総括所見:モルディブ(第2~3回・2007年)


CRC/C/MDV/CO/3(2007年7月13日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2007年5月23日に開かれた第1233回および第1234回会合(CRC/C/SR.1233 and 1234参照)においてモルディブの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/MDV/3)を検討し、6月8日に開かれた第1255回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国の子どもの状況に関する理解をいっそう明確なものとすることを可能にしてくれた、締約国の第2回・第3回統合定期報告書および事前質問事項(CRC/C/MDV/Q/3/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。
3.ハイレベルな代表団の出席により、委員会は、条約の実施を直接担当する人々との率直かつ建設的な対話に携わることができた。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

4.委員会は、子どもの権利の実施に積極的な影響を与える、締約国による以下の文書の批准/これへの加入を歓迎する。
  • (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、ならびに、市民的および政治的権利に関する国際規約およびその選択議定書(2006年9月19日)。
  • (b) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2006年3月13日)。
  • (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約(2004年4月20日)およびその選択議定書(2006年2月15日)。
  • (d) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノ(2002年5月10日)ならびに武力紛争への子どもの関与(2004年12月29日)に関する子どもの権利条約の両選択議定書。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

5.委員会は、締約国(26の環礁に分類される1190のサンゴ島から構成されている)の地形が有する特有の性質、および、多くの場合孤立していてサービス等の提供が困難である環礁に住む子どものために十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで締約国が直面している困難を認知する。
6.委員会は、2004年12月26日のインド洋津波が引き起こした例外的な自然災害によって締約国の低海抜の島々が大部分壊滅したため、多くの経済的および社会的困難が生じ、かつ多くの子どもの生活に影響が生じていることを認知する。

