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10-562
名前:メガネ大使@野球ネタ[] 投稿日:2005/09/16(金) 04:01:48 ID:7KHrP68L0
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「…女子野球大会?」
誰からともなく、声があがる。
「ハイ…なぜか私たちのクラスに参加して欲しいと学園長が…。」
申し訳なさそうにネギは言う。彼が10歳の少年である以上、その言葉が真実である可能性が高い。
「それで、今からメンバーを決めたいと思うのですが…。」
続けて発せられたネギの言葉に、クラスはまたざわめきたった。
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10-563
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 04:12:05 ID:7KHrP68L0
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数日後…まほら球場にて。
「なんだかんだで、いよいよねぇ…。」
試合開始を待つベンチの中、明日菜はしみじみとつぶやく。
今回は、ロボットである茶々丸と身体的に厳しいエヴァ、それと霊体であるさよ以外は、グレー基調のユニフォームに身を包んでいる。
「さぁ皆さん!この大会に優勝いたしましょう!」
「「「「「おーっ!!!!!」」」」」 うぁぁぁぁぁぁぁーあぁぁぁぁぁ…
あやかの号令とともにサイレンが鳴り、試合開始を告げた。
「これより、麻帆良学園対緑山学院の試合をはじめます。互いに…礼!」
「「おねがいしまーす!」」
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10-565
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 04:23:37 ID:7KHrP68L0
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”これより、麻帆良学園対緑山学院の試合を行います…”
高校野球を思い出させるアナウンスが、球場内に響く。
どうやらこれから、守備についた2-Aの選手紹介をするようだ。
”まず守ります、麻帆良学園の、ピッチャーは…長谷川さん”
”キャッチャー…ザジ・レニーディさん”
”ファースト…古菲さん”
”セカンド…佐々木さん”
”サード…神楽坂さん”
”ショート…春日さん”
”レフト…長瀬さん”
”センター…雪広さん”
”ライト…龍宮さん……以上でございます。”
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10-586
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 14:11:44 ID:7KHrP68L0
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”1回のオモテ、緑山学院の攻撃は…1番・センター、大間さん”
左の打席に、相手バッターが立った。プレイボールである。
基本的に千雨がサインを出し、それをザジが受ける形である。
サインの交換が終わり、第一球。
千雨らしい、無駄のないセットポジションから、白球が投げられた。
ビシュッ……カキーン
放たれたボールはど真ん中にすっぽ抜けて、結果としてピッチャー強襲の当たりとなる。
「ちっ!」
避けるのが精一杯だった千雨。後ろを振り向くが、まき絵も美空も取れないまま、センターのあやかのところまでたどり着いた。
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10-588
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 14:22:33 ID:7KHrP68L0
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「どんまいよ長谷川!次止めればいいからーっ!」
程なくして、三塁からアスナの声が飛んできた。絶妙なタイミングだな、と千雨は感心し、手を上げて応えた。
とはいえ、俊足であろう1番打者を出してしまったことに変わりはない。
どうすべきか考えていると、ザジがマウンドに上がってきた。
「…大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。ロージンが足りなかったみたいだな。」
「…ランナー、どうする?」
「…刺せると思うか?」
「…やってみる。」
「わかった、…信じてるぞ。」
コクリとうなずき、ホームへ戻るザジ。
千雨はその姿を見ながら、ロージンバックを手にとった。
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10-589
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 14:29:19 ID:7KHrP68L0
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”2番・レフト、伊東さん…”
次の打者がバッターボックスに立った。もうすでにバントの構えを見せている。
千雨はランナーにちらちら目をやりながら、投げるタイミングを計った。
そして…
千雨が振りかぶったと同時、ランナーが走り出した。千雨のモーションにムダはほとんどなかったが、モーションを盗んだ相手のほうが一枚上手だったようだ。
とにもかくにも、千雨は全力でストレートを放った。
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10-590
名前:以下、名無しにかわりましてモナーを取り返します[] 投稿日:2005/09/16(金) 14:36:15 ID:7KHrP68L0
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バシッ!
ストレートはアウトコースのボール球。バッターはそれを察してバットを引いた。
一方のランナー、これ以上はないだろうと言えるほど最高のスタートだった。
(いける!)
盗塁は確実に成功だ、そう確信した次の瞬間だった。
……パシン!
