総括所見:オーストラリア(第4回・2012年)


CRC/C/AUS/CO/4(2012年8月28日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2012年6月4日および5日に開かれた第1707回および第1708回会合(CRC/C/SR.1707 and 1708参照)においてオーストラリアの第4回定期報告書(CRC/C/AUS/3-4〔ママ〕)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合(CRC/C/SR.1725参照)において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがって提出された締約国の第4回定期報告書(CRC/C/AUS/4)、および、委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/AUS/Q/4/Add.1)を歓迎する。委員会は、締約国の多部門型代表団との建設的対話を評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/AUS/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/AUS/CO/1)に基づく締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

4.委員会は、以下の立法措置がとられたことを積極的対応として歓迎する。
  • (a) 締約国のすべての法律について、その可決前に、オーストラリアが加盟している7つの中核的国際人権文書で認められまたは宣言された人権および自由との両立性評価が行なわれなければならないと定めた、2011年・人権(議会精査)法(2011年)。
  • (b) 子どもが双方の親と意味のある関係を持つ権利を、これが安全である場合には引き続き促進する一方で、家族法制度における子どもの安全を優先させる、2011年・家族法改正(家族間暴力およびその他の措置)法(連邦法)。
  • (c) 乳幼児期の教育およびケアについて国レベルの質的枠組みを定めた、2010年・教育およびケアサービス国家法。
5.委員会はまた、以下の文書の批准またはこれへの署名も歓迎する。
  • (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2007年)。
  • (b) 拷問および他の〔残虐な、〕非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2009年)。
  • (c) 障害のある人の権利に関する条約(2009年)。
  • (d) 障害のある人の権利に関する〔条約の〕選択議定書(2009年)。
  • (e) 女性に対する〔あらゆる形態の〕差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2008年)。
6.委員会はまた、以下の制度的措置および政策措置も歓迎する。
  • (a) 「女性およびその子どもに対する暴力を減少させるための国家計画(2010~2022年)」(2010年)。
  • (b) 「オーストラリアの子どもの保護のための国家枠組み(2009~2020年)」(2009年)。
  • (c) 「国家乳幼児期発達戦略」(2009年)。
  • (d) 全国若者フォーラムの創設(2008年)。
  • (e) アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもに関わる「盗まれた世代への国家的謝罪」(2008年)および「忘れられたオーストラリア人およびかつての子ども移民への、総理大臣による国家的謝罪」(2009年)。
  • (f) 「不利な立場に置かれた先住民族の格差縮小のための国家的統合戦略」(2008年)。

