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3-904
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/16(土) 01:04:53 ID:monMMQ5j0
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百合の花園の乙女達 序章その1
正面に図書館島を望み、右手に連絡橋を望む東屋。
開放的なロケーションに反し、その立地から人目に付く事のない穴場であった。
夕立の雷鳴が轟くその東屋の中に、2人の少女の姿が浮かび上がっている。
「なぁ・・・夏休み、どうするんだ?」
一方の少女が問い掛ける。しかし、もう一人の少女はその問い掛けには答えない。
その代わりに、問い掛けた少女の瞳を見つめる。
二人の少女の間に、沈黙の時間が流れてゆく。しかし、その沈黙は決して重いものでは無く。
とても甘く、そして切ないものであった。
やがて問い掛けられた少女は、問い掛けた少女の首にその腕を回す。
そして少女達は、その瞳をゆっくりと閉じて、そして静かに唇を重ねあう。
雷鳴の青白い光に、折り重なった少女達が照らし出されていた。
数刻の後、雷雲は遠ざかり、湖面は静寂を取り戻しつつあった。
東屋の中の少女達は、乱れた制服のまま寄り添い、静かに息を整えていた。
「夏休み、どうするんだよ?」
もう一度少女が問い掛ける。問い掛けかれた少女は、答えの言葉の代わりにもう一度唇を求める。
「んっ・・・・・私と一緒なら・・・何処でもいい訳か?・・・」
問い掛けられた少女は、静かに頷く。そして少女達は、もう一度唇を軽く重ねて寄り添う。
過ぎ去った雷雲の隙間から、赤い夕日がカーテンの様に浮かび上がっていた。
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3-935
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/16(土) 02:21:03 ID:monMMQ5j0
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百合の花園の乙女達 序章その2
目の前に並べられた数台のカメラを、少女は一つづつ手に取り、眺めていた。
しかし、そのカメラを手入れする訳でも無く、ただ眺めているだけであった。
「どうしたんですか?朝倉さん」
物憂げな少女の後姿に、淡い光を纏った少女が問い掛ける。
問い掛けられた少女は、切ない瞳で見つめ返す。
悲しい視線が交錯し、二人の少女を沈黙が包む。
「あ、・・あのさ・・・さよちゃんって、学園から出られないんだよね?・・」
重苦しい沈黙を破り、カメラを握り締めた少女が問い掛ける。
問い掛けられた少女は、問い掛けた少女が何を想っていたのかを理解した。
少女の放つ淡い光の中で、真珠の様な涙がより一層輝く。
「朝倉さん・・・・・」
濡れた瞳が、お互いの姿を映し出していた。
そして淡い輝きの中、少女達の姿は重なり溶け合い、深層の世界へと沈んでゆく。
「この学園、知られてないいい場所が色々あるんですよ?」
「そうなんだ・・・案内してよね・・」
深層の世界の奥深くで、少女達はお互いの魂の力で、直接触れ合い、折り重なっていった。
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4-117
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/17(日) 01:09:52 ID:9N4zSv9v0
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百合の花園の乙女達 序章その3
夕暮れに照らし出された世界樹の下、風斬りの音が聞こえる。
凛とした少女が、木刀を握り締め修練に励んでいた。
その瞳の奥では、命を架けた決意が静かに燃えている。
一心不乱に木刀を振るその少女から飛び散った汗が、夕日に照らされ宝石の如く輝いていた。
「キレイやなぁ・・・・」
その光景を見守っていた少女が、ぽつりと呟く。彼女こそが、鍛錬に励む少女が護るべき存在であった。
護られる少女の潤んだ瞳に映っているのは、自分を護るべく汗を流す少女の姿。
やがて日が沈み始め、穏やかに吹き抜ける風は、涼し気に変わってきていた。
「せっちゃん、もうそろそろ・・・」
見守っていた少女は、そう言ってタオルを差し出す。
「あ、はい・・そうですね。」
修練を止めた少女は、そう言って振り返る、そして微笑みと共に差し出されたタオルを頬を赤らめて受け取る。
石鹸の清楚な香り漂うタオルに、少女は顔を埋る。汗が吸い取られてゆく変わりに、淡い優しさが染み込んでくる。
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4-118
名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2005/07/17(日) 01:10:23 ID:9N4zSv9v0
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「なぁ、せっちゃん・・夏休みどうするんえ?」
寂しげな憂いを帯びた瞳で、躊躇いがちに問い掛ける。今までは自分に姿を見せてはくれなかった夏休み。
でも、今年はもう隠れる必要は無い筈、しかし、一抹の不安を隠し切れずにいた。
「え、えぇと・・あの・・・その・・」
問い掛けられた守護者である少女は、答える事が出来ずに言葉を濁している。
もう、影に隠れている必要は無い、だが少女は、影でいた時間があまりにも長すぎたのだ。
「もう・・・もうガマンする事なんかあらへんやろ!!・・一緒に・・・一緒にいて・・なぁ・・せっちやんっ・・」
押し止められていた感情が溢れ出し、少女は守護者にそれをぶつけた。
「ウチかて・・・ウチかて・・・・・・・・・・・」
守護者の少女は、それ以上言葉に出来ずにその場に崩れ落ちる。彼女もまた、内に秘めていた感情が溢れ出していた。
少女達は、それ以上言葉を交わさなかった。いや、言葉は必要なかった。お互いを抱き締める力が、その答えとなっていたのだから。
二人の幸福な夏休みが、もうすぐ始まる。
最終更新:2007年07月29日 02:34