D.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.33 and 37)の検討後に行われたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.91)に対して立法措置および政策を通じて対応するため、締約国が行なった努力に留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに締約国の留保、条約の規定および原則を全面的に遵守するための国内法の調和化、障害のある子ども、婚外子および女子に対する差別、性的虐待を含む子どもの不当な取扱いの防止、栄養不良の蔓延、薬物濫用の問題ならびに少年司法の運営に関わるものについては、十分な対応が行なわれていない。
8.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回・第3回統合報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国が子どもの権利に関わる関連のハーグ諸条約および国際労働機関(ILO)諸条約を批准しまたはこれらに加入することも、勧告するものである。
留保
9.委員会は、条約に対して付されている留保を撤回の方向で見直すよう、ジェンダー・家族省から司法省に対して要請が行なわれたことには関心をもって留意しながらも、条約第14条1項に対する締約国の留保が幅広いものであることを遺憾に思う。条約第21条に対する締約国の留保について、委員会は、締約国が留保において表明している懸念は、第21条が「養子縁組の制度を承認および(または)許容している」に明示的に言及していることによって十分に配慮されていることに留意するものである。
10.委員会は、条約第51条2項および前回の勧告(CRC/C/15/Add.91、パラ6および25参照)に照らし、締約国が、世界人権会議(1993年)のウィーン宣言および行動計画にしたがって留保を撤回するために留保の性質を見直すべきである旨を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が、同様の留保を撤回し、または条約に対していかなる留保も付さなかった他のイスラム教諸国に示唆を求めるよう勧告するものである。
立法
11.委員会は、たとえば委員会が勧告したように(CRC/C/15/Add.91、パラ33)最低婚姻年齢を18歳と定めた家族法の施行(2001年7月)を確保することによって国内法を条約と一致させるために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約に掲げられた規定および原則を全面的に遵守するために子どもの権利保護法(法律第9/91号)を改正する必要があることについての懸念をあらためて表明するものである。
12.委員会は、締約国が、条約を国内法に編入するとともに、子どもに関わるすべての国内法および行政規則が権利を基盤としたものとなり、かつ条約、その選択議定書ならびに他の人権文書および人権基準の規定および原則と一致することを確保するための努力を引き続き再検討しかつ強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が、「イスラム法の観点から見たモルディブ共和国におけるCRCの適用」に関する報告書でも勧告されているように子どもの権利保護法(法律第9/91号)を改正するための即時的措置をとるとともに、この法律ならびに子どもに関わるその他の法律および行政規則をもっとも効果的に実施するため、あらゆる必要な人的資源および財源を利用可能とするよう、勧告するものである。
13.刑事司法手続のあらゆる段階における子どもの被害者および証人の保護について、委員会は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20)に対して締約国の注意を喚起する。
国家的行動計画
14.委員会は、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」の採択を歓迎するものの、この行動計画を実施するためにとられた具体的措置およびその採択以降に達成された進展に関する情報がないことを遺憾に思う。
15.委員会は、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」をあらゆる段階で全面的かつ効果的に実施するために十分な人的資源および財源が提供されるよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、実施プロセスのあらゆる側面において、子どもを含む市民社会の幅広い参加を確保することも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、国家行動計画の実施、成果および評価に関する情報を次回の定期報告書で提供するよう、要請する。
調整
16.条約の実施に関して、委員会は、再編されたジェンダー・家族省に対して調整の主たる任務が委ねられていること、および、さまざまな関係者および利用可能な諸サービス間の調整を強化する目的で子どもの保護に関する多部門型作業部会も設置されたことに、関心をもって留意する。委員会はまた、諸環礁に子ども保護システム/センターを設置する計画があることにも留意するものである。
17.委員会は、締約国が、ジェンダー・家族省の再編を、その機能を強化する目的のみならず、条約の実施に関わるあらゆる活動の調整および評価のための単一かつ部門横断型の機構を設置する目的でも活用するよう、勧告する。このような機関に対しては、調整機関としてのその役割を効果的に遂行するための強力な権限ならびに十分な人的資源および財源が与えられるべきである。委員会は、締約国が、条約の実施の調整および評価に際し、市民社会の構成員、子どもの権利の専門家その他の専門家の関与を得るよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、地方段階における調整を強化する目的で、十分な人的資源および財源を有する子ども保護システム/センターを諸環礁に設置するための努力を加速させるよう、勧告するものである。
独立の監視
18.委員会は、2003年にモルディブ人権委員会が設置されたこと、および、人権委員会法改正(2006年)によりその権限が強化されたことを歓迎する。委員会は、人権委員会が人権侵害の訴えに関する苦情を受理する権限を有していることに、評価の意とともに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、人権委員会が直面している課題(完全に独立した地位の獲得および一部職種の採用に関わる困難を含む)に懸念とともに留意する。
19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) パリ原則(総会決議48/134付属文書)にしたがい、モルディブ人権委員会が、条約の実施を促進しおよび監視しならびに子どもを含む個人からの苦情を受理し、調査しおよびこれに対応するための完全に独立した監視機構となることを確保するための努力を、引き続き行なうこと。
  • (b) 人権委員会に対して十分な人的資源および財源が提供され、かつ、その関係者を対象とした、委員会の権限に関わる職務を遂行するための定期的な人権研修が行なわれることを確保すること。
  • (c) 人権委員会、とくに個人を対象としたその苦情申立て機構が子どもにとって容易にアクセスできるものであることを確保すること。
  • (d) 同委員会がパリ原則にいっそう一致すること、および、同委員会が国内人権機関国際調整委員会による認証を求めることを確保するため、とくに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の助言および援助を引き続き求めること。
20.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)を考慮するよう奨励する。
資源配分
21.委員会は、条約第4条に照らし、「利用可能な資源を最大限に用いて」子どものための予算資源の配分を行なうことに対して十分な注意が払われていないことを懸念する。委員会は、保健および福祉ならびに教育部門に対する締約国の最近の配分額が、割合としては減少していていることを遺憾に思うものである。
22.条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることによって、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どものための予算配分額を監視し、かつ子どもの実際のニーズの充足に関する効率性の水準を定義する目的で、子どもの権利の視点から、とくに社会部門に関わる予算の包括的再検討を行なうよう奨励するものである。
データ収集
23.委員会は、「モルディブ・インフォ」の設立を歓迎するとともに、国連児童基金(ユニセフ)と連携しながら子どもの状況に関する情報を収集するためにジェンダー・家族省が行なっている努力、および、とくにマレにおけるデータ収集の相当の改善に、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、条約で対象とされているすべての分野に関する全国的案データ収集システムが存在しないことから、とくに孤立した環礁に住む子どもとの関連で、十分な政策およびプログラムを採択し、かつ採択された政策の効果を評価する締約国の能力が制限されていることを、遺憾に思うものである。委員会は、十分な訓練を受けた要員が存在せず、かつ国の当局と児童福祉機関との調整が不十分であるためにデータ収集における進展が阻害されていることに、懸念とともに留意する。
24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約で対象とされているすべての分野についてのデータが収集され、かつ、当該データがたとえば年齢、性別ならびに都市部および遠隔地の別ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団(すなわち、十分なサービスが提供されていない地域に住んでいる子ども、障害のある子ども、婚外子、暴力、虐待および搾取の被害を受けた子ども、栄養不良の子ども、有害物質濫用の被害を受けた子ども、法律に抵触した子ども等)ごとに細分化されることを確保するため、子どもに関する全国的な中央データベースを設立し、かつ条約にしたがった指標を開発するための努力を強化すること。
  • (b) これらの指標および収集されたデータを、条約を実施するための政策およびプログラムの立案を促進する目的で活用すること。
  • (c) 関連の専門家集団を対象として、データ収集に関する研修を引き続き行なうとともに、国および地方のレベルで子どもの権利に関与するさまざまな政府機関および政府機構間の調整を強化すること。
  • (d) 現在進められているユニセフの国別協力プログラムに関して、ユニセフに対し、細分化されたデータの収集および管理を向上させるための技術的協力を引き続き求めること。
条約の普及/研修
25.委員会は、条約についての情報を普及するために締約国が行なっている努力(たとえば2005年のラマダーン月にクイズ番組形式で行なわれたもの)を心強く思う。しかしながら委員会は、子どもの市民的権利および自由ならびに国際人権基準一般の普及およびこれらに関する意識啓発を、体系的なかつ対象を明確にしたやり方で図るためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。委員会はさらに、締約国が第1回報告書および(または)委員会の総括所見を公刊せず、公衆一般の間で普及もしていないことを遺憾に思う。
26.委員会は、締約国が、子ども、その親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団の間で条約に関する情報を体系的に普及するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。委員会は、締約国が、専門家を対象として、条約の規定および原則ならびに国際人権基準一般に関する、対象の明確な定期的研修を行なうよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が、メディアに対して子どもの権利についての情報を普及するよう奨励し、このようなやり方で子どもの権利に関する公衆一般の意識を促進することも勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの市民的権利および自由に注意を払いながら、モルディブのすべての子どもに対して条約を入手可能としかつ周知させるための具体的措置をとるとともに、この点に関してユニセフと引き続き協力するよう、勧告するものである。
非政府組織との協力
27.ジャーニー(薬物依存者の回復を目的としてコミュニティを基盤とするアフターケアおよび再発防止の取り組みを行なう、モルディブで初めてのNGO)に対する金銭的および技術的支援のような、政府機関と非政府組織との連携の例には留意しながらも、委員会は、非政府組織との協力をさらに促進しかつ強化すべきであることに留意する。
28.委員会は、市民的権利および自由との関連も含めて条約の規定を実施する際のパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調し、非政府組織とのいっそう緊密な協力を奨励する。委員会は、締約国が、市民社会組織の設立を促進するとともに、条約実施のあらゆる段階を通じて、非政府組織(とくに権利を基盤とするもの)ならびに子どもともにおよび子どものために活動する市民社会のその他の部門の関与およびエンパワーメントをいっそう制度的に進めるよう、勧告するものである。
国際協力
29.委員会は、ジェンダー・家族省が家族および子どものために実施しているプログラムおよびプロジェクトの資金が、ほぼ完全にユニセフ、国連人口基金(UNFPA)、国連開発計画(UNDP)ならびにその他の国際的な政府間機関および非政府組織ならびに二国間パートナーによって拠出されていることに、留意する。
30.これとの関連で、委員会は、締約国が、国際的、地域的および二国間協力の枠組みにおける措置を引き続きとる一方、同時に、当該協力を通じ、条約実施のための制度的体制の強化に努めるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実施のために充てられる国際支援の金額および割合を年次ごとに明らかにするよう要請するものである。

2.子どもの定義(第1条)

31.締約国が子どもの定義に関する法定年齢および婚姻に関する最低法定年齢を16歳から18歳に引き上げたことには満足感とともに留意しながらも、委員会は、締約国の法律が、とくに刑事責任に関する最低年齢および就業が認められるための最低年齢に関して条約その他の関連の国際基準と全面的には一致していないことを懸念する。
32.委員会は、締約国に対し、子どもに関わるすべての分野について、とくに刑事責任に関する最低年齢および就業が認められるための最低年齢に関わって、明確に定義された最低年齢を法律で定めるよう促す。

