総括所見:ネパール(OPSC・2012年)


CRC/C/OPSC/NPL/CO/1(2012年7月18日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2012年6月4日に開かれた第1706回会合(CRC/C/SR.1706参照)において、選択議定書に基づくネパールの第1回報告書(CRC/C/OPSC/NPL/1)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合(CRC/C/SR.1725参照)において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、豊かな情報を含み、分析的かつ自己批判的である締約国の第1回報告書、および、委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/NPL/Q/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、条約に基づく締約国の第4回〔第2回〕定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/15/Add.261)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

II.一般的所見

積極的側面
4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野でとられたさまざまな措置、とくに以下の法令の採択を歓迎する。
  • (a) カーストに基づく差別および不可触制(犯罪および違反)法(2011年5月)。
  • (b) ドメスティックバイオレンス統制処罰法(2009年4月)。
  • (c) 人の取引および移送統制法(2007年7月)および2008年の同法実施規則。
  • (d) 児童福祉ホームの運営に関する最低基準規則(2007年)。
  • (e) ジェンダー平等法(2006年)。
  • (f) 女子の法廷婚姻年齢を男子のそれ(20歳)まで引き上げ、かつ男女の家族構成員双方が子どもの出生登録を行なうことを認めた、一部のネパール法改正法(2006年11月)。
5.委員会はまた、以下の国際事件文書の批准も歓迎する。
  • (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2007年1月)。
  • (b) 国際組織犯罪防止条約(2011年12月)。
  • (c) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2010年5月)。
  • (d) 強制労働の廃止に関する国際労働機関第105号条約(2008年8月)。
  • (e) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2007年6月)。
  • (f) 南アジア地域協力連合・子どもの福祉についての地域的対応に関する条約〔南アジアにおける子どもの福祉の促進のための地域的取り決めに関する条約〕(2006年)。
  • (g) 南アジア地域協力連合(SAARC)・売買春目的の女性および子どもの人身取引の防止およびこれとの闘いに関する条約(2005年)。
6.委員会はさらに、選択議定書の実施を促進する諸制度の創設ならびに国家的な計画およびプログラムの採択における、以下のものを含む進展を歓迎する。
  • (a) 子どもにやさしい地方自治を促進するための3か年計画(2010~2013年)。
  • (b) 「子どものための国家行動計画(2004/05~2014/15年度)」。
  • (c) 「性的搾取および労働搾取を目的とする子どもおよび女性の人身取引に反対する国家行動計画」。
  • (d) ネパール警察における女性子ども局の設置。
  • (e) 女性および子どもに関する政府の措置を検討する「女性と子どもに関する立法議会委員会」および女性議員同盟の創設(2009年)。
  • (f) 人身取引の対象とされまたは性的搾取を受けた子どもを直ちに救出しかつ救援を提供するための「緊急子ども救出基金」の設置。

III.データ

7.締約国報告書に記載されたデータに評価の意とともに留意し、かつ、ネパール警察、法務総裁府および最高裁判所によって関連のデータが収集されていることに留意しながらも、委員会は、選択議定書で対象とされているすべての事案の記録、付託およびフォローアップを可能とし、かつ選択議定書の実施における進展を分析しかつ評価するための包括的なデータ収集システムが設けられていないことを懸念する。
8.委員会は、締約国に対し、パートナーの支援を得ながら包括的かつ中央集権化されたデータ収集システムを設置するとともに、達成された進展を評価し、かつ選択議定書を実施するための政策およびプログラムの立案に役立てるための基礎として、収集されたデータを分析するよう促す。データは、選択議定書が対象とする犯罪についての分析を容易にするため、年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景によって細分化されるべきである。委員会は、締約国が、この点に関してとくに国連児童基金(ユニセフ)および国連開発計画との技術的協力を強化するよう、勧告する。