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
7.前回の報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.268)を実施するための締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について十全な対応がとられていないことを懸念する。
8.委員会は、締約国に対し、第2回・第3回統合定期報告書についての総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないもの(とくに条約第37条(c)への留保、立法、調整、子どもの意見の尊重、結社の自由、体罰および少年司法の運営に関するもの)に効果的に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。
留保
9.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ8)にも関わらず、締約国が、条約第37条(c)に付された留保を撤回していないことを遺憾に思う。委員会は、当該留保の背景にある論理と条約第37条(c)の規定との間に矛盾はなんら存在しないように思われるため、第37条(c)に付された締約国の留保は不必要である旨の見解(CRC/C/15/Add.268、パラ7)を、あらためて繰り返すものである。委員会はさらに、締約国がその留保において表明している懸念については、 自由を奪われたすべての子どもが、「子どもの最善の利益に従えば成人から分離すべきでないと判断される場合を除き」成人から分離されるものとし、かつ子どもは「家族との接触を保つ権利を有する」と定めた第37条(c)によって十分に配慮されている旨の見解を、あらためて繰り返す。
10.委員会は、1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が留保の全面的撤回に向けた努力を継続しかつ強化するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ8)を、あらためて繰り返す。
立法
11.委員会は、条約の諸側面を実施するためのいくつかの法律を連邦および州のレベルで通過させる目的で締約国が行なってきた努力に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国の国内法において条約に全面的かつ直接の効力を与える包括的な子どもの権利法が国レベルでは引き続き存在しないこと、および、そのような法律を通過させた州が2つしかないことを、依然として懸念するものである。この文脈において、委員会はさらに、締約国が連邦制をとっていることから、このような法律が存在しない結果として領域全体における子どもの権利の実施に断片化および不整合が生じており、そのため、同様の状況に置かれた子どもが、どの州または準州に居住しているかによって権利の充足の度合いが異なるという事態に陥っていることに、留意する。
12.委員会は、締約国が、国内法および国内実務を条約の原則および規定と一致させ、かつ、子どもの権利が侵害された際に効果的救済措置が常に利用可能とされることを確保するための努力を強化するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ10)を、あらためて繰り返す。さらに委員会は、締約国が、条約および諸選択議定書の規定を全面的に編入し、かつ締約国の領域全域におけるこれらの規定の一貫した直接適用についての明確な指針を提示する、国レベルの包括的な子どもの権利法の制定を検討するよう勧告するものである。
調整
13.委員会は、2007年の政権交代後も、家族・住宅・コミュニティサービス・先住民族問題大臣が子どもの権利に関する国レベルの責任を引き続き負っている旨の、締約国の説明に留意する。しかしながら委員会は、連邦制によって、条約の一貫した実施のための活動の調整に関する実際的課題が生じており、その結果、締約国の州および準州における条約の実施に相当の格差がもたらされていることを、依然として懸念するものである。
14.委員会は、締約国が、条約の実施に責任を負う機関および省庁の政策および戦略の一貫性を領域全域で確保することについてオーストラリア連邦諸政府評議会に助言を提供する、十分な人的資源、技術的資源および財源を有する専門的な機関または機構の設置を検討するよう、勧告する。委員会はまた、家族・住宅・コミュニティサービス・先住民族問題省に対し、子どもの権利に関する調整責任を果たすための具体的権限、能力および資源が提供されるべきことも、勧告するものである。
国家的行動計画
15.「女性およびその子どもに対する暴力を減少させるための国家計画」、「オーストラリアの子どもの保護のための国家枠組み(2009~2020年)」および「国家乳幼児期発達戦略」の採択には留意しながらも、委員会は、条約を全体として実施するための包括的な国家的行動計画が存在しないこと、および、これらの計画の実施を連携させる明確な機構が設けられていないことを、依然として懸念する。
16.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を全般的に実現するための、かつ州および準州が同様の計画または戦略を策定するための枠組みとなりうる包括的戦略を、子どもおよび市民社会と協議しながら策定しかつ実施するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、この包括的な戦略および行動計画の実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告するものである。
独立の監視
17.委員会は、締約国のすべての州および準州において子どもコミッショナーまたは独立の監視機関が設置されていることを評価する。委員会はまた、締約国が、国家子どもコミッショナー(NCC)の設置のための法律を提出したことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、NCCに対して当初配分される支援が、とくに子どもからまたは子どもに代わって提出される苦情に対して十全かつ迅速な対応および救済を行なう実効的能力を与えられることとの関連で、その任務の全面的実現を確保するためには十分でないことを、懸念するものである。さらに委員会は、独立の立場から子どもの権利を監視する既存の機構および他の関連の制度に、アボリジナルおよびトレス諸島民の代表が十分に存在しないことを懸念する。
18.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)および条約第4条を考慮にいれながら、委員会は、国家子どもコミッショナーに対し、十分な人的資源、技術的資源および財源が提供され、かつ、子どもからまたは子どものために提出される苦情に子どもに配慮したやり方で迅速に対応することとの関連も含めて職務を効果的に遂行するために必要な免責が保障されることを確保するため、締約国が適切な措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民のコミュニティで子どもの権利が効果的に監視されることを確保するため、締約国が、国および(または)州/準州のレベルでこれらのコミュニティの子どもの問題を担当する副コミッショナーを任命することを検討するよう、勧告するものである。
資源配分
19.締約国が世界でもっとも豊かな経済国のひとつであり、かつ相当量の資源を子ども関連のプログラムに投資していることを心に留めつつ、委員会は、締約国が、国および州/準州段階の予算の策定および配分に関して子どもに特化したアプローチを用いていないことから、子どもに対する投資の効果および予算的観点からの条約の全般的適用状況を明らかにし、監視し、報告しかつ評価することが実務上不可能となっていることに、留意する。
20.子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議の際に委員会が行なった勧告に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、締約国が、国、州および準州の段階で子どものニーズを十分に考慮し、関連の部門および機関において子どもに明確な配分を行ない、かつ具体的な指標および追跡システムを備えた予算策定手続を確立するよう、勧告する。加えて委員会は、締約国が、条約の実施に充てられる資源の分配の有効性、妥当性および衡平性を監視しかつ評価するための機構を設置するよう、勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、積極的な社会上の措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえばアボリジナルおよび(または)トレス諸島民系の子どもならびに障害のある子ども)を対象とした戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保するよう、勧告する。
データ収集
21.委員会は、条約の実施に関連するデータの収集を向上させるためにオーストラリア統計局が行なっている継続的活動、とくに、子どもの発達およびその背景に焦点を当てた「オーストラリアの子どもに関する縦断的研究」および「先住民族の子どもに関する縦断的研究」を歓迎する。委員会はまた、「オーストラリア乳幼児期発達指標」、および、政府の資金により障害のある人々に提供されているサービスについての全国的に比較可能なデータの対照など、データ収集に関して締約国が進めている取り組みにも、積極的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、これらのデータが、民族性、子どもの難民、移民および国内避難民、子どもの虐待およびネグレクトならびに性的搾取の被害を受けた子どもといった、条約の重要な分野について細分化も分析もされておらず、かつ乏しいかまたは入手不可能であることを、依然として懸念する。
22.委員会は、締約国が、とくに特別な保護を必要としている状況に置かれた子ども別の細分化が可能になるような方法で条約のあらゆる分野に関するデータが収集されることを確保するために既存のデータ収集機構を強化するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ20)をあらためて繰り返す。この点について、委員会は、このようなデータにおいて18歳未満のすべての子どもが対象とされ、かつ民族性、性別、障害、社会経済的地位および地理的所在に特段の注意が払われるべきことを、具体的に勧告するものである。
普及、意識啓発および研修
23.委員会は、締約国が、自国の報告書および他の条約機関の報告書を司法長官のウェブサイトで利用可能とする取り組みを行なっていること、全国子ども・若者法律センターに資金を提供していること、および、全般的に人権教育を促進していることを、評価する。しかしながら委員会は、子ども、子どもとともにまたは子どものために働く専門家および一般公衆の間で条約に関する意識および知識が引き続き限られていることを、依然として懸念するものである。
24.委員会は、締約国が、提案されている国家人権教育行動計画の中核的目標のひとつに、子どもの権利に関する公衆教育を含めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、学校カリキュラム、および、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家を対象とする養成研修プログラムに、人権および条約に関する必修モジュールを含めることを検討するよう、勧告するものである。
国際協力
25.委員会は、締約国が、2016-2017年度の政府開発援助(ODA)の水準を現行の対国民総所得(GNI)比0.35%から0.5パーセントに引き上げる意図を有していることに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国の経済発展が先進的状況にあるにも関わらず、この水準が、GNPの0.7%をODAに支出するという国際合意目標よりも相当に低いことを遺憾に思うものである。委員会はまた、締約国が、すべてのODAプログラムが開発に対する人権基盤アプローチに一致することを求める具体的政策を定めていないことにも留意する。
26.委員会は、締約国に対し、持続可能な開発を確保し、かつすべての援助受領国が自国の人権法上の義務を履行できることを保障する目的で、可能な場合には子どもの権利に焦点を当てながら、開発援助に関するすべての政策およびプログラムについて一貫した人権アプローチをとるよう、促す。委員会は、締約国が、その際、援助プログラムに対する子どもの権利基盤アプローチを導入するとともに、当該援助受領国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう、提案するものである。さらに委員会は、締約国に対し、ODAに関する国際合意目標(対GNP比0.7%)を達成するためのロードマップの実施を加速するよう促す。
子どもの権利と企業セクター
27.委員会は、コンゴ民主共和国、フィリピン、インドネシアおよびフィジーなど、子どもが立退き強制、土地の収奪および殺害の被害を受けている国々での深刻な人権侵害にオーストラリアの鉱山会社が参加しかつ加担しているという報告について懸念を覚える。さらに委員会は、オーストラリア企業がタイで経営している漁業企業で国際基準に違反する児童労働および子どもの労働条件が見られるという報告について懸念を覚えるものである。さらに、オーストラリア鉱業協会による、持続可能な環境に関する自主的行動規範(「不朽の価値」)が存在することは認知しながらも、委員会は、オーストラリアの鉱山企業による直接間接の人権侵害を防止するうえで当該行動規範が不十分であることに、留意する。
28.「保護・尊重・救済」枠組み報告書を採択した2008年4月7日の人権理事会決議8/7および2011年6月11日の人権理事会決議14/7(いずれの決議も、ビジネスと人権との関係を模索する際に子どもの権利が含められるべきことに留意している)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 説明責任、透明性および人権侵害の防止を向上させる目的で、締約国の領域または海外で行なわれた人権(とくに子どもの権利)の侵害に関する、オーストラリア企業およびその子会社の法的責任を確保するための法的枠組み(民事法、刑事法および行政法)を検討しかつ修正するとともに、監視機構、調査体制およびこのような侵害の是正措置を確立すること。
  • (b) 子どもの権利の尊重、人権侵害の防止および人権侵害からの保護ならびに説明責任を確保する目的で、オーストラリア企業またはその子会社が活動している国々との協力を強化するための措置をとること。
  • (c) 子どもの権利侵害の発生を防止するための措置がとられることを確保する目的で、自由貿易協定の締結に先立って人権影響評価(子どもの権利影響評価を含む)が実施される慣行を確立するとともに、オーストラリア輸出信用機関が、海外投資を促進するための保険または保証を提供する前に、人権侵害のリスクに対処できるようにするための機構を設置すること。

