霊獣を駆る原人の軍勢と、その中心でひとり立つ異形の騎士。
 この世の始まりとも終わりともつかない混沌の戦場は、神の到来を受けて尚変わらず続いていた。
 だが、違った点がひとつある。
 黒曜石の大剣を振り翳して戦うレッドライダーの動きが、"それ"の前と比べて目に見えて向上しているのだ。

 原人の突撃を、それを載せた隼ごと両断して。
 投石を受け止め、十倍以上の威力で投げ返し投手を粉砕。
 その間も身体を砲台代わりにして巨石を撒き散らして接敵を許さず、更に警戒すべき敵の優先順位も忘れていない。

 シッティング・ブルの呪術が、赤騎士の足元に陣を出現させる。
 底なし沼を再現して引きずり込み、動きを奪おうとするが無駄だった。
 陣が完成する前に地面ごと踏み砕いて、放たれていた矢の剛射を事もなく掴み取る。

 瞬時に、返品とばかりにそれを持ち主へ投げ返した。
 音の壁を突破して迫る矢が、鷹を駆るシッティング・ブルの眉間を狙う。
 咄嗟に身を反らして回避自体には成功したが、右の耳朶がちぎり取られた。
 霊獣の扱いに、少なくともこの場の誰より親しんでいるタタンカ・イヨタケ。
 そんな彼でさえあわや脳漿を散らす羽目になっていた事実が、"戦禍の化身"がどれほど規格外な存在であるかを物語っている。

(こうまで型に嵌めて、まだこれか――)

 ネアンデルタール人のスキルによる、作成可能武装の制限。
 原人と霊獣による数的優位まであって尚、まるで攻め落とせる気配がない。
 厄介なのはやはり不死性。原人の呪いでもそこまでを奪い去ることはできなかったようで、現にレッドライダーはシッティング・ブル達が与えたすべての傷をまったく無視して暴れ続けている。

 しかし不可解なのは、これが神寂祓葉の気配に呼応して強くなった事実だ。
 更に言うなら、あの時赤騎士は確かに"フツハ"と呼んでいた。
 自我など持っている風には見えないこの怪物が、例外的に有する他者への執着。

(先が見えん。ゲンジにまだ切り札があるなら、そろそろ使うよう打診すべき頃合いだな)

 嫌な予感しかしなかった。
 状況だけ見ればそれでもまだこちらが優勢な筈なのに、心に立ち込めた暗雲が晴れない。
 ゲンジだけではない。自分も、宝具の解放を視野に入れるべきだろう。
 それでも好転しないなら、その時は一度この戦いを捨て、異なるアプローチで敵軍を削るべきだ。
 ……と。まるで戦争屋のようなことを考えている自分に気付き、シッティング・ブルが静かに自己嫌悪に駆られたちょうどその時。

 ――身を貫くような、最悪の感覚が走った。

「悠灯……!?」

 その意味するところはひとつ。
 周鳳狩魔と共に後方で控えている筈の華村悠灯に、何かが起きた。
 彼女の身を、命を脅かすような事態が、今まさに起こっている。

(馬鹿な……ッ)

 主要拠点および周辺には結界を張り巡らせてあるし、ゲンジの原人達だって配備されていた筈だ。
 にも関わらず、事が起きるまで侵入を悟らせることなく、襲撃をやり遂げてのけた凶手がいるというのか。
 にわかには信じ難い話だったが、悠灯の身に危険が及んだのは事実。
 生命反応は消えていない、それどころか弱まってすらいないのが不可解ではあったが――由々しき事態には違いない。

 どうする。
 悠灯が危ない。もしも侵入者が英霊、ないしその域に迫るモノであったなら狩魔でも庇い切れないだろう。
 シッティング・ブルは聯合に加担してこそいるが、彼にとって最優先すべきはもちろん悠灯の生存だ。
 自分がこの場を離れれば、霊獣に指揮を飛ばせる者も不在となる。
 未熟なゲンジと、理性なき原人達では任を果たせないだろう。
 戦線は瓦解し、聯合は切り札を失う。だが、悠灯を守ることに比べればそれが矮小な問題であるのも事実。

 葛藤。
 逡巡。
 しかし下すべき回答は分かりきっている。

 シッティング・ブルが断腸の思いでそれを選び取る、すんでのところで。
 偉大なる戦士と呼ばれた男は、その乱入者達を視認した。


「――――幸先が悪いな。いや、あるいは良いのか?」


 レッドライダーの存在は、それだけで大地を汚染する。
 この新宿南部に貼っていた結界は、既に半壊状態にあった。
 だからこそ"彼ら"はその孔をすり抜け、誰にも気取られることなくここまで辿り着けたのだろう。

 灰色のスーツに、季節外れの灰色のコートを纏った老人だった。
 長い白髪。酸いと甘いを噛み分けた者特有の鈍い眼光。
 だが老いぼれと呼ぶには、あまりに宿る生命力が暴力的すぎる。
 巨漢と呼んで差し支えない体躯に無駄はなく、年齢相応な要素はそれこそ先に挙げたものしか持っていない。

 老人は現れるなり、独り言をひとつ呟くと。
 目の前の地獄に怯むでもなく、悠々とその足を進めた。
 傲慢と、確固たる自負の滲む足取りの先。
 原人達が、石器武器を片手に敵愾心を示している。

 無数の、理性をもぎ取られた瞳達が老人を見つめていた。
 原始的な知性のみで動く彼らは、ほぼほぼ獰猛な獣と変わらない。
 現住人類のアーキタイプのひとつ。更新世の祈り人。
 ホモ・ネアンデルターレンシスという、先人達の眼差しに囲まれて。
 老人はそれでも足を止めぬまま、その悪癖を隠そうともせず言い放った。

「邪魔だ。退け」

 それをもって、敵対の意思表示と看做したらしい。
 原人の一体が、石槍を振り翳して彼へ向かう。

「ああ済まん。猿に言葉は通じんか」

 原人は、一体一体の戦闘力で言えば確かに惰弱だ。
 しかしそれでもサーヴァントはサーヴァント。
 人類最高峰の格闘家を連れてきたとしても、戦ったならまず間違いなく彼らが勝つ。
 聖杯戦争について、境界記録帯について知る者であれば誰もが理解している当然の道理。
 だがこの"灰色の男"は、当たり前のようにこれを否定していた。

「赤毛と碧眼、寸胴の体格に太い手足……ホモ・ネアンデルターレンシスの特徴に一致する。
 要石はそこの醜男だな? またずいぶんと珍しい英霊を呼んだものだ」

 受け止めたのだ。
 片腕で、汗ひとつ流すことなく、原人の石槍を掴み取って封殺した。
 もちろん押し込もうとはしているが、老人が血の一滴も流さず健在なことがその奮闘の進捗を示している。

「サンプルとしては興味深いが……私は言ったぞ、邪魔だと」

 次の瞬間、原人の頭蓋が中身(ミソ)を散らしながら粉砕される。
 やったのは老人ではない。その隣にて像を結んだ、赤い甲冑の英霊の仕業だった。

「マスター・ジャック。僭越ながら忠言いたしますが、ここは危険です。迂回した方がよろしいかと」
「必要ない。念願を前にして時間を浪費しろと?
 臆病は無謀に勝るが、時と場合を見誤ればただの無能だ。私の英霊を名乗るならそのくらいは弁えておけ」

 レッドライダーのものに似通った、毒々しい赤色と。
 甲冑の背部から生えた、虫を思わせる三対六本の金属脚。
 美しい少女の見目が、それを上回る奇怪さに相殺されている。
 彼女の握る赤槍が音もなく瞬き、礼儀知らずな原人の頭を砕き散らしたのだ。

