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16-309
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/11/05(土) 21:56:14 ID:9Tdq7LVI0
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エヴァ 記憶
1/9
私はよく夢を見る
夢というのは記憶に残っていることが再生されることがある
だから私はよく夢を見る
人外の私は永遠とも思える時を生き、いろいろな記憶を持っているからだ
久しぶりにあの夢を見た。あの少年の夢を・・
その少年と出逢ったのはいつの頃であったかは覚えていない
たしか私が一人で生き抜いていけるほどの魔力と力を手に入れていた頃のはずだ
そんなとき、あの少年と出逢った
月も出ていない闇夜の空、私は血を求めて彷徨っていた
遠くに村が見えた。いくら闇夜であっても私は夜の眷属、夜は昼間以上に世界が見える
いけにえを求め、私はその村の近くに降り立つ
しかし、私はこの村を選んでしまった事を後悔する
そこは廃村であった。というより賊によって滅ぼされた村といったほうがいいだろう
これでは人などいるはずも無い、そう思ったときであった
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16-310
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/11/05(土) 21:57:03 ID:9Tdq7LVI0
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2/9
私は臭いを感じた。嫌な話ではあるがそれは糞尿の匂いである
この臭いがするということは誰かがいる可能性が高いという事なのだ
おそらくは生き延びたものが、この廃村にこっそりと住んでいるのだろう
私はその不幸な生者を求め廃村へと足を踏み入れた
他の家とは違い、ふた周りほど大きな家。おそらくは村長の家であろうか、臭いはそこから流れてくる
中に入ると、この大きな家も例外ではなく略奪を受けていた
ドアは破られ、中の家財道具は滅茶苦茶にされている。壁にはおびただしい血の跡が残り、その側にはバラバラになった骨が散乱していた
床は埃にまみれ、まったく手入れはされていない
しかし床を見れば足跡があった。これは明らかに生きている誰かがいる証拠だ
だが、少し気にかかる事があった。床にあるのは足跡だ。靴跡ではないのだ。そのことは私を少し落胆させた
いくらこの時代でも、靴とかサンダルみたいものぐらいは履く。履いていないのは浮浪者と気狂いぐらいだ
という事は、あまりおいしい血は期待できないという結論になるのだ
だが背に腹はかえられない。私はさらに奥へと進み血の犠牲者を捜した
一階の奥、そこはおそらくは亭主の部屋であろうか。私は破れたドアをくぐり中へ入る
このあたりから糞尿の臭いがきつくなってきた
私はマントで顔を覆い、部屋の中を見渡たす
壁の棚が倒れその向こうに舌へと続く階段がある
そこか・・・ふふ、待っていろ
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16-311
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/11/05(土) 21:58:14 ID:9Tdq7LVI0
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3/9
月夜の一筋も差しこまない暗い階段を下りる
コツコツという私の足音だけが響いていた、その時である
チャリ・・
鎖を動かす音が聞こえた
何故そんな音が聞こえるのか?そう思っていた私であったが、階段下まで降りたときその疑問が氷解した
そこは牢獄であった。木で出来た格子があり、おそらくはここで奴隷を飼っていたのだろう
格子は壊されていた。賊どもが壊していったのかどうかはもうわからない
その部屋にはなぜか魔道の器具が散乱し、床には魔方陣が描かれていた
私は奇妙な感覚におちいる。なんというのだろうか、どこかで見たことのあるような・・そうデジャヴというやつか
そんな感覚のとらわれていたとき、再び鎖の音が牢獄に響いた
音のするほうを見れば一人の少年がこちらを見て怯えていた
年のころは私の見た目より若いであろうか
髪の毛はぼさぼさで手足に枷とちぎれた鎖をつけ、ぼろきれを一枚まとっているだけの姿であった
全身垢だらけで、その姿はもう浮浪児といっても過言ではない
おそらくは奴隷、それも性的虐待が目的でここで飼われていたのだろう
部屋の奥にはそれに使うような道具も置いてあった
私はその少年に近づいてゆく
その少年は私を見てさらに怯え、壁際まで後ずさる
そのとき私はあることに気がついた
何故この少年はこの暗闇の中で私が見えるのであろうか
いくら闇に慣れていても、人間の眼ではこの闇の中では何も見えないはずだ
そう考えていたとき、私は先ほどのデジャヴの正体を思い出す
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16-312
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/11/05(土) 21:59:27 ID:9Tdq7LVI0