「!!?」
聞こえるはずのない…いや、あまり聞きたくないその音。
見れば、カバーに入っていた美空がこちらを向いている。
そして、二塁に到達した。
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10-591
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 14:46:01 ID:7KHrP68L0
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「アウトーーッ!!」
二塁塁審の手は、真横に広がらなかった。盗塁失敗である。
「よっしゃーっ!ザジナーイスっ!!」
「ナーイスマジックだよっ、ザジーっ!かっこいーっ!」
「やったーっ!ザジすごーい!!」
喜びに沸く麻帆良サイド。マウンドの千雨が、ベンチの朝倉が、夏美が、いっせいに声を上げた。
当のザジ本人はと言うと…。
「……ワンナウト。(にこっ)」
うれしそうに微笑んだかと思うと、人差し指で天を指した。
…それが、麻帆良学園・快進撃の始まりだった。
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10-605
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 20:08:28 ID:qXFFTfai0
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「アウトー!!スリーアウト、チェンジ!!」
ザジの盗塁阻止が流れを変えた。
千雨のピッチングはキレを増し、2番3番を内野ゴロにしとめた。
「長谷川、おつかれー。」
「ナイスピッチー。」
ベンチの面々から、千雨へのねぎらいの言葉がかかる。それと同じタイミングでザジへの賞賛がかかる。
「ザジ、すごかったよ。あの送球!」
「うん、受けた私もびっくりだったよー。」
カバーに入った美空がいう。ザジはそれに答えた。
「…曲芸部は……男の人を持ち上げることも…あるから、肩の辺りは…鍛えないとダメ…。
…それが…みんなの役にたったなら…私も…幸せ…。」
ザジは微笑みながら、淡々と告げた。とはいえ、俊足の1番打者の盗塁を阻止する肩の強さの非凡さに、ただただ脱帽するのみである。
「さぁ、今度はわたくしたちの攻撃ですわ。みなさん、行きますわよ!」
「「「おーっ!!」」」
自然とできた円陣から、元気のいい声が聞こえた。
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10-606
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 20:14:14 ID:qXFFTfai0
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”1回のウラ、麻帆良学園の攻撃は…1番・レフト、長瀬さん。”
コールが終わると同時、楓がバッターボックスに向かった。
「かえで姉、がんばれー!」
「大事なトップバッター、任せましたわよ!」
「楓!イッパツおみまいするアル!」
ベンチから、激励が飛ぶ。楓はいつもどおり飄々としながら言う。
「あいあい、期待は裏切らないでござるよ。」
細い目を一段と細めて、にこやかに打席に向かった。
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10-607
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 20:23:50 ID:qXFFTfai0
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楓は左打席に立ち、立てたバットをバックスクリーンへかざす。
「偉大な日本人がやっていた儀式でござる。…確かに、集中力にいい影響がありそうでござる。」
楓の背番号は、なぜか51だった。ユニフォームを作った千雨曰く、「どうしても51にしてほしい、って頼まれた。」とか。
何はともあれ、打席の楓が構え終わる。程なく、サイン交換の終わったピッチャーが大きく振りかぶった。
ビシュッ…コツッ
ボールはバットの根元に当たり、ショートの目の前へ転がった。並みの人間なら確実にショートゴロのコースとタイミングだ。
…そう、『並みの人間ならば』だ。
ショートがボールをとり、一塁へ投げようとしたところで、動作が止まった。
楓はすでに、一塁を駆け抜けていた。
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10-610
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 20:35:39 ID:qXFFTfai0
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みなさーん!美空の出番ですよー!
「楓さん、ナイスですー。」
精一杯の声を上げて、一塁ベースコーチの夕映が賞賛をあげる。
「にんにん♪」
一塁ベース上で楓はにこやかに笑い、バッティンググローブを夕映に渡した。
”2番・ショート、春日さん…”
「美空!しっかりねー!」
ハルナの声を後押しに、美空が打席に立った。
「よぉし…。」
美空はベンチを見やりうなずいた後、バットを立てて構えた。
「春日さん!がんばれ!あなたならできるよ!」
ハカセの応援が聞こえた。
「…私なら…できる。」
ぼそっ、とつぶやいたその言葉と同時、セットポジションからボールが投げられた。
ボールはアウトコース、ストライクゾーンぎりぎりの球だった。
意を決した美空は、バットを横に持った。
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10-612
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/16(金) 20:46:05 ID:qXFFTfai0
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コツッ…
響かなかった打球音、三塁線上に転がるボール。
…そう、美空はバントを決めにかかったのだ。
意表を突かれた敵の内野陣は、あわてて処理にかかるも間に合わない。
さらに楓の足が活きて、結果ノーアウト三塁・一塁の大チャンスを迎えた。
「やった!ナイスだよ、春日さん!」
ハカセの顔から笑みがこぼれた。
…実は大会前、ハカセは念入りな作戦を練っていたのだ。
楓の打席が左だったのも、美空にバントの指示を出したのも、すべてはハカセの頭脳にあった。その結果として、今の状況にいたっている。
”3番・サード、神楽坂さん…”
コールが明日菜の名を呼んだ。
今日は以上かな…。
明日明後日、続編いきまーす。
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10-684
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/18(日) 02:02:31 ID:ACCleeix0
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「アスナさん!」
コールが終わった直後、あやかが明日菜に声をかけた。
「いいんちょ…どしたの?」
「…が、がんばってくださいまし!」
少し赤い顔をしたあやかが言った。
明日菜は少しあっけにとられる。いつも争いあう仲であるあやかからの激励…それは意外なモノであり、何にも変えがたいほど大きなモノだった。
「…まかせて!この回はキッチリあんたまでつなぐんだからね!」
あやかを真っ直ぐ見つめた明日菜。心のくもりなどなかったはずだが、今はそれ以上のすがすがしさを感じる。
(…ありがとう、いいんちょ。)
…バッターボックスの中で、明日菜は小声でつぶやいた。
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10-685
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/18(日) 02:13:22 ID:ACCleeix0
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マウンド上のピッチャーは、少し動揺しているようだった。
一度セットポジションに入ったものの、間合いが悪かったのか、タイムをかけてセットを外す。
(そういえば……)
明日菜はそのとき、ふと目に入ったバッティンググローブに目をやった。
実はそのグローブ、今はいているスパイクと共に超からもらったものだった。
「試合当日、このスパイクとバッティンググローブを使ってヨ!」
「あ、ありがとう…でもいいの?高かったんじゃ…?」
「大丈夫ヨ!いいんちょサンが出資してくれたネ。」
「え!?いいんちょが!?」
「それだけ期待をかけてるってコトネ。がんばるヨ!」
「は、はぁ……。」
(なんっかアヤシいけど……ま、いっか。)
そうこうしている間に、ピッチャーがサイン交換を終え、セットに入った。
ガバ…ッ ビシュッ!