 これは、天の蠍。
 抑止力を超越した造物主と人類悪に対し、ガイアが送り込んだせめてもの刺客のひとつ。

 そしてそんな彼女を従える男の名こそ、蛇杖堂寂句。
 蛇杖堂記念病院、名誉院長。蛇杖堂家、現当主。
 御年九十にして未だ衰えを知らぬ妖怪。
 〈はじまりの六人〉のひとり。〈畏怖〉の狂人。かの星が生み出した闇、哀れなる衛星の一角である。

「とはいえ、確かに言いたいことは分からんでもない。
 だから"幸先が悪い"と言ったのだ。あの無能どもめ、喚んでいいモノとそうでないモノの区別も付かんのか」

 呆れたような眼で寂句が見据えたのは、やはり戦場の中心に立つ赤騎士だった。
 寂句という異分子の出現に呼応している原人はごく一部で、残りのほとんどは騎士との交戦を続けている。

 総数数十にもなる英霊の群体と、それに力添えしている呪術師(シャーマン)の搦め手。
 そのすべてを単騎でしのぎ、ともすれば押し潰さんとしている様子は明らかに異常だ。
 それにこの領域に踏み入った以上、寂句の脳にも赤き呪い――〈喚戦〉の気配は這い寄っている。
 明らかに一介の英霊ではない。異端の中の異端、悍ましい災厄の擬人化。
 祓葉に似た不死性も垣間見えており、どう考えても籤運の範疇で済ませていい範疇を超えていた。

 しかし妙なのは、どうも本来の力を発揮しきれていない節があること。
 これほどの力を持つ存在でありながら、何故ああも原始的な攻撃手段で戦っているのか。
 違和感の正体に気付いた時、寂句は初めて表情らしいものを浮かべた。

 笑みだ。

「そうか。この猿共が、アレを抑え込んでいるのか」

 寂句の聡明は、純粋な知識量だけを指した評価ではない。
 知識などあくまで栄養素。いかに多く取り込んだとて、活かせないのでは意味がない。
 溜め込んだ智慧と九十年の経験。
 そのすべてを余さず搾り尽くして打ち出す超人的な判断力こそが、この男の最も恐ろしい点である。

「――おい、小僧。光栄に思え、貴様に恩を売ってやる」

 老人の眼球が、鷲に跨り空にいるゲンジに向けられた。
 アンタレスが新たに蹴散らした原人の肉片が吹き荒んでいるのも気にせず、寂句は言う。
 昏い高揚の中にいたゲンジも、これには流石に顔を顰める。

「………………ッ」

 だが次の瞬間、その表情は驚きと、そして動揺に彩られた。
 覚明ゲンジには、覚明ゲンジだけの視界がある。
 フィルターを切り替え、彼は彼の視点から、蛇杖堂寂句を見たのだ。
 であれば理解できない筈はない。寂句が何者で、何処を目指しているのかを。

 されど、蛇杖堂の医神はどこまでも傲慢で、他者を顧みない。
 よってゲンジには選択の余地も、対話の猶予さえ与えられはしなかった。
 猿顔の少年が口を開こうとした時には既に、主を脅かす原人の粗方を屠り終えた天蠍が、次の標的へ駆け出しているところだった。

「なるほど。やはり、そういうことでしたか」

 何か得心行ったように呟く天蠍・アンタレス。
 彼女の槍を黒曜石の剣で受け止め、赤騎士は無言のまま彼女と相対する。

 散る火花は、共に赤色。
 アンタレスは六脚を駆使して縦横無尽、変幻自在の攻撃を加えていくが、レッドライダーは一歩も動かぬままそのすべてに対応していく。
 この一瞬の攻防を見るだけでも、突如始まった戦闘の天秤がどちらに傾いているかは明らかだ。
 アンタレスも弱くはない。軽やかな体躯と外付けパーツの利点を活かし、速度に飽かして技の限りで赤騎士を圧倒している。
 しかしそれはあくまでも、手の数に限った場合だけの話。
 赤騎士の応戦は無理なくその手数に追いつき、受け損じて負った傷もたちまち癒えてしまうのだから、彼我の戦力差は残酷なほど明確だった。

 だが、アンタレスは冷静に言う。
 彼女が寂句に迂回を勧めた理由。
 視認した瞬間からあった疑念が、矛を交えたことで確信に変わっていた。

「貴方、当機構の同郷ですね。ガイアの尖兵、……いえ。さしずめ意思表示とでも言うべきでしょうか」

 天蠍アンタレス。
 レッドライダー。
 激戦を繰り広げる両者は、共にガイアに連なる由緒を持っている。

 アンタレスは、ガイアの猛毒。

「ガイアの感情、恐らくは"怒り"。ヒトに愛想を尽かした母の意思を代弁する、四色の終末装置……」

 そしてレッドライダーは、ガイアの怒り。
 抑止力と終末装置、在り方は違えどルーツは同じだ。
 ある意味では兄妹喧嘩と言えなくもない構図。
 さりとて、たかが尖兵の一体と感情そのものでは話もまったく変わってくる。

 アンタレスの槍先がレッドライダーの喉笛を抉り、力任せに首を刎ね飛ばす。
 頭と胴を泣き別れにされても、しかしレッドライダーは止まらない。

 大剣を超高速で振り抜き、衝撃だけでアンタレスを数メートルは後退させた。
 彼女が体勢を立て直す暇もなく、蓮の種を思わせる無数の砲口が赤き身体に開く。
 次の瞬間、石を弾代わりにした砲撃の嵐が吹き荒れて彼女を狙う。

 圧倒的。すべてにおいて、ただひたすらに強すぎる。
 ガイアの仔としての格の差を示しながら、不滅の闘争は君臨を続けていた。

「ぐ……っ、ぁ、く……!」

 小さな悲鳴を漏らし、徐々に押し切られていく天の蠍。
 彼女に六本の脚がなかったなら、この時点で無残に挽き潰されていた可能性すらあろう。
 だが、なんとか場を繋げていたとしても大勢は何ら変わらない。

 砲撃を放ちながら、大剣を握った赤騎士が距離を詰めた。
 すべてを終わらせる黒い大太刀が、原始の殺意が――妹たる蠍を押し潰さんとする。

 規格が違う。
 役者が違う。
 たかだか怪物の一匹。
 たかだか抑止の名を冠しただけの英霊。
 それでは、星の終末装置は斃せない。
 黙示録の四騎士。四色の【赤】を司るもの。
 それがレッドライダー。これが人類を終わらせる赤の騎士。

 故に倒せない。
 誰にもこれを超えられない。
 これは、未来に訪れる因果応報。最後に辻褄を合わせる存在だから。


 だから――


「そこだ。打て、ランサー」


 ――この天命(どく)からは逃げられない。


 アンタレスが、乾坤一擲の一撃を受け止める。
 裂帛の気合という表現を使うには無機質すぎる相手だが、受け止めただけで両腕が持っていかれそうになったのは事実だった。
 故にアンタレスは、大袈裟でなく死ぬ気で防御をこなす必要があった。
 その甲斐あってなんとか生を繋げた。激戦の中、状況を顧みず要求された主君の命令(オーダー)。
 前提条件は殺人的だったが、だからこそそれを満たせたこの瞬間が、千載一遇の好機と相成る。

「――はい。了解しました、マスター・ジャック」

 わずかな体幹のずらしで、懐へと潜り込んだ。
 歩みは速く、それ以上に狡く。
 獲物を狩る時の蠍に似た、合理と狡猾を併せ持った足取りが確定しかけた死線をすり抜けさせる。
 そうして得た一瞬の隙は、彼女が槍を振るうだけの時間としては十分過ぎた。

