択されたこと、および、とくに家族間保護制度に基づく保護が子どもに拡大されたことを歓迎する。
4.委員会は、子どもに関わる法律および政策の提案が子どもに与える影響を監視しかつ評価することがますます強調されるようになっていることに、興味深く留意する。とりわけ、委員会は、内閣に提出される新たな政策提案について具体的な監視および評価の手続が導入されたことを歓迎するものである。
5.委員会は、障害のある子どもの発達を促進し、かつその能力を最大限に高めることを目的とした、障害児を援助するために利用可能な支援サービスが幅広く存在することを歓迎する。
6.委員会は、1993年人権法の年齢差別規定が16歳以上の青年も対象とする形で適用されていること、および、人権委員会が子どもからの苦情を受け付けられることを歓迎する。
7.委員会は、条約第12条の重要な側面を実現するための手段として「青年議会」を開催するという締約国の取組みを歓迎する。

C.主要な懸念事項

8.委員会は、締約国が条約に対して付した留保が幅広い性質のものであり、そのことが条約の趣旨および目的との両立性に関して疑問を生ぜしめるものであることを、懸念する。さらに、委員会は、現在は主権国家ではなくかつ重要な側面において依然として自治領ではないトケラウ領に関して、締約国が条約の適用を拡張していないことを遺憾に思うものである。
9.委員会は、条約が対象とするすべての領域を網羅し、かつ条約の原則および規定を盛りこんだ総合的政策または行動計画が存在しないために、子どもの権利に対する締約国のアプローチがやや断片的になっているように思えることを、遺憾に思う。
10.委員会は、とくに重罪に関して子どもの責任を問いうる最低年齢および最低雇用年齢に関わって、関連の国内法が条約に基づく子どもの定義と一致していないことに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、政府による各種の支援の受給資格に関して、さまざまな政府機関によって運用される立法のもとで幅広い年齢制限──必ずしも一貫していないように思える──が存在するように思えることに、懸念とともに留意するものである。
11.子どもおよびその家族に対する支援サービスの一部の供給が相当程度非政府組織に委譲されていることを興味深く受けとめながらも、委員会は、政府の支援を受けるそのようなサービスの質に関する最終的な責任は締約国──中央レベルであれ地方レベルであれ──に属するものであり、かつ、委譲されたプログラムは慎重な監視および評価を必要とすると考えるものである。これとの関連で、委員会はまた、そのような非政府組織への公的資金供与は彼らの独立性に関して疑問を生ぜしめることにも留意する。
12.委員会は、条約が対象とする領域を所掌するさまざまな政府部局の間ならびに中央および地方の公的機関との間の効果的な調整を確保するためにとられた措置が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、このことが、政府の行動を調整する中央の窓口が存在しない結果をもたらすのみならず、政府の行動が矛盾することにつながるのではないかと懸念するものである。
13.委員会は、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの状況に関する、子どもからの苦情の登録に関わるものも含めた細分化された統計的データおよびその他の情報を収集するための措置が不十分であることを懸念する。子どもの地位に関する質的および量的情報が存在しないことは、条約の実施の評価を困難にするものである。
14.条約第4条の実施に関して、委員会は、1980年代中盤からニュージーランドで進められた大規模な経済改革の過程が子どもおよびその家族への支援サービスのために利用可能な財源に影響を与えてきたこと、および、締約国の資源を最大限に用いることにより子どもがその経済的、社会的および文化的権利を享受できるようにするためにあらゆる必要な措置がとられていないことを、懸念する。
15.委員会は、ひとり親家庭の数が増えていることを遺憾に思い、かつ、この傾向により影響を受ける子どものニーズに取り組むための一貫した戦略を締約国が有していないことを懸念する。
16.委員会は、犯罪法第59条により、家庭において子どもに有形力を用いることが、それがその状況下で合理的なものであるかぎり認められていることに、懸念を表明する。さらに、委員会は、性的虐待を含む、家庭における不当な取扱いおよび虐待の問題、ならびにそのような不当な取扱いまたは虐待の犠牲になった子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合の問題に取り組むためにとられた措置が不十分であることに留意するものである。
17.委員会は、ニュージーランドにおいて青年の自殺率が高いことに深刻な懸念を表明する。
18.委員会は、福祉に関するほとんどの統計においてマオリ人口が非マオリ人口よりも相当に遅れていることに、懸念とともに留意する。このような統計は、この人口集団、とくにマオリの子どもの権利の享受を保護しかつ促進するためにとられた措置が不十分であることを反映するものである。
19.委員会は、児童労働、基本的な最低雇用年齢またはさまざまなタイプの仕事および労働条件に応じた一連の最低年齢の問題に取り組むための包括的な政策を締約国が有していないことに、遺憾の意とともに留意する。
20.委員会は、子どもを含む難民および庇護希望者に政府が提供している支援サービスが、UNHCRとの協定に基づき難民として受け入れられているか、または個人的な庇護申請の結果として締約国に滞在しているかにより異なるように思えることに、重大な関心を表明する。

