総括所見:ニュージーランド(第3~4回・2011年)


CRC/C/NZL/CO/3-4(2011年4月11日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2011年1月19日に開かれた第1588回および第1589回会合(CRC/C/SR.1588 and 1589参照)においてニュージーランドの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/NZL/3-4)を検討し、2011年2月4日に開かれた第1612回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の第3回・第4回統合報告書および事前質問事項(CRC/C/NZL/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、多部門から構成された代表団との間に持たれた前向きな対話も歓迎するものである。

II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、締約国による最新版の共通コアドキュメント(HRI/CORE/NZL/2010)の提出(2010年9月30日)を歓迎する。
4.委員会はまた、とくに以下のことを歓迎するものである。
  • (a) 改正子ども、若者およびその家族(青少年裁判所の管轄および命令)法の採択(2010年)。
  • (b) 改正子ども養護法の採択(2008年)。
  • (c) 改正子どもの地位法(2007年)。
  • (d) 改正子ども扶養法(2006年)。
  • (e) 改正社会保障(家族のための労働)法(2004年)。
  • (f) 子ども養護法(2004年)。
  • (g) 子どもコミッショナー法の制定(2003年)。
5.委員会は、第2回定期報告書の検討(2003年)以降、締約国がとくに以下の文書を批准しまたはこれに加入したことに、評価の意とともに留意する。
  • (a) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2007年3月)。
  • (b) 障害のある人の権利に関する条約(2008年9月)。
  • (c) 無国籍の削減に関する1961年条約(2006年9月)。
  • (d) タバコの規制に関する2003年のWHO枠組み条約(2004年1月)。

