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 ―――これにて策は整い、布石は全て打ち終えた。
 ―――万に一つも、己が負ける道理はない。

 ミラーコーティングされたサングラスのレンズには、うねる炎が城壁を舐め尽くす様が映っている。
 燃え落ちる巨城、崩れゆく蛇杖堂記念病院を眺めながら、ノクト・サムスタンプは以後の流れを反芻する。

 優勝最有力候補たる蛇杖堂寂句の脱落と共に、状況は中盤戦から終盤戦に踏み込んだ。
 後は畳むだけだった。厄介な脱出王の尻尾は既に掴んでいる。
 狐を追い詰めた後は、脅威になり得ない『弱小勢力』を狩り尽くすのみ。


 ―――これにて策は整い、布石は全て打ち終えた。
 ―――万に一つも、己が負ける道理はない。

 ミラーコーティングされたサングラスのレンズには、床に伏した山越風奇の死体が映っている。
 胸の切断面は焼け焦げ出血は無い。怪しく歪んだ顔貌に違和感こそあれ、それが死体である事実に疑いはない。

 少々予想外の推移を含んでいたが、起こる事象は何一つ計算から外れていない。
 後は終わらせるだけだった。残るは取るに為らぬ弱者のみ。
 赤坂亜切も既に脱落した今、事故のような死因も計算に入れなくていい。
 粛々と、作業のように、計算された勝ち筋を辿るのみ。


 ―――これにて策は整い、布石は全て打ち終えた。
 ―――万に一つも、己が負ける道理はない。

 ―――本当に?

 ミラーコーティングされたサングラスのレンズには、迫りくる光の剣が映っている。

「―――あ?」

 剣によって切り裂かれた。
 何を? 己の心臓、その間中を。

 剣によって断ち切られた。
 何を? 己の勝利、その因果を。

 ―――いや、本当に、そうか?

 間違っていた。
 何が? 己の計算、数式そのものが?

 今際の際、ノクト・サムスタンプは思考する。
 柄にもなく、益体もない想像に思いを馳せる。

 眼の前で可憐に踊る少女は、何もかもを壊してしまった。
 聖杯戦争の行く末も、ノクトの計算も。

「あーーーーーーー楽しかったなあ」

 計算式そのものを壊してしまう異物。
 ああ、だけど、今となっては分からない。
 壊れていたのはどちらの方だったか。


「ノクトってさ、ほんっとーーーーーーに"悪い人"だよねぇ」 

 少女は、頬を少し膨らませながら、それでもやはり笑っている。

「今日だけで、もう何回騙されたか。分かんないや」

 そうとも、ノクト・サムスタンプは悪い大人で、少女は純真無垢な子供だった。
 少なくともノクトの計略が少女に見抜かれた事など唯の一度もない。
 今この瞬間だって、別に策が破れたわけじゃない。全ては計画通りだった。
 なのになぜ、己は死ぬ。

「知り合って、いきなり騙されて、疑ってみたら騙されて、信じてみたらやっぱり騙されて。
 最後の最後まで、ノクトには騙されっぱなしだったなあ」

 最悪の筈の思い出を、ノクトに食い物にされた者が恨みながら語るはずの記憶を、少女は本当に嬉しそうに振り返る。

「最後にね、私の秘密を教えてあげる」

 剣を握る手に迷いはない。
 一切の躊躇無く突き出された腕、だから事が起こるまで気づけなかった。

「私もさ、ホントは"悪い子"なんだって」

 光が身体を両断する。
 虎の如き巨体を、少女の細い腕に握られた剣が、あっけなく断ち切っていく。

 ノクトは知っていた。
 少女は弱者だった。
 それはきっと、ある時まで決して間違いではなかった。

 ノクトは知っていた。
 少女は純真で、無垢で、天真爛漫で。
 まるで主人公のような女で。

 だけど、ノクトは知らなかった。
 少女は邪悪であった。
 新たに見出したそんな一面。
 だけど、なぜだろう、そんなところもまた、割れた心臓が跳ねるほどに、可愛い。 

「それじゃあ、ノクト」

 最後にもう一度、ノクトは思う。
 壊れていたのはこの少女か、あるいは―――


「―――またね」


 今際に至るまで、そう微笑まれて、浮き上がってしまう己自身であったのか。



◇



 ―――これにて策は整い、布石は全て打ち終えた。
 ―――万に一つも、己が負ける道理はない。

 ミラーコーティングされたサングラスのレンズには、卓上に並べられたモニターの画面が映っている。
 製薬企業のビル、最上階の社長室にて、ノクト・サムスタンプは高価な椅子に深く腰掛け、長い足を机の上に放り出していた。

 視線の先、モニターにはビル内部に配置された監視カメラから送られてくる映像が分割表示されており、僅かな異変も取りこぼさぬ。
 各フロアに配置された『仕掛け』は滞り無く機能を果たし、侵入者へ適切な対応を果たすだろう。