IV.実施に関する一般的措置

立法
9.選択議定書との関連で採択された多数の法律について締約国を称賛しながらも、委員会は、選択議定書が国内法体系に全面的に編入されることを確保するために必要な措置を締約国がとっていないことに、懸念を表明する。委員会はまた、締約国が、16歳未満の子どもにしか適用されない1992年子ども法の改正をまだ完了させていないことも懸念するものである。
10.委員会は、締約国に対し、選択議定書が国内法体系に全面的に編入されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、子ども法の改正プロセスを加速させ、かつ、同法および子どもに関連するすべての法律において18歳未満のすべての子どもが保護されることを確保することも促すものである。
国家的行動計画
11.選択議定書に関わるさまざまな行動計画、とくに「子どものための国家行動計画(2005年~2015年)」、「児童労働に関する国家基本計画(2011~2020年)」および「性的搾取および労働搾取を目的とする子どもおよび女性の人身取引に反対する国家行動計画」が存在することは歓迎しながらも、委員会は以下の懸念を表明する。
  • (a) これらの行動計画が、対象集団の点でも行なわれる活動の態様の点でも重複していることから、その有効性が阻害され、かつ全般的実施についての責任が希薄になること。
  • (b) 子どもに関する国家的な行動計画と、郡子ども福祉委員会(DCWB)が策定する行動計画との連携が不十分であること。
  • (c) 国および地方のレベルで策定される計画において明確な達成目標および指標が明らかにされていないことが多く、かつ介入および活動を支える十分な予算も配分されていないこと。
12.委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) さまざまな行動計画を、選択議定書のすべての規定を網羅する単一の「子どものための国家行動計画」に編入し、かつ明確な達成目標および指標を定めることを検討すること。この計画は、それぞれ1996年、2001年および2008年にストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された、第1回・第2回・第3回子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れたものであるべきである。
  • (b) 予算ニーズの包括的アセスメントを実施するとともに、選択議定書の実施のための活動を支える明確な予算配分額を確立すること。
  • (c) 改訂「子どものための国家〔行動〕計画」の実施における進展および課題を評価する目的で、監視および評価のための計画を確立すること。
調整および評価
13.委員会は、締約国における選択議定書の実施の調整については女性・子ども・社会福祉省(MoWCSW)が責任を負っていることに留意する。しかしながら委員会は、この調整が依然として不十分であり、かつ、調整機構の評価に関する情報が締約国から提供されなかったことを懸念するものである。委員会はとくに、調整を担当する省の資金が不十分であること、調整機能を有する他の機関(中央子ども福祉委員会(CCWB)および75か所に設けられている郡子ども福祉委員会(DCWB)を含む)が多数存在すること、および、子どもの保護に関わるこれらすべての公的機関の役割および権限が明確に定義されていないことを懸念する。
14.委員会は、締約国国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 女性・子ども・社会福祉省が、さまざまな部門を横断して、かつ国から県および郡の段階に至るまで選択議定書の実施を効果的に調整するための十分な権限ならびに人的資源、財源および技術的資源を有することを確保することにより、調整に関わる同省の役割を強化しかつ評価すること。