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
6.委員会は、これまでの報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.216およびCRC/C/OPAC/CO/1)を実施しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、これらの所見に掲げられた勧告の一部について十全な対応が行なわれていないことに、遺憾の意とともに留意する。
7.委員会は、締約国に対し、第2回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの、とくに調整、差別の禁止、虐待およびネグレクト、児童労働ならびに少年司法に関するものを実施し、かつこの総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップするため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。これとの関連で、委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2004年〔ママ〕)に対して締約国の注意を喚起するものである。
留保
8.委員会は、同国の一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に関する具体的留保の撤回を阻害する要因の除去に向けて行なわれている努力に留意する。にもかかわらず、委員会は、この作業がまだ留保の撤回に帰結していないことを深く遺憾に思うものである。委員会はまた、トケラウに対する条約の適用に関してこれまでのところなんら進展が見られないことも遺憾に思う。
9.委員会は、前回の勧告を繰り返し、締約国に対して以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に付した留保を撤回すること。
  • (b) 条約の適用をトケラウの領域に拡張すること。
立法
10.委員会は、子どもの権利の分野における最近の立法上の進展にも関わらず、条約およびその選択議定書との国内法の調和が(たとえば養子縁組法の分野で)完了しておらず、かつ、子どもに影響を与えるすべての国内法の相互の調和さえ図られているわけではないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、子ども、若者およびその家族法の改正法案第6号が2007年から議会に上程されていることも懸念するものである。
11.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもに関連する現行国内法が首尾一貫しておりかつ条約と一致していること、および、国内法が既存のいかなる慣習法(マオリの慣習法を含む)にも優越することを確保すること。
  • (b) 条約およびその選択議定書の原則および規定が締約国のすべての子どもに適用可能とされることを確保すること。
  • (c) 議会において、子どもに関連するすべての法律を優先的に検討すること。
調整
12.委員会は、社会開発省が締約国における条約の実施の主務機関であること、および、社会部門における諸局の活動プログラムの調整を確保する目的で、社会開発省次官を議長とする、社会部門関連省庁の高級職員のフォーラムが設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、子どもの権利にとくに関連した調整機構が存在しないことを遺憾に思うものである。
13.前回の勧告(CRC/C/15/Add.216、パラ11)にしたがい、委員会は、締約国が、締約国全域における条約の実施が高級レベルでかつ効果的に調整されることを確保するための常設機構を設置するよう、勧告する。
国家的行動計画
14.委員会は、包括的行動は国家的行動計画の策定ではなく協働的な活動プログラムを通じて追求されている旨の締約国の説明に留意する。にもかかわらず、委員会は、条約が、具体的な政策および戦略の策定のための枠組みとして恒常的に活用されているわけではないことを、遺憾に思うものである。委員会はとくに、条約に定められた原則および権利の全面的実現を確保するための包括的政策が存在しないことを懸念する。
15.委員会は、締約国に対し、条約および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を実施するための包括的な政策およびこれに対応する国家的行動計画を、子どもの権利の促進および保護に関与している官民諸部門と協力しながら、かつ子どもの権利アプローチを基盤として、採択するよう奨励する。その際、締約国は、「子どもにふさわしい世界」と題された総会第27回特別会期の成果文書およびその中間レビュー(2007年)を考慮に入れるべきである。委員会はまた、締約国が、包括的な政策および行動計画の全面的実施を可能にする目的で、達成された進展の評価および存在しうる欠陥の特定を恒常的に行なう、フォローアップおよび評価のための機構が存在することを確保するようにも勧告する。
資源配分
16.委員会は、子どもに関する支出が近年増加していること、および、貧困削減のための税額控除が導入されたことに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、貧困の根絶および不平等への対応のためには当該増加では十分でないことを懸念するものである。さらに委員会は、子どものための配分額を予算策定手続において明確に特定することがいまなおできないため、締約国が子どもに関して行なっている支出の追跡およびその効果の評価が妨げられていることを、遺憾に思う。
17.委員会は、締約国が、子どもの権利を実施するための戦略的配分額を具体的に定め、その実施を追跡し、かつ結果および効果を監視することを可能にするような子ども予算の策定の試行を開始するよう、勧告する。その際、締約国は、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関して2007年9月21日に行なわれた一般的討議の際の委員会の勧告(2007年)を考慮するべきである。締約国は、国連児童基金(ユニセフ)その他の技術的援助を求めることを検討してもよいと思われる。
普及および意識啓発
18.委員会は、条約の普及および条約に関する意識啓発のために行なわれている取り組みに、関心をもって留意する。にもかかわらず、委員会は、親、養護者、教員、ユースワーカーおよび子ども等の間で、条約に関する意識が依然として限定されていることを遺憾に思うものである。
19.委員会は、親、養育者、教員、ユースワーカーおよび子どもとともに働くその他の専門家を含む一般公衆ならびに子どもたち自身によって条約の規定が広く知られることを確保するため、締約国が、普及および意識啓発のための活動を強化しかつ拡大するよう勧告する。締約国は、その取り組みにおいて非識字者および正規の教育を受けていない者も対象とされることを確保するための措置をとるべきである。
研修
20.子どもとともに働く警察官、保護観察官および教員を対象として子どもの権利に関する研修が行なわれていることは歓迎しながらも、委員会は、そのような研修において、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家が対象とされていないことを遺憾に思う。
21.委員会は、締約国が、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(すべての法執行官、教員、保健従事者、ソーシャルワーカーおよび子どものケアのための施設の職員ならびに国家部門および地方政府の職員を含む)を対象とした、このような専門家の条約上の責任に関する体系的研修を発展させかつさらに強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、あらゆる段階の教育および専門家養成の公式カリキュラムに人権教育が含まれるべきことを勧告するものである。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団を対象として、かつ、とくに新兵募集に従事する軍の職員、裁判官、検察官、出入国管理官、ソーシャルワーカーおよびメディアの間で、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の規定についての体系的な教育プログラムおよび研修プログラムを発展させることも、勧告する。
子どもの権利と企業セクター
22.委員会は、ニュージーランド企業および締約国の管轄に服するその他の事業体が国内外で行なう活動について、とくにビジネスと人権に関する「保護・尊重・救済」枠組みにしたがった企業の社会的責任指標を採択することを、締約国がまだ検討していないように思われることに留意する。人権理事会によって2008年に全会一致で採択された当該枠組みは、企業による人権侵害に対する保護を提供する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際、救済措置にいっそう効果的にアクセスできる必要性について簡潔に述べたものである。
23.委員会は、締約国に対し、ビジネスと人権に関する「保護・尊重・救済」枠組みを民間企業および公共企業体の活動に適用することについての世界中の経験を正当に考慮するとともに、企業部門が、企業の社会的責任に関する国際的および国内的基準を、とくに子どもの権利の尊重との関連で遵守することを確保するための規則を定めかつ実施する目的で効果的な措置をとることを検討するよう、奨励する。