3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
33.委員会は、婚外子が平等な権利を与えられておらず、かつ日常生活で事実上および法律上の差別に直面していることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの子どもが実父に関する情報への法的アクセスを否定されており、かつ、父の名を名乗ることも父方からの相続もできないことに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会はまた、現行の命名習慣によって婚外子にさらなるスティグマが付与されていることにも、懸念とともに留意する。
34.第2条にしたがい、委員会は、締約国が、その管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、とくに実父に関する情報へのアクセス、父親の姓に対する権利および父方からの相続に対する権利との関連で婚外子に対するいかなる差別も解消するため、締約国が法律を改正するよう勧告するものである。加えて委員会は、締約国に対し、婚外子のスティグマに終止符を打つために立法上、政策上および教育上の措置(感受性の強化および意識啓発を含む)を活用するよう奨励する。
35.男女平等の問題に対応するため、「モルディブ・ビジョン2020」等を通じて締約国が行なっている努力にも関わらず、委員会は、女性および男性の役割および責任に関する固定的態度が根強く残っていることにより、女子によるすべての人権および基本的自由の全面的享受がいまなお阻害されていることに、引き続き失望を覚える。とくに委員会は、一部の宗教的集団の間で女子を学校に行かせない傾向が強まっていることに、懸念とともに留意するものである。
36.委員会は、締約国が引き続き、女子が直面している諸問題に対応し、かつ女子および男子の平等に関するキャンペーンおよび住民の意識喚起を進めるよう、勧告する。委員会は、女子に対する差別を防止しおよび解消しならびにこの点についてコミュニティを指導するための努力を支えるうえで、地域の指導者、宗教的指導者その他の指導者がいっそう積極的な役割を果たすよう求めることを、提案するものである。委員会はまた、締約国が、とくに女性差別撤廃委員会から2007年1月に勧告されたように(CEDAW/C/MDV/CO/3、パラ17-18)学校における教科書および教材の開発を図ることによって、社会における女性の包摂的役割を促進することも、勧告する。
37.委員会は、障害のある子どもが直面している事実上の差別について依然として懸念を覚える。委員会は、障害のある子どもによる社会サービスおよび保健ケアサービスへのアクセスが限定されており、かつこのような子どものためのインクルーシブな教育の機会がきわめて少ないことに、懸念とともに留意するものである。加えて委員会は、社会的スティグマが障害のある子どもの取扱いに影響を及ぼし続けており、かつ社会に参加するこのような子どもの能力を制限しているという締約国の懸念を共有する。
38.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮しながら、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しかつ禁止するとともに、法律第9/91号第5条および国内法のその他の関連規定を実施することによって、障害のある子どもが生活のあらゆる分野に全面的に参加する平等な機会を確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、あらゆる関連の政策立案および国家的計画に障害の諸側面を含めるよう勧告するものである。
39.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が行なった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの最善の利益
40.子どもの権利保護法(法律第9/91号)が条約第3条の精神を体現していることには留意しながらも、委員会は、国内の法律および政策においてこの原則に十分な注意が向けられておらず、かつ、子どもに関わる意思決定(たとえば監護に関する決定)においてこの原則が第一次的に考慮されてないことを、懸念する。委員会はまた、この原則の重要性に関する、政策立案者、立法者ならびに規定、規則および政策を執行する司法職員および行政職員の意識が低いことにも、懸念とともに留意するものである。
41.委員会は、締約国が、子どもに関わるすべての法律および実践に条約第3条を全面的に編入するとともに、子どもの最善の利益の原則の意味および実際の適用に関する意識啓発を図るよう、勧告する。委員会は、条約の主旨、すなわち子どもは自分自身の権利の主体であるという考え方が国内法に十分に反映され、かつ、子どもに関わるすべての意思決定(監護に関する決定を含む)において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するため、締約国が法律を批判的に見直すよう勧告するものである。
生命、生存および発達に対する権利
42.委員会は、婚外妊娠に対する強い社会的非難が不衛生な環境での妊娠中絶および嬰児殺の増加につながっていることを示唆する報告に、懸念とともに留意する。
43.委員会は、締約国が、条約第6条の全面的に実施に努めるとともに、婚外子の母親を支援する等の手段により、嬰児殺の防止および抑止ならびに婚外子である乳児を保護するための措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、婚外妊娠から生ずるいかなる悪影響も解消し、かつ社会の態度を変革する目的で、教育および意識啓発のプログラムを導入するよう勧告するものである。
子どもの意見の尊重
44.委員会は、少年司法の運営の際の議論に対するすべての当事者、とくに子どもの参加を促進する目的で締約国が家族会議を導入したこと、および、教育法案において、自己の教育に影響を与える決定への子どもの参加が奨励されていることに、評価の意とともに留意する。家族法(法律第4/2000号)において、子どもに対し、自己の権利に影響を及ぼす可能性があるいかなる手続においても意見を聴かれる権利が定められていることには留意しながらも、委員会は、法律と実務との間に乖離があることを懸念するものである。委員会は、司法手続において意見を聴かれる子どもの権利が基本的に監護事件に限られていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、モルディブにおける一般的慣行において子どもの表現の自由が奨励されていないことにも、懸念とともに留意するものである。
45.条約第12条に照らし、かつ、意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された委員会の勧告に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもに対し、その権利に影響を及ぼす可能性があるすべての手続、とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる行動(地方レベルにおけるものも含む)において意見を聴かれる権利をその子どもの年齢および成熟度にしたがって認める目的で、家族法(法律第4/2000号)の実施を強化するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 子どもの参加権に関する公衆の意識を高め、かつ家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重を奨励する目的で、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(とくに教員およびソーシャルワーカー)ならびに市民社会(コミュニティの指導者、宗教的指導者および非政府組織を含む)の関与を得ながら、体系的なアプローチおよび政策の発展に努めること。

