総括所見:東ティモール(OPAC・2008年)


CRC/C/OPAC/TLS/CO/1(2008年2月14日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2008年1月17日に開かれた第1290回会合において東ティモールの第1回報告書(CRC/C/OPAC/TLS/1)を検討し、2008年2月1日に開かれた第1313回会合において以下の総括所見を採択した。

2.委員会は、締約国の第1回報告書の早期提出、および、事前質問事項(CRC/C/TLS/Q/1)に対する文書回答の時宜を得た提出を歓迎する。委員会はまた、ハイレベルな代表団との間に持たれた建設的な対話も評価するものである。
3. 委員会は、この総括所見が、条約に関する締約国の第1回報告書について採択された総括所見(CRC/C/TLS/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書について採択された総括所見(CRC/C/OPAC/TLS/CO/1〔ママ〕)とあわせて読まれるべきであることを勧告する。

A.積極的側面

4.委員会は、選択議定書の批准時に行なわれた、東ティモール軍への志願入隊に関する最低年齢は18歳である旨の締約国の宣言に留意する。委員会はまた、18歳未満の者を軍役のために採用することを禁ずる規定が、東ティモール民族解放軍(FALINTIL)創設法に編入されたことにも留意するものである。委員会は、締約国による国際刑事裁判所ローマ規程の批准を歓迎する。

B.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置

5.委員会は、選択議定書に関する広報および研修についての情報がないことを遺憾に思う。
6.選択議定書第6条2項に照らし、委員会は、締約国が、適当な手段により、選択議定書の規定を広く周知しかつ促進するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもとともに働くすべての関連の専門家集団、とくに医療専門家、ソーシャルワーカー、警察官、教員、弁護士および裁判官を対象とした、選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修のプログラムを発展させることも、勧告するものである。

2.防止

7.委員会は、兵籍編入に際し、国連東ティモール暫定機構(UNTAET)が2001年議会選挙のために発行したIDカードが新兵の年齢確認のために用いられていること、および、当該IDカードの提示が不可能なときは出生証明書または宣誓供述書が用いられていることに、留意する。
8.志願入隊に関する最低年齢が厳格に遵守されることを確保するため、委員会は、締約国が、すべてのティモール人が自己の年齢を容易に証明できる書類を保持しているわけではないことを念頭に置きながら、新兵の年齢確認の方法および手段を緊密に監視するよう、勧告する。
9.委員会は、締約国の学校制度における人権教育および平和教育についての具体的情報がないことを遺憾に思う。
10.委員会は、締約国が、寛容、平和および理解の環境をつくり出すための十分なプログラムおよび活動を確立するとともに、すべての学校のカリキュラムに人権教育および平和教育を導入し、かつ子どもの教育におけるこれらのテーマ等について教員の研修を行なう努力を強化するよう、勧告する。

3.禁止および関連の事項

11.18歳未満の者を軍役のために強制的に徴募することを禁ずる規定がFALINTIL-東ティモール国防軍創設法に編入されたことには留意しながらも、委員会は、締約国が、いまのところ、子どもの強制的徴募または敵対行為における使用を犯罪化するいかなる規定も採択していないことを遺憾に思う。
12.子どもの強制的徴募または敵対行為における使用を阻止するため、委員会は、締約国が、刑法または他の適当な法律に、自国の領域におけるこのような徴募または使用を犯罪とする規定を含めるよう勧告する。
13.委員会は、若者が格闘技集団に所属することに関わる潜在的リスク(このような集団が政治的目的のために利用されるリスクも含む)を締約国が認識していることを評価する。委員会は、委員会との対話の際に締約国から提供された、これらの集団の行動を規制する法案の起草が最終段階にある旨の情報に留意するものである。
14.委員会は、締約国に対し、格闘技集団の活動を監視するとともに、格闘技集団に関する法案を可能なかぎり早期に完成させかつ採択するよう、奨励する。

4.保護、回復および再統合

15.東ティモールの独立闘争の際に敵対行為に関与した東ティモールの子どもがはるか以前に動員解除され、かつ、その後18歳を超えたことには留意しながらも、委員会は、関係する子どもおよびコミュニティにとっての影響は今日に至るまで根強く残っていることに留意する。委員会は、元子ども兵士だけを対象として利用可能とされているサービスについての情報がないことを遺憾に思うものである。
16.委員会は、締約国が、東ティモールの武装独立闘争の際に敵対行為に関与した子どもの経験が社会的にどのような意味を持つかを余すところなく明らかにする研究を実施し、元子ども兵士の特定を目指し、かつ適切な心理的サービスおよびリハビリテーションのためのサービスを提供するよう、勧告する。

5.フォローアップおよび普及

17.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
18.選択議定書第6条2項に照らし、委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。

6.次回報告書

19.第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年3月16日)。
最終更新:2012年03月16日 05:54