 要所に配置した大駒、すなわちサーヴァントの霊基も問題ない。
 ノクトが己の狂気を自覚した影響か、バーサーカーは出力を取り戻した。
 アサシンは未だ剣呑な気配を漂わせてはいるが、駒としての働きは申し分ない。
 今も、新たな蝿人間を補充し、ノクトの戦力基盤を再構成している。

 懸念があるとすれば一つきり。
 他は全て問題ない。

 ビル一階、ロビー、正面玄関を映すモニターを俯瞰しながらノクトは思う。
 いつでも来るがいい。

 二騎のサーヴァント。カドモス、そして天蠍アンタレス。
 二人のマスター。悪国征蹂郎、そして高乃河二。
 ノクトの追手として現れると読んだ者達。

 加え、多少の予想外があったとしても対応できる。 
 それほどに、ノクトの構えた布陣は盤石だった。


 ―――これにて策は整い、布石は全て打ち終えた。
 ―――万に一つも、己が負ける道理はない。

 ―――本当に?


 ミラーコーティングされたサングラスのレンズには、社長室の扉が映っている。

 いつかと同じ、疑問が脳裏に差し込まれる。
 本当に?
 己は何かを見逃している。
 否、何かを見ないようにしている。

 本当はまだ、ある筈ではないのか。
 打てる手が、構えられる策が。

 最大の欺瞞を無視している。
 この場の勝利が盤石だったとして。
 ここでただ勝ってなんとする。

 もはや当初の手順は使えない。
 今日の夜を越えられなければ、本来の奥の手であった悪魔の覚醒、偶像の対峙には間に合わない。
 星の光。"神を撃ち落とす灯"を手に入れる為に、打ってきた多くの布石は無に帰してしまう。

 だが現実問題として、ノクト・サムスタンプには時間が無い。
 英霊に届く魔力の横溢と引き換えに、刻一刻と人としての器が砕けていくのを感じる。
 これが蠍の毒。英霊に至る素養なき身を壊す、否、素養があったからこそ僅かな余命が与えられている。

 時のなき身に許されるのは、当初の策を捨てた、なりふり構わぬ強行軍。
 追手を皆殺し、他の全てを皆殺し、聖杯に手をかける。
 そんな、現実的ではない絵空事を、現実にするべく走り続けるのみ。

 だが、本当に―――?
 ■を■■だけならば、あるいは―――?


「―――は」

 ほんの僅か、かすめた馬鹿馬鹿しい思考を一蹴する。
 それは狂気に落ちた身であっても、あまりに論外、世迷言の類であったから。

「あんた、さっきからどこを見てる?」

 傍らから上がった声に視線を右へ動かすと、そこには身じろぎせず立ち尽くす修道服の袖があった。
 琴峯ナシロは利口にも、ノクトの言いつけた場所に、まるで社長秘書のように立ち続けている。
 最も、契約に縛られた彼女には、言いつけに逆らう自由などないのだが。

 唯一、自由のきく口を使って、ナシロはノクトの注意を引いたのだ。
 その横顔に過った、悍ましい気配を感じ取って。

「どこって……玄関の映像だろ。もうすぐ敵が来るんだ、他に何がある?」
「いや、途中から見てなかった。あんたは今、社長室の扉を見てた」

 ノクトの視線は、徐々にモニターから離れ、部屋の入口へと向けられていた。
 だが、それは意味のない行為だ。誰も入ってくるわけがない。
 にも関わらず、まるで、この場に全く関係ない誰かが、突然やってくるのを期待するかのように。

「―――ふ、ふは、ふはは」

 あの日のように。
 突然、扉が開き、予想外の闖入者が全てを壊し。
 己を狂わせる光が差し込むことを、願うように。

「なに笑ってるんだ……気持ち悪いな……」
「なあ、琴峯ナシロ、お前はヤツが来ると思うか?」 

 問いは端的に、互いにとって本質を捉えている。

「……あいつは……河二は来ないよ」

 その否定は祈りにも似ている。
 来るべきでない。来てはいけない。来ないでくれ。
 彼は己の目的に向かうべきだ。

 勝手に身を捧げた馬鹿な女の為に、足踏みしていいわけがない。
 自分自身の復讐の為に戦うべきだ、と。

 だけど、その声音に、ほんの僅かな震えを隠せていない。
 本当は来てほしい。
 その綻びを隠しきれない。ああ、だとすれば。

「いいや、来る。あいつは来るさ。だから俺は、お前が羨ましい」
「……どういう、意味だよ」

 高乃河二は必ず来る。それが分かる。己の中の"愛"を自覚した今のノクトには。
 だがノクトの、本当の待ち人はきっと来ない。
 今、どんなに近くにいるとしても、この程度の輝きに、きっと彼女は惹かれないから。

