「美味い」

フワフワの白パンをちぎり口に運ぶ

「美味い」

ドロリと垂れる赤いシチューをスプーンで掬う

「美味い」

七色のソースを焼いたタラに乗せ舌に敷く

「美味い」

噛みちぎったステーキ、中は赤く汁気がある

「美味い」

粉砂糖の掛かった美しいモンブランを山頂からフォークで崩す

多種多様、豪華絢爛、次々とテーブルに乗っかる西洋料理をひたすらに、しかし丁寧に食していく。鼻には香しい匂いを貫き、噛み締めるほど湧き出てくる味に舌鼓をうつ。

「マスター、あんた料理人としての腕いいな」

二十数枚の皿を片す男。パリッとした軍服に身を包み、外していた白い手袋をつける。カチカチと動く金の懐中時計を閉じて、日本刀を撫でた。その少しの動作から香水の匂いが周囲に漂う。
マスターと言われたものはその洒落た匂いが鼻をくすぐる頃、口を開いた。

「でしょう?褒められると伸びるタイプなの私。もっと褒めて」
「いいよいいよ。美味いぜまじ美味い」
「うふふ」

白い仮面をつけているマスターは妖しく笑う。料理人のような格好であるが豊満な肉体には少し狭いようでパツパツだ。マスターは白い仮面を外すと服が糸のようにほぐれ、内側から古臭いジャケットが現れた

「面白いまじ面白い!いつ見ても飽きねぇ。素早い変身、まじ魔術凄いな」
「うちの魔術、服がすぐ変わるから便利なのよね」

テーブルを挟んでたわいもない会話を行う2人。その周りは赤錆色と鉄のような臭いが漂っていた

「うーん、これら見苦しいわね」
「そうか?………いやそうかもな。こうも赤いと落ち着かない」
「うちが掃除するわね」

マスターは自分の腰に手を回す。そこには11枚の仮面が存在していた。そのうちの一つ、黒の仮面を掴むと自らの顔につける

黒の仮面からくるくると黒い糸が這い出て豊満な肉体を包み込んでいく。十重に二十重に編み込まれていく糸、数秒で肉体を行き来した糸は黒の修道服を作成した

「Zophiel」

一言、口から唱えることで修道服から無数の黒い糸が飛び出す。その一つ一つが、周りの死体に飛びつき、覆い尽くす。脈動する黒い糸、終着点である修道服を着た女は吸い上がる何かを身に入れるたび恍惚して微笑む

「マスター、それ美味いんか?」
「貴方じゃ、そうでもないわよ。えーと………【セイバー】?」
「ここには誰もいない。フォーリナーでええさ」
「ええフォーリナー。この生の血肉は譲らないわ」
「ケチだね?」
「満腹になるまで料理作ってあげたじゃない。」
「それはそれとして気になるわけよ」
「ダメ!まあ結局回り回って貴方の魔力になるしそれで許してね」
「うーん………それならいいか」

料理が乗った最後の皿をペロリと平らげ、フォークを置くフォーリナー。彼のマスターも同時に食事を終える。黒い糸が彼女の修道服に戻ると血肉があった床は綺麗に磨かれ、骨だけを残した。近くに落ちていた立派な大腿骨を手に取り、なぞる女。

「さて………人骨のスープは食べるかしら?」
「興味あるね。馬とか食ってたけど人食うのはないし」
「あら拒否しないのね」
「腹が減って仕方ないし」
「………もう空腹なの?」
「燃費が悪くなったもんだよ全く」

フォーリナーの愚痴を少しばかり苦い顔で聞く女。これじゃあ食費だけで、いくらかかるのやら。少しばかり冷や汗が出る

「作らないのか人骨スープ?」

その呑気な言い草にイラッときた女は手にある大腿骨をフォーリナーに向かってぶん投げた。女の頬を汗がつたり地に落ちる。

3度、銀の風が見えた。

フォーリナーは自らの日本刀をいつのまにか抜き放ち、軍刀を持たない方の手には皿がある。その上には四つの大腿骨のかけらが落ちていた。

「これで作りやすいな?」

その言い草に女は苦笑する他なかった。

女の名前はハニブ・アダスタン。国籍、年齢不明の死徒だ。

フォーリナーの真名は桐野利秋。幕末の日本に生きた武士だ。


サーヴァント
【クラス】フォーリナー
【真名】桐野利秋
【属性】混沌・中庸
【ステータス】筋力B+ 耐久C 敏捷EX 魔力A 幸運C 宝具A
【クラススキル】
領域外の生命EX
外なる宇宙、虚空からの降臨者。
邪神に魅入られ、権能の片鱗を身に宿して揮うもの。

神性B
外宇宙に潜む高次生命の起点となり、強い神性を帯びた。代償として怠惰的な性格へとかわり、常に異様な飢餓感に襲われ、腹が満タンになるまで食事しなければならない。

【保有スキル】
対魔力C
本来の適正クラスであるセイバーのクラススキル。
魔術詠唱が二節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法など、大掛かりな魔術は防げない。
フォーリナーのスキルの影響でランクアップしている。