4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録
46.出生登録データベースの設置および親の意識啓発等の手段により出生登録制度を改善しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、現行の出生登録制度が引き続き困難に遭遇していることに、懸念とともに留意する。
47.条約第7条に照らし、委員会は、締約国が、とくに出生登録の必要性について世論を敏感にしかつ動員するための努力を強化することならびに出生登録データベースおよび出生登録担当者の研修を発展させることによって、出生登録制度を引き続き改善するよう勧告する。当面、出生を登録されていない子どもおよび公式の身分証明書類を持たない子どもに対しては、適正な登録がなされるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスが認められるべきである。
宗教の自由
48.委員会は、締約国の憲法およびその他の法律規定が宗教的一体性を基礎としており、イスラム教以外のいかなる宗教の実践も禁じられていることに留意する。宗教の自由に関する特別報告者が2006年8月にモルディブを訪問した際の知見(A/HRC/4/21/Add.3参照)および締約国が条約第14条に付した留保を参照しつつ、委員会は、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利が全面的には尊重されかつ保護されていないことを懸念するものである。
49.条約第2条および第14条に照らし、委員会は、締約国が、宗教または信条を理由とするあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための措置をとり、かつ社会における宗教的寛容および対話を促進することにより、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するよう、勧告する。
結社および平和的集会の自由
50.委員会は、結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には全面的に保障されているわけではないことを懸念する。
51.委員会は、締約国が、条約第15条にしたがい、結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利の全面的実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、子どもたちに対し、自らが主導して団体を結成することを奨励するよう、勧告する。
情報へのアクセス
52.委員会は、国内外の多様な情報源からの情報および資料へのアクセスが、締約国の子どもにとって限られていることを懸念する。委員会は、環礁に図書館が設けられていないため、読み物への子どものアクセスがきわめて制約されていることに、特段の懸念とともに留意するものである。
53.委員会は、締約国が、多様な情報源、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的福祉ならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報源からの適切な情報に対する子どものアクセスを向上させるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、オンライン媒体等も通じ、環礁に住んでいる子どもが子ども向けの書物および雑誌にアクセスできるようにすることを、勧告するものである。
54.委員会は、締約国が、メディアに対し、子どもの権利(子どものプライバシー権を含む)を尊重しながらよりよい報道を行ない、かつメディア番組への子どもたち自身の参加を促進する目的でいっそう多くの子ども向け作品を制作することを奨励するよう、勧告する。
拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰
55.委員会は、新刑法案第44条で家庭、学校および施設における子どもの体罰が合法化される旨の情報について懸念を覚える。委員会はまた、条約第37条(a)に反し、締約国の適用可能な法律のもとで、第二次性徴期に達した者は笞打ちの対象とされる可能性があることも、深刻に懸念するものである。
56.新刑法案の検討状況に照らし、委員会は、締約国に対し、18歳未満のときに犯罪を行なった者がいかなる形態の体罰(犯罪に対する刑としての体罰を含む)の対象ともされず、かつ、家庭、代替的養護の現場および少年施設、学校ならびに職場環境における、しつけおよび規律としての体罰が法律で禁止されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会は、子どもが有する、人間の尊厳および身体的不可侵性の尊重に対する平等なかつ不可譲の権利に直接抵触するこの慣行を解消するため、締約国が、積極的な教育プログラムおよび研修プログラムならびに意識啓発キャンペーンなど、他の適切な措置をとるよう勧告するものである。最後に委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/C/GC/8)に対して締約国の注意を喚起する。

5.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

親の責任
57.委員会は、たとえば離婚率の高さによって引き起こされている家庭の不安定さが、効果的な子育てに悪影響を及ぼしてきたことを懸念する。
58.締約国は、条約第18条に照らし、とりわけ、親の指導および父母の共同責任に関する親(とくにひとり親)向けの研修を含む支援の提供を通じ、家庭に関する教育および意識を発展させる努力を強化するよう奨励される。
代替的養護および施設養護
59.委員会は、子どもの養護および保護に責任を負う公私のすべての施設、サービスおよび便益に関する基準を定め、かつ子どもの最善の利益の原則を強調する、「モルディブにおける18歳未満の子どものための施設およびグループホームについての指針」の起草を歓迎する。委員会は、2004年にビリンギリで新たな子どもホームが設立されたこと、および、ジェンダー・家族省がモルディブにおける養子縁組および里親委託(カファラ)について検討する実現可能性評価を実施したことに、留意するものである。委員会は、親および保護者が金銭的扶養を行なえないこと、離婚、別居および再婚によって家族構造が変化しつつあること、ならびに、家庭で子どもの虐待およびネグレクトが生じていることなどを含むいくつかの理由により、代替的養護を必要とする子どもの人数が増えていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、発展中である締約国の代替的養護制度が、これらの子どものニーズに対応するうえで複合的な課題に直面していることにも、懸念とともに留意するものである。
60.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもが代替的養護に措置されることを防止するための、学際的アプローチに基づいた包括的政策(適切な法律、家族への金銭的援助および補足的サービス制度を含む)を策定しかつ実施すること。
  • (b) 代替的養護(里親養護、入所型養護、その他の形態の代替的養護)への子どもの措置が、権限のある学際的専門家集団によって慎重に実施される、子どものニーズおよび最善の利益に関するアセスメントに基づいて行なわれることを確保すること。
  • (c) 恣意的な措置および裁量に基づく措置を避けるため、子どもを代替的養護に措置する旨の決定が、権限のある公的機関によってかつ法律に基づいて行なわれ、かつ司法審査の対象とされること、および、条約第25条にしたがって措置が定期的再審査の対象とされることを確保すること。
61.委員会は、条約で認められた諸権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払いながら、家族/コミュニティを基盤とする代替的養護のような伝統的里親養護制度を発展させるよう奨励する。最後に委員会は、親のケアを受けていない子どもに関する委員会の一般的討議(2005年9月)の際に採択された勧告(CRC/C/153、パラ636-689)に対して締約国の注意を喚起するものである。
暴力、虐待およびネグレクト、不当な取扱い
62.委員会は、締約国が子どもヘルプライン・サービスの設置を進めている旨の情報を歓迎する。委員会は、締約国における子どもに対する暴力、児童虐待(性的虐待を含む)および子どもの不当な取扱いの深刻な問題に対応するためにとられている措置が不十分であることを、遺憾に思うものである。委員会は、法的枠組みにおいて性的虐待からの全面的保護が提供されておらず、かつ挙証責任も被害者に転嫁されていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、ドメスティックバイオレンスがモルディブ社会で広く容認されていること、および、モルディブ法で家庭における体罰が明示的に禁じられていないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家が、子どもの虐待および不当な取扱いの事案を発見し、通報しかつ処理するための十分な訓練を受けていないこと、および、メディアが子どもの保護に関わる問題をセンセーショナルに取り上げ、被害者に付与されるスティグマおよび恥辱を悪化させていることに、懸念とともに留意する。
63.条約第19条その他の関連規定に照らし、かつ子どもと暴力に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/100、パラ866およびCRC/C/111、パラ701-745)を考慮に入れながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもに対するあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力(家庭における性的虐待を含む)を禁止する目的で、この問題の規模および性質ならびに子どもに対する暴力に対応するための法的措置の効果を評価する、家庭におけるドメスティックバイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび児童虐待についての全国的研究を行なうこと。
  • (b) 「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」の一環として、ドメスティックバイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび児童虐待を防止しかつこれに対応するための包括的な国家的戦略を策定するとともに、態度の変革に寄与する十分な措置および政策をさらに採択すること。
  • (c) 親ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家(教員、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカーおよび裁判官など)を対象として、子どもの虐待および不当な取扱いの発見、通報および処理に関する研修を行なうこと。
  • (d) 苦情を受理し、監視しおよび調査し(必要なときの介入を含む)、ならびに、虐待された子どもが法的手続で被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保しながら不当な取扱いの事案を訴追するための、効果的な手続および機構を設置すること。
  • (e) 暴力および虐待の被害を受けたすべての子どもが、十分なケア、カウンセリング、ならびに回復および再統合のためのサービスをともなう援助にアクセスできることを確保すること。
  • (f) 暴力、虐待および不当な取扱いの被害を受けた子どもの報道にメディアが前向きな形で関与することを奨励しかつ促進するとともに、メディアが子どものプライバシー権を全面的に尊重することを確保すること。
  • (g) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。
64.子どもに対する暴力に関する国連研究について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 南アジア地域協議(パキスタン、2005年5月19~21日)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書(A/61/299)に掲げられた全般的勧告および場面に応じた勧告を実施するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの関与を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。
  • (c) ユニセフ、OHCHRおよびWHOの技術的援助を求めることを検討すること。