D.提案および勧告

21.1993年6月に世界人権会議が採択し、かつ子どもの権利条約への留保を撤回するよう各国に促したウィーン宣言および行動計画の精神にしたがい、委員会は、締約国に対し、条約に対する留保を撤回するための措置をとるよう奨励したい。さらに、委員会は、ニュージーランドに対し、トケラウ領に関して条約の適用を拡張するよう奨励するものである。
22.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を盛りこみ、かつ、政府によって供給されまたは資金提供されている支援サービスに携わるすべての者に対して指導を提供しうるような、子どもの権利に関わる包括的な政策声明を作成しかつ採択するよう提案する。
23.委員会は、政府が、既存の立法を条約の原則および規定に一致させる過程を追求するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、きわめて深刻な犯罪の責任を問いうる最低年齢および最低雇用年齢を、優先課題として見直すよう提案するものである。
24.あらゆる政府の政策、行政上の運用および立法の見直しが、それらが1993年人権法と一致しているかどうかを決定するために進められていることに心強い思いを感じながらも、委員会は、これとは別にまたはこれを補足する形で、子どもに影響を与える政府の政策、行政上の運用および立法のあらゆる側面を、条約の原則および規定を考慮に入れながら見直すよう提案する。さらに、委員会は、子どもコミッショナー事務所を強化すること、および、同事務所の独立性を強化しかつ同事務所が議会に直接責任を負うようにするための措置をさらに考慮することを、提案するものである。
25.委員会は、条約が対象とするあらゆる領域およびあらゆる子どもの集団、とくに最も不利な立場に置かれている集団を扱うことを目的として、細分化された適切な指標の特定に優先的な注意を払いながら、苦情の登録の分野におけるものも含めてデータ収集システムをさらに見直すよう勧告する。
26.委員会は、条約第4条の実施に関して、予算配分に当たっては締約国の利用可能な資源を最大限に用いるべきことおよび子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現を優先すべきこと、ならびに、最も不利な立場に置かれた集団に属する子どもに特段の注意を払うことを、勧告する。委員会はまた、ここ数年進められてきた経済改革の過程が、支援サービスのために利用可能な政府の財源への影響という観点から子どもおよびその家族にどのような影響を与えたかについて、かつ、失業および雇用条件の変化が子ども、青年およびその家族に対してどのような影響を与えたかについて、締約国が研究を行なうようにも勧告する。そのような研究の結論は、将来の行動に関する包括的な戦略を発展させるに当たって有益な出発点となりうるものである。
27.委員会は、ひとり親家庭が増加しているという傾向に照らしてひとり親家庭の顕著なニーズについて研究を行ない、かつ、このような子どもおよびその親に対して今後悪影響が出ることを避けるために、すでにとられている措置を補完するような措置をとるよう提案する。
28.委員会は、締約国が、青年の自殺の原因として可能性がある要因および最も危険だと思われる青年の特質についての研究を引き続き優先し、かつ、この悲劇的現象を減少させうる追加的な支援プログラムおよび介入プログラムを、精神保健、教育、雇用またはその他の分野のいずれの分野であれ導入するための措置を、現実的に可能なかぎり早期にとるよう提案する。これとの関連で、締約国は、やはりこの問題に取り組んできた経験を有しているかもしれない他国の政府および専門家に協力を呼びかけてもよいかもしれない。
29.委員会は、締約国が、あらゆる形態の身体的または精神的暴力、傷害または虐待を効果的に禁ずるために、家庭における子どもの体罰に関わる立法を見直すよう勧告する。委員会はさらに、条約第39条に照らし、そのような不当な取扱いおよび虐待の犠牲になった子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するために適切な機構を設置するよう勧告するものである。
30.マオリ人口に関わる保健、教育および福祉の領域で政府が行なってきた努力には留意しながらも、委員会は、当局に対し、マオリの子どもとマオリ以外の子どもとの間に残っている格差を埋めるためのプログラムおよび活動を継続しかつ強化するよう奨励する。
31.委員会は、児童労働に関する政策および法律を見直し、かつ、締約国が、最低雇用年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するよう勧告する。
32.委員会は、UNHCRが組織したスキームの枠外でニュージーランドにやって来た庇護希望者も含めて、難民であるあらゆる子どもが初期滞在援助および政府が供給するまたは資金援助する支援サービスの利益を受けられるようにするよう勧告する。
33.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国によって提出された第1回報告書および文書回答を、関連の議事要録および委員会がここに採択した総括所見とともに刊行することを検討するよう勧告する。そのような文書は、政府、議会および関心のある非政府組織を含む一般公衆の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起することを目的として、広く普及されるべきである。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年2月12日)。