B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
29.「オーストラリア国民――オーストラリアの多文化政策」および締約国の「反差別のための国家的パートナーシップおよび戦略」は歓迎しながらも、委員会は、人種差別全般が依然として問題となっていることに、懸念とともに留意する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。
  • (a) 基礎的サービスの提供およびこのようなサービスへのアクセス可能性の観点から、ならびに、刑事司法制度および家庭外養護の対象とされることが相当過剰であることも含め、アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもが深刻かつ広範な差別に直面していること。
  • (b) とくに子どもの保護、発達およびウェルビーイングの観点から「格差縮小」に掲げられた目標を推進するためのプログラムの有効性について、独立の評価が行なわれていないこと。
  • (c) 生徒の就学・出席促進措置として、学校を無断欠席している子どもの親について福祉給付金の懲罰的減額が認められていることも含め、締約国のノーザンテリトリー緊急対策法案(2007年)が懲罰的性質を有していること。
  • (d) アボリジナルおよびトレス諸島民に影響を与える政策立案、意思決定およびプログラム実施プロセスにおいて、当事者との協議および当事者参加が不十分であること。
  • (e) 性的指向またはジェンダーアイデンティティを理由とする差別からの保護を提供する連邦法が存在しないこと。
30.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもによる権利の享受に関して存在する格差を定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、差別的格差を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとるべきである旨の前回の勧告を、あらためて繰り返す。委員会は、その際、締約国が、意識啓発その他の差別防止活動を、このような活動を学校カリキュラムに統合し、かつ必要なときは脆弱な状況に置かれた子ども(アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもならびに非アングロサクソン系オーストラリア人の子どもを含む)のための積極的差別是正措置をとること等も通じて強化するよう、勧告するものである。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもおよびその家族によるサービスへのアクセスの格差に対応するため、緊急の措置をとること。
  • (b) 「格差縮小」に掲げられた各目標の、とくに子どもの保護、発達およびウェルビーイングの観点からの策定、計画、実施および見直しについて報告するため、「アボリジナル・トレス諸島民運営グループ」の設置および当該グループに対する資源の提供を検討すること。
  • (c) ノーザンテリトリー緊急対策法案(NTERB)(2007年)、とくにそこに掲げられた生徒の就学・出席促進措置について、NTERB上の措置が均衡のとれた、かつ形式および効果の両面で非差別的なものとなることを確保する目的で、徹底した評価を実施すること。
  • (d) アボリジナルおよびトレス諸島民に影響を与える政策立案、意思決定およびプログラム実施プロセスへの、当事者の効果的かつ有意味な参加を確保すること。
  • (e) 性的指向またはジェンダーアイデンティティを理由とする差別からの保護を提供する連邦法を制定すること。
子どもの最善の利益
31.委員会は、子どもの最善の利益の原則が広く知られておらず、かつ、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、この原則が適切に統合されておらず、かつ一貫して適用されていないことを懸念する。この文脈において、委員会は、庇護希望者、難民および(または)入管収容の状況下にある子どもの最善の利益の原則に関する理解およびその適用が不十分であることを、とくに懸念するものである。
32.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則が広く知られ、かつ、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいてこの原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、子どもの最善の利益に関する判断指針を示す手続および基準をすべての分野で策定するとともに、当該手続および基準を官民の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう奨励されるところである。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由もこの原則に基づくものであるべきであり、子どもの最善の利益の個別評価において用いられた基準を明らかにすることが求められる。委員会は、この勧告の実施にあたり、庇護希望者、難民および(または)入管収容〔の状況〕下にある子どもについての政策および手続において子どもの最善の利益が正当に優先されることを確保することに対し、締約国が特段の注意を払わなければならないことを強調するものである。
子どもの意見の尊重
33.委員会は、締約国が、政府、青少年部門および若者間のコミュニケーション回路としてオーストラリア若者フォーラムを設置したことを歓迎する。しかしながら委員会は、15歳未満の子どもおよび(または)アボリジナルまたはトレス諸島民系の子どもの意見を考慮するための場が引き続き不十分であることを、依然として懸念するものである。委員会はさらに、学校において、自己に影響を与える方針および意思決定への、意味がありかつエンパワーメントに基づいた子ども参加を促進するための機構が不十分であることを懸念する。さらに委員会は、締約国の1958年・移民法(連邦法)において、出入国管理官が、家族とともにやってきた子どもの事情聴取を家族とは別に行なうことを義務づける規定が設けられていないことを懸念するものである。
34.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、条約第12条にしたがい、意見を聴かれる子どもの権利の実施を引き続き確保するよう勧告する。委員会は、その際、締約国が、あらゆる行政段階ならびに家庭、コミュニティおよび学校(生徒評議会を含む)において、脆弱な状況下にある子どもに特段の注意を払いながら、意味がありかつエンパワーメントに基づいたすべての子どもの参加を促進するよう、勧告するものである。さらに委員会は、1958年・移民法において、移住プロセスのあらゆる段階で子ども(非正規移住の状況にある子どもを含む)の意見の尊重が保障されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。