「その身、その霊基(うつわ)、もはや地上へ存在するに能わず」

 或いはこうなって初めて、レッドライダーは彼女を脅威たり得る存在と認識したのかもしれない。
 だが、だとすればあまりに遅すぎた。
 既に攻撃は放たれ、不滅の筈の身体は槍の目指す行き先に在る。

「然らば直ちに天へと昇り、地を見守る星となりなさい――」

 開く砲口。
 爆速と言っていい速度で動き、大剣にて迫る穂先を防がんとする両腕。
 すべて遅い。蠍の一刺しは常に神速、あらゆる驕りを認めない天の意思。
 なればこそ。蛇杖堂寂句という今宵の天に命ぜられたアンタレスがそれを遂げるのは、ごく当然の理屈と言えた。


「――『英雄よ天に昇れ(アステリズム・メーカー)』」


 突き穿ち、刺し穿つ赤槍の一突きが。
 過つことなく――、赤騎士の胸を貫いた。



◇◇



 黙示録の【赤】。
 レッドライダー。
 それは、ガイアの怒り。
 人類に愛想を尽かした惑星が下す最後通牒の終末装置。
 戦争という原罪を司り、そこから人類が解脱できないからこそ不滅である騎兵。
 倒せない。超えられない。ヨハネの預言により、遥か遠未来まで人類は闘争を超克できないと証明されているから、誰にもこれは滅ぼせない。

 しかしそこにこそ隙がある。
 そも、黙示録の赤騎士とは遥か先の未来に顕現する存在なのだ。
 今この時代にまろび出ている時点で、これの存在は地上にとって正当ではない。
 預言を無視して地上へ顕れた終末装置。ガイアの意思にも、世界の規範にも背き跳梁するイレギュラー。

 ――であればその横紙破りを、星が差し向ける猛毒蠍(アンタレス)は見逃さない。


「ォ、オ……!? グ、オ、オオオオオオオオオオオオオ――――!!!」


 人類が飽和と腐敗を尽くした未来時代に顕現すべき赤騎士。
 預言の使徒たるこれ自体が誰より預言に叛いている事実を痛辣に指摘して、母(ガイア)は追放を断じた。
 よって毒は回る。不滅の筈の玉体(カラダ)を冒す。
 汝、地上へ存在するに能わず。直ちに天へと昇り、地を見守る星となれ。
 そう命じ導く猛毒が、レッドライダーに慟哭を余儀なくさせていた。

「オ、ノレ……! 貴様、屑星ノ一端、ガァッ……!!」

 天に昇れ、天に昇れ。もはやおまえは地上に不要である。
 増長者へ破滅を求める猛毒は、現代に非ざるべき超越者に対する特効薬。
 ただし良薬としてではなく、その存在を根絶する殺虫剤として、これの薬毒は覿面に効く。

「貴方はやり過ぎました。ついては、跡目は当機構が引き継ぎます。
 疾く消えてください、母様の"怒り"たる御身よ。この時代は、この運命は、貴方を必要としていない」

 原人の呪い。
 天蠍の宣告。
 二種の毒を受ければさしもの赤騎士も、もはや在るべきカタチなど保てない。

 英霊の座を通じたイレギュラーな召喚で、在るべきでない時にまろび出た戦禍の化身。
 今ここに存在していること自体が地上のルールを無視している。
 であればそんな赤騎士が、星の猛毒が働く条件を満たさない筈がなかった。

「預言の時は未だ彼方。それまでお眠りくださいませ、お兄様」

 赤騎士の全身が、これまでとは違った様子で崩れ始める。
 例えるならそれは、風化した岩石のようだった。
 半流動体の体躯が末端から凝固して、ぱらぱらと地面に落ちていく。
 更に体表も不規則に波打っては微細な伸縮を繰り返しており、不滅を超えた想定外が起こっているのは明白。

 それでも悪あがきのように蠢きながら、赤騎士は天蠍へと踏み出した。
 黒曜石の剣も形を失い始め、もう刀身を失ったただの鈍器と化している。
 恐るべし戦争の厄災。この有様になっても己が使命に殉じ続ける姿は雄々しささえ感じさせたが……

「否、否、断ジテ否……!
 預言ノ時ハ訪レタ。我ハ、私ハ、俺ハ、僕ハ、儂ハ、アノ醜穢ヲ討チテ――」
「見苦しい」

 所詮は、消えゆくモノの悪あがきに過ぎない。
 天蠍の槍が目にも留まらぬ速度で閃き、蠢く騎士の総体を文字通り八つに引き裂いた。
 それが最後。不滅に見えた赤騎士は無残なバラバラ死体と化し、再生することなく夜風に溶けて消えていった。

 唖然。呆然。
 理性なき原人達を除き、シッティング・ブルも覚明ゲンジも、ただその光景を無言で見送ることしかできなかった。

 自分達が死力を尽くし、それでも打倒の糸口をついぞ見つけられなかった刀凶聯合の切り札が、こうもあっさりと消滅させられたのだ。
 この英霊は、この主従は、一体何者なのか?
 自分達の繰り広げていた戦争が児戯に思えてくるほどの圧巻を魅せたふたりはしかし、誇るでもなく冷静だった。

「殺せたか?」
「いえ、恐らくは逃げられました。
 あの者は母なる大地の"怒り"、当機構よりも抑止としての級位が上なのだと思います。
 致命傷には違いないでしょうが、即時の天昇とまではいかなかったようです」
「まあいい、十分だ。例外の存在は重大な陥穽だが、それを補うピースの目星も付いた。
 クク。たまには散歩などしてみるものだな、予期せぬ拾い物があった」

 何やら遠い先を見透かしたように言い、蛇杖堂寂句の眼差しが猿顔の少年に戻る。
 驚くべきことに、この男はもはや原人も霊獣も、牽制の意思を露わにしているシッティング・ブルさえ眼中に入れていなかった。
 彼が見ているのは原人共の主、要石。覚明ゲンジただひとりである。

「餓鬼。貴様、所属は"どちら"だ?」
「デュラハン、だけど……」
「そうか、それは何よりだ。
 同じ烏合の衆でも、ノクト・サムスタンプの手札を奪うのは要らん危険を孕むからな。
 ――助けてやった礼をして貰うぞ。貴様はこれから私と来い」
「…………おれの話、聞いてなかったのか? おれはデュラハンの一員で、周鳳狩魔の部下だ」

 ゲンジの言い分ももっともだ。
 寂句が戦場を収め、デュラハンの損害を限りなく零に近い形で収めたのは確かにまごうことなき功績。
 しかしだからと言って、陣営の切り札である原人達の手綱を握る彼を引き抜かせろというのは要求として度が過ぎている。
 そんな当然の反論に、寂句は愚問を前にしたように鼻を鳴らした。

「勘違いしているようだが、これは要求ではなく決定だ。貴様に首を縦に振る以外の選択肢はない」

 義理も理屈も関係ない。
 己がそう決めたのだから、お前は従うしかないのだという暴君らしい傍若無人。

「それに、この会話自体が甚だしく無駄だ。
 強制的に頷かせる手段などいくらでもあるが、そんな労苦を払わずともどうせ貴様は頷く」
「……ずいぶんな、自信だな。おれの弱みでも握ってるってのか?」
「弱み? クク、確かに言い得て妙かもな。
 新参といえど、焦がれたモノを目にすることもなく横取りされるのは我慢ならんだろう」

 覚明ゲンジは、視認している人物が何かへ向けている感情を矢印として視認することができる。
 寂句が乱入してきてすぐ、彼はスイッチを切り替え目の前の老人に向かうそれを見た。
 そこには、遥か彼方へと伸びる極太の矢印があった。
 抱えているだけで理性が犯され、発狂してもおかしくないほどの圧倒的感情(グラビティ)。
 それを向けられている人間にも、逆に向けている人間にも、ゲンジは既に会っていた。