  • (b) 子どもに関連する既存のさまざまな機関の活動を合理化し、かつ、中央および郡双方の段階における任務および責任を明確に再定義する目的で、組織面の徹底的見直しを行なうとともに、これらの機関に対し、中央および郡の段階における行動を可能とし、かつその指針となるような、必要な資源、指針、標準活動手順および手続を提供すること。
普及および意識啓発
15.条約および2つの選択議定書の原則および規定を学校および大学のカリキュラムならびに専門家養成機関のカリキュラムに編入しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもを含む一般公衆および専門家双方の間で選択議定書に関する意識を高めるための措置が不十分であることを懸念する。
16.委員会は、締約国が、選択議定書の規定を、子ども(子どもにやさしい方法による)、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に広く知らせるための努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。
  • (a) 選択議定書に関わる問題を、初等中等学校のカリキュラムに体系的に編入すること。
  • (b) コミュニティ、子どもおよび被害を受けた子どもと緊密に協力しながら、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止措置および有害な影響に関する意識啓発プログラムを発展させること。これらのプログラムは、締約国のすべての言語で、かつ非識字者にとってアクセス可能な形式で利用可能とされるべきである。
  • (c) 関連するすべての専門家集団、とくに警察官、裁判官、検察官、メディア代表およびソーシャルワーカーならびに中央〔子ども〕福祉委員会および郡子ども福祉委員会の委員の間で、選択議定書を普及すること。
  • (d) とくにこのような犯罪が発生するおそれが高い地域における、選択議定書の規定についての意識啓発を支援するため、市民社会組織、メディアおよび民間部門との協力を発展させるとともに、鍵となるメッセージを一般住民およびとくに子どもの間で普及させるためにメディアを活用すること。
研修
17.委員会は、関連の専門職、とくに警察および司法制度関係者が、選択議定書に関する不十分な研修しか受けていないことを懸念する。
18.委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもとともに働くすべての専門家集団、とくに警察官、弁護士、検察官、裁判官、医療スタッフ、ソーシャルワーカー、出入国管理官およびメディアを対象とする、選択議定書の規定についての、体系的かつジェンダーに敏感な教育および定期的な研修を強化するよう、勧告する。
資源配分
19.委員会は、とくに犯罪の防止および被害を受けた子どもに対する援助の提供に関して、選択議定書の実施に配分される資源が欠けていることを懸念する。委員会はとくに以下のことを懸念するものである。
  • (a) 新法の実施を支えるための費用分析が全般的に実施されていないこと。
  • (b) 選択議定書を実施するための活動のほとんど(郡子ども担当官の給与の支払いを含む)について、その資金が国際協力を通じておよび非政府組織によって拠出されていること。
  • (c) きわめて高い水準で発生している汚職により、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止し、かつこれと闘うために利用可能な資金が非常に減少していること。
20.委員会は、締約国に対し、選択議定書の規定に関わるプログラム(とくに犯罪捜査、法的援助ならびに被害者の身体的および心理的回復)を立ち上げるための人的資源、技術的資源および財源を通常予算から使途指定方式で拠出する等の手段により、選択議定書を実施するための予算配分額を増加させるよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、汚職の防止およびこれとの闘いを効果的に進め、かつ汚職行為を訴追するために即時的措置をとることも促すものである。