6.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項))

障害のある子ども
65.委員会は、若干の関係者とともに国家障害政策を起草するために締約国が行なっている努力を心強く思う。しかしながら委員会は、障害を発見し、かつ障害のある子どもに早期介入サービスを提供するための努力が締約国では十分でない可能性があることを、懸念するものである。委員会は、十分かつ適切なサービス、財源および訓練を受けた専門の人材が存在しないことが、障害のある子どもがすべての人権および基本的自由を全面的に享受することに関わる重要な障壁であり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、利用可能なほとんどのサービスは標準化されておらず、かつ十分な監視および評価の対象ともされていないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会は、普通教育に包摂されている障害児の人数がきわめて限られていることを遺憾に思う。加えて委員会は、回復のためのサービスを提供している市民社会組織が十分な人的資源、技術的資源および財源を有していないことに、懸念とともに留意するものである。
66.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮しながら、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害のある子どもに関する十分な統計データを収集するとともに、社会における障害者の機会均等を促進する、障害に関する包括的かつ具体的な国家的政策を策定するにあたってそのような細分化されたデータを活用すること。
  • (b) 障害のある子どもが、十分なかつ標準化された社会サービスおよび保健サービス(早期介入サービス、心理サービスおよびカウンセリング・サービスを含む)ならびに十分な物理的環境、情報およびコミュニケーションにアクセスできるようにすること。
  • (c) 障害のある子どものためのサービスの質を監視しかつ評価するとともに、利用可能なすべてのサービスについての意識啓発を図ること。
  • (d) 公教育政策および学校カリキュラムがそのあらゆる側面において完全参加および平等の原則を反映することを確保するとともに、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。
  • (e) 島のコミュニティが独自のリハビリテーション・プログラムおよび親支援グループを設置することを奨励しかつ援助する目的で、CARE協会その他の市民社会組織と連携しながらコミュニティ・リハビリテーション・プログラム(CBR)を支援しかつ拡大すること。
  • (f) 医療従事者、準医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーのような、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家が十分に訓練されることを確保すること。
  • (g) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書に署名し、かつこれを批准すること。
  • (h) とくにユニセフおよびWHOとの技術的協力を追求すること。
健康および保健サービス
67.委員会は、拡大予防接種プログラムの成功を歓迎するとともに、5歳未満児死亡率および乳児死亡率の削減に関する締約国の進展に評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、マレと諸環礁間で削減率に相当の差があることに、懸念とともに留意するものである。ユニセフの支援を得てコミュニティ基盤型の栄養教育・発育監視システムが設けられていること、および、締約国が2015年までに低体重児の割合を半減させるというMDG〔ミレニアム開発目標〕を達成できる可能性が高い見込みであることは歓迎しながらも、委員会は、モルディブにおける子どもの栄養不良率が高いことを懸念する。委員会は、締約国が、世界のどこよりも地中海貧血症(遺伝性の血液疾患)の発生率が高い国のひとつとして知られていることに留意する。加えて、妊産婦保健ケアの質および利用可能性、伝統的医療慣行の蔓延、感染症によって引き起こされる脅威、ならびに、多くの小島における必須医薬品の欠乏が、懸念の対象となるところである。
68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施する目的で、適当な資源が保健部門に配分されること、ならびに、締約国が子どもの健康状態を向上させるための包括的な政策およびプログラムを策定しかつ実施することを確保すること。
  • (b) とくに産前産後保健に関わる良質なサービスおよび便益へのアクセスを保障することにより、乳児および5歳未満児の死亡を削減するための措置(助産婦および伝統的産婆の研修プログラムを含む)を引き続きとること。
  • (c) 健康的な摂食習慣の教育および促進を通じ、子どもの栄養状態を改善するための努力を強化すること。
  • (d) 国内全域の母子が良質なプライマリーヘルスサービスにいっそうかつ平等にアクセスできることを促進するとともに、とくにより小さな島々に住んでいる子どもが保健ケアおよびカウンセリングならびに必須医薬品にアクセスできることを確保する目的でコミュニティヘルスワーカーのネットワークを確立すること。
  • (e) 引き続き、地中海貧血症の子どもに十分な治療および保健サービス(移動保健班の活用等によるものも含む)を提供し、かつ、地中海貧血症の治療にかかる高額の負担をまかなえるよう家族その他の養育者に対して金銭的支援を提供すること。
  • (f) 引き続き、この問題に関してとくにWHOおよびユニセフと協力し、かつその技術的援助を求めること。
思春期の健康
69.全般的に、委員会は、締約国において青少年の性的な発達、行動、関係および態度に関する知識が限定されていることを懸念する。委員会は、望まない妊娠および早すぎる妊娠を防ぐ方法ならびに性感染症(STI)の予防方法に関する情報およびサービスについての知識およびこれへのアクセスが限られていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、親の同意を得ずに法律上および医療上の相談を行なうことができる年齢が18歳であることも遺憾に思う。
70.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年、CRC/GC/2003/4)を考慮しながら、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 青少年の性的な発達、行動、関係および態度も含む包括的な全国的若者研究を実施するとともに、この研究の結果に基づき、青少年に対し、そのプライバシーを尊重しながら、適合を図った、かつ若者に配慮した保健サービスおよびカウンセリングを提供すること。
  • (b) 学校および青少年が頻繁に訪れる他の適当な場所で青少年の健康を促進する(性教育およびリプロダクティブヘルス教育も含む)とともに、教員が性およびリプロダクティブヘルスに関わる問題について話し合うための十分な訓練を受けていることを確保すること。
HIV/AIDS
71.委員会は、包括的な「国家AIDS統制プログラム」が1987年に開始されたこと、および、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」において、とくに、乳児および青少年のHIV/AIDS感染件数を削減し、かつ、同世代による、とくに若者に向けたHIV/AIDS情報にアクセスできるようにすることが目指されていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、HIV/AIDSおよびその予防に関する意識啓発のために締約国がイスラム問題最高評議会と共同で行なっている努力にも、評価の意とともに留意するものである。締約国におけるHIV/AIDS有病率が低いことには留意しながらも、委員会は、移動性の高さ(教育および就労の目的で国外に行くモルディブ人が多い)、薬物濫用の増加、国外観光旅行の成長および観光労働者の増加、ならびに、環礁における保健サービスへのアクセスの制約のような、既存のリスク要因について懸念を覚える。
72.委員会は、締約国が、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(注1)を考慮しながら、以下のを措置をとるよう勧告する。
  • (a) HIV/AIDSの罹病および拡散を防止するため、「国家AIDS統制プログラム」を実施するための努力を強化すること。そのための手段としては、たとえば、前述した既存のリスク要因のすべてに対応するため同プログラムを改訂すること、および、青少年に対し、学校および青少年が頻繁に訪れる他の場所において、HIV/AIDS、その感染経路、治療および予防措置に関する正確かつ包括的な情報を提供することなどが挙げられる。
  • (b) 子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保するとともに、子どもが、要請があるときは子どものプライバシーが全面的に尊重される、子どもに配慮した、かつ秘密が守られるHIV/AIDSカウンセリングにアクセスできることを確保すること。
  • (c) とくにUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕、WHOおよびUNFPA〔国連人口基金〕の技術的援助を求めること。
生活水準
73.委員会は、モルディブにおける貧困削減のための締約国の努力が功を奏していることを心強く思うとともに、「ビジョン20/20」、第7次国家開発計画および第1次貧困削減戦略文書(PRSP)を含む、住民の生活水準を向上させるための国家的な諸戦略および諸計画が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、締約国が、世界銀行と連携しながら、貧困下で暮らしている子どものニーズに対応する社会的セーフティネット・プログラムを策定中であることにも留意するものである。しかしながら委員会は、所得水準の地域格差が大きく、北部環礁が経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域であることを懸念する。委員会はまた、子どもの多い世帯が最貧層に属していること、および、多くのセーフティネット・プログラムが、しばしば臨時に実施されかつ戦略枠組みを欠いており、低所得家庭に保護を提供できていないことにも、留意するものである。
74.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに、マレと諸環礁との間にある地域格差および北部環礁と南部環礁との間で増大しつつある格差に対応することにより、効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分すること。
  • (b) とくに、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を実施しかつ監視する能力の増進を図ることにより、貧困下で暮らしている住民の生活水準に対応するための努力を強化すること。
  • (c) セーフティネット・プログラムに対する年間支出を増加させ、かつもっとも脆弱な立場に置かれた集団を対象とするセーフティネット・プログラムを開発することにより、貧困下で暮らしている子どもおよび家族の支援を目的とした、使途指定による資金および具体的援助を提供するための努力を強化すること。
  • (d) 貧困下で暮らしている子どもに対し、社会サービス、保健サービス、教育および十分な住居へのアクセスが提供されることを確保すること。
  • (e) 貧困下で暮らしている子どもに対し、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減プログラムを計画しかつ実施する際に、意見を聴かれかつ意見を表明する機会を提供すること。