 だから分かる。本当は、既に分かっている。
 彼が一体何者で、何に灼かれた人間なのかを。
 ただ、その口から聞きたかった。


「私はこれから、神寂祓葉を終わらせに向かう」


 息が止まった。
 心臓が跳ねた。
 脳の奥底から、過剰なアドレナリンが溢れ出てくるのが分かる。
 ゲンジが目の前の老人の得体を察していたように、寂句もまた、ひと目見た瞬間から彼の病痾を見抜いていたのだ。

「手は揃えてあるが、相手は空前絶後の怪物だ。
 よって貴様も協力しろ。アレに灼かれた以上、後は遅いか早いかの違いでしかない。
 期待してやるから、死に物狂いで応えるがいい」

 寂句がゲンジを"新参"と呼んだのはつまりそういうこと。
 極星に灼かれ、魂を狂わされた哀れな残骸のひとつ。
 彼はもはや、〈はじまりの六人〉の同類だ。

 極星は引力を有している。
 よって衛星は、どうあっても宇宙の中心たる彼女に向かっていくしかない。
 寂句の言う通り、その時がいつ訪れるかの違いがあるだけだ。

「は、は」

 気付けばゲンジは、嗤っていた。
 狂ったように、壊れたようにそうしていた。

 運命が自分を迎えに来たのだ。
 こちらの事情など知らず、手前勝手極まりない傲慢さで手を引いてきた。
 普通なら死神にドアを叩かれたような心地になるべきなのだろうが、ゲンジは違う。
 自分という存在が欲されている。神話の住人のような怪物達が、他でもない覚明ゲンジ(おれ)という役者の登壇を望んでいる。
 その事実が、何者にもなれず燻っていた少年にはひどく心地よかった。
 同時に納得する。この老人の言っていたことは正しい。こいつと遭った時点で、自分には拒む選択肢など残されちゃいなかったのだ。

「――――狩魔さん達のことは、裏切れない」

 ただ、そんな彼の中に唯一残った人間性がひとつ。
 彼は他の誰よりもデュラハンという組織に執着している。
 ドライな狩魔と、一時の居場所として身を置く悠灯のどちらとも違う。
 自分を見て、認め、共に語らってくれたそのふたりに対し、それこそ恩義にも似た絆を感じていた。
 狩魔は、ゲンジはいずれ自分達を食い尽くす真の怪物になると予想していたが――少なくとも今はまだその時ではないらしい。

「あんたに付いていくのは、いい。
 だけどバーサーカー達を全員連れて行くのは、ナシだ」
「選択権はないと言った筈だがな」
「なら、あんたをぶん殴ってでも作り出すよ」
「――は。無能が、出来もしないことをほざきおって」

 ゲンジはあくまでも要石。
 ネアンデルタール人達だけでも戦闘は行えるし、作戦の肝である神秘零落の呪いも使用できる。
 蛇杖堂寂句と共に神殺しの本懐を果たしに行くことと、周鳳狩魔とデュラハンを裏切らないことは両立可能だ。
 そう唱えて譲らないゲンジに対して、珍しく暴君が折れた。

「ここにいるのがすべてではないな。原人共の総数はどの程度だ」
「……百人弱だ。あんた達に殺されたぶんを含めても、まだそのくらいはいる」
「では五十体を寄越せ。それ以上は譲らん」

 ゲンジが、目線をシッティング・ブルの方へと移す。
 呪術師は既に地へ降り、ただ交渉するふたりを監視していた。
 寂句だけでなく、ゲンジのこともだ。
 半グレ同士の抗争の行く末に興味はないが、悠灯を脅かし得る可能性は摘み取る必要がある。
 もしも覚明ゲンジが自分の役割をすべて放棄し出奔するというのなら、多少強引にでもこの場から連れ去るつもりだった。

「悪いな、悠灯さんのキャスター。狩魔さん達には、あんたから伝えてくれよ」

 ゲンジ自身、不義理な真似をしているとは思う。
 それでも寂句と行くと決めた理由は、第一に裡から沸き起こる耐え難い衝動。
 そして、周鳳狩魔という男への信頼だった。

 おれが頭を振り絞って思いつくようなことを、あの人が考えつかない筈がない。
 あの人は、おれが祓葉に傾倒してるのも知ってる。
 ならそのおれが、こうして"あいつ"に近付ける機会を得た時、どうするかなんて分かってる筈なんだ。
 きっとおれの勝手な行動なんか織り込み済みで策を作ってある。おれ如きが、あの人の計算を狂わせるなんてありえない。

 であれば何も問題はない。
 おれはおれのまま、おれのやりたいことをしよう。
 そう決めた少年に、偉大な戦士は口を開く。

「……理解ができん。
 君はその老人の言っている意味を、本当に解っているのか?」

 引き止めようとして出た言葉ではない。
 嘘偽りのない、シッティング・ブルの本心だった。

「ゲンジ。君が仰いでいるあの少女は、決して清らかなモノなどではない」

 知ったようなことを言っているのではなく、現に知っているのだ。
 シッティング・ブルは、タタンカ・イヨタケは、それを見た。
 この世界の神。天地神明の冒涜者。空に開いた孔、そこに向けて辺りすべてを吸引するブラックホール。
 恐ろしいと思った。あんなに恐ろしい神秘がこの世に存在するなどと、あの瞬間まで彼は知らなかった。

「触れれば、近付けば、身も心も灼き尽くす鏖殺の星だ。
 今の君は、蛾が燃え盛る炎に引き寄せられているようなものだ」
「……そうかもな。でも、はは、あんたにはわかんないよ。おっさん」

 ――灼かれてもないあんたじゃ、分かるわけがない。
 ――ヒトを本気で好きになるって、すごく怖いコトなんだ。

 ゲンジはそう言って、シッティング・ブルに背を向けた。
 その去り際の視線には、やはり奈落の底から覗くような禍々しいものが蟠っていて……咄嗟に、ライフルに手が伸びた。
 それは反射的な行動だったが、少年は振り向きすらせずに。

「何かあったんだろ。早く、悠灯さんのとこに戻ってやりなよ」

 朴訥とした優しさを滲ませて、言った。
 本来美徳である筈のそれが、今はひどくアンバランスなものに見える。
 土中に潜む多脚の虫が、何やら他者へ慈悲らしいものを示しているような。
 そんな生理的嫌悪感を、今のゲンジは匂いのように周囲へ放っていた。


 ――シッティング・ブルは飛び去っていった。

 去りゆく気配を見送って、ゲンジは再び寂句の前に立つ。
 ゲンジも身長以外はそれなりに体格のいい男である筈だが、それもこのむくつけき老人の前では霞んでしまう。

「あんた……山越さんとは、ずいぶん違うんだな」
「あのような変態と一緒にするな。奴は我々から見ても異質な屑だ」

 同胞を殺された憤りからか、未だに敵愾心をむき出しているネアンデルタール人を片手で制す。
 最初の内、ゲンジと彼らを繋ぐものはわずかな仲間意識だけだった。
 それが今や令呪を用いずとも、こうしてゲンジに従うようになっている。
 同胞の仇など、原人達にしてみれば嬲り殺しにしても飽き足らない怨敵であろうに。
 その事実をゲンジは認識していたが、した上で、別にどうでもいいと思っていた。

「手筈は道中で説明する。一度しか言わんから、死ぬ気で頭に叩き込め」

 歩き出す寂句と、それに続くゲンジ。
 少年の後ろをぞろぞろと付いていく、数十人ものネアンデルタール人。
 彼らは信仰を持たない。彼らは、神の存在を知らない。
 しかしそんな彼らにも、その感情は備わっていた。