V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項)

選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置
21.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止するためにとられた多数の措置、ならびに、とくに、ダリットおよび先住民族のコミュニティならびに周縁化されたおよび不利な立場に置かれた家庭の子どもをとくに対象としたプログラム、政策およびプログラムへの子ども参加の促進、および、とくに女性の非識字と闘うための措置を、歓迎する。しかしながら委員会は、現行の法律、行政措置、社会政策およびプログラムが、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因および助長要因(とくに広範な貧困、ジェンダー差別、安全ではない移住、および、包括的な子ども保護制度の欠如)に対応するには不十分であることを、懸念するものである。委員会は、以下のことをとくに懸念する。
  • (a) とくにダリットに対する強いカースト差別が継続しており、かつ女性および女子に対する法律上および事実上の差別が蔓延していること。
  • (b) シングルマザーならびに外国人、難民および無国籍者と婚姻した母親が子どもの出生登録に関して困難に直面していることから、このような子どもが選択議定書上の犯罪の被害をきわめて受けやすい状況に置かれていること。
  • (c) もっとも脆弱な状況にある子どもの集団(とくに子どもの国内避難民および難民、障害のある子ども、ならびに、人数が増えている子どもの路上生活者)を対象とする優先的措置がとられていないこと。
  • (d) ドメスティックバイオレンス統制処罰法(2009年)に基づくドメスティックバイオレンス被害者の保護が不十分であり、男子が性的虐待から保護されておらず、かつ、家庭および教育施設における子どもの性的虐待が多数発生していること。
22.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の根本的原因に対処し、かつもっとも脆弱な状況に置かれた子どもに焦点を定めた、包括的かつ重点対象型のアプローチを採用するよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、貧困削減戦略、および、不利な立場に置かれたおよび周縁化された家族を対象とする支援的な社会的保護措置(子どもに対するケアおよび保護の責任を親がよりよい形で履行できるよう支援するための、子ども中心の早期介入プログラムを含む)を強化するよう、促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 「不可触制」の禁止の効果的実施のために積極的措置をとるとともに、その際、社会的および文化的変革を推進し、かつ、周縁化されたコミュニティに属する子どもの平等を支えて主体的行動を可能とする環境の創設を促進するため、社会のあらゆる層の関与を得ること。
  • (b) すべての子どもが出生時に登録されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (c) 女子に対する差別である法規定を廃止するとともに、公衆教育プログラム(女性差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/NPL/CO/4-5、パラ18(a))にしたがい、ジェンダー役割の固定化と闘うためにオピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じて女子に対する社会的差別を解消するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (d) もっとも脆弱な状況に置かれた子どもに焦点を定めた防止プログラムを発展させるとともに、とくに、路上の状況にある子どもに対して十分かつ安全なシェルター、保健ケア、教育および衣服が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。警察による陵虐、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用からこのような子どもを保護することに、特段の焦点が当てられるべきである。
  • (e) 防止戦略に、子どもの性的搾取の根本的原因に数えられるドメスティックバイオレンスおよび子どもの性的虐待に対応するための主要な活動が編入されることを確保すること。
養子縁組
23.委員会は、ネパール人である子どもの養子縁組の承認に関する「諸条件および手続」が2008年に採択され(2011年改正)、ネパールからの国際養子縁組に関する実務上の法的枠組みとされていること、および、国際養子縁組の計画および管理に関する中央当局である国際養子縁組管理委員会が設置されたことを、歓迎する。しかしながら委員会は、不法な養子縁組からの子どもの保護がいまなお不十分であり、このような状況のために養子縁組目的の子どもの売買が行なわれる可能性があることを懸念するものである。委員会はとくに以下のことを懸念する。