7.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
75.委員会は、2004年12月のインド洋津波によってモルディブの数百の学校(学校用家具、校内設備および書籍を含む)が損壊したことを認知する。委員会は、国際社会、国連専門機関(とくにユニセフおよびユネスコ)、ドナー諸国、非政府組織および地方コミュニティと連携しながら、学校の再建および整備のために迅速な措置がとられたことについて、締約国を称賛するものである。
76.委員会は、人が住んでいるすべての島で無償の初等教育が利用可能とされており、かつ初等学校就学率および識字率が高いことに、満足感とともに留意する。締約国が法律で初等教育を義務化しようとしていることには留意しながらも、委員会は、この点に関わる立法プロセスに時間がかかっていることを遺憾に思うものである。委員会は、バウチャー・プログラムが実施されているにも関わらず、教科書および学校用制服の費用が低所得家庭にとって負担となっており、教育に対する子どもの平等なアクセスを危うくしていることに、懸念とともに留意する。中等教育に関して、委員会は、その利用可能性が限られており、かつ就学率がいまなお満足のできる水準に達していないことを懸念するものの、2010年までにすべての子どもが中等学校にアクセスできるようにするために締約国が行なっている努力を心強く思うものである。委員会は、職業教育が国家的優先課題のひとつに位置づけられており、かつ2006年から中等学校の選択科目として導入されたことに留意する。委員会は、学校で不適切な行動をした子どもが最後の手段として退学させられる可能性があることを、懸念するものである。
77.委員会は、学校教科書、カリキュラムおよび学校運営においてジェンダーに関わる先入観および固定観念が見られること、ならびに、適切な衛生設備(男女別のトイレを含む)が設けられていないことにより、教育、とくに中等学校への女子の完全参加が阻害されていることを懸念する。
78.条約第28条に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を引き続き配分するよう、勧告する。
  • (a) 初等教育を義務化する目的で教育法の承認および制定を急ぐとともに、7年間の初等学校の枠を超えて義務教育を拡大することを検討すること。
  • (b) たとえば追加的費用をまかなうためのバウチャー・プログラムを強化することにより、すべての子どもがいかなる金銭的障害もなく平等に教育にアクセスできることを確保すること。
  • (c) 学校教科書からジェンダーに関わる先入観および固定観念を取り除き、かつすべての学校で女子用の衛生設備が整備されることを確保するとともに、学校管理者および学校職員を対象としてジェンダー研修も行なうこと。
  • (d) たとえば寄宿学校の設備を提供することにより、中等教育の利用可能性および中等教育就学率を高め、かつ中等教育へのアクセスを促進するための漸進的措置を引き続きとること。
  • (e) 中等学校段階における職業訓練の便益を拡大すること。
  • (f) 教育に対する子どもの権利を確保する目的で、退学以外の手段で子どもを懲戒する方法および手段を見出すこと。
  • (f)〔ママ〕 教育部門をさらに改善する目的で、とくにユネスコおよびユニセフとの協力を追求すること。
79.委員会は、ユニセフの乳幼児期発達プログラムに留意するとともに、子どもの約半数が初等前教育施設に就学していることに留意する。委員会は、マレと諸環礁との間に初等前教育へのアクセスに関する地域格差があること、初等前教育が非公式なものとして位置づけられていること、および、訓練を受けた教員が欠乏していることに関する締約国の懸念を共有するものである。
80.委員会は、締約国に対し、初等前学校教育の位置づけを公式なものとし、かつすべての子どもが乳幼児期教育にアクセスできるようにするよう、奨励する。委員会は、締約国が、乳幼児期における子どもの権利の実施に関する委員会の一般的意見7号(CRC/C/GC/7)を考慮に入れることにより、就学前教育施設および早期の学習機会に関する親の意識および動機を高めるとともに、乳幼児期教育を促進し、発展させ、かつ調整する(教員の養成および研修を含む)ための全国的機構を設置するよう、勧告するものである。
教育の目的
81.「良質教育プログラム」、および、ユニセフによる教員リソースセンターの設置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、訓練を受けていない教員の割合が高いために教育の質に深刻な影響が生じていること、および、政府立学校とコミュニティ学校およびマレの学校と諸環礁の学校との間に地域格差があることに、懸念を表明する。委員会はまた、人権教育がカリキュラムの不可欠な一部とされていないことにも、懸念とともに留意するものである。
82.条約第29条に照らし、かつ教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 教員を対象として適切な着任前研修および現職者研修を行なうことを通じ、マレおよびすべての諸環礁の政府立学校およびコミュニティ学校のいずれにおいても教育の質を向上させるための努力を、さらに強化すること。
  • (b) 教員に対してしかるべき生活賃金を確保するとともに、たとえばメディアを通じて教育職の世評を高めるように努めること。
  • (c) すべての教育段階の公式カリキュラムに人権教育、とくに子どもの権利に関する人権教育を含めること。
  • (d) とくにユネスコ、ユニセフおよび非政府組織との技術的協力を引き続き追求すること。
余暇、レクリエーションおよび文化的活動
83.委員会は、子どものスポーツおよび文化的活動を推進するために青少年スポーツ省がとっている措置にも関わらず、子どもの遊び、休息および余暇が締約国において全体的には支持されていないことを懸念する。
84.条約第31条に照らし、委員会は、締約国に対し、休息、余暇および遊びに対する子どもの権利の実施(子どものための遊び場の創設を含む)に対していっそうの注意を払いかつ十分な資源(人的資源および財源の双方)を配分するよう、奨励する。委員会は、締約国が、親その他の養育者を対象として、子どもの遊びの奨励を目的とした、創造的遊びおよび探索的学習の価値に関する研修を行なうよう、勧告するものである。