来たのはストレート、変化球だったとしてもこの速さならスライダーにしかならない。
ミートを狙って、明日菜がバットを出した。
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10-686
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/18(日) 02:21:39 ID:ACCleeix0
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カッキィィィィィン!!!
イヤに抜けた快音。振り切ったバット、飛んでいくボールの軌道…。
明日菜はインパクトの瞬間、思った…(…完璧!?)と。
打球は外野フライにしては高すぎる高さまで上がり、ボールを追っていたレフトとセンターは、フェンス手前で足をとめた。
その上をボールが通過し、気がつけば外野スタンドまでもを越え、ボールはそのまま場外へと消えていった。
「ホ、ホームラン!!」
球場全体があっけに取られていたが、審判の裁定を聞いた瞬間、場内が沸いた。
打った明日菜は、振りぬいた姿勢のまま固まっていたが、審判に声をかけられようやくダイアモンドを一周しだした。
「ウン!完璧ネ!」
「大成功、だよね!」
…唯一、超とハカセの二人だけは、ボールが飛んだ瞬間から喜んでいたが。
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10-813
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/20(火) 06:21:54 ID:saLK0a540
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明日菜がベンチに戻ると、先ほどのホームランをたたえようとみんなが集まってきた。
「アスナすごかったわぁ。ウチびっくりしてもーたわ。」
最初に口を開いたのは木乃香だった。明日菜は笑顔を見せて言った。
「あ、あはは…。私もあそこまで飛ぶとは思わなかったし…いいんちょがくれたグローブとスパイクのおかげかな…?」
「…アスナさん、わたくしがどうかいたしましたか?」
会話にあやかが混ざってくる。
「あぁ、あんたがこのグローブとスパイクくれたんでしょ?」
「…わたくし、そのようなことは存じませんわ。」
「……はぁ?」
これにはさすがに驚いた。これを聞いて何かに気づいたか、明日菜が超に言い寄る。
「…チャオ、あんたいいんちょの名を使って実験してたでしょ!」
「ア、アハハ…。」
乾いた笑いで場を流そうとする超だったが、沈黙の中から沸く明日菜の殺気に負け、ハカセと共にすべてを話した。
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10-814
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/20(火) 06:43:58 ID:saLK0a540
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「見ての通り、このクラスじゃ飛ばし屋…ホームランバッターがいないのネ。せつなサンならなんとか飛ばせるかもしれないケド、あいにく木乃香サンの護衛があるネ。」
「そのときたまたま、ネギ先生を蹴り飛ばした明日菜さんを見ちゃったんですよ…。」
「子供ではあるけど、あのネギ坊主を天高く飛ばせるあの脚力をフルに使ってみたかったヨ。」
「…それでウソをついて実験に協力させた、と。」
「そうネ。本当にごめんなさいヨ。」
超は自分の無礼をわび、深々と頭を下げた。黙ってそれを見ていた明日菜だったが、
「…まぁいいわ。チャオに利用されたのはちょっと癪だけど、おかげで先制できたからヨシとするわ。」
と言った。
「ありがとう、明日菜サン。もうこんなことは二度としないネ。」
超は頭を上げたあと、再び頭を下げた。
なにはともあれ、麻帆良学園に3点が入った。
”4番・ファースト、古菲さん…”
そして古菲がコールされ、観客がざわめく中で打席に立った。
「さぁ、ワタシが相手アル!かかってくるアルヨ!」
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10-818
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/20(火) 10:11:48 ID:Y80ZY01A0
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古菲が構えると、また球場がざわめいた。
…バットをビリヤードのキューを持つように構え、片足をあげた状態で右打席に立っているのだ。
その姿はさながら、バットを武器にお得意の中国拳法で相手を張り倒さんとする姿である。
審判も驚いたが、古菲が本気である事を感じ取り、プレイをかけた。
ピッチャーは明日菜の場外ホームランで動揺していたが、古菲の構えにさらに動揺した。
だが、今はそうも言ってられない。
意を決して、ピッチャーはモーションに入った。
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10-820
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/20(火) 10:48:19 ID:Y80ZY01A0
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ガバァ…ビシュッ
ピッチャーが投げたボールは、あろうことか、古菲の顔面へ向かっていた。
完全な危険球…よけるのが普通であるこのド悪球だが、古菲は違った。
「アイヤーッ!!!」
カィィン…
ファウルゾーンへ転がるかと思われたボールは、普通なら聞こえない音を残して、明日菜のホームランとは逆のライト方向へ。
その打球をライトがフェンスまで追っていったが、その上をボールが通過した。
古菲のホームランを見送ったピッチャーは、愕然とする。
そして思い出す、古菲のバッティングを。
危険球であるにも関わらず、引くそぶりを見せない古菲は、バットを顔の前に出した。
「アイヤーッ!!!」
声をあげた次の瞬間、バットが回った。…いや、正確にはバットを手首で回したというべきだ。
…つまり、手首だけでライトスタンド最前列まで持っていったのだ。
プロの選手でさえ無理な話を、古菲はやってのけた。
…ピッチャーは、この回でマウンドを降りた。
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10-907