C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録
35.委員会は、出生登録との関連でアボリジナルが直面している困難について懸念を覚える。とくに委員会は、識字水準の低さ、出生登録の必要性および利点に関する理解の欠如ならびに公的機関が提供する支援の不十分さから生じる、出生登録を妨げる要因が解決されていないことを懸念するものである。委員会はさらに、出生証明書に事務管理費が課されることが、経済的に不利な状況にある人々にとって追加的障害となっていることに、懸念とともに留意する。
36.委員会は、締約国に対し、出生登録の重要性に関するアボリジナル住民の意識を高め、かつ非識字者による出生登録の便宜を図るための特別な支援を提供する等の手段により、オーストラリアで生まれたすべての子どもが出生時に登録され、かつ登録の障壁となる手続的要因を理由として不利な立場に置かれる子どもがひとりも出ないことを確保するために、出生登録プロセスを子細に見直すよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、出生証明書を子どもの出生時に無償で発行するよう促すものである。
アイデンティティの保全
37.委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民の多数の子どもが家庭およびコミュニティから分離され、かつ、とくにその文化的および言語的アイデンティティの保全を十分に促進しない養護の対象とされていることを懸念する。委員会はさらに、親が締約国で市民権を放棄しまたは喪失した場合に子どもの市民権も取り消されうることに留意するものである。
38.委員会は、締約国が、自己のアイデンティティ、名前、文化、言語および家族関係に対するアボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの権利の全面的尊重を確保する目的で、国連自由権規約委員会および先住民族の人権および基本的自由の状況に関する特別報告者等からも勧告されたとおり、「彼らを家庭に」報告書の勧告の実施における進展を検討するよう、勧告する。条約第8条に関して、委員会はさらに、締約国が、いかなる子どもも、その親の地位に関わらずいかなる根拠によっても市民権を剥奪されないことを確保するための措置をとるよう、勧告するものである。
結社の自由
39.委員会は、一部の州および準州の地方立法において、グループで平和的に集まっている子どもおよび若者の警察による排除が認められていることに関する前回の懸念(CRC/C/15/Add.268、パラ73(e))をあらためて表明する。
40.委員会は、締約国が、若者が一部の場所に集まることに関連している可能性がある問題に、警察による対応および(または)犯罪化以外の措置によって対応するとともに、この点に関わる法律の見直しを検討するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ74(h))をあらためて繰り返す。
プライバシーの保護
41.委員会は、オーストラリア情報コミッショナー事務所が、子どもの個人情報の取扱いにおけるオーストラリア・プライバシー法の適用についての指針を明らかにしたことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国で、子どものプライバシー権を保護する包括的法律が定められていないことを懸念するものである。さらに、1998年・プライバシー法(連邦法)に基づき、プライバシー権侵害についての苦情を聴取する権限がオーストラリア情報コミッショナー事務所に与えられていることには留意しながらも、委員会は、子どもに特化し、かつ子どもにやさしい機構が設けられていないこと、および、利用可能な機構は政府機関および政府職員ならびに大規模な民間組織に対する苦情に限られていることを、懸念する。委員会はまた、ウェスタンオーストラリア州およびノーザンテリトリーの法律で「反社会的行動」を行なった者(未成年者を含む)の個人的詳細の公表が認められていることも含め、刑事手続に関与した子どものプライバシー保護が不十分であることも、懸念するものである。さらに委員会は、保健サービス、とくにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関するサービスを受けている子どものプライバシー権が確保されていないことを懸念する。
42.委員会は、締約国が、プライバシー権を掲げた包括的な国内法の制定を検討するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、プライバシー侵害に対する苦情を申し立てる子どもを対象とする、子どもに特化し、かつ子どもにやさしい機構を設置するとともに、刑事手続に関与した子どもの保護を強化することも促すものである。とくに委員会は、締約国に対し、2010年・禁止行為命令法(ウェスタンオーストラリア州)のような、罪を犯した子どもの詳細の公表を認めた法律を廃止するよう、促す。
体罰
43.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ36)にも関わらず、家庭ならびに一部の学校および代替的養護現場における体罰が、いわゆる「合理的な懲戒」という名目のもと、締約国全域で合法とされているままであることを遺憾に思う。
44.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ36)をあらためて繰り返す。
  • (a) すべての州および準州において、家庭、公立および私立の学校、拘禁センターならびに代替的養護現場における体罰を明示的に禁止するため、あらゆる適切な措置をとること。
  • (b) 体罰の悪影響に関する意識啓発を図りつつ、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律ならびに子どもの権利の尊重を促進することを目的とした意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを、子どもの関与を得ながら強化しかつ拡大すること。
45.加えて委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 「合理的な懲戒」が子どもの暴行の告発に対する抗弁として用いられないことを確保すること。
  • (b) 子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家(法執行官、医療専門家、教育専門家を含む)を対象として、子どもに対する暴力のあらゆる事案の速やかな発見、対応および通報のための研修が行なわれることを確保すること。
  • (c) ドメスティックバイオレンスと体罰との間に存在する可能性がある関係についての、独立の立場からの研究の実施を検討すること。
子どもおよび女性に対する暴力
46.委員会は、同国において女性および子どもに対する高い水準の暴力が蔓延していることに重大な懸念を覚えるとともに、ドメスティックバイオレンス、合法的な体罰、いじめおよび社会におけるその他の形態の暴力の共存が相互に関連しあっており、状況の段階的拡大および悪化が助長されている固有の危険性があることに留意する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) アボリジナルの女性および子どもがとくに影響を受けていること。
  • (b) 障害のある女性および女子の不妊手術が行なわれ続けていること。
  • (c) 被害を受けた子どもが家族と再統合した場合の監視システムが存在しないこと等の理由により、ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもの再統合プログラムが依然として不十分であること。
  • (d) 家族構成員が暴力の加害者である事案および(または)女性が被害者ではなく加害者である事案に注意が向けられておらず、かつこのような事案に関する具体的手続も設けられていないこと。
  • (e) 学校、インターネットその他の状況で行なわれる子どもへの暴力に対応するためにとられている既存の措置について、定期的かつ体系的な評価が行なわれていないこと。
47.条約第19条および第37条(a)に基づく締約国の義務、ならびに、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を強調しながら、委員会は、締約国に対し、暴力を減少させるための一般的枠組みとして連邦法を策定するとともに、州および準州段階における同様のかつ補完的な法律の制定を促進するよう、促す。委員会はまた、締約国が、「女性およびその子どもに対する暴力を減少させるための国家計画(2010~2022年)」に基づく規定を実際に運用するため、以下のような措置を含む具体的行動計画を採択することも、勧告するものである。
  • (a) アボリジナルの女性および子どもの間で高水準の暴力が振るわれることを助長する要因が十分に理解され、かつ国および州/準州の計画でこれらの要因への対応がとられることを確保すること。
  • (b) 障害の影響を受けており、かつ同意ができない女性および女子の不妊手術を防止するための厳格な指針を策定しかつ執行すること。
  • (c) ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもに対し、家族再統合と同時に効果的なフォローアップ支援を確保するための機構を設けること。
  • (d) いずれかの親または他の家族構成員が加害者である事案についての代替的対応を発展させること。
  • (e) 具体的諸計画のなかで、かつ「オーストラリアの子ども保護のための国家枠組み」の3か年行動計画の一環として、学校における体罰およびいじめ、インターネットを通じての暴力ならびにその他の場面における暴力を含む暴力対策の実施状況を監視すること。
48.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)に関して、委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。
  • (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。
    • (i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。
    • (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。
    • (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。