B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
24.「若者の声:若者の選択」プロジェクト、および、マオリの状況を改善する目的で、とくに教育および保健の分野で締約国が行なっているさまざまな努力には関心をもって留意しながらも、委員会は、サービスへのアクセスが不平等であることに明らかなように、子どもを含むマオリ住民に対する差別が引き続き行なわれていることを依然として懸念する。
25.委員会は、締約国が、以下の措置等をとることにより、あらゆる事由に基づく差別からの全面的保護を確保するよう勧告する。
  • (a) マオリの子どもおよびその家族によるサービスへのアクセス格差に対応するため、緊急の措置をとること。
  • (b) 差別に対する意識啓発活動その他の防止活動を強化するとともに、必要であれば、脆弱な状況に置かれた子ども(マオリおよび太平洋諸島民の子ども、子どもの難民、移住者である子ども、障害のある子どもならびにレズビアン、バイセクシュアル、ゲイおよびトランスジェンダーの子どもならびにこれらの集団の者とともに住んでいる子どもなど)のための積極的差別是正措置をとること。
  • (c) 社会のあらゆる部門で生じた子どもに対する差別の事案が、懲戒措置、行政上の制裁または必要であれば刑事的制裁等によって効果的に対応されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。
子どもの意見の尊重
26.委員会は、家庭、学校およびコミュニティにおいて子どもの意見が十分に尊重されていないことに、遺憾の意とともに留意する。委員会はまた、子どもが公共領域で意見を表明できる手段がないこと、締約国が、子どもに影響を与える可能性がある法律および政策を立案する際に子どもの意見を制度的考慮していないこと、および、司法上および行政上の手続において意見を聴かれる子どもの権利が十分に尊重されていないことも、遺憾に思うものである。
27.委員会は、締約国が、条約第12条にしたがい、かつ意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を考慮に入れ、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの権利の尊重の原則を、家庭、学校およびコミュニティならびに施設ならびに行政上および司法上の手続において、立法上も実務上も促進し、その便宜を図りかつ実施すること。
  • (b) 法律および政策の立案に際し、子どもの意見を制度的に考慮すること。

C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a))

体罰
28.委員会は、矯正を目的とする親の有形力の合法的使用を廃止した、刑法(1961年)第59条1項の新規定を歓迎する。
29.委員会は、締約国が、刑法第59条1項に関する公衆の意識を高めるとともに、子育てにおける積極的かつ非暴力的な形態のしつけを引き続き促進するよう、勧告する。
子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ
30.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。
  • (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。
    • (i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。
    • (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。
    • (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。
  • (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表と協力するとともに、とくにユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーの技術的援助を求めること。

D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境
31.委員会は、とくに立法上および制度上の改革ならびにさまざまなサービス機関間の政策および実務の統合を通じ、家族支援を向上させようとする締約国の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、一部の下位集団、とくに貧困、アルコール、薬物または孤立を理由として危機的状況に置かれている家族が、子どもの養育責任を果たすにあたって十分な援助を受けていないことを懸念するものである。
32.委員会は、締約国が、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたり、地方レベルにおける時宜を得た対応によって適切な援助を行なうための努力を強化するよう、勧告する。これには、子育てに際してカウンセリングを必要とする親向けのサービス、アルコールまたは薬物に関連する問題の治療のためのサービス、および、マオリおよび太平洋諸島民については、その親としての役割を果たせるようにするための文化的に適切なサービスが含まれる。
養子縁組
33.委員会は、国内養子縁組について子どもの同意が要件とされていないこと、および、養子縁組法の見直しが現在保留とされていることを遺憾に思う。委員会は、「開放的養子縁組」ではない養子縁組の場合、養子が、自己の実親の氏名が記載された書類に20歳に達するまでアクセスできないことに、遺憾の意とともに留意するものである。
34.委員会は、締約国が、国内養子縁組について適切な形で子どもの同意が要件とされることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、養子縁組法を条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約と一致させる目的でその見直しを再開し、かつ適切な形で改正することも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、養子が自己に関する書類にアクセスできる年齢を最低でも18歳まで引き下げるよう、勧告する。
虐待およびネグレクト
35.委員会は、子どもの虐待およびネグレクトの問題に取り組むために締約国が行なっている努力、とくに、資金の増額、家族間暴力閣僚級チームの設置、家庭における暴力に関する行動のための特別委員会、児童虐待に関する独立専門家フォーラムの設置等を通じて防止の分野で行なわれている努力の強化を歓迎する。しかしながら委員会は、家庭における子どもの虐待およびネグレクトが広く蔓延しており、かつ、この点に関する全国規模の包括的戦略が定められていないことを、依然として憂慮するものである。委員会は、子どもに対して行なわれた虐待を記録しかつ分析する包括的システムがいまなお設けられておらず、かつ、被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための機構が締約国全域で十分に利用可能とされていないことを、遺憾に思う。
36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 暴力、性的虐待、ネグレクト、不当な取扱いまたは搾取(家庭、学校および施設その他の養護下におけるものを含む)の事案数および規模を監視するための機構を設置すること。
  • (b) 子どもとともに働く専門家(教員、ソーシャルワーカー、医療専門家、警察官および司法関係者を含む)が、子どもに影響を与える家族間暴力が疑われる事案について通報を行ないかつ適切な行動をとる義務についての研修を受けることを確保すること。
  • (c) 被害者が法的手続中に再度の被害を受けないことを確保するため、暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いの被害者のための支援を強化すること。
  • (d) 国の全域において、回復、カウンセリングおよびその他の形態の再統合のための十分なサービスにアクセスできるようにすること。