 ――――畏怖だ。

 この世には、理解の及ばない恐ろしいものがいる。
 それだけは、遠い石器時代にも共有されていた概念だった。



◇◇



 ゴドフロワ・ド・ブイヨンの襲撃を振り切って、やや時間が経ち。
 征蹂郎はアルマナに抱かれるのではなく、自らの足で彼女と共に夜の街を駆けていた。

 既に両者とも、新宿区に入っている。
 敵地である以上、目立つダイナミックな移動を続ける理由はない。
 結界の内情はアルマナが分析し、なるべく安全なルートを通って潜入している形だ。
 そんな征蹂郎の顔色は悪く、額には脂汗が浮かんでいる。つい先刻感じ取った――レッドライダーの異変に起因するものだった。

 港区で試運転した時の、あの暴力的な消耗とはまた違う。
 例えるなら身体の中に他人の血が混ざり、拒絶反応を起こしているみたいな感覚だ。
 訓練を受けた屈強な肉体を持つ彼でなければ、とても活動を続行するなど不可能だろう。
 もっとも今の彼は、それどころではなかった。
 彼が気にしているのは自分の身体のことなどではなく、奇怪な状態に陥っているレッドライダーのことだ。

 新宿で交戦状態に入ったことまでは把握している。
 恐らくそこで、何かがあったのだ。
 認め難いことだが赤騎士は不覚を取り、現在ひどく不安定な状況にあると推察される。

「見たところ、契約は生きているようですが……正直、よくわからない状態ですね」

 専門家であるアルマナでさえこうなのだから、門外漢の征蹂郎に現状を分析するのは困難だった。
 無理もないことだ。レッドライダーはそもそも正当な英霊ではなく、常識もセオリーも通用しない相手。
 征蹂郎自身、己が従えるあの騎士のことなどまったく分かっていない。
 意思疎通も困難なため、ただの兵器と割り切って使ってきたが、ここに来てそのツケを払わされている気がしてならなかった。

「…………消えていないなら、それでいい」 

 だが征蹂郎の心には、臆する気持ちなど皆無。
 殺された仲間達の無念が、彼らの遺志がその背中を突き動かし続ける。

「オレはただ、勝つだけだ……。たとえここで燃え尽きるとしても、討たなきゃいけない敵がいる……」

 既にこの新宿には、刀凶聯合の構成員が自分と同様に怒り心頭で乗り込んでいる。
 神秘を宿した重火器で武装した武装集団だ。装備は拳銃がせいぜいだろうデュラハンの連中とは比べ物にならない突破力を持つ。
 結界を壊せ。雑兵を殺戮しろ。好きなようにやれ。暴れたいように暴れろ。お前達にはその権利がある。


「決着(ケリ)を着けるぞ――――周鳳狩魔」 


 そして無論――オレにも。

 必ず殺す。貴様のすべてを否定する。
 もはや待ったはない。倒されたドミノは、行くところまで行くしかないのだから。
 よってここからが戦争の本番。両軍の将が並び立ち、命を懸けて命を奪い合う地獄変。

 街は赤く、赤く彩られている。
 熱狂が波になって、都市を呑み込んでいく。

 それはまるで、厄災のように。



◇◇



 深夜の新宿。ネオンの灯す赤が、赤で塗り潰されていた。

 交差点の中心に、その存在はあった。
 赤騎士――レッドライダー。元より異形の英霊であったが、いよいよ騎士の面影など微塵もない。
 輪郭を持たぬ半流動体。血にも似たそれは、ただ一箇所に留まることを知らず、膨れ、崩れ、滴り落ちては地面を濡らしている。
 硬質な骨のようなものが断続的に浮かび上がり、しかし定着する前に溶けて消えるのを繰り返す。

 ぐしゃ、にぢゃ、と何かを踏み潰す音。
 粘っこい足音と共に爆ぜる液体。ただでさえ静けさを失った街は、異常の中心にあるそれの発する現象によってさらに混沌を極めていた。

 赤い。
 赤すぎた。

 道路、ビルの壁面、車や家屋の屋根、信号機、歩道、ショーウィンドウ――レッドライダーの撒き散らすそれは重油のように粘り、血管のように街を犯している。
 壊れたポンプが延々と吐き出すように、あるいは決壊したダムから水が際限なく流出するように、【赤】の氾濫は止まらない。
 逃げ惑う人々がその奔流に飲まれ、悲鳴をあげて転び、水の中に沈んでいく。

「ァアァアァアアアアアァア…………!」

 レッドライダーの身体の一部が突如として激しく膨張した。
 風船のように膨れ上がったかと思えば、圧壊するように潰れて新たな奔流を生む。
 創世と滅亡の輪廻だ。
 黙示録の赤き騎士。世界が戦いを望む限り不滅の怪物。
 それが今、消えろ去れ天に昇れと求める大いなる意思に蹂躙されている。

 『英雄よ天に昇れ(アステリズム・メーカー)』。
 アンタレスの毒針は、確かにこれの霊基を貫いていた。
 現世にあってはならぬ遠未来の災厄。預言の矛盾を突き崩す一撃が、今なおレッドライダーを死へ誘い続ける病態の正体である。
 今や赤騎士はこの世すべての運命に嫌われた真の意味での孤立無援。
 言うなれば消毒液の海に垂らされた一個の細菌のようなもので、不死だろうが不滅だろうが存在を保ち続けられる道理はない。

 にも関わらずレッドライダーは、破滅への抵抗を続けていた。
 これは過去から現在までに起きたありとあらゆる戦争を貯蔵した武器庫のようなもの。
 個にして群、群にして個。天昇させられた端から失った箇所を別な戦争の記録で修復し、血塗られた歴史そのものを材料に自分自身を延命治療しているのだ。

 よってこうしている間にも、赤騎士の中からはどんどん武装の残数が削られている。
 病状は一秒ごとに進行していたが、一回のカウントでどれほどの貯蔵が失われているのかは騎士自身にしか分からない。
 ただひとつ確かなのは――終末の赤騎士は、もはや不滅の存在ではなくなったということ。

 瀉血によるテセウスの船なら既に試した。
 だが無駄だ。あの毒はスカディのようにすぐ患部を切除すれば大した効き目をなさないが、一度回ってしまうと根が深い。
 レッドライダーの霊基にまで浸潤した星の強壮剤は、人類の罪業を担保に滅びを遠ざけていた星の機構(システム)を零落させた。
 戦争の厄災は討てる。人類は、戦争を根絶できるのだ。星はこの場に限りそれを望んでいる。

「――――ォ、オ――――ァ、アァ――――ギ――――グ――――」

 悲鳴とも慟哭ともつかない声をあげて、その【赤】は何を思うのか。
 これに自我はない。これに感情はなく、他者と理解し合うことも永遠にない。
 当然無念などという情も、概念ごと持ち合わせていなかった。

 あるのはひとつ。
 ガイアの怒りとしての、使命の遂行。
 ヨハネの預言をなぞって、救いの前の終末を運ぶ赤い運び屋。
 わななく四肢が、漏れ出す悲痛な声が、瞬時にして凍りつく。
 その瞬間、今まであれほどに荒れ狂っていた赤騎士が嘘のように静寂を取り戻した。


「――――理解シタ。デハ、ソノヨウニシヨウ」


 起伏のない機械音声じみた発声が、突如として何事かへの納得を独りごちる。
 依然その総体は泡立ち、膨張と萎みを繰り返していたが、それでも今のレッドライダーは過去どの瞬間よりも理知的だった。

「預言ハ成就サレネバナラナイ」

 赤い液体で構成された暴走状態の身体が、外側から無数の殻に包まれていく。
 肥大も収縮も生まれた殻の内に秘められ、圧殺され、騎士は死の概念を付与された現状に適応する。

