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締め切りの4日前も3日前も、心理的な意味において、あまり違いはないものだ。
実感のない焦りに、今日も大したネタは浮かばないだろうという諦めまで生まれた。
刺すように照り付ける直射日光。蝉だか何だか虫の声。額を伝う痒い汗……。
「うわぁあああ〜!」
ハルナは絶叫した。無駄な三日目、しかし、過ごさなければ二日目は来ない。
ハルナの背後で広辞苑を構えた夕映が、ぼそりと呟いた。
「散歩にでも出たらどうです?気分転換にはなるですよ」
「この蒸し暑い太陽の下を?」
ハルナは睨むように夕映を見返す。その目が広辞苑を捕えた。嫌な汗が昨夜の記憶を呼び起こす。
「……では図書館にでも」
夕映は気怠そうに付け加えた。ようは、追い出したいだけなのだ。夕映の本心はどうであれ、ハルナにはそう思えた。
「わかったよ、出ていけば良いんでしょ?」
スケッチブックを鞄に収めながら、ハルナは愚痴めいた言葉を溢す。
「いえ、決して、そういう意味で言ったのでは……ハルナ?話を聞いているのですか!?」
嗚呼、後ろで夕映が何か言ってる。玄関の扉を後ろ手に閉じながら、ハルナはため息を吐いた。
「どこに行こうかな……」
858殿、
な…何の事でごさるかなぁ…