「一つ賭けをしようか」

 机の引き出しを開け、飛び出した雑多な物の中から、小さな銀貨を一枚拾い上げる。

「表が出れば俺は、最後のカードをいま暫く懐に仕舞っておく」

 そう、まだ出来ることはある。
 ノクトには温存する切り札があった。

 琴峯ナシロの令呪、残り一画。
 ナシロの身柄を支配している以上、間接的にノクトが使用可能となる最後の命令権。
 支配の及ばないアサシン、ベルゼブブに対する唯一真となる強制力。

 これによってアサシンの意思を奪い、完全に制御下に置いてしまえば、裏切りのリスクからは解放される。
 しかしそれは、アサシンに期待する成長機会を、永遠に奪ってしまう事と表裏一体であった。
 戦力の上限が既定されてしまうことは避けられず。

 故に、そのカードの切り所とは、追い詰められた果てに振るう、最後の手段と考えていた。
 しかし、実のところ、選択肢はもう一つだけ残っている。
 己の渇望を自覚したからこそ選ぶことが出来る。
 実に愚かで、策と呼ぶにはあまりに荒唐無稽な、それは―――


「裏が出れば、俺は―――」


 開示されし歪んだ数式に、琴峯ナシロは顔を顰め。


「あんた……正気か……?」


「はッ、そう見えるかい?」


 そうして、コインは宙に投げられた。


◇


 本音を隠さずに言えば、少しだけ不満があった。
 "復讐に意味など無い"。
 あの日、父が死んだ日の夜、兄はそう言った。

 言葉の意味は分かる。
 理屈も、魔術師としての合理的な判断であったことも。
 もちろん責めるつもりも、不満もなかった。

 それに兄には、他に守るものがあったから。
 次男(スペア)にすぎない自分とは違う。
 当主を継ぐものとして、守るべき家があった。
 かえりみるもの、責任がある。
 だからこそ、自分がやるべきだとも思った。

 兄と違い、背負うもののない自分が、失うもののない自分こそが。
 父の仇を討つ。そのために、兄の代わりに人生を費やすと。

 父の善果を、仇の悪果を、正しく果たすために。
 愛を、確かに在った父の愛を、正しく返すために。
 自分に出来ることは、他に思い浮かばなかったから。

 だけど、本当は―――心の奥底に、ひとつだけ不満があった。
 家を出たあの日、兄が最後にくれた言葉も、父が死んだ日の繰り返し。

 "復讐に意味など無い"。

 分かっている。分かっているんだ
 だけど、ほんの少しだけ、思ってしまった。

 それでも、せめて、"頼む"、と。
 "任せた"、と。
 本当は、そう言って欲しかった。

 兄の立場は分かっている。
 兄に同意した母の想いも。

 だけど、それでも、心は同じだと。
 父の愛に報いたいと願う想いは同じだと、そう思いたかった。
 皆、父の愛を忘れてしまったのか。そんな不満を、覚えなかったと言えば嘘になる。
 あの日、最後に兄は一言だけ付け加えた。

 "お前にも、きっと分かる時が来るよ"

 その意味だけは、分からないまま家を出て。
 復讐を果たすまで、決して戻らないと誓っていた。

 そうして今、自分は倒すべき仇に背を向けている。
 遂に辿り着いた仇の正体。神寂縁。
 相対を果たし、無謀にも挑み。一度は敗れ、それでも命を拾ってもう一度機会を得た。
 他ならぬ、琴峯ナシロによって、機会を与えられた、筈だった。

 ナシロは、怒るだろうか。今の自分の行動を見て。
 確認なんて、きっと不要だろう。
 答えなら、彼女の従者が先んじて与えてくれていた。

『あなたはナシロさんに救って貰った命で、何をしようって言うんですか?』

 自分は何をやっているのだろう。
 その疑問は、己の中にすらある。
 今の自分の行動は、彼女の望みとも、当初の自分の望みとも乖離しているのだから。

 仇に挑む、彼女を救う、逃げ出す。

 その内から選んだ今の選択肢が、本当に正しいのか。
 正直なところ分からない。
 だけど、今やっと、少しだけ、兄の気持ちが分かる気がした。
 自分に向けられた制止の言葉の全ては、ただ弟を案じてのものだった。