「死ハ溢レ返ラネバナラナイ」

 まず構築されたのは鱗だった。
 全身をくまなく何層にもなって覆う真紅の鱗。
 最高峰の対戦車防壁を参考に設計、その上で材質を神話戦歴から参照した特殊鉱石(レアメタル)数種に限定。
 外側はもちろん、内側からの破裂さえ力ずくで押さえ込める特殊な構造を実現させ。

「醜穢ハ流サレネバナラナイ」

 頭部は伸長し増設され、四肢は変形の上で同じく増設。更に肩甲骨に相当する部位がせり上がった。
 尾底からぬるりと這い出した尾は、それだけで数メートルに達するほど巨大だ。
 尾が出現した頃には、レッドライダーはもはや完全に"騎士"の風体を失っていた。

「過チハ――繰リ返サレネバナラナイ」

 元あった手が脚に置換され、その上で更に左右一本ずつの脚が新設され。
 尾が薙がれれば、間に存在した街並みは容易く砕き流される。
 変態した肩甲部は皮膜を備えた巨大な両翼と化し、頭部は細長く、鰐や蛇のたぐいを思わせる形に伸長した上で七つに増えた。
 鱗に包まれ、翼と尾を備え、六本の足にそれぞれ鋭い鉤爪を備えて空を切り裂く。
 そんな赤騎士の成れの果ての体長は、二十メートルを超えている。
 異形の外見。巨大な体躯。背に備えた一対の翼と、世界を薙ぎ払う尾。そして、全身を覆う鱗。七頭に煌めく七つの王冠。

 その姿は、ああ、そう。まるで……


 ――――竜(ドラゴン)のよう。


「是非モ無シ」


 これは、赤き騎士の預言の更に先。
 七人の天使が喇叭を吹いたその後の災厄。
 地上に零落れた、ある愚かな魔王の断末魔。もしくは、古き悪しき蛇。
 燃え盛る炎のように赤く、存在そのもので神の教えを冒涜する救い難きモノ。


 〈赤き竜〉と呼ばれる神敵の、似姿であった。



◇◇










                       黙 示 録  変 調

                      A D V E N T  D R A G O N










◇◇



「……どうなってんだ、こりゃ」

 刀凶聯合に身を置く青年が、街の惨状を見て思わず呟いた。
 その足は脛の辺りまで、赤い洪水に浸かっている。

 今や新宿は地獄絵図だった。
 赤、赤、赤、赤。どこを見ても一面の赤色だ。
 この色は彼らにとっては慣れ親しんだものだったが、それでもこれを見て常軌を逸していると思わないほど馬鹿ではない。

「征蹂郎クンの"サーヴァント"……だよな? これやってんの」
「まあ、多分そうなんじゃねえかな……。征蹂郎クンなりに考えがあんだろ、多分」

 戸惑いを隠せない様子で言葉を交わす青年達は、各々が現代日本の都心には見合わないえげつない武器を担いでいた。
 ロケットランチャー。重機関銃。火炎放射器に即死レベルの改造を施されたテーザー銃、ショットガンetc。
 しかもそれらが皆神秘を帯びており、当てられさえすれば英霊にも理論上は傷を負わせられる代物だというのだから凄まじい。
 たかが街角のゴロツキにそんな代物を与えた張本人こそが、街を変貌させた【赤】の源流。
 悪国征蹂郎が従える、ライダーのサーヴァントであることを彼らは知っている。

「つーかそれよりデュラハンだよデュラハン。お前らも聞いてんだろ、千代田で何があったのか」

 ここにいるのは皆、この世界の造物主が生み出した仮初の人形でしかない。
 それでも彼らには彼らの人生があって、守るべきものと、譲れない信念がある。
 征蹂郎が刀凶聯合を何より重んじているように、その愛すべき民である彼らも、同様に聯合の仲間達を愛していた。

 先遣隊として新宿に入っていた彼らが、千代田区で起こった殺戮の報せを受けたのがつい先刻。
 許せない。許せるものか。怨敵デュラハンはまたも俺達の一線を超えたのだ。
 皆殺しだ。ひとり残らず殺すしかない。八つ裂きにして、生まれてきたことを後悔するくらいの地獄を見せてやらなければ道理が通らない。
 そうして猛り、兜の緒を締め直し、聯合の兵隊達はデュラハンの本丸を目指していて。
 その矢先に、この異界めいた光景に遭遇した。
 明らかに征蹂郎のライダーのものであろう赤い水。それが見慣れた新宿の街並みを犯している様を、見た。

「征蹂郎クンはすげえ奴なんだ」
「ああ。マジですげえ人だよな」

 刀凶聯合の名を聞けば、半グレはおろかヤクザ者でさえ顔を顰める。場合によっては逃げ出す。
 話の通じない狂犬集団。どこの組織にも持て余された、つける薬のない馬鹿の集まり。

 かつて彼らはひとりの例外もなく、行き場のない野良犬だった。
 家庭環境の荒廃、社会への失望、人間関係の縺れ、犯してしまった罪からの逃避。
 三者三様の理由で燻っていた野良犬達が、ある風変わりな王のもとに集まって。
 そうしてできたのが刀凶聯合だ。打算ではなく、本能で惹かれ合い、出来上がった共同体。
 故にその結束は強く。彼らはいかなる理由があろうとも、仲間の犠牲を許容できない。
 血縁ではなく流血で結ばれた絆。それが、彼らにとっていかなる現世利益にも勝る戦う意味になる。

「征蹂郎クン、悲しんでるだろうな」
「優しい人だからな、あの人。あんな仏頂面してるけどよ、いっつも俺らのこと考えてくれてんだ」
「聞いたことあんだ。征蹂郎クンはさ、泣けねえんだってよ。
 泣き方を知らねえんだってさ。だからどんなに悲しくても辛くても、ただ噛み締めるしかないんだろうな」
「はは。あの人らしいなァ」
「征蹂郎クン、クールなツラしてっけど誰より不器用だからな」

 聖杯戦争。
 肩に担いでいる兵器を総動員しても倒せるかどうか分からない、怪物と魔人の巣窟。
 デュラハンの半グレ達さえ臆病風に吹かれる修羅場に、聯合の彼らは二つ返事で身を投じた。

 命など惜しくはない。仲間のためならば。
 死など怖くはない。俺達が奉じた"王"のためならば。
 青春に似た狂信は、正體なき人形を熱を持つ戦士に変えていた。
 故に彼らは勇ましく戦う。命を惜しまず、死を恐れず、果ての果てまで突き進む。