8.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条および第30条)

経済的搾取(児童労働を含む)
85.委員会は、モルディブが国際労働機関(ILO)への加盟およびILO諸条約の批准を検討している旨の、締約国から提供された情報に留意する。14歳未満の子どもの雇用が一般的に禁じられている(法律第9/91号)ことに関わりなく、委員会は、児童労働の使用を防止し、かつ経済的搾取、とくに危険な労働から子どもを保護する法的枠組みが存在しないことに、懸念とともに留意するものである。しかしながら委員会は、新たに作成された労働法案が2006年2月に議会に提出されたことに留意する。
86.経済的搾取から子どもを保護する法的枠組みが存在しないことから、委員会は、職を求めてまたは家事労働者として働くために諸環礁からマレへやってくる子どもが多いことを深刻に懸念する。加えて委員会は、マレにおいて中等教育を提供する寄宿学校の数が不十分であることから、子どもが家庭に寄宿し、かつ部屋および食事の対価として家事を行なうことを余儀なくされていることに、懸念とともに留意するものである。
87.条約第32条その他の関連条項にしたがい、委員会は、締約国に対し、ILOに加盟し、かつ就業が認められるための最低年齢(第138号)ならびに最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動(第182号)に関する両ILO条約を批准するとともに、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 労働法の承認および制定を速やかに進めるとともに、労働法の規定が、条約の規定および原則ならびに最低就労年齢および労働条件に関する国際労働基準に全面的に一致することを確保すること。
  • (b) 新労働法の規定で、この〔児童労働の〕現象がより蔓延しているインフォーマル部門で働く子どもも対象とされることを確保すること。
  • (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないこと、および、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限が労働監察制度に与えられることを保障する目的で、労働監察制度を改善すること。
  • (d) 学業中の子どもがマレにおける家庭寄宿の対価として経済的な搾取および虐待の対象とされることを防止するため、子どもが適切かつ良質な寄宿学校および安全なかつ監視の対象とされる家庭寄宿にアクセスできるようにするとともに、マレ以外の他の環礁に寄宿学校施設を建設すること。
  • (e) ILO/IPEC〔児童労働撤廃国際計画〕の技術的援助を求めること。
麻薬および向精神薬の不法な使用
88.委員会は、モルディブにおいて薬物依存の問題が急速に拡大しつつあることを深刻に懸念する。委員会は、薬物を最初に使用する平均年齢は12歳であるものの、それより幼い子どもでさえ薬物の使用を開始していることがわかっていること、および、とくに、多くの子どもが最初に使用する薬物がヘロインであることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、子どもの薬物依存の問題に対し、子どもを被害者ではなく犯罪者として扱うことによって対応しようとする締約国のアプローチを遺憾に思う。委員会はまた、現在のところ、16歳未満の子どもがとくに関わる薬物濫用問題に対応する権限を国家麻薬統制局(NNCB)が有しておらず、かつ、麻薬および向精神薬を使用する子どものための、とくに子どもを対象とした回復・再統合サービスが存在しないことも、遺憾に思うものである。加えて、麻薬を使用する子どものハイリスクな性的行動、および、麻薬に関連した集団的暴力は、深刻な懸念の理由となる。
89.条約第33条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 薬物を誤用する子どもへの、より子どもに配慮した回復志向のアプローチをとる目的で、麻薬および向精神薬に関する国内法を見直しかつ改訂すること。
  • (b) 麻薬の不法な使用から子どもを保護し、かつこのような物質の不法な取引における子どもの使用を防止するため、あらゆる適当な措置(行政上、社会上および教育上の措置を含む)をとること。
  • (c) 薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもに適合した、再統合および回復のための学際的なプログラムを緊急に導入すること。
  • (d) 子どもに伝えられる情報を強化するために家族およびコミュニティも包摂した、子どもをとくに対象とする防止プログラムを導入すること。
  • (e) 刑事的措置に限られるのではなく、青少年間の薬物に関連する集団的暴力および犯罪の根本的原因にも対応する包括的な戦略(周縁化された青少年を社会的に包摂するための政策も含む)を採択すること。
  • (f) とくに国連薬物犯罪事務所(UNODC)、ユニセフおよびWHOの指導および技術的援助を求めること。
性的搾取
90.観光がモルディブにおける主要な収入源であることに照らし、委員会は、子どもが児童買春および児童ポルノを含む性的搾取の被害を受けやすくなる可能性があること、および、性的搾取を防止しかつ犯罪化するための法的枠組みが不十分であることを、懸念する。たとえば委員会は、ひとり暮らしをしている子どもまたはマレを訪問する子どもがさまざまな形態の搾取の被害を受けやすいことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、とくに国外居住労働者が関与している場合に、子どもの性的搾取に関する通報が不十分でありかつ選択的に行なわれていることにも留意する。委員会は、ポルノグラフィーの製造、頒布および所持が一般的に禁じられていることに留意するものの、児童ポルノを禁じた具体的な法規定が存在しないことを遺憾に思うものである。
91.委員会は、警察の家族・子ども保護部(FCPU)が子どもの性的搾取に関わるすべての事件に対応していることに評価の意とともに留意するものの、FCPUが置かれているのがマレに限られていること、および、環礁警察署では子どもの性的搾取、児童買春および児童ポルノの重大事犯を発見しかつこれに対応する資源が限られており、かつそのための訓練も不十分であることに、懸念とともに留意する。
92.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、適切な政策および措置(性的搾取の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進することも含む)を立案しおよび実施し、ならびに、被害を受けた子どもの犯罪化を回避する、より焦点が絞られた方法で子どもの性的搾取を防止しおよびこれと闘う目的で、締約国が、子どもの性的商業的搾取に関する全国的研究を行なうよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、第1回(ストックホルム、1996年)および第2回(横浜、2001年)の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮するよう、奨励するものである。