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4/9
10歳の誕生日のあの日、あの男が私にした悪夢の儀式
そのときに使われていた部屋と道具、それがここにあった
そう、こんな闇の中を見通せるのは闇の眷属だけだ
つまりこの少年は私と同じ闇の眷属なのだ。いや、闇の眷属にされた者なのだ
自然と涙がこぼれるのがわかる
吸血鬼にされ100年以上経つだろう、当然いろいろつらい経験をしている
苦痛や恥辱、恐怖で涙する事は多々あった
しかし自然と涙がこぼれたのはこのときだけであった
何故自分が泣いたのかはわからない
自分と同じ境遇の者を見つけた同情だからだろうか?それとも嬉しさであっただろうか、それはもう思い出せない
私は怯える少年を抱きしめる
少年が汚いとか臭いとかは思わなかった。ただ泣きながら抱きしめた
この少年と共に生きてゆきたい、そう思った
私はその少年を保護する事にした
その少年がいつからここにいて、そして何故この少年だけが生き残っていたのかはわからない
しかしそんなことはどうでも良かった。私は少年をその廃村から連れ出すと、自分の屋敷へと連れて行った
屋敷に戻ると少年の手枷と足枷を外し、その身を清めてやる
虐待を受けていたわりには少年の体には傷がついていなかった。吸血鬼の能力が傷を消し去ったのだろう
身を清め服を着せてやれば、それは美少年であった
誰がこの少年に吸血鬼の処理をしたか、それはわからないが理由はわかる
この美少年の姿を永遠に我が物にしたい、そう思ったのだろう
私を吸血鬼にしたあの男もそれが理由であったからだ
私は少年に問い掛けてみた
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16-313
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/11/05(土) 22:00:37 ID:9Tdq7LVI0
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5/9
エヴァ 「お前、名前は?」
少年は何も答えなかった。しばらくしてわかったが、少年は言葉を失っていたのだ。虐待が原因であろう
エヴァ 「話せないのか?言葉はわかるか?」
少年は怯えながらも頷く
エヴァ 「そうか、私はエヴァという。お前文字は書けるか?これに書いてみろ」
そう言って私は羊皮紙とペンを渡す、しかし少年はそれを持っても何もしない。使い方がわからないのだろう
エヴァ 「困ったな・・なんと呼べばいいのかな・・」
少年はペンを持ったまま私を見ている
エヴァ 「わかった、名前は私で勝手につけさせてもらう。そうだな・・ゼル、お前の名前はゼルだ。いいな!」
それから私とゼルの生活が始まった
一緒に暮らしてみたわかったが、ゼルはほとんど吸血鬼としての欠点だけしかもっていないといえる
不老、人間より少し優れた回復力、わずかな魔力、そんなものしか持っていない
おそらくは儀式が完全ではなかったのだろう
その上、日光には弱い、力は人間と同じ、変身能力は無い、空は飛べない、そして何より牙を持っていないのだ
だからゼルは血を吸うことが出来ない、何とか私が魔力を分ける事と食事で命をつなぐ事ができる
これではほとんど人間の能力と変わらない。いや弱点があるだけ人間以下であろう
もし、あの時ゼルと出会えていなかったら、ゼルは半年ほどで生き絶えていたかもしれない
これもめぐり合わせなのだろうか・・
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16-314
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/11/05(土) 22:02:49 ID:9Tdq7LVI0
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6/9
一月もすればゼルは私になつくようになった
はじめは私が近づくだけでも怯えたが、この頃には抱きついて甘えてくるようになる
いっしょに食事をして、読み書きを教え魔法も少し教えた
ただ残念なのは、ゼルの魔力が小さすぎて魔法が使えないということであった
また、ゼルは驚くほど頭が良かった。それが吸血鬼化の影響か元からなのかはわからない
私は教える身としては大変に嬉しかった。優秀な生徒で従順、おまけに可愛ければ愛情も湧く
ゼルが抱きついてきたときは優しく胸の中で頭を抱きしめ、頭を撫でてやる
そうすると私の胸でゼルは目をつむりじっとその感触を味わっているのだ。時々はそのまま寝てしまうこともあった
守ってあげたい、ゼルはそう思える存在となっていた
だが、二月目に事は起こった
ゼルといっしょに寝ていたときのことである
寝ていたといっても添い寝だ。性的な行いはやってはいない。このときまでは・・
いつものように私の胸の上でゼルが寝ていたときのことであった
ふと気がつけばゼルが潤んだ目で私を見つめている
寂しくなったのかと思い、私はゼルをもっと強く抱き寄せた
ゼルの体が近づくと、私の太ももに何か熱いものが触れた
そのときにゼルが何を求めているのかを理解した
ゼルも見た目は幼いとはいえ奴隷であったのだ。性的な経験はあるだろう、快楽を知っているのだ