「――そんな人を悲しませる連中、マジ殺したくね?」


 その、見方によっては美しい旅路が。
 死へのはばたきだとしても、きっと満足しながら死ねる運命が。
 【赤】い衝動の前に、醜く穢される。


「ああ。殺さなきゃダメだな」
「ブチ殺すしかねえだろ。手足全部もいでよぅ、目玉抉ってそこに小便してやろうぜ」
「物足りなくね?」
「ああ。物足りねえな」
「つーかさ、今更だけどよ。なんで俺達が悪人みたいにされてんだ?
 征蹂郎クンと出会うまで燻って、這い蹲って、そうやって生きるしかなかった俺らがさ。
 半グレとか呼ばれて、社会の裏側に押し込められて、一緒くたにされてクズ扱いされてんの、マジ許せなくね?」
「ああ。許せねえな」
「だよな。前から薄々思ってたけどよ、俺らの敵ってデュラハンだけじゃねえよな」
「ああ。全員ブチ殺さねえと気が済まねえよ」
「こいつら、俺らがどんな思いで生きてきたかも知らないでのうのうと被害者面してやがる」
「ああ。俺達や征蹂郎クンの味わってきた気持ちの、多分一ミリも分かってねえんだろうな」
「やっぱ殺さなきゃダメじゃね? こいつらも」
「ああ。殺さなくちゃダメだ」
「そうだよな」
「ああ」
「殺すか」
「殺そうぜ」
「殺しながら行けば一石二鳥だろ」
「弾が足りなくなったら、ライダーさんに貰えばいいもんな」
「じゃあやるかぁ」
「どうせやるなら競争にしようぜ」
「賛成。その方がモチベ出るわ」
「一番多く殺せた奴が勝ちな」
「やべ。俺、なんか知らんけど今メチャクチャムカついててよ。俺より多く殺されたらそいつのことも殺しちまいそうだわ」
「あー……俺もだわ。じゃあさ、俺名案浮かんだんだけどよ。殺された奴のスコアは殺した奴に足されるとかどうよ?」
「うわ、それマジ名案。そうしようぜ」
「よし、じゃあ決まりな。容赦しねえぞ俺は」
「誰に物言ってんだよ。後から泣きつくなよ? そん時はゲラゲラ笑ってやるからな」
「なら笑ってるお前らを殺すわ」
「征蹂郎クン以外は別に死んでもいいしな」
「俺らってそういうモンだろ。聯合はあの人のためにあるんだから」
「だな。あー、気楽でいいわ。じゃあ早速始めっかぁ!」


 赤騎士は戦を喚び起こす。
 たとえ泰平の世であろうとも、一度それが顕現すればたちまち【赤】の一色に染まる。
 レッドライダーは確かに悪国征蹂郎のサーヴァントで、刀凶聯合の切り札であるが。
 かの騎士は征蹂郎もその同胞達も、あらゆる生き物を何ひとつ区別していない。
 台風に人格を見出し、進路を予測しようとする行為が無駄であるように。
 厄災たる赤騎士に区別や配慮のたぐいを期待する方が愚かなのだ。


「鏖殺(みなごろ)し!」


 【赤】はとめどなく溢れ出し、広がっていく。
 もはやその存在の終わりを以ってしか止めることはできない。
 復讐者達の雄叫びは、今や戦意に染められた狂戦士の奇声に堕した。

 皆殺しのクライ・ベイビー。
 血が広がる。戦が弾ける。神の民が愛した秩序は棄却され、黙示録の時が訪れる。


 ――――成就ノ時来タレリ。預言ハ叶イ応報ハ地ヲ覆ウ。
 ――――今コソ境界(レッドライン)ヲ超エル時。



◇◇



【新宿区・歌舞伎町/二日目・未明】

【山越風夏(ハリー・フーディーニ)】
[状態]:疲労(大)、腹部にダメージ(大)
[令呪]:残り三画
[装備]:舞台衣装(レオタード)
[道具]:マジシャン道具
[所持金]:潤沢(使い切れない程のマジシャンとしての収入)
[思考・状況]
基本方針:聖杯戦争を楽しく盛り上げた上で〈脱出〉を成功させる
0:――さあ、お楽しみはこれからだよ、ノクト。
1:他の主従に接触して聖杯戦争を加速させる。
2:華村悠灯がいい感じに化けた! 世界に孔を穿つための有力候補だ!
3:悪国征蹂郎のサーヴァントが排除されるまで〈デュラハン〉に加担。ただし指示は聞かないよ。
4:レミュリンの選択と能力の芽生えに期待。
5:祓葉も来てるようだからそっちも見に行きたいけど……!
6:やばいなこいつちょっと強すぎる。助けて私のハリー・フーディーニ!

[備考]
準備の時間さえあれば、人払いの結界と同等の効果を、魔力を一切使わずに発揮できます。

〈世界の敵〉に目覚めました。この都市から人を脱出させる手段を探しています。

蛇杖堂寂句から赤坂亜切・楪依里朱について彼が知る限りの情報を受け取りました。

今のこのノクトとの遭遇は、流石の彼女にとっても予想外で準備不足であるようです。

【ライダー(ハリー・フーディーニ)】
[状態]:第五生のハリーと入れ替わり中
 五生→健康
 九生→疲労(大)
[装備]:九つの棺
[道具]:
[所持金]:潤沢(ハリーのものはハリーのもの、そうでしょう?)
[思考・状況]
基本方針:山越風夏の助手をしつつ、彼女の行先を観察する。
0:『――ヴァルハラか?』
1:他の主従に接触して聖杯戦争を加速させる。
2:神寂祓葉は凄まじい。……なるほど、彼女(ぼく)がああなるわけだ。
[備考]
準備の時間さえあれば、人払いの結界と同等の効果を、魔力を一切使わずに発揮できます。

宝具『棺からの脱出』を使って第五生のハリー・フーディーニと入れ替わりました。
神聖アーリア主義第三帝国陸軍所属。第四次世界大戦を生き延びて大往生した老人。
スラッグ弾専用のショットガンを使う。戦闘能力が高い。
ヴァルハラの神々に追われている妄想を常に抱いており話が通じない。

【ノクト・サムスタンプ】
[状態]:健康、恋、やる気マンマン
[令呪]:残り三画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:莫大。少なくとも生活に困ることはない
[思考・状況]
基本方針:聖杯を取り、祓葉を我が物とする
0:相変わらずしぶといな〈脱出王〉。さて、此処からどうするか。
1:デュラハン側のマスターたちを直接狙う。予定外のことがあれば素早く引いて何度でも仕切り直す。
2:当面はサーヴァントなしの状態で、危険を避けつつ暗躍する。
3:ロミオは煌星満天とそのキャスターに預ける。
4:当面の課題として蛇杖堂寂句をうまく利用しつつ、その背中を撃つ手段を模索する。
5:煌星満天の能力の成長に期待。うまく行けば蛇杖堂寂句や神寂祓葉を出し抜ける可能性がある。
6:満天の悪魔化の詳細が分からない以上、急成長を促すのは危険と判断。まっとうなやり方でサポートするのが今は一番利口、か。
[備考]
 東京中に使い魔を放っている他、一般人を契約魔術と暗示で無意識の協力者として独自の情報ネットワークを形成しています。

 東京中のテレビ局のトップ陣を支配下に置いています。主に報道関係を支配しつつあります。
 煌星満天&ファウストの主従と協力体制を築き、ロミオを貸し出しました。

 蛇杖堂寂句から赤坂亜切・楪依里朱について彼が知る限りの情報を受け取りました。


【新宿区・南部/二日目・未明】

【キャスター(シッティング・ブル)】
[状態]:疲労(中)、右耳に軽傷、迷い、畏怖、動揺、霊獣に騎乗して移動中
[装備]:トマホーク
[道具]:弓矢、ライフル
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:救われなかった同胞達を救済する。
0:悠灯の元へ向かう。
1:今はただ、悠灯と共に往く。
2:神寂祓葉への最大級の警戒と畏れ。アレは、我々の地上に在っていいモノではない。
3:――他でもないこの私が、そう思考するのか。堕ちたものだ。
4:復讐者(シャクシャイン)への共感と、深い哀しみ。
5:いずれ、宿縁と対峙する時が来る。
6:"哀れな人形"どもへの極めて強い警戒。
7:覚明ゲンジ。君は、何を想っているのだ?
[備考]
※ジョージ・アームストロング・カスターの存在を認識しました。
※各所に“霊獣”を飛ばし、戦局を偵察させています。

【覚明ゲンジ】
[状態]:疲労(中)、血の臭い、高揚と興奮
[令呪]:残り3画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:3千円程度。
[思考・状況]
基本方針:できる限り、誰かのたくさんの期待に応えたい。
0:……待ってろよ、祓葉。
1:祓葉を殺す。あいつに、褒めてほしい。
2:抗争に乗じて更にネアンデルタール人の複製を行う。
3:ただし死なないようにする。こんなところで、おれはもう死ねない。
4:華村悠灯とは、できれば、仲良くやりたい。
5:この世界は病んでいる。おれもそのひとりだ。
[備考]
※アルマナ・ラフィーを目視、マスターとして認識。
※蛇杖堂寂句の要求を受諾。五十体の原人を用いる予定。