 兄はきっと、父の愛を忘れたわけじゃない。
 今抱える大事な物を守るために、取りこぼす痛みを受容する。
 それもまた、愛の証明に相違ない。

 つまり、そう、兄もまた、僕を愛してくれていたのだ。

 ならば―――ならば―――と、深く潜る思考の中で。
 一つの答えにたどり着く。

 自分が今、守りたいと願う、彼女に対する感情も、また――― 



◇



 高乃河二は滅びし街を歩いていた。
 そう、"滅び"だ。
 この街に訪れたものを、他に形容できない。

 日の出からかなりの時間が経過しているにも関わらず、空は暗く、巨大な怪しい月が浮かび続けている。
 目前、オフィス街に立ち並ぶビルの窓ガラスは一様に割れ、道路の至る所にガラスの粉と誰のものか知れぬ血痕が散乱していた。
 通り過ぎる建物の戸はどれも乱暴に破られていたが、そこから何かが出てくる様子もない。
 既に出ていった後なのだろう。つまりはもぬけの殻、人影は一つも見えなかった。

「どうやら魔力を追うまでもありませんね」
「…………そのようだな」

 河二の少し前を歩く真紅のランサー、天蠍アンタレスの声に、彼女の隣に立つ悪国征蹂郎が同意する。
 彼らの目線は前方、路上に飛び散った血液の続く先。
 おそらく先程まで、ここに居たであろう者達の足跡に向けられていた。

 ここにいた人々がどうなったか、答えは明白であった。
 アサシン、ベルゼバブの宝具による眷属化。
 先の戦いで対峙した蝿人間。
 ここで行われたことは、きっとそういうことで、残されたのは惨劇の痕跡のみ。

 アンタレスの言うように、蠍の毒に引き上げられたノクトの魔力反応を追うまでもない。
 幾重に引かれた血の跡が、犠牲者の足跡が、魔王の城へ続いている。

 彼らの向かった先に、きっと敵の本拠地がある。
 ノクト・サムスタンプの根城。
 河二達を迎え撃つべく、敷かれた陣が。

 ぎり、と。鳴る、奥の歯。
 そして無意識に握りしめた拳、血の通わぬ胎息木腕が怒りの熱を帯びる。

 踏みにじられたような光景だった。
 琴峯ナシロがその身の全霊で為してきた、献身の全て。
 彼女が今日まで堰き止めていた悲劇が、溢れ出し、いま目の前にある。
 悪魔にも真剣に手を差し伸べ、街の人々、命なき造られし者達の為に、心から祈っていた少女の想いを、嘲笑うかのような所業が。

 彼女がこの光景を知ったとき、何を感じるだろう。
 問うまでもない。全て自分のせいだと、抱え込むはずだ。
 だが、その時、己は彼女に掛ける言葉があるだろうか。
 善因善果、悪因悪果、ならば彼女に相応しい因果とは、こんな、報われぬモノであっていいのか?

「―――貴様が許せぬのは敵か?」

 不意に届いた声に、河二は顔を上げる。
 いつの間にか、先程まで最後尾にいた老王のランサー、カドモスが隣に立っていた。

「それとも己自身か?」

 エパメイノンダスとの決闘(タイマン)を終えた王は、今も変わらぬ重苦しさを湛え、底知れぬ威厳を感じさせる。

「両方だ」

 ナシロの願いを汚した敵。
 そして防げなかった、弱い自分自身、そのどちらも。
 悔しげに返した河二へと。

「……そうか、ならば、まず勝つべきは後者だ。でなければ敵になど勝てん」

 どこか、つかえの取れたような声音を残し、老いた王は前へと進んでいく。

「儂の悲劇を、貴様のランサーは『勝手に決めるな』と宣った。ならば次は、貴様が身をもって証明してみせろ」

 既に起こってしまった悲劇。
 覆せぬ惨劇と後悔、そしてその責任。
 痛みの先にあっても、ハッピーエンドにたどり着けると。

「……ああ」 

 決意し、少年が新たに一歩、踏み出した時だった。

「見えましたね」

 行軍の先頭にて、アンタレスが足を止め、その方向を指し示した。

「あれが、敵の根城のようです」

 道路に撒き散らされた血の道の終点。
 それはかつて、とある製薬企業が使用していたビルだった。
 しかし随分と前から、事実上の廃ビルとなっていたらしい。

 そう、随分と前から。
 ベルゼバブが惨劇を巻き起こす前から。
 蛇の口腔が一帯を覆う前から。
 そもそも世界が、新たに構築される前から。
 捨てられたその場所を、拠点の一つとしていた者達がいた。

「…………ここ、は」

 一瞬、眉を顰めたのは、この中でただ一人。

「マスター・アグニ……?」

 河二も、カドモスも、従者であるアンタレスも。
 他の者は誰も知らぬ。
 その場所を、かつて誰が、どのような用途で使っていたのかなど。

「いや……なんでもない、進むぞ」

 悪国征蹂郎もまた、更に一歩を踏み出した。
 二名と二騎。四者は辿り着く。

 ノクト・サムスタンプが身を潜める廃ビル。
 あるいは―――刀凶聯合、旧渋谷支部(アジト)。



◇



 そうして、彼らは対峙に至る。

「笑っちまうな。ここまで想定通りの首が並ぶかよ」

 ビル内部は一階から五階までが吹き抜けになっており、一階ロビーからエスカレーターで上がった二階部分が、実質的なエントランスとなる構造をしていた。
 よって、正面玄関口から侵入した河二は、自然と見上げる構図になる。
 無人のフロント、中央で停止したエレベーターの続く先、せり出した中層回廊に佇む、トレンチコートの大男を。