  • (a) 国際養子縁組手続における大規模な不正の件数が増えていること。
  • (b) 非公式な養子縁組が行なわれており、これにともなって子どもが家事労働者として搾取される高い危険性が生じていること。
  • (c) 締約国で赤ん坊の取引および密輸の事件が起きていること、および、勧誘、威迫または誘導の結果として子どもを譲渡する家族についての報告があること。
  • (d) 締約国が報告書で認めているように、いわゆる「孤児院」および「ストリートシェルター」を運営する外国人ペドファイル(小児性虐待者)によって子どもが虐待される事件が起きていること。
24.委員会は、締約国に対し、養子縁組に関与するすべての者が適用可能な国際法文書にしたがって行動することを確保するためにあらゆる法律上および行政上の措置をとる、選択議定書第3条5項に基づく自国の義務を想起するよう、求める。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) ネパール人の子どもの養子縁組に関する厳格な基準を策定しかつ実施するとともに、すべての養子縁組関連事案において、親の責任の停止および(または)子どもの分離を防止するためにあらゆる手段が尽くされたことが明確な基準のひとつとされることを確保すること。
  • (b) 国内養子縁組および国際養子縁組に関する現行の機構および手続を緊急に見直すとともに、養子縁組事案を担当する専門家が、事案をハーグ条約に照らして審査しかつ処理するために必要な技術的専門性を全面的に備えることを確保すること。
  • (c) 子どもが搾取されることを防止するため、近親者その他の者に子どもを措置する慣行を規制しかつ監視すること。
  • (d) 不正な養子縁組、子どもの密輸、ならびに、子どもの性的搾取および虐待を目的とする無許可のシェルターおよび「孤児院」の開設のすべての事案について調査を行なうこと。
  • (e) 2009年に署名した国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約、および、国連・国際組織犯罪防止条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(パレルモ議定書)を批准すること。
児童セックス・ツーリズム
25.児童セックス・ツーリズムと闘うために締約国が国内機関および非政府組織と連携しながら行なっている努力、および、「観光を通じてのペドフィリア(小児性虐待)および子どもの商業的性的搾取対策委員会」の設置(2005年)は歓迎しながらも、委員会は、子どもが外国人のペドファイルによって性的に搾取される事件が締約国で多数発生しており、かつ、路上の状況にある子どもおよびスラム地区の子どもがこの形態の性的虐待および搾取の被害をとくに受けやすい状態に置かれていることを、懸念する。
26.委員会は、締約国に対し、児童セックス・ツーリズムを防止しかつ解消する目的で、効果的な規制の枠組みを策定しおよび実施し、ならびに必要なあらゆる立法上、行政上、社会上その他の措置をとるよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、多国間、地域間および二国間の協定による国際協力を強化するよう奨励するものである。委員会はさらに、締約国に対し、児童セックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、旅行代理店および観光業者の間でWTO〔世界観光機関〕の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、促す。
有害慣行
27.委員会は、デウキ(宗教的義務を履行するために女子を神に捧げること)、ジュマ(宗教的儀式を行なわせるために幼い女子を僧院に捧げること)、カムラリ(家事労働をさせるために地主の家族に女子を提供すること)およびバディ(バディ・カーストの間で広く行なわれている売春の慣行)のような、締約国でいまなお根強く残っており、かつ選択議定書第2条(a)に基づく締約国の義務の重大な違反である有害慣行について、条約に基づく締約国の第4回報告書についての総括所見で表明した懸念(CRC/C/15/Add.261、パラ67)を想起する。委員会はまた、早期婚および強制婚が蔓延していることも懸念するものである。「ダナ・カーネ」の場合、子の挙式と引き換えに親が金銭を受け取っており、これは子どもの売買に相当する。
28.委員会は、締約国に対し、子どもの身体的および心理的ウェルビーイングにとって有害であり、かつ子どもの売買の諸形態であるすべての慣行を根絶するため、緊急にあらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、Sapana Pradhan Malla and others v. Government of Nepal事件(2006年)でネパール最高裁判所が命じたように大規模な意識啓発措置をとること等も通じ、児童婚を禁止した法律の効果的実施を確保するための積極的措置をとることも促すものである。

VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2項および3項)ならびに第5~7条)

現行刑事法令
29.委員会は、法律が選択議定書の規定に全面的に一致することを確保することに対して締約国の代表団が示した決意を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書の一部の規定が国内法に編入されたにも関わらず、国内法がいまなお選択議定書のすべての規定に全面的に一致しているわけではないことに、懸念とともに留意するものである。とくに委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。
  • (a) 刑法〔原文はCountry Code〕で選択議定書上のすべての犯罪が網羅されていないこと。
  • (b) 選択議定書第3条で定義されているあらゆる形態の子どもの売買が犯罪化されているわけではないこと。
  • (c) 児童買春を定義しかつ処罰し、または子どもを売買春のために周旋しまたは供給する行為を処罰する、具体的な法規定がないこと。
  • (d) 締約国のいかなる法律(「サイバー法」としても知られる電子取引およびデジタル署名法を含む)においても、児童ポルノについて具体的に扱われていないこと。
30.委員会は、締約国に対し、刑法を改正して選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させるとともに、18歳未満のすべての子どもが選択議定書によって全面的に保護されることを確保するよう、促す。とくに、締約国は、以下の行為が犯罪化されることを確保するべきである。
  • (a) 性的搾取、営利目的の子どもの臓器移植もしくは強制労働に子どもを従事させることを目的として、いかなる手段によるかは問わず、子どもを提供し、引き渡しまたは受け取ること、または、養子縁組に関する適用可能な国際法文書に違反し、仲介者として不適切な形で子どもの養子縁組への同意を引き出すことによる、子どもの売買。
  • (b) 児童買春の目的で子どもを提供し、入手し、周旋しまたは供給すること。
  • (c) 児童ポルノを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売しまたは所持すること。
  • (d) これらのいずれかの行為の未遂および共謀またはこれらのいずれかの行為への参加。
  • (e) これらのいずれかの行為を広告する資料の製造および配布。
31.委員会は、性的搾取の被害を受けた子どもがいまなお、1970年公益犯罪統制法の規定にしたがい、公の秩序および犯罪を紊乱したとの理由で逮捕されるおそれがあることに、深刻な懸念を表明する。
32.委員会は、締約国に対し、被害を受けた子どもの逮捕および訴追に用いられている1970年公益犯罪統制法の規定を廃止するとともに、選択議定書上のいずれかの犯罪の被害を受けたいかなる子どもも犯罪者として扱われないことを確保するよう、促す。
33.委員会は、人身取引と闘うために締約国が行なっている努力、とくに、人身取引の防止およびこれへの対応のための取り組みを支援する中央委員会および地区委員会の設置に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、毎年数千人の子どもが国内外で取引の対象とされていること(主として性的搾取および労働搾取が目的ではあるが、サーカスでの使用、強制的物乞い、強制婚、奴隷化および臓器売買が目的であることもある)、および、子どもの人身取引が増加していることを深く懸念するものである。これとの関連で、委員会は、女性差別撤廃委員会が留意したとおり(CEDAW/C/NLP/CO/4-5、パラ21)、人の取引および移送(統制)法(2007年)の実施が不十分であることを懸念する。
34.委員会は、締約国に対し、法律の効果的実施を確保するとともに、とくに、児童買春が行なわれている売春宿その他の場所を摘発しかつ閉鎖するための効果的制度を速やかに確立するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、郡レベルの人身取引対策委員会の設置を完了させ、かつ村落開発委員会レベルにおける委員会の設置を開始すること(そのために既存の体制を活用することが考えられる)とともに、人身取引対策に取り組んでいる諸機関(人(とくに女性および子ども)の取引に関する特別報告者を含む)に対し、その役割を効果的に遂行するために必要な人的資源、財源および技術的資源を提供することも、促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、パレルモ議定書を批准するよう促す。
裁判権および犯罪人引渡し
35.委員会は、選択議定書上のすべての犯罪に関する域外裁判権の設定および選択議定書で扱われている犯罪を行なった者の引渡しの可能性について締約国の法律が曖昧なままであることに、懸念を表明する。
36.委員会は、締約国に対し、国内法によって、選択議定書が対象とするすべての犯罪について域外裁判権を設定できかつ行使できることを確保するよう、促す。委員会はまた、二国間協定がない場合に、締約国が、選択議定書第5条を犯罪人引渡しの法的根拠として用いることも勧告するものである。
選択議定書上の犯罪の訴追
37.委員会は、締約国、とくにカトマンズ盆地の「キャビンレストラン」、ダンスバーおよびマッサージパーラーならびに締約国の主要都市において数千人の子どもが売買春に関与しているにも関わらず、売買春が行なわれている場所からこのような子どもを救出するためにとられた措置が限定されていることに、深い懸念とともに留意する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。
  • (a) 現在検討が進められている子ども法の改正案において、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害を受けた子どもの事件の発見、通報、付託、捜査、取扱いおよび調整のための手続および機構がいまなお定められていないこと。
  • (b) ネパール警察が、申し立てられた告発を捜査するための十分な体制、能力および権限を欠いていること。
  • (c) 法執行機関および司法機関に対する不信が広がっていることを主たる理由として、子どもの人身取引の事件に相当の通報漏れがあること(これらの機関は、市民に対して事件の通報をやめさせようとし、かつ紛争当事者に対して事件の私的解決を奨励することが多い)。
  • (d) 人身取引関連の捜査の文脈において犯罪の見逃しが依然として蔓延しており、かつ、これが官吏で高水準で行なわれている汚職の結果であることが多いこと。
38.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪を摘発し、加害者を逮捕しかつ裁判にかけるための法執行機関の配置および能力を強化するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害を受けた子どもの事件の発見、通報、付託、捜査、取扱いおよび調整について、改正子ども法で明確な手続を定め、かつそのための機構を設置すること。
  • (b) 子どもおよび親が事件を私的に解決するよう奨励されず、かつ選択議定書上の犯罪の加害者が裁判にかけられることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事件に公的機関が直接関与した事案に対して一切の寛容を排したアプローチをとるとともに、汚職および犯罪見逃しの問題に対し、優先的課題と位置づけて精力的に対応すること。

VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条3項および4項)

