総括所見:スペイン(第1回・1994年)


CRC/C/15/Add.28(1994年10月24日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

総括所見:スペイン(第7会期、CRC/C/15/Add.28)

1.委員会は、1994年10月6日および7日に開かれた第171回、第172回および第173回会合(CRC/C/SR.171-173)においてスペインの第1回報告書(CRC/C/8/Add.6)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)1994年10月14日に開かれた第183回会合において。

A.序

2.委員会は、締約国に対し、包括的な報告書に関して、および高級レベルの代表団を通じて委員会との建設的かつ率直な対話に携わったことに関して評価の意を表する。委員会はまた、事前質問票(CRC/C.7/WP.1)に掲げられた質問への回答として、スペイン政府による情報が会期前に文書で委員会に提供されたことも歓迎するものである。ただし、時間がなかったことにより、文書によるその情報は提出された原語でしか利用可能とされなかった。

B.積極的な側面

3.委員会は、条約第38条2項および3項の規定に関してスペイン政府が条約批准時に行なった宣言、ならびに、18歳未満の者の徴募および武力紛争への参加を許さないという締約国の決意に、満足感とともに留意する。
4.委員会はまた、スペイン政府が報告書の作成にあたってとった、開かれたかつ自己批判的なアプローチも歓迎する。
5.委員会は、少年裁判所が過去にしたがってきた手続が違憲であると宣言した、1991年2月14日のスペイン憲法裁判所の判決を歓迎する。委員会は、憲法裁判所の判決が条約第40条2項(b)の文言を全文でかつ明示的に取り上げ、かつ、とくにスペイン憲法に集約された基本的権利は未成年者に対する刑事手続においても尊重されなければならないという結論に達したことに、満足感とともに留意するものである。
6.委員会はさらに、スペインにおいて、公務員によって行なわれた差別的行為が法律で犯罪と見なされていることを歓迎する。

C.主要な懸念事項

7.委員会は、子どもの権利の促進および保護のための政策の実施にあたり、中央当局と広域行政圏および地方の当局との間における効果的な調整が全面的に発展していないことに留意する。調整は、子どもに関わる経済的、社会的および文化的プログラムの実施にあたって拡大している格差を避けることを目的とした監視のためにも必要である。
8.委員会は、高い失業率ならびに経済的および社会的環境の悪化が子どもの権利に及ぼす影響を懸念する。
9.委員会は、保護者のいない、難民としての地位を得ようとする未成年者の取扱いのある側面が、各事案は個別にかつ実体審査にもとづいて処理されなければならないという原則に矛盾する可能性があることを不安に思う。このような未成年者の出身国の当局に自動的に通知を行なう慣行は、政治的理由による当該未成年者自身またはその近親者の訴追につながる可能性がある。
10.さらに委員会は、スペイン民法第154条が、親は「その子に対して合理的にかつ適度に罰を与えることができる」旨の文言を定めていることに懸念を表明する。このような文言は、条約第19条に反する行動を許容していると解釈される可能性がある。
11.委員会は、ひとり親家庭の割合が高いこと、ならびに、そのような家庭の子どもに対して必要なケアを提供するために特別なプログラムおよびサービスが必要であることに、懸念を表明する。

D.提案および勧告

12.委員会は、子どもの権利条約が全面的に尊重されかつ実施されることを確保する目的で、締約国が、中央、広域行政圏および地方(自治州を含む)のあらゆる行政レベルにおいて、憲法上および立法上の枠組みのなかで設けられている調整機構を強化し、かつ評価および監視を発展させるよう勧告する。
13.委員会はさらに、同国における状況の全容を把握し、かつ条約の実施における進展および困難の包括的かつ他分野にまたがる評価を確保する目的で、スペイン政府があらゆる必要な情報を集めるよう勧告する。このような評価は、格差および根強く残る偏見と闘うための適切な政策の形成を可能にするようなものであるべきである。
14.締約国は、条約第4条の実施にとくに注意を向け、かつ、中央、広域行政圏および地方のレベルにおいてバランスのとれた資源配分を確保するよう勧告される。経済的、社会的および文化的権利の促進および保護のために配分される予算を決定するにあたっては、子どもの最善の利益が第一義的に考慮されるべきであり、かつ利用可能な資源が最大限に配分されるべきである。
15.社会部門をさらに重視する可能性について評価を行ない、かつもっとも貧窮している子どもに援助を振り向けることを目的として、締約国が国際協力プログラムの見直しを検討することが勧告されるところである。
16.条約に関する情報の普及および意識啓発を行ない、かつ、移民の子どもおよびジプシーを含む脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対する差別的態度および偏見を防止するための措置がとられるべきである。この目的で、委員会は、条約に掲げられた基本的原則および規範に関する充分な研修を、法執行官、裁判官、司法運営に従事するその他の職員、および、さらに一般的に、条約の実施に関わる専門家に対して提供するよう提案する。
17.委員会は、子どもの権利の促進および保護に関わる活動およびプログラムへの公衆の参加を増進するため、締約国が、非政府組織および研究機関との既存の関係の制度化を検討するよう提案する。
18.さらに委員会は、スペイン当局に対し、国内法が条約の規定と全面的に一致することを確保するための法改正を継続するよう奨励する。これとの関連で、委員会は、法規定で用いられている用語を見直すこと、および、とくに、親は「その子に対して合理的にかつ適度に罰を与えることができる」と述べたスペイン民法第154条を見直して条約第19条に全面的に一致させることが法改正に含まれるべきことを、勧告するものである。
19.委員会は、締約国に対し、条約第15条に反映されている結社の自由および平和的集会の自由への権利も含む子どもの参加権を確保するため、法改正を検討するよう勧告する。
20.委員会はまた、スペイン政府が、国際養子縁組事案における保護のシステムを向上させるようにも勧告する。これとの関連で、委員会は、スペインに対し、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討するよう奨励するものである。
21.とくに第18条に照らし、双方の親が子育ての責任を遂行するにあたって援助を行なうシステムを強化するため、さらなる措置がとられるべきである。さらに、ひとり親の問題を研究すること、および、その特定のニーズを満たすための関連のプログラムを確立することが、提案されるところである。
22.委員会は、子どもの難民および庇護希望者ならびに保護者のいない子どもが子どもの権利条約で認められた権利を享受すること、ならびに、第10条にしたがって家族の再統合のための庇護の申請が積極的、人道的かつ迅速なやり方で扱われることを保障するため、スペイン政府があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
23.委員会は、スペイン政府に対し、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約への署名およびその批准を検討するよう奨励する。
24.締約国は、経済的搾取から子どもを保護することを目的とした条約第32条の規定の実施、および、締約国が批准した関連の国際労働機関条約の実施に、とくに注意を向けるべきである。
25.最後に、委員会は、スペインの第1回報告書、報告書が検討された委員会の会合の議事要録および同報告書に関する委員会の総括所見を刊行し、かつスペインにおいてできるだけ広く普及するよう刊行する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年11月26日)。