E.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項))

健康および保健サービス
37.委員会は、「優良児」(Well Child)プログラムがほぼ100%の母子を網羅していること、および、6歳未満の子どもは開院時間中に無償のプライマリーヘルスケアにアクセスできることに、関心をもって留意する。子どもの健康状態に関する格差に対応するための、焦点の明確な政策および取り組みを実施することに対する締約国のコミットメントは歓迎しながらも、委員会は、とくにマオリ住民と締約国のその他の住民との間に見られる乳児死亡率の格差、および、マオリの子どもの間でより低い傾向がある予防接種率の格差に表れているとおり、不平等が引き続き存在していることを懸念するものである。
38.委員会は、すべての政府省庁間で調整のとれたアプローチを採用し、かつ保健政策と所得不平等および貧困の削減を目的とする政策との間の調整を向上させることを通じ、保健サービスへのアクセスにおける不平等に対応するよう勧告する。
母乳育児
39.委員会は、生後6か月までの完全母乳育児を奨励しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、ニュージーランドの子どものうち生後3か月の時点で母乳のみで育てられている子どもは半数しかおらず、かつ生後6か月の時点で母乳のみで育てられている子どもは8%に満たないことを、依然として懸念する。委員会はまた、マオリの子どもは他の子どもに比べて生後4か月前に固形物を与えられる可能性が高いことも懸念するものである。
40.委員会は、締約国が、完全母乳育児の利点に関するマオリ住民の意識を高めることにとくに焦点を当てながら、生後6か月まで母乳のみで育てられる乳児の人数を増やすための努力を引き続き行なうとともに、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施するよう勧告する。締約国はまた、赤ちゃんにやさしい病院をさらに促進し、かつ看護師研修に母乳育児を含めることを奨励するべきである。
思春期の健康
41.委員会は、思春期の健康に影響を及ぼす分野で締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、とくに社会経済的に下層に属する女子またはマオリの背景を有する女子の間で10代の妊娠率が上昇していること、および、10代、とくにマオリの10代の自殺率が高いことを懸念するものである。
42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 学校で青少年に対して適切なリプロダクティブヘルス・サービス(リプロダクティブヘルス教育を含む)を提供し、かつ青少年の健康的なライフスタイルを促進するための努力を強化すること。
  • (b) 対象の明確な防止措置を提供する目的で青少年の自殺行動の根本的原因についての研究を行なう等の手段により、引き続き締約国全域でこの問題への対応を行なうこと。
生活水準
43.委員会は、生活水準の向上のために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、近年、子どもの貧困の規模が下降していることには留意しながらも、いまなお締約国の子どもの約20%が貧困線以下の生活を送っていることを懸念するものである。
44.委員会は、締約国が、不利な立場に置かれた家族およびその子どもが持続的に貧困から脱することを可能にする適切な支援を提供するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、同時に、貧困線以下に留まっている家族およびその子どもに対して引き続き援助を提供するよう、勧告する。