D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境
49.家族に提供される支援を強化しようとする締約国の継続的努力は歓迎しながらも、委員会は、養護を受けている子どもの人数が増え続けていること、および、保育の利用可能性および質が依然として不十分であることを懸念する。
50.委員会は、締約国が、すべての家族タイプおよびすべての子どもを対象として現在とられている措置の有効性を体系的に評価するよう、勧告する。委員会は、その際、締約国が、とくに民族、ジェンダー、社会経済的地位および地理的所在の別に細分化されたデータを収集し、かつ、養護措置の対象とされる子どもの割合の減少および(または)上昇と、これらの子どもの家族に提供されている措置との相関を明らかにするよう、勧告するものである。委員会はさらに、このような評価の知見が、現行の家族支援プログラムを強化するための適切な措置(良質な保育施設が利用できかつ過度な負担を求められないこと、家族援助給付が十分であること、および、最近承認された有給親休暇の取得資格が妥当であることを確保することも含む)を締約国が実施する際の指針としても散られるべきことを、勧告する。
家庭環境を奪われた子ども
51.委員会は、家庭外養護措置の対象とされる子どもの人数が相当に増加しており(2005年から2010年にかけて約51%増)、かつ、子どもの養護措置につながる基準および決定を記録した全国的データが存在しないことを、深く懸念する。委員会はまた、締約国の家庭外養護制度の不十分さおよびそこで生じている人権侵害について広く報告されていることも、深刻に懸念するものである。これには以下のものが含まれる。
  • (a) 子どもの不適切な措置。
  • (b) 養育担当者のスクリーニング、研修、支援およびアセスメントが不十分であること。
  • (c) 養護の選択肢の不足していること。家庭を基盤とする養育担当者への支援が貧弱であること、および、養護によって悪化する(または引き起こされる)精神保健上の問題が存在すること。
  • (d) 健康、教育、ウェルビーイングおよび発達の面で、養護を受けている若者にとっての成果が一般住民層の場合よりも芳しくないこと。
  • (e) 養護を受けている子どもの虐待およびネグレクト。
  • (f) 18歳に達して養護を離れる子どもに対して提供される、準備のための支援が不十分であること。
  • (g) アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもがしばしばコミュニティ外に措置されていること、および、これとの関係で、アボリジナルの養育担当者を増員する必要があること。
52.委員会は、締約国に対し、子どもの虐待およびネグレクトが大規模に行なわれている根本的原因を検討するためにあらゆる必要な努力を行なうとともに、子どもが養護措置の対象とされる理由についての全般的データを、このような子どもの人数を減少させる目的で当該理由への対応を行なうために明らかにするよう、促す。委員会はさらに、締約国が、とくに、家庭外養護措置の対象とされる子どもの人数を減少させる目的でもっとも脆弱な立場に置かれた家族を明確にし、かつ必要なときは家庭を基盤とする養護を優先させることにより、現行の家庭支援プログラムを強化するための措置をとるべきである旨の前回の勧告を、締約国に対してあらためて繰り返すものである。さらに委員会は、締約国に対し、代替的養護に措置されている子どもの状況を向上させるために必要なあらゆる人的資源、技術的資源および財源を提供するとともに、以下の措置をとるよう、求める。
  • (a) 条約第25条で求められているとおり措置の定期的審査を行なうとともに、その際、子どもの不当な取扱いの兆候にとくに注意を払うこと。
  • (b) 保育ワーカーおよび家庭外養護の養育担当者の選抜、研修および支援に関する基準を策定するとともに、これらの養育者の定期的評価を確保すること。
  • (c) それぞれの子どもが有する個別のニーズに対して効果的対応が行なえることを確保するため、ソーシャルワーカーを増員すること。
  • (d) 養護を受けている子どもに対し、保健ケアおよび教育への平等なアクセスを確保すること。
  • (e) ネグレクトおよび虐待の事案を通報し、かつ加害者に対して相応の制裁を与えるための、アクセスしやすく、効果的な、かつ子どもにやさしい機構を設置すること。
  • (f) 移行の計画に早い段階から関与できるようにし、かつ離脱後にも援助を利用できるようにすることにより、若者に対し、養護を離れる前に十分な準備の機会および支援を提供すること。
  • (g) 「先住民族の子どもの措置に関する原則」を全面的に実施するとともに、代替的養護を必要とする先住民族の子どものための適当な解決策を先住民の家族内で見出すため、先住民族のコミュニティ指導者およびコミュニティとの協力を強化するべきである旨の、委員会の前回の勧告を遵守すること。
養子縁組
53.委員会は、締約国の8か所の法域のうち、養子縁組前の養子(12歳以上)の同意を要件としている法域が3か所のみであることを懸念する。さらに委員会は、養子縁組手続が子どもの最善の利益を最高の考慮事項として進められていないことを懸念するものである。
54.委員会は、同意および養子縁組手続における法定代理人へのアクセスに関する規定を全面的に実施し、かつ養子縁組手続における決定が子どもの最善の利益を最高の考慮事項として行なわれることを確保するという、〔子どもの権利〕条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に基づく義務を遵守する目的で、締約国が、すべての州および準州が必要に応じて養子縁組法を改正することを確保するための措置をとるよう、勧告する。
虐待およびネグレクト
55.委員会は、子どもが双方の親と意味のある関係を持つ権利を、これが安全である場合には引き続き促進する一方で、家族法制度における子どもの安全を優先させることとした、国レベルの家族法の改正を歓迎する。しかしながら委員会は、ドメスティックバイオレンスの発生率が引き続き高いこと、および、子どもとともにまたは子どものために働く専門家(医師その他の医療従事者および教員を含む)による虐待およびネグレクトの可能性がある事案を認識しかつこれに対応するために締約国がとっている研修アプローチが依然として不十分であることに、留意するものである。
56.委員会は、脆弱性が高まった状況にある家族に支援を提供し、かつ、家庭における子どもの虐待およびネグレクトならびに暴力を防止しまたは緩和するため、締約国が早期介入アプローチ(出産前の機関における介入も含む)を優先させるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、このような早期介入アプローチを補完する形で、スティグマをともなわない模範的実務方針およびプログラム(虐待の被害を受けた子どもが、子どもの保護に関わる意思決定のさまざまな段階で、集中的な家族支援サービス等も通じ、家族と前向きに再統合できることを優先させかつ支援するもの)の全国的検証を行なうよう、勧告するものである。

E.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項))