【バーサーカー(ネアンデルタール人/ホモ・ネアンデルターレンシス)】
[状態]:健康(残り95体/現在も新宿区内で増殖作業を進めている)、一部(10体前後)はライブハウスの周囲に配備中、〈喚戦〉、ゲンジへの畏怖
[装備]:石器武器
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:今のところは、ゲンジに従い聖杯を求める。
0:弔いを。
[備考]
※老人ホームと数軒の住宅を襲撃しました。老人を中心に数を増やしています。

【蛇杖堂寂句】
[状態]:右腕に大火傷(治療済み)
[令呪]:残り2画
[装備]:コート姿
[道具]:各種の治療薬、治癒魔術のための触媒(潤沢)、「偽りの霊薬」1本。
[所持金]:潤沢
[思考・状況]
基本方針:他全ての参加者を蹴散らし、神寂祓葉と決着をつける。
0:祓葉を終わらせる。
1:神寂縁は"怪物"。祓葉の天送を為してまだこの身に命があったなら、次はこの血を絶やす。
2:当面は不適切な参加者を順次排除していく。
3:病院は陣地としては使えない。放棄がベターだろうが、さて。
4:〈恒星の資格者〉は生まれ得ない。
5:運命の引力、か……クク。
6:覚明ゲンジは使える。よって、可能な限り利用する。
[備考]
神寂縁、高浜公示、静寂暁美、根室清、水池魅鳥が同一人物であることを知りました。
神寂縁との間に、蛇杖堂一族のホットラインが結ばれています。
蛇杖堂記念病院はその結界を失い、建造物は半壊状態にあります。また病院関係者に多数の死傷者が発生しています。

蛇杖堂の一族(のNPC)は、本来であればちょっとした規模の兵隊として機能するだけの能力がありますが。
敵に悪用される可能性を嫌った寂句によって、ほぼ全て東京都内から(=この舞台から)退去させられています。
屋敷にいるのは事情を知らない一般人の使用人や警備担当者のみ。
病院にいるのは事情を知らない一般人の医療従事者のみです。
事実上、蛇杖堂の一族に連なるNPCは、今後この聖杯戦争に関与してきません。

アンジェリカの母親(オリヴィア・アルロニカ)について、どのような関係があったかは後続に任せます。
→かつてオリヴィアが来日した際、尋ねてきた彼女と問答を交わしたことがあるようです。詳細は後続に任せます。
→オリヴィアからスタール家の研究に関して軽く聞いたことがあるようです。核心までは知らず、レミュリンに語った内容は寂句の推測を多分に含んでいます。

赤坂亜切のアーチャー(スカディ)の真名を看破しました。

"思索"と"失点の修正"を終えました。具体的内容については後にお任せします。

【ランサー(ギルタブリル/天蠍アンタレス)】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージ(小)
[装備]:赤い槍
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:神寂祓葉を刺してヒトより上の段階に放逐する。
0:大義の時は近い。
1:蛇杖堂寂句に従う。
2:ヒマがあれば人間社会についての好奇心を満たす。
3:スカディへの畏怖と衝撃。
4:よもや同郷がいるとは。


【新宿区・東部/二日目・未明】

【悪国征蹂郎】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)、頭部と両腕にダメージ(応急処置済み)、覚悟と殺意
[令呪]:残り二画
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度。カード派。
[思考・状況]
基本方針:刀凶聯合という自分の居場所を守る。
0:――ケリを着けよう、周鳳狩魔。
1:周鳳の話をノクトへ伝えるか、否か。
2:アルマナ、ノクトと協力してデュラハン側の4主従と戦う。
3:可能であればノクトからさらに情報を得たい。
4:ライダーの戦力確認は完了。……難儀だな、これは……。
5:ライダー(レッドライダー(戦争))の容態を危惧。
[備考]
 異国で行った暗殺者としての最終試験の際に、アルマナ・ラフィーと遭遇しています。
 聯合がアジトにしているビルは複数あり、今いるのはそのひとつに過ぎません。
 養成所時代に、傭兵としてのノクト・サムスタンプの評判の一端を聞いています。
 六本木でのレッドライダーVS祓葉・アンジェ組について記録した映像を所持しています。
 アルマナから偵察の結果と、現在の覚明ゲンジについて聞きました。
 千代田区内の聯合構成員に撤退命令を出しています。

【アルマナ・ラフィー】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)、無自覚な動揺
[令呪]:残り3画
[装備]:カドモスから寄託された3体のスパルトイ。内二体破壊、残り一体。
[道具]:なし
[所持金]:7千円程度(日本における両親からのお小遣い)。
[思考・状況]
基本方針:王さまの命令に従って戦う。
0:アルマナはアルマナとして、勝利する。
1:もう、足は止めない。王さまの言う通りに。
2:当面は悪国とともに共闘する。
3:悪国をコントロールし、実質的にライダー(レッドライダー(戦争))を掌握したい。
4:アグニさんは利用できる存在。多少の労苦は許容できる。それだけです。…………それだけ。
5:傭兵(ノクト)に対して不信感。
[備考]
 覚明ゲンジを目視、マスターとして認識しています。
 故郷を襲った内戦のさなかに、悪国征蹂郎と遭遇しています。

※新宿区を偵察、情報収集を行いました。
 デュラハン側の陣形配置など、最新の情報を持ち帰っています。


【新宿区・南部付近/二日目・未明】

【ライダー(レッドライダー(戦争))】
[状態]:『英雄よ天に昇れ』投与済、〈赤き竜〉
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:その役割の通り戦場を拡大する。
0:預言の成就。
1:神寂祓葉を殺す
2:ブラックライダー(シストセルカ・グレガリア)への強い警戒反応。
[備考]
※マスター・悪国征蹂郎の負担を鑑み、兵器の出力を絞って創造することが可能なようです。
※『星の開拓者』を持ちますが、例外的にバーサーカー(ネアンデルタール人)のスキル『霊長のなり損ない』の影響を受けるようです。
※ランサー(ギルタブリル/天蠍アンタレス)の宝具『英雄よ天に昇れ』を投与され、現在進行形で多大な影響を受けています。
 詳しい容態は後にお任せしますが、最低でも不死性は失われているようです。
※七つの頭と十本の角を持ち、七つの冠を被った、〈黙示録の赤き竜〉の姿に変化しています。
※現在、新宿区にスキル〈喚戦〉の影響が急速拡大中です。範囲内の人間(マスターとサーヴァント以外)は抵抗判定を行うことなく末期の喚戦状態に陥っているようです。
 部分的に赤い洪水が発生し、この洪水は徐々に範囲を拡大させています。

【千代田区・西部/二日目・未明】

【バーサーカー(ゴドフロワ・ド・ブイヨン)】
[状態]:健康、『同胞よ、我が旗の下に行進せよ』展開中
[装備]:『主よ、我が無道を赦し給え』
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:狩魔と共に聖杯戦争を勝ち残る。
0:まんまと逃げられてしまったが、はてさてどうしたものか。
1:神寂祓葉への最大級の警戒と、必ずや討たねばならないという強い使命感。
2:レッドライダーの気配に対する警戒。
3:聯合を末端から削る。同胞が大切なのですね、実に分かりやすい。
[備考]
※デュラハンの構成員を連れて千代田区に入り、彼らを餌におびき出した聯合構成員を殺戮しています。


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062:[[]]

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最終更新:2025年07月21日 23:44