私もそうだ。100年以上生きていればいろいろ経験する
時には実験体として監禁され解剖なんかもされた。その合間に変態的行為を受けた事もある
もちろんその後逃げ出し、きっちり復讐してやったが・・
私は悩んだ。ここでゼルと関係を持ってしまったら、あの男達と同類になってしまうのではないかという不安があったのだ
それゆえにいままで手を出さなかった
しかし今は違う。求めてきたのはゼルのほうなのだ、私はわがままにも自分にそう言い聞かせた
おそらくは世界に二人だけの同族。その絆を深めたい、離れたくないという思いもあった
こう思うのは私のわがままだろう、しかし私はその誘惑に勝てなかった
しばらく黙って見詰め合った後、私はゼルの唇を塞ぎ、熱く火照ったゼルの体を静めた
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16-315
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/11/05(土) 22:04:17 ID:9Tdq7LVI0
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7/9
その日からは時間も場所も気にせず、いつでも私はゼルの求めに応じた
また、私もゼルを求めた。ゼルも私の求めを拒むことなく私を愛してくれた
ベッドの中、船の上、森の中、水浴び場で、深夜の街の公園でも・・
唇を重ね、肌を合わせ、快楽に身をゆだねた。それが楽しかった、それが心地よかった
永遠に二人で暮らしていきたい。少なくとも私はそう思った
だが、別れというのはいつかは必ずやってくるという事を知った。本人達にはそれを知らせることなくやってくるものだと
二人で暮らしてどのくらいたったかはわからない
その日、私の屋敷に一組の侵入者があった
年のとらない妖しい姉弟が森の中にいるので退治して欲しい
そんな依頼を受けたごろつきだろう。そんなことを思っていた
しかし現実は違っていた。侵入者は訓練された部隊であったのだ
その中には魔法使いと思われるものもいた
侵入者達は私の用意した罠をくぐりぬけ、私たちのいる部屋へと入ってくる
私はゼルを守りつつ侵入者達の相手をしなければならなかった
はじめのうちは何とか持ちこたえていたが、そのうちに相手の攻撃が私をかするようになってきた
相手の攻撃を避けた弾みで私は体勢を崩した
そこに大男が大斧を振り下ろした。私の体に衝撃が走る、上からではなく横から・・
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16-316
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/11/05(土) 22:06:28 ID:9Tdq7LVI0
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8/9
私は先ほどまでいた場所とは別の場所に突き飛ばされていた
私のいた場所にはゼルがいる。大男の大斧で胴体を切断されたゼルが・・
ゼルの倒れている床には血溜まりが出来ていた。しかし、その血はみるみる灰となり虚空へと消えていく
私は侵入者達を魔法で吹き飛ばすと、急いでゼルの元へと駆け寄った
私はゼルの上半身を抱き上げる
ずるり、とゼルの上半身から内臓が床へと落ちた
私は急いでゼルの内蔵を体の中に詰めなおそうとしたが、床に落ちた内臓はすぐに灰となり消え去ってゆく
どうすることも出来ず、私は泣きながらゼルを抱きしめることしか出来なかった
やがてゼルの体も灰となり始める
私はゼルが消えてしまわないように魔力をゼルに供給したがそれも無駄な事であった
エヴァ 「ゼル!ゼル!消えるな!お願いだ!私を一人にしないでくれ!」
神は人外の私の願いなどは聞き入れてはくれなかったのだろう
ゼルは灰となり消えていった。最後に一言
ゼル 「エヴァ・・」
と言い残して
吹き飛ばされた侵入者達が私に近づいてきた
侵入者 「後を追えよ、死ね!」
そう言った侵入者達の武器が私の体に触れようとしたとき
エヴァ 「うわあああああああああ!!!」
私は叫んだ。全身を暴走した魔力で光らせながら・・
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16-317
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/11/05(土) 22:06:56 ID:9Tdq7LVI0
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9/9
その後の事は覚えていない
屋敷は暴走した私の魔力で吹き飛んだらしく、後には何も残っていなかった
侵入者達も・・ゼルも・・
私は屋敷跡を捜したがゼルの形見になるような物は何も残っていなかった
残っているのは私の記憶の中にだけだ
決して失ってはいけない記憶、それが私にはある。私が生きている限りゼルがいたという記憶が・・
私は目が覚めた。まだ泣いているのがわかる
私はベッドから起き上がると指で涙の後を拭った
チャチャゼロ 「ン、御主人泣イテンノカ?怖イ夢デモ見タノカ?」
エヴァ 「怖い・・そうだな怖い夢だ。だが、何度でも見たい夢だ。私しか見ることが出来ない夢だからな」
完
最終更新:2007年07月29日 02:31