障害のある子ども
57.委員会は、締約国が実施した、生産性委員会による障害者支援制度のアセスメント(2011年7月)を評価する。しかしながら委員会は、同委員会の知見に留意しつつ、現行の障害者支援制度は「十分な資金を得ておらず、不公正であり、断片化されていて非効率であるとともに、そこでは障害のある人々にほとんど選択権がなく、適切な支援に確実にアクセスできるという保障もなく、また障害のある子どもは、決定的に重要な時宜を得た早期介入サービス、人生の移行期の支援、および、家族または養育者の危機および崩壊を防止するための十分な支援をしばしば受けられていない」という懸念を共有するものである。さらに、締約国が5年をかけて障害児教育基準(2005年)を実施してきたことには留意しながらも、委員会は、障害のある子どもの教育到達度と障害のない子どものそれとの間に相当の格差があることを依然として懸念する。この報告書〔総括所見〕ですでに述べた非治療的不妊手術に関する懸念をさらに敷衍させる形で、委員会は、そのような不妊手術を禁止する法律が定められていないことが差別的であり、かつ障害のある人の権利に関する条約第23条(c)に違反していることを、深刻に懸念するものである。さらに委員会は、締約国の法律において、障害を理由として移民申請を却下することが認められていることを懸念する。
58.障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 障害のある子どもを、そのニーズに差別的ではない方法で効果的に対応するために速やかにかつ正確に特定する目的で、障害に関する明確な法律上の定義(学習障害、認知障害および精神障害に関するものを含む)を定めること。
  • (b) 障害のある子どもの養育に関する親のための支援措置を強化するとともに、そのような養護の措置が検討されるときは、当該検討が子どもの最善の利益の原則を全面的に顧慮しながら行なわれることを確保すること。
  • (c) 障害のある人の権利に関する条約にしたがった社会モデルアプローチを採用し、障害のある子どもが平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを阻害する態度面および環境面の障壁に対応するとともに、障害のある子どもとともにまたはこのような子どものために働くすべての専門家に対してしかるべき研修を行なうこと。
  • (d) とくに地方段階で必要な専門的資源(すなわち障害の専門家)および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうとともに、コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親支援グループを含む)を促進しかつ拡大すること。
  • (e) 障害のある子どもが教育に対する権利を行使できることを確保し、かつ、障害のある子どもを可能なかぎり最大限に普通教育制度に包摂する体制を整える(そのための手段には、資源に関わる現在の不備を具体的に明らかにするための障害児教育行動計画の策定を検討することも含む)とともに、障害のある子どもの教育上のニーズに対応するための措置の実施に関する、具体的日程をともなう明確な目標を定めること。
  • (f) 障害の有無に関わらず、すべての子どもの非治療的不妊手術を禁じる差別禁止法を制定するとともに、厳格に治療上の理由に基づく不妊手術が行なわれるときは、これが子ども(障害のある子どもを含む)の自由なかつ十分な情報に基づく同意の対象とされることを確保すること。
  • (g) 移民法および庇護法を含む締約国のすべての法律において、障害のある子どもが差別されず、かつ障害のある人の権利に関する条約第23条に基づく締約国の法的義務が遵守されることを確保すること。
健康および保健サービス
59.委員会は、締約国における子どもの健康水準が全般的に満足のいくものであることを評価する。しかしながら委員会は、農村部および遠隔地に住んでいる子ども、家庭外養護を受けている子どもならびに障害のある子どもの健康に関わる格差、ならびに、とくにアボリジナルの子どもと非アボリジナルの子どもとの間にある健康状態の相違について、懸念を覚えるものである。
60.委員会は、締約国が、脆弱な状況に置かれた集団に属する子ども(とりわけ先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子ども)にとくに注意を払いながら、すべての子どもが保健サービスに対する同一のアクセスおよび同一の質の保健サービスを享受できることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ48)を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国に対し、保健面で現在存在する欠陥の重要な根本的原因である社会経済的不利益に対処するよう、促すものである。
61.さらに委員会は、締約国が、すべての保健専門家を対象とした、子どもの権利に関する義務的研修の実施を支援するべきであるという、健康への権利に関する特別報告者の勧告を検討するよう、勧告する。
母乳育児
62.委員会は、子どもが生後6か月になるまで完全母乳育児を続ける母親がおよそ15%にすぎないことを懸念する。2007-2008年度予算で母乳育児の教育および支援に特別資金を配分した締約国の取り組みは歓迎しながらも、委員会は、締約国で「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」が効果的に執行されていないことを依然として懸念するものである。
63.委員会は、働く母親による産後6か月の完全母乳育児を支援するような改正を検討する目的で、締約国が、新たに定められた有給親休暇制度ならびに他の関連の立法上および行政上の措置を見直すよう、勧告する。委員会はまた、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」およびその後の関連決議を実施するための監視機構を設置することも勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、「国家母乳育児戦略」に十分な資金を提供し、かつ、「国家母乳育児戦略」の実施において利害関係者としての産業代表の参加を得る慣行を取りやめることにより、母乳育児の促進、保護および支援に優先的に取り組むよう、勧告する。締約国はまた、「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブをさらに促進し、かつ看護師研修に母乳育児を含めることを奨励するべきである。
精神保健
64.委員会は、精神保健に対する締約国の資金拠出水準が依然として他の先進諸国よりも相当に低いことから、精神保健サービスを求める子どもおよび若者が、そのようなサービスへのアクセスの制限およびサービスを受ける際の相当の遅延にしばしば直面していることを、懸念する。この文脈において、委員会は、オーストラリア保健福祉研究所が2010年に刊行した保健研究で述べられている、劣悪な精神保健は子どもおよび若者にとっての健康問題の筆頭であり、かつ0~14歳の子ども(23%)および15~24歳の若者(50%)の疾病負荷を助長する最大の要因である旨の懸念を、共有するものである。さらに委員会は、締約国全域で、とりわけアボリジナルのコミュニティで若者の自殺率が高いことを懸念する。委員会は、締約国のウェスタンオーストラリア州が、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)の治療のために現在用いられている薬の有効性を調査する研究を実施したことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、現行の診断手続では、これらの障害に関連する潜在的な精神保健上の問題への対応が十分に行なわれない可能性があり、その結果、ADHDおよびADDと診断される子どもの相当な増加および(または)このように診断された子どもに対する精神刺激薬の誤処方が生じていること(これは深刻な懸念の対象である)を、依然として懸念するものである。
65.子どもおよび若者にやさしい精神保健上の支援およびサービスへのアクセスが重要であることを強調し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもおよび若者の精神保健上の問題が高い割合で発生していることの直接間接の原因に対応するための措置をとることにより、オーストラリア保健福祉研究所の保健研究をフォローアップすること。その際、とりわけ有害物質濫用、暴力および代替的養護現場におけるケアの質の不十分さと関係する自殺およびその他の障害に、とくに焦点を当てること。
  • (b) 早期介入サービスの利用可能性および質を向上させること、教員、カウンセラー、保健専門家および子どもと働くその他の専門家の研修および職能開発を進めること、ならびに、親に対して支援を提供することのために、具体的資源を配分すること。
  • (c) 精神保健上の問題のリスクがとくに高い子どもおよびその家族を対象とする専門的保健サービスおよび重点対象戦略を発展させるとともに、このようなサービスを必要とするすべての者に対し、その年齢、性別、社会経済的背景、地理的出身および民族的出身等を正当に考慮しながらアクセス可能性を確保すること。
  • (d) 上記の勧告の計画および実施にあたり、これらの措置の策定について子どもおよび若者と協議すること。同時に、家族およびコミュニティの支援の向上を確保し、かつ関連のスティグマを削減する目的で、精神保健に関する意識啓発を進めること。
  • (e) 子どもに対する精神刺激薬の処方を注意深く監視するとともに、ADHDおよびADDと診断された子どもならびにその親および教員に対し、より幅広い心理的、教育的および社会的措置ならびに治療を提供するための取り組みを進めること。また、子どもが行なう可能性のある精神刺激薬の濫用を監視する目的で、物質のタイプおよび年齢にしたがって細分化されたデータの収集および分析を行なうこと。
HIV/AIDSならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルス
66.委員会は、締約国の若者の間で性感染症(STI)感染率が顕著に増加していること、および、セーフセックスを実行する若者の割合が低いと報告されており、かつHIV/AIDS以外のSTIに関する意識水準が低いことを、深く懸念する。委員会はさらに、アボリジナルの人々および社会経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域の人々のSTI感染率がはるかに高いことに、留意するものである。
67.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を強調しながら、委員会は、締約国が、青少年に対し、とくにHIVおよびこれに加えて他のSTIとの関連で性およびリプロダクティブヘルスに関する教育を提供するための努力を強化するとともに、とくにアボリジナルおよび社会経済的に不利な立場に置かれたコミュニティの間で、避妊手段、カウンセリングおよび秘密が守られる保健サービスのアクセス可能性を向上させるよう、勧告する。
生活水準
68.資格のある親(臨時雇用、パートタイム就労および季節就労の女性を含む)に対して18週間の有給親休暇を認める制度が最近承認されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、この制度が、多くの世帯にとって十分な所得ではない可能性がある全国最低賃金の水準に固定されており、かつ、完全母乳育児のために必要な6か月よりも短いことに、懸念とともに留意するものである。締約国において貧困線下で生活している人々の割合が、とくにアボリジナル住民、移民および庇護希望者ならびに障害のある人々の間では約12%であることにかんがみ、委員会は、さまざまな態様の補助金、税の控除および還付ならびに低所得家庭を対象とするその他の支援を含む一連の措置がとられていることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、これらの措置が、援助を必要としているすべての家庭にとって公平に利用可能なものとなっておらず、かつ、居住場所その他の差別につながる要因による区別なしに提供されているわけでもないことを、依然として懸念するものである。
69.委員会は、親(とくに母親)が、新生児のケアおよび母乳育児を行ないながらなお十分な生活費を得られるようにすることを確保するために有給親計画制度を注意深く監視するとともに、18週の有給期間経過後、乳幼児の良質なケアを維持し、かつ少なくとも生後6か月まで母乳育児を継続できるようにするための適切な便益を利用可能とするよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、貧困の決定要因に関する理解の向上を可能とするホリスティックな反貧困戦略を策定し、当該戦略を社会的および地理的に位置づけ、かつ、ジェンダー、年齢、出身、居住場所、教育水準およびこれに類する他の要因にしたがった具体的措置をとるべきである旨の、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の勧告(E/C.12/AUS/CO/4、パラ24)にも賛成するものである。
70.アボリジナル系オーストラリア人を対象とする住宅改修資金の追加、および、アボリジナル系オーストラリア人の社会経済的条件の向上を目的とする「格差縮小」戦略は歓迎しながらも、委員会は、締約国において子どもおよび若者のホームレスが多数発生しており、国が提供する社会宿泊施設も定員面で厳しい制約に直面していることを、深く懸念する。さらに委員会は、締約国が、さまざまな集団の特定のニーズを反映する、文化的に適切な住宅サービスを提供できていないことを懸念するものである。
71.委員会は、締約国が、子どもおよび若者のホームレスの問題に対応するための取り組みの再検討を迅速に行なうとともに、この問題に対応するための枠組みを、子どもおよび若者の具体的経験を正当に考慮しながら向上させかつさらに発展させるための指針として、この再検討の知見を活用するよう、勧告する。さらに、その際、締約国が、アボリジナルの子ども、新規来住コミュニティの子ども、養護から離脱しようとしている子どもならびに地方コミュニティおよび遠隔地の子どもを対象とする具体的戦略を策定することも勧告されるところである。委員会はさらに、締約国が、ホームレスとなるおそれがある子どもおよび若者のニーズに対する反応性を強化するため、教育、所得支援、保健制度、障害者サービス制度および雇用制度を含む社会サービスならびにこれらのサービス間の調整を向上させるよう、勧告する。
親が収監されている子ども
72.締約国が、裁判所に対し、言い渡す刑が有罪判決を受けた者の家族に及ぼす「蓋然的効果」を考慮するよう求める法律を有していることには積極的側面として留意しながらも、委員会は、アボリジナル系オーストラリア人の収監率が人口比に照らして著しく過剰であること、ならびに、とりわけ深刻なこととしてアボリジナルの女性が過剰に収監されている結果、その子どもが、文化的に適切ではない代替的養護先に一時的にかつ不安定な形で措置される事態がしばしば生じていること、および、家族再統合率が低いことに、懸念とともに留意する。
73.親が収監されている子どもの権利」に関する一般的討議(2011年)の際に行なわれた委員会の勧告を参照し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 危険な状況にある家族に支援サービスを提供することによって収監を防止し、かつ、子どもの収監および家族構成員からの分離を回避する目的でダイバージョンその他の代替的措置を活用するため、あらゆる司法上および行政上の体制を見直すこと。
  • (b) 犯罪の根本的原因に対処し、かつ危険な状況にある家族に対して防止サービスおよび早期介入サービスを提供することを促進する、重点対象プログラムの実施に対して資源および支援を提供すること。
  • (c) 子どもの最善の利益にかなうときは、子どもが収監されている期間全体を通じ、親子間の関係の維持に対して資源および支援を提供すること。
  • (d) 逮捕時にその場にいたかどうかに関わらず情報を知らされる子どもの権利を尊重しかつ充足するとともに、子どもからの情報または情報の共有の申請が、子どもの最善の利益を考慮し、かつ関係者にいかなる不利な結果ももたらさないようにしつつ、子どもにやさしいやり方で対応されることを確保する義務を履行すること。