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/21(水) 06:59:28 ID:+Ui4NXYE0
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その後は一方的だった。
結局古菲のあと、龍宮・あやか・まき絵と凡退してしまったが、2回に早くもこの日2本目となる明日菜の満塁ホームランが飛び出した。
さらに5回には、古菲・龍宮の連続ヒットのあと、ワイルドピッチとあやかのタイムリーで10点目をあげた。
守備の面では、初回にザジが盗塁阻止を決めてから千雨は少し立ち直ったものの、それでも毎回ランナーを出す厳しいピッチングだった。
しかし、それを救ったのはバックの守備だった。
2回、ランナー2塁の場面で、千雨はライト前にヒットを打たれた。ランナーは3塁を回ってホームへ向かってきた。
あわや失点、という場面で龍宮が魅せた。
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10-908
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/21(水) 07:00:51 ID:+Ui4NXYE0
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ひゅーー……ん、バシッ!
龍宮が返球したボールは、ザジとザジのミットをほとんど動かすことのないほど正確な返球を見せ、ランナーをホームでタッチアウトにした。
3回に魅せたのはまき絵だった。
一死ランナー1塁の場面で一、二塁間をやぶらんとするライナーが飛んできた。
まき絵はそれをダイビングキャッチし、そのまま飛び込み前転して、ランナーが飛び出していた一塁へ送球、ダブルプレーを演出した。
その姿はさながら、新体操の演技のようにも見えたという。
極めつけは4回のあやかだった。
センターに入るか入らないかのホームラン性の当たりを追い、フェンスによじ登ってその打球を取ったのである。
ネギに自分の雄姿を見て欲しいのか、はたまたチームの勝利のためか、とかくあやかは意地を魅せた。
最終回はザジから替わったハカセと千雨から替わった超のバッテリーでしめてゲームセット。
結局コールド勝ちを収めたのである。
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12-77
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/24(土) 19:53:47 ID:bZ7DS7Xa0
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順当に勝ち進んだ一同は、ついに決勝にたどり着いた。
相手は前回大会の覇者、蒲田実業である。
麻 帆 良 蒲田実業
7 長 瀬 白 石 9
6 春 日 桑 谷 4
5 神 楽 坂 神 田 5
3 古 菲 大 沢 1
1 龍 宮 田 中 3
2 桜 咲 佐 久 間 9
4 佐 々 木 皆 川 8
8 雪 広 門 脇 2
9 ザ ジ 坂 東 6
同じオーダーを組まない麻帆良。
今回は、真名・刹那のバッテリーでチャンピオンに挑戦するようだ。
「せっちゃーん!がんばってなー!」
明日菜・あやかと共に刹那に説得した木乃香が、刹那へ手を振る。
刹那はそれを見ると同時、意を決したかのように、軽くうなずいた。
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12-78
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/24(土) 20:11:26 ID:bZ7DS7Xa0
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試合毎にスタメンを変えるのには訳があった。
正直な話、練習だけでは実力が見抜けなかったことが最大の理由だ。
試合によって実力を見るのと同時、試合によって起こる調子の変化を見る。
和美・超・葉加瀬・あやかのブレーン4人衆は、満場一致で決めたのだ。
…もっとも、超と葉加瀬はあまりまともに考えていなかったので、和美とあやかによる作戦ともいえるのだが。
「みなさん!あと1試合ですわ。」
一同の円陣の中であやかは、いつも以上に張り切って言う。
「これに勝てば優勝です!ネギ先生のためにも、必ず持ち帰りましょう!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
威勢のいい声がまた、球場にこだました。
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12-79
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/24(土) 20:26:02 ID:bZ7DS7Xa0
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”1回のオモテ、蒲田実業の攻撃は…1番・レフト、白石涼さん。レフト、白石さん…”
相手の先頭打者がコールされ、試合が始まろうとしていた。
マウンドに立つ真名と刹那はサインの確認と共に、こんな話をしていた。
「…しかし変わった風の吹き回しだな。私と刹那の組み合わせとは…。」
「あぁ、わたしもお嬢様たちから聞かされたときはビックリした。」
「私達の連携…か。仕事とはまた違う気分だ…。」
「…わたしはお嬢様が望むようになってくれれば、それでいい。」
「大丈夫さ…私達なら、な。」
「…そうか。」
そういうと、刹那はマウンドを降りていった。
(…『パートナー』、ねぇ…。)
真名は刹那の背中を見ながら、ロージンに手をかけて思った。
審判の手が上がったのは、マウンドにロージンが落ちたと同時だった。
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12-80
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/24(土) 20:42:42 ID:bZ7DS7Xa0
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「プレイ!!」
審判からの声と共に1球目のモーションに入る真名。
クラス一の上背を持つ彼女が振りかぶる姿は、さながらプロのマウンドで投げる大柄な外国人ピッチャーのそれと同じくらいの威圧感がある。
ビシィッ!