騎乗B
本来の適正クラスであるセイバーのクラススキル。
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。

じげん流A++
フォーリナーが収めた二つの剣術、小示現流と薬丸自顕流を指すスキル。「二の太刀要らず」と謳われる一撃必殺の剣技は、地軸の底まで叩っ斬るほどのものだ。相手の防御スキルの影響を軽減し、自らの斬撃の威力に対する有利な補正がつく。

軍略C
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

象牙の書なし
幼少期、師の部屋にて読んだ魔術書。漢文で書いてあり全く理解することができなかった。だがここで外宇宙の一端に触れた出来事はフォーリナーの死後に影響を及ぼしてしまう。スキルとしてあるが効果はない。

【宝具】
雨垂剣(あまだれけん)
ランク:なし 種別:対人魔剣 レンジ:1~9 最大捕捉:1人
フォーリナーの必殺剣。「軒先の雨粒が落ちる間に3度抜刀した」と言われるほどの居合術。鞘から取り出し、斬りつけて納刀するまでの一動作を3回、一瞬の狂いもなく全く同時に繰り出す。その軌道はどれだけ視覚が発達していても銀の風が通ったようにしか見えない。

桐野星(きりのほし)
ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1~6 最大捕捉:1人
民衆が見た火星に映る西郷隆盛。火星にいるなら桐野利秋はどこにいたのか?民衆は火星の近くにあった土星に彼を見た。民衆の信仰と桐野利秋の体験は最悪の形で結びつき、霊基を歪めフォーリナーとして顕現するに至る。
真名解放することで桐野利秋は土星と完全に結びつき、桐野利秋を起点として人間の理解の外にある世界を呼び起こす。

【weapon】
日本刀

【人物背景】
初めは中村半次郎と名乗っていた薩摩藩の武士。小示現流、薬丸自顕流などを独力で収めた剣の達人で、河上万斉・田中新兵衛・岡田以蔵らと合わせて「幕末四大人斬り」など言われているが、桐野利秋が公的に人を斬ったのは1人だ。
明治維新後、陸軍少将として政府の中で仕事をしていたが、征韓論争で西郷隆盛が下野すると辞表を提出しこれに従う。

明治10年(1877年)2月6日、火薬庫襲撃事件・中原尚雄の西郷刺殺計画などを受け、西南戦争が勃発。桐野利秋は四番大隊指揮長となり、征討軍と戦った。

その最期は最後まで奮戦し、額を打ち抜かれた壮絶なものである。

【外見・性格】
洋服を着こなす優大男。

竹を割ったような性格。勇猛果敢で潔白で豪放。
ただ割り切りが異様に速い。倫理観がずれている。

【身長・体重】
190cm・80kg

【聖杯への願い】
降臨者との縁切り

【マスターへの態度】
美味い料理を作ってくれて嬉しい。でも空腹が続けば殺すかなぁとか考えている。

マスター
【名前】ハニブ・アダスタン
【性別】女
【年齢】精神年齢20歳くらい
【属性】混沌・悪
【外見・性格】
鈍色の髪、ポニーテール、白の肌。ジャケットを着用している。
享楽的で楽観主義者。これは一度悲観し始めるととめどなく後悔が湧き出てくるので考えないようにしているため。
命を奪うのに躊躇はない。
【身長・体重】
180cm・B97・W54・H98・体重39kg(公称)

【魔術回路・特性】
質E・量EX
特性:全身変化

【魔術・異能】
変面魔術
木でできた仮面をつけることで様々な効果を発動する。ハニブが持っている仮面は11枚で仮面により服装も変化する。1枚つけると30分外せず、同じ仮面を連続でつけることはできない。

白:服装は料理人、手を9本増やす。
灰:服装はタキシード、男性に変装する。
黒:服装は修道服、輪のように触手を出す。
青:服装は警官、痛みのないガンドを撃つ。
赤:服装は医者、心霊手術を行える。
黄:服装は前衛的な衣装、異性に対する魅了魔術を使える。
翠:服装はスポーツウェア、身体能力が上昇する。
橙:服装は剣士、水銀製の剣を操る。
紫:服装はローブ、魔術の威力が上がる
檸檬:服装は女王、自分の従者として契約した者の能力を底上げする。
無色:服装はなし、大木のような怪物に変化する

【備考・設定】
おそらくヨーロッパ出身の死徒。2世紀は生きているのだが、その9割が眠りについていた時間のせいでそこまで精神が育っていない。
いつどうして死徒になったかは全く覚えておらず、長い間眠っていたことで知り合いが全員死んでいた事に愕然とする。

残ったのはかすかに研究していた仮面の魔術と簡単に死なない肉体。ならば死ぬまで楽しく生きて、悲しみを忘れよう。………彼女は魔術師の性質を保つにはあまりにも人間的だった。

【聖杯への願い】
人間に戻る

【サーヴァントへの態度】
自分の願いを叶えるために必要な駒。しかし失礼のないよう丁重に扱い、ギクシャクしないよう心を砕いている。

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最終更新:2024年06月05日 00:21