「ナシロはどこだ? ノクト・サムスタンプ」
「ほらな、来ちまったよ。泣かせる話だぜ、これは」

 河二の言を流し、ノクトは天を仰いで嘆息してみせた。
 まるで出来の悪い悲劇を見るように。

「随分、堂々と振る舞っているな、小悪党」

 河二の数歩前、老王が槍を持ち上げ、現れた敵へ突きつける。

「お陰様で、隠れる必要が無くなったんでね、御老体」

 男は両手を広げ、対敵を招き入れたのだ。
 全身から湧き上がる魔力、重厚な気配は以前とは完全に別物。
 英霊に迫る怪物。ノクトは紛れもなくその域に達している。
 たとえ、それがはち切れる寸前の風船玉、あるいは炸裂する花火のような、一瞬の閃光であったとしても。

「貴様は、自分がどうなるか、分かっているな」

 槍の穂先に、力が込められる。
 王は決して許さぬ。
 小鳥を殺した狼藉者を。

「おお、どうなるんだ、俺は?」
「代償を払ってもらう」

 その末路は確定している。覆らぬ裁定である。

「疾く、消えよ。微塵も残さぬ」

 地を蹴り、一直線に迫る老王の姿を、今のノクトの目は追うことが出来た。

「―――『我過ちし栄光の槍(トラゴイディア・カドメイア)』」

 伸び上がる白光が、夜の虎を照らし出す。

「迎え撃て、バーサーカー」

 その全く同時、ノクトの傍らに、狂戦士の像が結ばれた。

「――――――『抜」

 そして、更に同時。

「―――――――刀』」

 ノクトの左右から、2つの影が飛び込んで。

「……っ……テメエら、わかりやすくて……助かるぜ……まったく……!」

 ロミオのレイピアが、ノクトの左側から差し込まれた朱い穂先を受け止めた。
 そう、バーサーカーが対処したのは、老王ではなく、アンタレスの槍であった。

 そしてノクト自身の腕は、征蹂郎の手刀を受け止めるために翳されている。
 ならば、カドモスの槍を遮るモノは何もなく。

「……ごぉッ!」

 ノクトの腹を穿いた穂先が、背中を貫通して抜けていた。
 正面から突貫したカドモスと左右から奇襲したアンタレスと征蹂郎。
 三者に取り囲まれるような形で、ノクトの動きが止められる。

「……やはり……!」 

 その中で、ロミオの剣によって槍を抑え込まれたアンタレスの声は苦みに溢れ、同時に確信に満ちていた。
 追い詰められた虎はしぶとい。
 彼らは初手を誤らなかった。しかしノクトもまた、優先順位を間違えなかった。

 ノクトが最も警戒しなければ為らないのは、見せかけ上の最高戦力、カドモスに非ず。
 アンタレスの握る朱き槍。蠍の毒を注ぎ足される事に他ならない。

 今やノクトの霊格は限界まで膨らみ、肉体が絶えず自壊と再生を繰り返している。
 そして、徐々に、壊れる方に振り切れているのだ。
 膨張する器に、ダメ押しの朱槍が突きこまれれば今度こそ、刻限を待たずして風船は破裂するだろう。

 この場の何よりも、アンタレスの槍こそが致命の一撃になりうる。
 バーサーカーの当て先を、彼女に定めたことこそが証明。

 ノクトは早々に特定する必要があったのだ。
 敵の位置を。蠍と暗殺者の位置を。
 故に敢えて姿を晒し、そして今こそ条件は整った。 

「投下しろ、アサシン」

 吹き抜けの内側、三階から五階までの内窓が一斉に割れ、ガラスの欠片が降り注いだ。
 次いで、落ちてくる大量の黒影。

 ぶぶぶ、じじじ、ぎぎぎ。
 耳障りな羽音と摩擦音。
 異型に変異した不自然な人型の塊が、いくつも折り重なるように、エントランスホールに落ちてくる。

 ベルゼバブの眷属。蝿人間と呼称された、人の成れの果て。
 影が地面に衝突し、肉と骨が潰れる耳障りな音が連続して鳴り響く。
 血の海から歪な四肢が持ち上がり、痙攣しながら立ち上がる。

 地獄にような光景、その中で、確かに河二は見た。
 天井付近に対空する小柄な少女を。

 少し形が変わっても、見間違えることはない。
 琴峯ナシロのサーヴァント。
 かつてベルゼバブを名乗った少女。
 共に過ごし、共に歩んだ仲間の一人。
 その、能面のような顔貌を。