F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
45.委員会は、改正教育法およびマオリ教育戦略(2008~2012年)をはじめとする、教育の領域で締約国が行なっている多数の努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、在留資格のない子どもに対し、無償教育へのアクセスが法的に保障されていることも歓迎するものである。しかしながら委員会は、一部の集団の子ども、とくに障害のある子ども(特別な教育上のニーズを有する子ども)、農村部に住んでいる子ども、マオリ、太平洋諸島民およびマイノリティの子ども、子どもの庇護希望者、10代の母親、中退者ならびにさまざまな理由から不登校になっている子どもが、普通学校であるか代替的教育施設であるかに関わらず就学または教育の継続もしくは再開について問題を有しており、教育に対する権利を全面的に享受できていないことを懸念する。さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 乳幼児を対象とする無償の教育およびケアが〔週〕20時間しか利用可能とされておらず、かつ、多くの子ども、とくに窮乏している子どもにとってのアクセスが限られていること。
  • (b) 多くの公立学校が親に対して「寄付」の圧力をかけていること。
  • (c) いじめが深刻かつ広範な問題となっており、子どもの通学および学習の成功を妨げている可能性があること。
  • (d) 停退学件数が多いこと、および、その影響が、一般的に学業成績の低い集団の子どもにとくに及んでいること。
46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) すべての子どもが、少なくとも社会的に不利な立場に置かれた家族および子どもに対しては無償で提供される、質の高い乳幼児期の教育およびケアにアクセスできることを確保すること。
  • (b) 子どもの民族的(文化的・地域的)ならびに社会的背景がその就学および通学に及ぼす悪影響を低減させるための努力を継続しかつ強化すること。
  • (c) 真にインクルーシブな教育に対するすべての子ども(不利な立場に置かれた、周縁化されたおよび学校から距離のあるすべての集団の子どもを含む)の権利を確保するため、相当の追加的資源を投入すること。
  • (d) 退学または停学の懲戒措置は最後の手段としてのみ用いること、停退学の件数を削減すること、および、学校生活に関してリスクを有する子どもを援助するため学校にソーシャルワーカーおよび教育心理学者が配置されることを確保すること。
  • (e) 親が圧力によって学校に寄付させられないこと、および、親がそのような寄付をしないまたはできない場合に子どもに汚名が着せられないことを確保すること。
  • (f) 人権、平和および寛容に関する教育等も通じ、学校におけるいじめおよび暴力を解消するための努力をさらに強化すること。
休息、余暇、レクリエーションおよび文化的活動
47.委員会は、十分な数の放課後ケアサービスおよび放課後活動プログラムが親および家族に対して利用可能とされていないことに、遺憾の意とともに留意する。委員会はまた、存在するプログラムも十分な資金を得ておらず、かつ地理的に公平な分布となっていないことも懸念するものである。
48.委員会は、締約国が、学齢の子どもを対象とする放課後および休暇期間中のサービスおよびプログラムを発展させ、かつこのようなサービスおよびプログラムに対して十分な資金を配分するよう、勧告する。このようなプログラムは、家庭外で子どもに構造化された監督を提供すること、必要に応じて補習サービスを行なうこと、および、その他のやり方では親が金銭的に負担することのできないサービスに子どもがアクセスできるようにすることを含む、複数の機能を果たすことが可能である。締約国は、これらのプログラムが、すべての親およびその子どもにとって金銭的におよび地理的に平等にアクセス可能なものとなることを、可能なかぎり確保するよう求められる。

G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~36条、第38~40条および第37条(b)~(d))