93.委員会は、締約国が、地域におけるセックス・ツーリズムの増加のような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、旅行および観光における性的商業的搾取からの子どもの保護に関して世界観光機関が定めた行動規範の遵守を向上させる目的で、この点に関するモルディブ観光振興委員会(MTPB)および観光業者と引き続き連携するよう、勧告する。
94.委員会は、締約国が、全環礁の警察に対して十分な資源および訓練を提供することにより、性的搾取の事件を捜査するための努力を強化するよう勧告する。最後に委員会は、締約国に対し、インターネット上の児童ポルノについてのインターネット・サービス・プロバイダの義務に関する特別法の採択を検討するよう、奨励するものである。
搾取目的の子どもの人身取引
95.委員会は、子どもの人身取引はモルディブでは問題となっていないという見解を締約国が根強く維持していること、および、この点に関する防止措置(立法上の措置を含む)がとられていないことを遺憾に思う。
96.委員会は、締約国に対し、モルディブにおける子どもの人身取引の規模、性質および態様変化に関する調査研究を実施し、かつ包括的な統計データを提供するよう、促す。委員会はまた、締約国が、人の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に定められたあらゆる形態の人身取引を犯罪化する目的で、包括的な人身取引禁止法を制定することも勧告するものである。
少年司法の運営
97.委員会は、締約国が少年司法の運営の改革中である(少年司法法を起草する計画も含む)こと、ならびに、締約国が「家族会議」プログラムを導入したことおよび警察署内に家族・子ども保護部を設置したことに、留意する。委員会はまた、締約国が、ユニセフの支援を得て、アッドゥの少年裁判所および警察署に少年司法の運営に関するデータベースを設置し、さらに、収集されたデータをこれらのデータベース内で分類しかつ細分化していることにも留意するものである。委員会はまた、国家刑事司法行動計画(2004~2008年)にも留意する。
98.これらの前向きな措置がとられたにも関わらず、委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。
  • (a) 少年司法の運営が、依然として、法律に抵触した子どもの更生および再統合のための措置を提供する修復的モデルではなく、処罰および拘禁の原則に基づいて行なわれていること。
  • (b) 刑事責任に関する最低年齢(10歳)が依然として低すぎること。
  • (c) 7歳以上の子どもがハッド罪に問われる可能性があり、したがって死刑の対象とされる可能性があること。
  • (d) 犯罪に対する刑としての体罰および懲戒目的の体罰が合法とされていること。
  • (e) 家族会議プログラムが導入されたにも関わらず、自由の剥奪に代わる措置および刑の選択肢が用意されていないこと。
  • (f) 少年裁判所がマレにしか設けられておらず、かつ訓練を受けた少年裁判官がいないこと。
  • (g) 現行の少年司法規則が、刑事手続の際の子どもの聴聞について規定していないこと。
  • (h) 家族会議の結果または裁判所の決定に如何に関わらず、学校が、教育省の定めた規則を遵守する必要性から、法律に抵触した子どもを退学させることを余儀なくされていること。
  • (i) 子どもがドゥーニドゥ拘禁センターにおいてきわめて劣悪な環境で拘禁されていること。
99. 委員会は、締約国が、委員会が新たに採択した少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(CRC/C/GC/10)を考慮しながら、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)のような、この分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 少年司法法を起草しかつ制定するための努力を加速させるとともに、この法律の規定が条約および少年司法の運営に関する他の国際基準の規定および原則と全面的に一致すること(刑事司法手続の際の子どもの聴聞も含む)を確保すること。
  • (b) 自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられることを確保するため、地域奉仕命令、家族会議および修復的司法介入のような代替的措置の包括的システムを引き続き発展させかつ実施すること。
  • (c) 刑事責任に関する最低年齢を少なくとも12歳まで引き上げること。
  • (d) 18歳未満の者が行なったハッド罪について死刑を廃止すること。
  • (e) 犯罪に対する刑としての体罰および懲戒目的の体罰の使用を廃止すること。
  • (f) 十分な訓練を受けた専門家(専門の裁判官、検察官および警察官など)を擁する専門の少年裁判所を可能なかぎり設置するとともに、移動裁判所の設置を検討すること。
  • (g) 法律に抵触した子どもが教育にアクセスできるようにするため、教育省が定めた規則を見直すこと。
  • (h) 法律に抵触した子どもを対象とする拘禁施設および行刑施設の環境を改善するための効果的な措置をとるとともに、子どもに対し、成人とは別の拘禁施設を用意すること。
  • (i) 拘禁環境の独立した監視、および、苦情申立て、調査および執行のための効果的な機構へのアクセスを確保すること。
  • (j) UNODC、ユニセフ、OHCHRおよび非政府組織も参加する国連・少年司法に関する機関横断パネルの技術的援助を求めること。

9.子どもの権利条約の選択議定書

100.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書が2004年6月以降、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書が2007年1月以降、期限を過ぎても未提出であることを想起するよう求める。委員会は、定期的なかつ時宜を得た報告実践の重要性を強調するものであり、したがって、これらの報告書を速やかに(可能であれば、審査プロセスを容易にするために同時に)提出するよう奨励する。

10.フォローアップおよび普及

フォローアップ
101.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会および国民議会(マジリス)の構成員ならびに適用可能なときはすべての環礁に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
102.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

11.次回報告書

103.委員会は、締約国に対し、2011年9月12日(すなわち第5回定期報告書の提出期限の18か月前)までに第4回・第5回統合定期報告書を提出するよう慫慂する。これは、委員会が毎年多数の報告書を受領することを理由とする例外的措置である。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。
104.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された、国際人権条約上の報告に関する統一指針(HRI/MC/2006/3 and Corr.1)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、コア・ドキュメントを提出することも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年4月20日)。/前編・後編を統合(10月20日)。