 意思をなくした抜け殻のような。
 感情をどこかに置き忘れたかのような。
 割れたシャンデリアのように、力なく宙を揺れる姿。

 直感的に何かを察し、河二は無意識に駆け出していた。
 停止したエスカレーターを段飛ばしで上り、縫い留められたままのノクトへ一直線に向かっていく。

「もう一度、聞く」

 声は怒りに震えていた。

「ナシロは、どこだ?」  

 導き出された推論。
 過る悍ましい想像を振り払うように。

「彼女に何をした?」

 拳を振り上げ。

「答えろッ!」

 真っ直ぐに、眼の前の悪へと撃ち降ろし―――

「ああ? 悪いが、もうとっくに殺しちまったよ」

「…………っ!」 

 かしゃん、と。
 サングラスが地に落ちる。
 顕になった男の顔は、醜悪に歪んでいた。

「切り札(令呪)は切っちまったんでな。
 アサシンを傀儡(デク)に変えるのと引き換えだ。
 よって本命の利用価値がなくなった以上、生かしとく理由はねえだろう」
「貴、様……!」
「で、相談なんだが、もう帰ってくれねえか?
 琴峯ナシロ(おひめさま)が死んだ以上、テメエが俺を狙う理由も尽きたろう」 
「……おい、数秒前の会話も忘れたのか、阿呆」

 あまりの怒りに言葉を忘れた河二に代わり、カドモスの怜悧な眼光がノクトを刺した。

「貴様には代償を払わせる、言った筈だ」
「ああ、あんたはそうだったな。じゃ、こうしよう」

 ノクトの腕がカドモスの肩口を掴む。
 槍を通して繋がった両者の身体が、にわかに前傾姿勢で沈み込む。

「老人の相手(かいご)は俺がしてやる。バーサーカー、お前はそいつを抑えてろ」
「心得た。……悪いけど僕も、同じ手はくわないよ」

 示し合わせたように、主従は全く別ベクトルの動きを実行した。
 つまり、ノクトは上方に飛び上がり、ロミオは下方へ叩きつけるように剣を振り下ろす。

「―――ぬぅ!?」
「―――っ!?」

 カドモスが槍を突き上げる動きに合わせ、ノクトは跳躍を敢行。
 アンタレスが槍を掻い潜らせようとした動きに合わせ、ロミオは打ち下ろしを実行。

 結果、前者二人は吹き抜けをほぼ垂直に打ち上がり、落ちてくる蝿人間と逆行して天井を突き破り上階へ消えた。
 対して、後者二人はロミオの馬鹿力によって踏みしめる床が砕け散り、もつれ合いながら一階ロビーを突き破り、更に地下駐車場へと落ちていく。

 エントランスに残されたのは、二人のマスター。
 そして、大量に落下する蝿人間のみ。

「―――欺瞞(ブラフ)だ」 

 すぐさまノクトを追って、上階へと駆け出そうとした河二を抑えるように、征蹂郎の低い声が飛ぶ。
 足を止め、顔を上げた河二を見返す瞳は暗く、しかし不思議な冷たさをもって、少年の頭を冷やした。

「合理的に考えてみろ。彼女に、本当に利用価値が無いと思うか?」
「…………」

 琴峯ナシロを殺した。
 その最大の利用価値であった令呪を失ったから。
 ある程度、筋は通る。しかし冷静になれば、違和感もあった。

「彼女には価値がある。今まさに、君を動揺させているように」

 ノクトの目線に立てば、ナシロの利用価値は令呪だけに留まらない。
 そも人質であること以前に、アサシンを現界させるための魔力源である筈だ。
 そんな不合理な行動を、あの男がする筈がない。

「彼女は、まだ生きている」
「ああ……そうだ、生きている。そうでなければ、ならない」

 善因善果、彼女に齎される報いが、こんな残酷なものであって良い筈がないのだから。
 深く息を吸い。河二は心を落ち着けていく。

 状況は予断を許さない。
 建物内に犇めく蝿の眷属が、刻一刻と包囲網を狭めている。
 サーヴァントの守護の無い中で、彼らは自らの力で血路を開き、ノクトに追いつかねばならない。
 だが今は、肺一杯に息を吸い、ゆっくりと吐き出す。

「……ありがとう、あなたが居なければ、僕は冷静でいられなかったかもしれない」
「お互い様だ……俺も……誰かが隣にいなければ……自分を抑えられた自信はない」
「……?」