F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
74.委員会は、締約国の「国家先住民族教育行動計画(2012~2014年)」および「先住民族の乳幼児期発達に関する国家的パートナーシップ協定」を歓迎する。しかしながら委員会は、先住民族の子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもが教育へのアクセスに関して深刻な困難に直面しており、アボリジナルの生徒の識字水準、計算能力水準その他の達成水準がアボリジナル以外の生徒よりも相当に低いままであることについての前回の懸念(CRC/C/15/Add.268、パラ59)を、あらためて表明する。委員会はさらに、このような状況が、教育制度において、英語話者ではない子どものニーズに対応する十分な措置がとられていないことによって悪化していることを懸念するものである。そのため、このような子どもが不就学、出席不良および中退により陥りやすく、かつ中等段階教育を修了する可能性も低くなる状況が生じている。
75.委員会は、個々のアボリジナル教育戦略が、従前の政策の成功を基礎とし、かつアボリジナル・コミュニティ、教育部門、コミュニティ団体および専門家集団(ソーシャルワーカー、研究者、ヘルスワーカーおよび警察など)の連携に基づく長期的アプローチにのっとって進められることを確保するため、締約国が、「格差縮小」政策枠組みのなかで、州および準州の政府の効果的な調整および監督を行なうよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国および州の双方の段階で二言語教育モデルを保護しかつ促進するための、十分な人的資源、技術的資源および財源を確保するよう勧告するものである。
乳幼児期のケアおよび教育
76.委員会は、締約国の子どもの教育・ケア品質管理庁が乳幼児期の教育およびケアに関する「全国品質枠組み」の実施および監視を行なっていること歓迎する。しかしながら委員会は、4歳未満の子どもを対象とする乳幼児期のケアおよび教育が引き続き不十分であることに留意するものである。さらに委員会は、締約国における乳幼児期のケアおよび教育の大部分が民間の利益追求機関によって提供されており、その結果、ほとんどの家族にとってそのサービスが手の届かないものとなっていることを懸念する。委員会はさらに、このようなサービスを提供する主体がかなりの割合で民間機関であることから、「乳幼児期のケアおよび教育に関する全国品質枠組み」の適用および遵守が限定されていることを懸念するものである。
77.委員会は、締約国が、以下の措置をとること等により、乳幼児期のケアおよび教育の質および範囲をさらに向上させるよう勧告するものである。
  • (a) このようなケアが、子どもの全般的発達を包摂するホリスティックなやり方で提供されることを確保し、かつ親の能力を強化することも目的としながら、0~3歳の子どもに対するこのようなケアの提供に優先的に取り組むこと。
  • (b) 国営施設か民間施設のいずれによるものであるかに関わらず、無償のまたは手が届く範囲の乳幼児期ケアの提供を考慮することにより、乳幼児期のケアおよび教育の、すべての子どもにとっての利用可能性を高めること。
  • (c) 乳幼児期のケアおよび教育を提供するすべての主体が「乳幼児期のケアおよび教育に関する全国品質枠組み」にしたがうことを確保すること。
学校のいじめ
78.「全国学校安全枠組み」および「いじめ。絶対だめ!」プログラムなど、学校におけるいじめと闘うために締約国がとっている措置は歓迎しながらも、委員会は、いじめが引き続き広範に行なわれており、現行の枠組みではあらゆる形態のいじめに全面的に対応するうえで不十分であることが明らかになっていることを、依然として懸念する。
79.一般的意見13号を参照しつつ、委員会は、締約国が、とくに、すべての学校において教職員を対象とする教育的および社会教育学的手法を導入しかつ強化すること、親および子どもの関与を得ること、学校計画の適切な監視体制を確立すること、ならびに、いじめの事案を調査しかつこれに対応する能力を強化することによって、学校におけるいじめを防止しかつこれに対応するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。