高々と上がる手、遅いリリース、伸びて上から降ろされるボール…大柄な特徴をいっぱいに利用して放たれたボールは、これ以上ない厳しいコースにずばっ、と決まった。
「ストライーック!」
左バッターの内角高めいっぱいに決まるストレート。試合の1球目としては最高の球だ。
ボールが返り、マウンドをならしてセットする真名。早いテンポで2球目を投げた。
ビシュァッ!…キィン…
放たれたシュートボールを、バッターがなんとか当ててファウルにする。
ポーカーフェイスを維持したまま、真名は返ってきたボールをグラブの中で握りながら刹那のサインを見た。
…少し目が細くなったと同時、真名は振りかぶった。
ビシュッ!…ブゥゥン…
放たれたボールは高く浮いた後、落ちたかと思うと、手元でシンカーのごとくバッターの外角低めに落ちていき、見事三振にしとめた。
プロもあまり使わない、サークルチェンジという球種で、真名は先頭バッターを三振に切ってみせた。
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12-130
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/25(日) 03:08:06 ID:CefmGSHN0
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「ストライークッ!!バッターアウトッ!!」
結果として真名は、2人を三振、1人をサードゴロにしとめ、上々の立ち上がりでベンチへ戻る。
「いいぞ、龍宮。この調子だ。」
受ける刹那も立ち上がりの良さをほめ、励ます。
”1回のウラ、麻帆良学園の攻撃は…1番・レフト、長瀬楓さん。レフト、長瀬さん…。”
いい流れを持続させるべく、楓が打席に入る。
「ん、今日もいくでござるよ。」
長瀬の打撃成績は16打数11安打、準決勝で放った先頭打者ホームランが1本ある。
忍者走塁を見せる楓は、敵ピッチャーの脅威ともなっていた。
ビシュッ!
相手ピッチャーの投げたボールは、真っ直ぐホームベース上に寄ってきた。
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12-198
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/26(月) 06:58:25 ID:6dSTv3xI0
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カィン…
楓の当たりはファーストゴロ。さすがの楓の足もファーストにボールが行っては意味をなさない。
”2番・ショート、春日美空さん。ショート、春日さん…。”
「麻帆良の安打製造機」(朝倉命名)が凡退し、いぶし銀・美空がバッターボックスに立つ。
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12-276
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/27(火) 10:22:38 ID:Qov+KjPg0
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「「いーけ、いーけ、みーそーら!かっとばせー、みーそーら!」」
鳴滝姉妹がお決まりの応援で美空を送った。
楓が凡退した以上、送りバントという選択肢はない。
こうなれば、ヒッティングで外野に飛ばすか、セーフティバントで内野安打を狙うかになる。
(ここで私が出塁すれば、明日菜さんとくーさんで帰ってこれるかもしれない…。)
言えることは、先制するためには出塁せねばならないということだけ。
陸上部で経験する緊張感とはまるで違うプレッシャーが、美空を襲った。
バッターボックスに立った美空。
朝倉からのサインは…「自分の思うとおりに行け」。
意を決した美空は、帽子のつばをつかんだ。
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12-277
名前:メガネ大使[] 投稿日:2005/09/27(火) 11:18:49 ID:Qov+KjPg0
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バットを短く持ち、オーソドックスなスクウェア・スタンスで、美空は打席に立った。
「プレイ!」
美空の耳に審判の声が聞こえた。
その声から間が空くこと数秒、ピッチャーが大きく振りかぶって…投げた。
美空は、それと同時に動いていた。
ビシュッ!
ボールがピッチャーの手から離れた頃には、美空の手にあるバットは横になっていた。
予測していなかったであろう相手の内野陣は、慌ててバントシフトに切り替える…が。
バスッ!