 じり、じりと。
 二人を取り囲む黒い円が狭まっていく。
 肉を内側から食い破られた異型達が構成する壁が、ゆっくりと迫ってくる。

 きちきち、ぎちぎち、と。
 響き渡る耳障りな羽鳴りに紛れ、僅かに聞こえてくる音があった。

「……い……ゅ……ろ……く……」

 頭蓋を突き破って飛び出した触覚。
 顔の皮膚は剥がれ落ち、黒い産毛の中で大量の複眼が鈍い光を放っている。
 折れ曲がった手足の関節は既に人のモノではない。

 生理的嫌悪を禁じ得ない怪物の中に、僅かな名残があった。
 関節にこびり着いた皮膚の一部、あるいは服の切れ端に、かつて人だった頃の痕跡が残留している。

「……せい……じゅうろ……くん……」

 悪国征蹂郎は確かに見た。

「おか……え……り……」

 見間違えるはずもなかった。
 かつて自らの国に、あの塵山に集いし誰かの面影を。

「……代償を支払ってもらう。俺の分もな」

 ここに、決戦の火蓋は切って落とされた。
 道を埋め尽くす、悪魔の眷属。異形の群れ。

「……合わせろ……突破するぞ……!」
「ああ!」

 二人のマスターは並び立つ。
 自らの宿敵を追い詰め、打倒する為に。



◇



『我過ちし栄光の槍(トラゴイディア・カドメイア)』。
 ランクAに至る対人宝具であり、その真名解放に伴う威力は並の英霊や特攻対象である龍属性の標的であれば、一撃で致命傷を与えて余りある。
 しかし特筆すべきはその威力以上に、付随する魔力供給及び自動修復機能、継戦力の維持にあった。

 加えてスキル、"調和の寵愛"。
 女神ハルモニアの加護によって抑え込まれた魔力消費。
 この2つの要素をもって、マスターを失ったカドモスは単騎での戦闘続行を実現している。

 しかし、それでも、神話の時代の英霊であったとしても。
 いや、そうであるからこそ、王の威光には今、確かな陰りが見えていた。

「どうした爺さん。あんたらしくもないぜ」

 カドモスはノクトを刺し貫いたまま、ビルの上階へと飛翔を続けていた。
 跳躍の勢いそのままに、何枚もの床や壁、障壁を突き破り。

「まあ、この辺でいいだろう」

 その猛進撃が、不意に止まる。

「充分な高度は稼げた。約束通り相手してやる」

 振り上げられたノクトのブーツ、その踵がカドモスの肩に掛けられる。
 蹴り込み、終わりが無いかに見えた垂直上昇からにわかに分離する。
 ノクトの身体が床に対して平行に投げ出され、背後の壁を数枚突き破ってようやく停止。

 現在階層、30階(最上階)。
 社長室のモニターを引き倒した体制から、新生した虎はゆっくりと立ち上がる。

「おーおー、頑丈になったもんだ。いや、そうでなきゃあ割に合わねえってもんか」

 ノクトは身に纏うコートを軽くはたき、その都度、付着した血液が辺りに飛散する。

「……いやいや、そうであったとしても、到底割に合わねえよ。とんだ不良債権だぜこりゃ」

 床に飛び散った血液がひとりでに浮き上がり、ノクトの身体に戻っていく。
 翻るトレンチコート、その内側へと吸い込まれるように。 

 それは再生と表現するには少々不可解な光景であった。
 ノクトの巨体を覆い隠すような厚手のトレンチコート、その内側は闇と一体化しているかのように暗く見通せない。
 穿いた筈の腹孔、老王による槍の威光でもってしても照らすことのできない深淵からは、バキバキと異様な音だけが響き渡っている。

「随分と、人から外れたものだ。外道」

 斜めに傾いた床の上、侮蔑と憐憫、嫌悪を込めて老王は断ずる。

「だが今の貴様は、砂の上に建てられた城に等しい。この場所と同じだ」

 ノクト・サムスタンプの存在には、確かに英雄に届く素養があったのだろう。
 世界を撹拌する悪意。
 〈1回目〉における聖杯戦争にて、最も人を殺す因果を作った獣(けだもの)。
 第一次、第二次、共に、並み居る参加者からの警戒と憎悪を一身に受けた者。

 反英雄ノクト・サムスタンプ。
 故にこそ、蠍の毒を受けた今も、内側から破裂せずに立ち続けている。
 しかしそれも、時間制限という枠内においての話だ。

 強制的に英雄えと引き上げられた力に、人としての器が耐えられない。
 いずれは基盤が砕け散り、盛大なる自滅の時を迎えるだろう。

 しかし、それにしても、と。
 こうして英霊と真っ向から対峙してみて、改めてノクトは思うのだ。

 人と英霊、その区切りは何処にあるのだろう。
 神話の英霊をして、ノクトは"人から外れた"という。
 だが今ノクトに死が迫っている理由は、ノクトの器が未だ人であるからに他ならなぬ。

 ならば人はいつ、人でなくなる―――? 