G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条)

子どもの庇護希望者および難民
80.委員会は、入管収容施設に収容された子どもおよび脆弱な立場に置かれた家族を代替的形態の収容(コミュニティを基盤とする収容体制および入管通過収容を含む)に移行させるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下のことを深く懸念するものである。
  • (a) 締約国の移民法が、庇護希望者もしくは難民である子どもまたは非正規移住の状況にある子どもについて、期間制限がなく、かつ司法審査の対象とされない義務的収容を定めていること。
  • (b) 庇護手続および難民認定手続において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されておらず、かつ、考慮される場合にも、最善の利益の判断について十分な訓練を受けた専門家による対応が一貫してとられているわけではないこと。
  • (c) 保護者のいない未成年者の法的後見が、入管収容および難民認定ならびに査証申請についても責任を負っている移民・市民権大臣に委ねられる場合に、利益相反が生じるおそれが大きいこと。
  • (d) 2011年8月の高等法院決定(原告M70/2011 対 移民・市民権大臣事件)において、締約国がマレーシアとの「難民交換」を試みたことは、庇護希望者が保護の必要性評価のための効果的手続にアクセスできるようにし、庇護希望者に対して難民認定が行なわれるまでの保護を提供し、かつ、難民資格を認められた者について出身国への自主的帰還または第三国定住が行なわれるまでの保護を提供する国際法および国内法〔上の義務〕に違反すると判示されたにも関わらず、締約国が引き続き、庇護申請および難民申請をいわゆる「領域外処理」の対象とする政策を追求していること。
81.委員会は、締約国に対し、出入国管理および庇護に関する法律を条約その他の関連の国際基準に全面的に一致させるよう、促す。締約国は、その際、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮するよう、促されるところである。さらに委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.268、パラ64)をあらためて繰り返す。これに加え、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 庇護希望者もしくは難民である子どもまたは非正規移住の状況にある子どもを収容する政策を再検討するとともに、入管収容が行なわれるときは、当該収容が期間制限および司法審査の対象とされることを確保すること。
  • (b) 移民および庇護に関する法律および手続において、すべての出入国管理手続および庇護手続で子どもの最善の利益が第一次的考慮事項とされることを確保するとともに、最善の利益の判断が、最善の利益認定手続について十分な訓練を受けた専門家によって一貫して行なわれることを確保すること。
  • (c) 保護者のいない移民の子どものための独立した後見/支援制度を速やかに設置すること。
  • (d) 原告M70/2011 対 移民・市民権大臣事件における高等法院判決にしたがうとともに、とくに、庇護希望者に対する十分な法的保護を確保し、かつ、庇護申請のいわゆる「領域外処理」および「難民交換」の政策の試みを確定的に放棄すること。また、最善の利益の判断が行なわれることなくアフガニスタンに送還された子どもの苦境に関する報告書の評価を行なうこと。
 さらに委員会は、締約国が、国連難民高等弁務官「国際的保護に関するガイドライン第8号:1951年条約第1条A(2)および第1条Fに基づく子どもの庇護申請」の実施および難民の地位に関する1967年議定書の批准を検討するよう、勧告する。
少年司法の運営
82.委員会は、以前の勧告にも関わらず、締約国の少年司法制度が国際基準に一致するためにはいまなお相当の改革が必要であることを遺憾に思う。とくに委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 締約国によって、刑事責任に関する最低年齢を引き上げるための措置がなんらとられていないこと(CRC/C/15/Add.268、パラ74(a))。
  • (b) 精神疾患および(または)知的欠陥を有している子どもであって法律に抵触した者が、司法手続によらない適切な代替的措置を用いて対応されることを確保するための措置がなんらとられていないこと(CRC/C/15/Add.268、パラ74(d))。
  • (c) 18歳未満の者を対象とする義務的量刑法(いわゆる「三振アウト法」)が、ウェスタンオーストラリア州刑法にいまなお存在すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(f))。
  • (d) 締約国の州であるクイーンズランド州の刑事司法制度において、法律に抵触した17歳の子どもが全員が引き続き成人として審理されていること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(g))。
83.さらに、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 17歳の者の大多数はより幅広い受刑者集団から分離されて収容されているとはいえ、成人矯正センターに収容される子どもの事例がいまなお存在すること。
  • (b) 締約国のカンバイ青年拘禁センターおよびビンベリ拘禁センターにおいて、子どもの被拘禁者の虐待が行なわれたという報告があること。
84.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。さらに委員会は、以下の措置をとるよう求めた前回の勧告をあらためて繰り返すものである。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げることを検討すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(a))。
  • (b) 精神疾患および(または)知的欠陥を有している子どもであって法律に抵触した者に、司法手続によらずに対応すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(d))。
  • (c) ウェスタンオーストラリア州の刑法体系における義務的量刑を廃止するための措置をとること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(f))。また、ビクトリア州で同様の法律を制定することの断念を検討すること。
  • (d) クイーンズランド州において、17歳の子どもを成人司法制度の対象から除外すること(CRC/C/15/Add.268、パラ74(g))。
  • (e) 罪を犯したすべての子どもが独自の矯正センターに収容されることを確保するため、必要な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。
  • (f) 青年拘禁センターにおける虐待の事案を調査しかつこれに対応するための、アクセスしやすく効果的な機構を速やかに設置すること。

H.国際人権文書の批准

85.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書およびすべての中核的人権文書(強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、および、家事労働者に関する国際労働機関第189号条約を含む)に加入するよう、奨励する。

I.フォローアップおよび普及

86.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府、議会、広域行政機関および適用可能なときは地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
87.委員会はさらに、条約およびその実施に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

J.次回報告書

88.委員会は、締約国に対し、この総括所見に掲げられた勧告の実施およびフォローアップに関する具体的情報を記載した第5回・第6回統合定期報告書を、2018年1月15日までに提出するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、当該ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年10月23日)。