「ボール……ワンボール!」
やや外角にそれたボールに気づいた美空は、バットを引いた。
ボールはストライクゾーンから外れた。
「美空、がんばれーっ!」
ベンチから応援が飛ぶ中、美空が三塁コーチののどかを見た。
サインは先ほどと変わらず「自分の思い通りに〜」。
軽くうなずくと、美空はバッターボックスに戻る。
よく見ると、相手の内野陣は前進守備隊形になっていた。
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12-330
名前:メガネ大使[美空の応援?クス!] 投稿日:2005/09/28(水) 07:18:52 ID:unU+TQv00
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それを見た美空は、スクウェア・スタンスを崩してバントに切り替えた。
相手ピッチャーが振りかぶったのは、美空が動いた直後だった。
ビシュッ!
手からボールが離れたときには、サードが定位置とホームの真ん中あたりまで前進していた。
完全にセーフティ・バントを警戒した守備陣だった。
しかし美空のバットから、響かないはずの音が響いてきたのだ。
カィィ…ン
美空は、たたきつけるようなヒッティングに移行したのだ。
狙いはもちろん、前進してきた三塁方向。
多少引っぱり気味のバッティングは、見事にサードの目の前で高くバウンドし、レフト線に沿うように転がっていった。
自分の打球音が、スタートだった。
クラウチングスタートからの体勢ではないため万全ではないものの、そのヒットを二塁打にするのは容易だった。
三塁ベースの近くにはショートがいたが、球足が打球に追いつけなかった。
ボールがレフトへ転々とする間に、美空は一塁を蹴り二塁に向かった。
そのままフェンスに当たったボールは、レフトの手によって二塁に投げられるものの、二塁へボールが到達する前に美空が到達するの明らかだった。
バントシフトの裏をかいたツーベース、美空の思い描いた最高の成績だった。
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12-399
名前:白球の先(仮):決勝1回ウラ一死二塁[] 投稿日:2005/09/29(木) 06:50:31 ID:Kw8IUVfX0
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”3番・サード、神楽坂明日菜さん。サード、神楽坂さん…”
決勝だけあって、観衆の盛り上がりもなかなか大きい。
美空のツーベースの後、先制点をめぐる攻防に、観客が沸いていた。
そして、彼女の名前がコールされると、その盛り上がりがまた増す。
現在の麻帆良学園のポイントゲッターにして、大会屈指のスラッガーと注目された明日菜。
現に今大会、準決勝までの4試合でホームラン5本を打っているのだ。
打点もチーム最多の18打点と、MVPの最有力とまでいわれる活躍がある。
ひとえに超とハカセの発明も加担しているのは事実だが、それを上回る勝負強さがなければ、ここまでの成績はなせないのである。
おかげで彼女の株が急上昇、ファンクラブまでできる始末である。
その明日菜が、バッターボックスに立つ。
…なぜか外野席からは、「とんぼ」の合唱が聞こえてきた。
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12-406
名前:白球の先@決勝1回ウラ一死二塁・打者:明日菜[美空強化週間に便乗] 投稿日:2005/09/29(木) 10:15:27 ID:Wnfb0Ht50
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おーおーおーおーおおー、おおおおーおー…
球場が有名な歌で包まれるという異様な雰囲気の中、明日菜は打席に立つ。
ピッチャーは動揺していないようではあるが、この雰囲気に少々押されているようにも見える。
明日菜はいつもどおり、落ち着いて構えた。
構えができたと同時、相手ピッチャーが振りかぶる。
がばぁ… ビシュッ!
ピッチャーの投球と同時、二塁の美空が走り出した。
だが投げられたのはストレート、三盗では間に合わない可能性が高い。
投球もそれを見据えてか、右バッターの明日菜の内角に入ってくる。
バスッ!
「ボール!」
審判のボールの声もそこそこに、キャッチャーはボールを三塁へ送球する。
投げられたボールは速く正確で、程なくして三塁に到達する。
同じタイミングで、美空が三塁に侵入してきた。
ズザァァ…
タイミングとしてはきわどいところ、アウトでもセーフでもおかしくない。
審判の判断に、注目が集まった。
「セーフ!セーフッ!」
手が真横に広がり、美空の盗塁が認められた。
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12-410
名前:白球の先(仮)@決勝1回ウラ一死三塁・打者:明日菜[] 投稿日:2005/09/29(木) 12:19:42 ID:Wnfb0Ht50
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沸く、沸く、沸く。
美空の行動は絶大な影響を及ぼした。
たとえ明日菜が外野フライかヒットなら先制点は確実に、内野ゴロでもタイミングと方向次第では点を取れるからだ。
麻帆良のいぶし銀、不動の二番、隠れた実力者。
なくてはならないその実力は、明日菜に引けを取らない活躍ぶりを見せる。
「「「いいぞ!いいぞ!み・そ・ら!!いいぞ!いいぞ!みーそーら!!」」」
いつのまにか応援は、鳴滝姉妹とチアリーダー3人組の計5人になっていた。
チアリーダーが入ったことによって、応援はさらに大きくなる。
「「かっとばせー、あーすーな!!」」
必然的に明日菜への声援も増す。
おーおーおーおーおおー、おおおおーおー
「とんぼ」はまだ、なりやまない。
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12-476
名前:白球の先(仮):決勝1回ウラ一死三塁・打者:明日菜[] 投稿日:2005/09/30(金) 06:44:55 ID:J4U56Jrg0
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ボールワンからの二球目、ピッチャーがサインの交換を終える。
ヘルメットの奥からピッチャーを見つめる明日菜。
その視線に気づいているのか否か、とにかくピッチャーが振りかぶる。
がばぁ… ビシュッ!