選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置
39.23郡の警察署内に女性・子どもサービスセンター(WCSC)が設置されたことには留意しながらも、委員会は、これらのセンターが、刑事司法手続の前、最中および後に子どもおよびその家族を十分に保護するために必要な資源を欠いていることに、懸念とともに留意する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。
  • (a) 法執行機関が、子どもに配慮した捜査手続(非公開捜査を含む)を組織的に活用しているわけではないこと。
  • (b) 被害を受けた子どものプライバシーおよび安全の保護が確保されておらず、かつ、禁止規定の存在にも関わらず、メディアが被害を受けた子どもの写真を掲載していること。
  • (c) 被害を受けた子どもに対し、無償の法律扶助、または刑事司法手続中の児童心理学者およびソーシャルワーカーによる支援が提供されていないこと。
  • (d) 証言することに同意した子どもの証人が、特別な保護措置の対象とされておらず、かつ、不利な証言をする相手である犯罪者による報復のリスクから十分に保護されていないこと。
40.委員会は、締約国に対し、刑事司法手続のすべての段階で、選択議定書で禁じられた慣行の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための適切な措置をとるよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下のことを確保するよう促すものである。
  • (a) 女性・子どもサービスセンターがすべての郡で利用可能とされ、かつ、これらのセンターが子どもに配慮した捜査手続(子ども向けに設計された特別事情聴取室および子どもに配慮した尋問手法を含む)を活用すること。
  • (b) 子どもの最善の利益にかなう恒久的解決策が明らかにされかつ実施されるまで、手続全体を通じて、被害を受けた子どもの手引き役および寄り添い役を務める後見人が任命されること。
  • (c) 被害を受けた子どもが、捜査および裁判の手続全体を通じて配慮のある取扱いをされ、かつそのプライバシーの保護が尊重されること。
  • (d) 被害を受けた子どもに対し、無償の法律扶助、および、刑事司法手続中の児童心理学者およびソーシャルワーカーによる支援が提供されること。
  • (e) 捜査、訴追および審理の際に子どもと被告人が直接接触することのないようにすること、および、非公開捜査の積極的活用を確保するためにあらゆる人的資源、技術的資源および財源が提供されること。
  • (f) 子どもの証人が報復から十分に保護されることを保障するため、法律上および実務上の措置がとられること。
被害者の回復および再統合
41.人身取引の被害を受けた子どものリハビリテーションおよび緊急保護のためのセンターが設置されたことには留意しながらも、委員会は、被害を受けた子どものケアおよび保護に関する明確な手続および基準(心理社会的支援の提供、最善の利益認定に基づくケア・アセスメント、一時的および恒久的解決策、ならびに、子どもが成年に達するまでのフォローアップを含む)が存在しないため、子どもがさらなる危険にさらされていることに懸念を表明する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。
  • (a) 人身取引の被害を受けた子どものためにいくつかのリハビリテーションセンターおよび緊急シェルターが設置されたにも関わらず、予算上の制約のため、子ども中心のサービスがもっぱら利用不可能なままであり、かつその拡大および改善が制限されていること。
  • (b) 法律において、被害を受けた子どもが無償の治療、精神保健ケアその他のケアを受けるいかなる権利も定められていないこと。
  • (c) 賠償が人身取引被害者に対してしか利用可能とされていないこと。
42.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためにあらゆる適切な措置をとり、かつ、これらの措置が子どもの自尊心および尊厳を促進するような環境のなかでとられることを確保するよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) とくに遠隔地に住んでいる子どもを対象として、子ども中心のサービスへのアクセスを促進しかつ高めるためにあらゆる必要な措置をとるとともに、これらのサービスに十分な設備および体制が備わることを確保するため、これらのサービスに配分される予算を増額すること。
  • (b) 被害を受けた子どもの救出、賠償、リハビリテーションおよび再統合の指針となる明確な措置をとるとともに、被害を受けた子どもが無償の治療、精神保健ケアその他のケアを受ける権利を法律で定めること。
  • (c) 選択議定書第9条4項にしたがい、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを確保すること。

VIII.国際的な援助および協力

43.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、南アジア地域協力連合(SAARC)・子どもに関する地域的対応条約〔南アジアにおける子どもの福祉の促進のための地域的取り決めに関する条約〕および同・売買春目的の女性および子どもの人身取引の防止およびこれとの闘いに関する条約を実施するよう、奨励するものである。
44.委員会は、締約国に対し、選択議定書の効果的実施を目的とする措置を策定しかつ実施するにあたり、国連の機関およびプログラムならびに非政府組織と引き続き協力するよう奨励する。

IX.フォローアップおよび普及

45.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる〔行動〕を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
46.委員会はさらに、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書〔ママ〕および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

X.次回報告書

47.第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書(2010年3月13日の提出期限が過ぎている)に記載するよう要請する。委員会はまた、締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書に基づく第1回報告書(提出期限・2009年3月2日)を可能なかぎり早期に提出するようにも慫慂するものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年11月1日)。