経済的搾取(児童労働を含む)
49.委員会は、2004年に「子ども就労プログラム」が策定されたことに関心をもって留意しながらも、児童労働を含む経済的搾取に関する委員会の前回の勧告に対応するための努力がなんら行なわれてこなかったことを、深く遺憾に思う。さらに委員会は、15~18歳の子どもが危険な労働現場で働くことが認められていることをとくに懸念するものである。
50.委員会は、18歳未満のいかなる者も危険な労働現場で働くことを認められないことを確保するため、締約国が、立法上の措置であるか他の措置であるかを問わず、適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)を批准するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.216、パラ48)もあらためて繰り返すものである。
性的搾取および虐待
51.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書を批准するための作業が進んでおり、かつ、残された課題については現在下院〔ママ〕に上程されている子どもおよび家族保護法案を通じて対応される旨の、締約国の説明に留意する。委員会はまた、商業的性的搾取および虐待と闘うために締約国が行なっている活動にも留意するものである。しかしながら委員会は、移民の女子が売買春の搾取を受けていること、および、性的搾取の被害を受けた子どもに関するデータが存在しないことを懸念する。
52.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書の批准を妨げるいかなる要因も解消する目的で、子どもおよび家族法案を遅滞なく採択するよう奨励する。委員会は、締約国が、売買春における移民の女子の搾取と闘うために十分な措置をとるとともに、子どもの性的搾取および虐待の規模に関するデータを収集するための努力を強化するよう、勧告する。このようなデータは、これらの問題に対する十分な対策を策定するために必要不可欠である。
ヘルプライン
53.委員会は、締約国に3つの子どもヘルプラインが設けられていることに、関心をもって留意する。しかしながら委員会は、これらのヘルプラインが通話料無料の短い電話番号を通じて1日24時間アクセス可能なものとなっていないことを、遺憾に思うものである。
54.委員会は、締約国が、フリーダイヤルによる24時間のアクセスを可能とするための十分な資金を子どもヘルプラインに配分するよう、勧告する。委員会はさらに、子どもヘルプラインが、3ケタまたは4ケタの電話番号により、国内のどこからもアクセス可能なものとなるべきことを勧告するものである。
少年司法の運営
55.委員会は、刑事責任年齢が低いことに関する懸念をあらためて表明するとともに、締約国が、重大犯罪および累犯についての刑事責任年齢を、これらの犯罪について明確に定義することなく14歳から12歳に引き下げ、かつ刑事上の成年を17歳のまま維持していることを、遺憾に思う。拘禁施設における少年と成人の分離について条約第37条(c)に付された留保(この総括所見のパラ8および9参照)の解除に向けて相当の前進が行なわれたという締約国の説明には留意しながらも、委員会は、法律に抵触した18歳未満の女子が年長の女性被拘禁者と同じ拘禁場所に収容されていることに、懸念を表明するものである。委員会はまた、「家族集団会議」の存在にも関わらず、司法機関が修復的アプローチよりも懲罰的アプローチを用いることの方が多いことも遺憾に思う。
56.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.216、パラ50)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(2007年)、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)を全面的に実施するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。
  • (a) 委員会の一般的意見10号、とくにパラ32および33にしたがい、刑事責任に関する最低年齢を引き上げること。
  • (b) 刑事上の成年を18歳に定めることを検討すること。
  • (c) 法律に抵触した子どもの拘禁に代わる幅広い措置を発展させるとともに、拘禁は最後の手段としてかつもっとも短い期間で用いられるべきであるという原則を、制定法上の原則として確立すること。
  • (d) 条約第37条(c)に付した留保の迅速な撤回がなされるまでの間、自由を奪われたいかなる子どもも、男女を問わず、分離しないことがその子どもの最善の利益にかなう場合を除き、すべての拘禁場所において成人から分離されることを確保すること。
  • (e) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHR〔人権高等弁務官事務所〕およびNGOを含む)によって開発された技術的援助ツールを活用するとともに、同パネルの構成機関に対し、少年司法および警察の研修の分野における技術的助言および援助を求めること。
犯罪の被害者および証人である子ども
57.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたすべての子どもおよび(または)そのような犯罪の証人が条約で求められている保護を提供されることを確保するとともに、その際、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20添付文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。
マイノリティ集団に属する子ども
58.委員会は、締約国に対し、先住民族集団に属する子どもの状況を向上させるための努力において、先住民族の権利に関する特別報告者が2010年7月のニュージーランド訪問後に行なった所見および勧告(A/HRC/15/37/Add.9)を、ワイタンギ条約に掲げられた諸原則に関するものも含めて考慮に入れるよう、奨励する。委員会はまた、先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)に対しても締約国の注意を促すものである。

H.国際人権文書の批准

59.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准を迅速に進めるよう、勧告する。
60.委員会は、締約国に対し、まだ加盟していない国際人権文書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討するよう、奨励する。

I.フォローアップおよび普及

61.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
62.委員会は、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、メディアその他の専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

J.次回報告書

63.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2015年5月5日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつ再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年2月12日)。