ランナー三塁で盗塁の心配がない分、ランナーの警戒は弱くなるが、細心のコントロールで投げねばならないこの状況。
明日菜もそれを察してか、わずかにタイミングを遅らせる。
その予想通り、来た球はシンカー。真ん中低めに入ってくる。
明日菜は迷わず振りぬいた。
カイィィン…
抜けた快音ではあったが、芯を食った打球とは程遠い。
ギリギリスタンドに入るか入らないかの高さと軌道である。
右中間に飛ぶ打球を、ライトとセンターが追っていく。
軽く風に流されたボールが、ライトフィールドの方へ戻っている。
フェンス際、ライトが背をフェンスに預けてフライにした。
美空は深い深いライトフライを見届けて、三塁から走り出す。
先ほどの盗塁を遠目に見ていたライトは、急ぐことなく中継に送る。
中継のためにボールを受けたセカンドが、美空のホームインを見届けた。
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12-572
名前:白球の先(仮):決勝1回ウラ二死[] 投稿日:2005/10/01(土) 17:11:25 ID:aMjTt69l0
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わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…
球場全体がゆれた。
きっちり仕事を果たした明日菜に、その仕事を無駄にしなかった美空に、さまざまな思いが球場を沸かせた。
「「いいぞ、いいぞ、アスナ!いいぞ、いいぞ、アスナ!いーぞ、アスナ、絶好調!ハイ!」」
無論、麻帆良ベンチも沸く。沸くといったら沸く。
「アスナーっ!!」
「へ…うわわっ!?」
先制点の立役者・明日菜に木乃香が抱きつく。
「アスナなら絶対やってくれると思ってたわぁ!」
「へへっ、それは美空に言う言葉だよ。」
美空は出塁と好走塁のダブルで賞賛が入る。
「さすが陸上部、たよりになる足してるぅ!」
「明日の見出し、『いぶし銀・美空の好走塁!!』ってタイトルで特集組んでいいかなっ?」
「すごいな、美空殿。今度拙者の訓練に付き合ってくれるでござるか?」
風花が、朝倉が、楓が、みんなが賞賛した。
「え、えへへ…ちょっと恥ずかしいな…。」
真ん中で少々赤くなる美空だった。
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12-573
名前:白球の先(仮):決勝1回ウラ二死・打者:古菲[] 投稿日:2005/10/01(土) 17:16:46 ID:aMjTt69l0
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”4番、ファースト・古菲さん…ファースト・古菲さん…。”
「ツギはワタシアル!ミソラに続くアルね!」
ネクストバッターズ・サークルの古菲は、十二分の気合を見せていた。
「くーちゃん、落ち着いてねー!」
美空がエールを送る。それに答えるかのように、
「わかってるネ、ミソラ!さぁ、来るアル!」
と、バットを例の構えで持ち、投球を待った。
「うむ、いい気合の入り方でござる。」
「いささか気合が入りすぎているようにも見えるが、な。」
楓と真名が、しみじみと言う。古菲には聞こえない声で。
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12-589
名前:白球の先(仮):決勝1回ウラ二死・打者:古菲[] 投稿日:2005/10/01(土) 20:09:47 ID:aMjTt69l0
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古菲からの威圧、観客の声援が起こす威圧。
ピッチャーはその威圧をものともしないと言った顔で、古菲と対峙する。
古菲もまた、ピッチャーの威圧感を受ける。
威圧対威圧、しかし気合対冷静。
同じようで正反対、まさに竜と虎が対峙するかのごとき迫力がある。
とまっていた時間は過ぎて、ピッチャーがようやく動き出した。
がばぁ…
その音ですら尊い戦いが始まろうとしている。
ビシュッ!!
切り裂くような音が鳴る。うなるような球が来る。
古菲は、そんな対戦を喜んでいた。
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12-597
名前:白球の先(仮):決勝1回ウラ二死・打者:古菲[] 投稿日:2005/10/01(土) 21:55:29 ID:aMjTt69l0
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キィィン…ガシャッ!!
「ファーウル!!」
強い手首の影響を受けたスイングは、惑うことなくボールを捕らえようとするも、軽く掠めてバックネットに刺さった。
(む…なかなかやるアルネ…。)
どうやら手首のパワーと球威は互角のようだ。
あの威力では、芯を食った打球でもせいぜい外野フライだろう。
となると、技術力の勝負か…。
がばぁぁ…
間隔を狭めて投げるピッチャー、十分に振りかぶって投げた。
ビシュッ!!
投球は左バッターである古菲の外角、高めの球。ストレートと読む古菲はバットを出す。
しかし、軌道が微妙に変わったかと思うと、今度は真下へストンと落ちてくる。
きるるる…
古菲は手首だけでまわす分不利である。
キィン…
「ファーウル!」
それでも食らいつく古菲、なんとか手首で軌道を微調整してフォークボールに当てていった。
技術力もパワーも、どちらも互角の戦いとなった。
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12-749
名前:白球の先(仮):決勝1回ウラ二死・打者:古菲[] 投稿日:2005/10/04(火) 01:25:50 ID:dnczus0X0
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(ツギできめるアル…!)
ファウルながらもラインギリギリの当たり。
古菲は少なからず手ごたえを感じていた。
ツーストライクと追い込まれながらも、どこか楽しそうでもあった。
がばぁ…
古菲が待ちに待った三球目、ようやくピッチャーが振りかぶった。
ビシュッ!
軌道は真ん中高めのストレート。速さからほぼ間違いないだろう。
古菲は三球とも迷うことなく振る。
キィィン!
鋭く入ってきたストレートは、古菲の手によってさらに鋭い打球となった。
三遊間ド真ん中のコース、ヒットは間違いないはずだった。
バシィッ!
「アーウト!スリーアウト!チェンジッ!」
意外な音がしたのは、一塁到達直前だった。
古菲が振り向いた三遊間の先には、グラウンドにうつ伏せで寝ていたショートの上げる片腕があった。
ショートライナーという結果ながらも、古菲はニヤリと笑った。
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12-845
名前:白球の先(仮):決勝4回オモテ・打者:大沢[] 投稿日:2005/10/05(水) 22:10:49 ID:jVZfsC0P0
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龍宮と刹那のバッテリーはなかなかだった。
強豪の蒲田実業に三塁を踏ませないピッチングは圧巻だった。
打線もそれに続いて追加点を上げたいところだが、そこは昨年の王者、初回にあげた明日菜の犠牲フライの1点だけに抑えられていた。
試合は、そのまま投手戦になると誰もが思っていた。
だが、変化は唐突に訪れた。
”4番、ピッチャー・大沢さん。ピッチャー・大沢さん…。”
4回のオモテ、ワンナウト。バッターは四番。
落ち着いて投球すれば、このバッターも打ち取れるはずだったが。
カィィィン!!
すっぽ抜けてど真ん中に入った球はジャストミートされ、スタンドへと消えていった。
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12-889
名前:白球の先(仮):4回オモテ終了[] 投稿日:2005/10/06(木) 12:20:17 ID:en5WXR5r0
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「どうした龍宮、お前らしくもない。」
バッターが三塁を回ったあたりで、刹那が真名に寄る。
「すまない。変化球がすっぽ抜けてしまったようだ。」
「…過ぎた事は仕方ない。だがどうする?交代するか?」
刹那がベンチ方向を見る。龍宮が一瞥すると、すでに朝倉がマウンドに向かっていた。
「…まぁ、決勝だからな。心配なのもわかる。」
「どうする?この後のことはお前に任せるが?」
「……」
龍宮は考え込む。その間に朝倉がマウンドに上がってきた。
「桜咲、龍宮、交代しておく?」
「あぁ、今その事について龍宮と話していた。」
「了解。あたしは二人に任せるけど?」
朝倉は言う。木乃香を使ってまで刹那を試合に出した気負いがあっての発言に他ならなかった。
”麻帆良学園、選手の交代をお知らせします…。”
交代を告げるアナウンスが鳴り響いた。
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13-532
名前:白球の先(仮):4回ウラ・投手:龍宮→長谷川[] 投稿日:2005/10/14(金) 15:25:02 ID:pAqnX30D0
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”麻帆良学園の選手の交代をお知らせします…”
唐突にアナウンスが響いた。
”…キャッチャーの桜咲さんが、退きまして…長谷川さんが入り、ピッチャー…”
”ピッチャーの龍宮さんがライト、ライトのザジさんがキャッチャー…以上の様に変わります…。”
”5番・ライト、龍宮さん。6番・ピッチャー、長谷川さん。9番・キャッチャー、ザジさん…以上の様に変わります。”
ここに来て、初戦に先発した千雨がコールされた。
「ふぅ…いくか。」
「(コクリ)]
千雨の一言で、試合が再開された。
”バッターは…5番・ファースト、田中さん…。”
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14-248
名前:白球の先:4回ウラ一死[] 投稿日:2005/10/19(水) 13:13:37 ID:XmyyIaKK0
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千雨は初戦以降、調整登板もないまま今日を迎えた。
(やっぱり最初はビシッと決めといた方がいいか…)
軽く気合いを入れた千雨が、そのままセットに入る。
千雨のフォームは、無駄な動きが無いことから「省エネ投法」と言われる様になった。
運動や面倒事が嫌いな千雨の性格柄だろうか、そのフォームでそれなりのスピードとコントロールを持つ。
ガバッ…ビシュッ
セットから投げ込まれるテンポは早く、打者はタイミングが微妙にズレるようだ。
バスッ
「ストラ−イク!」
今日の千雨は好調のようだ。千雨は笑みを漏らしている。
最終更新:2007年07月29日 02:33