「砂上の楼閣ってか。そりゃお互い様だろうよ爺様」

 一方、ガドモスとてノクトとそう条件は変わらない。
 マスターの喪失はサーヴァントにとって致命の陥穽を意味する。
 宝具にスキル、複数の負担軽減要因を並列で用いても補うには到底足りない。

 ただ現界を維持するだけなら、あるいはノクト以上の寿命があったかもしれない。
 しかし、いざ戦闘行為に及べば、消耗のほどは一目瞭然だった。

 例えるならタンクに穴の空いた状態で使用する消火栓。
 カドモスはたった一度の真名解放で、半分以上の貯蔵魔力を消費していた。
 西方に残してきたテーバイの国域内であればまだしも、ノクトの陣地内では補給路は完全に絶たれているのだ。
 王の限界は決して遠くない場所にある。

「舐められたものだ。この身であっても、卑賤な賊を一匹すり潰すには充分過ぎる」
「ほら、それだよ。さっきかららしくねえ」

 ノクトの獰猛に光る目が僅かに細められ、嗅ぎ取った王の変化を指摘する。

「この度は、ずいぶんとお優しいじゃねえか王様」

 カドモスには時間がない。
 聖杯戦争という舞台において、マスターを失ったサーヴァントの末路など、推して知るべし。
 本来であれば、彼はここに来るべきではなかった。

 新たな臣下という名のマスターを得るか、テーバイの国域に逃げ込むか。
 戦争を継続し、勝利に拘るなら、優先するべきはその二択であったはず。
 にも関わらず、カドモスは小鳥の仇を討つことを選び、そしてその行動は、他ならぬノクトに読まれていた。
 意外ではないと思われていたのだ。

「俺と対峙するにしたって、まるでキレが悪い。
 あんたなら、もっとクレバーな方法で攻められた筈だぜ」

 例えば、ノクトの陣地に侵入するまでもなく。城の外側から崩してしまえば、ノクトの策に付き合う必要も無かったのだ。
 琴峯ナシロの安否も、高乃河二の意思も、全て無視して、もう一度繰り返す悲劇を受け入れてしまえば。
 それだけで有利な状態で火蓋を切ることが可能だった筈だ。

「エパメイノンダスとの対峙を経て、どんな心境の変化があったのかは知らねえよ。見てねえからな。
 何かを諦めちまったか。何かに満足しちまったか。或いは、また何かを信じてみたくなっちまったか?」

 かつて、栄光を破局し、悲劇の否定を望んだ王に、起こった変化。
 それが何を意味するか。

「とにかく、あんたは勝利よりも、仇討ちを取った」

 この戦いの先を、要らぬと断じたのだ。

「だったら、もう俺には勝てねえよ」
「ぬかせ」

 突き立った槍が引き抜かれ、腰だめに構えられる。
 からがらと天井が崩れ、月界と蛇腔、混沌に歪む夜空が顕になった。

「何度も言わせるな。貴様如きに万全は不要。その腐った口を永遠に閉ざすがいい」
「そうかい、じゃあ試してみな」

 対し、無手のノクトは軽く首を捻り。
 返した手の平を前方に突き出して、挑発的に指先を曲げてみせた。

「俺も試すとするさ。今の俺が、どの程度使える道具であるかをな」





◇



 コンクリートに囲まれた無機質な空間に、二人分の足音が響き渡る。
 更に追従する、くぐもった打撃音、水分の弾ける音。

「―――抜刀」
「―――胎息合一」

 永遠に続くような螺旋回廊を昇る。
 廃ビルの階段室を、二人の男が疾駆する。
 上階から押し寄せる蝿人間の群れを捌きながら、合わせて四本の腕が血路を開く。

 悪国征蹂郎と高乃河二は道を阻む悪魔の眷属を打ち倒し、斬り伏せ、確実に歩を進めていく。
 背中合わせに織り成す、それは武を身に修めた者達による無言の連携だった。

 峠であった10階を越えて、エレベーターから階段室に移行した後、戦況はますます厳しくなった。
 狭く限られた空間の中、彼らは敵の物量に押し潰されぬよう、互いの死角を補いながら進行を続けている。
 コンクリートの螺旋を血に染め続け、およそ10分足らず。

 都合何波目かの敵襲を退け、手に入れた束の間の猶予期間。
 現在階層、20階。
 岐路に差し掛かったのはそんな時だった。

 同じ景色の繰り返しであった螺旋回廊に、僅かな変化が訪れる。
 踊り場の非常口に、一本の剣が突き刺さっていた。

「…………これは」 

 小振りな柄の、十字を模したような長剣。
 黒鍵と呼ばれたそれは、河二の指先が柄に軽く触れた途端、糸が解けるようにして消えていく。

「いや、罠だ……」

 視線を切り、再び階段に視線を送ろうとした彼の肩に、隣に立つ男の手が置かれる。

「だが、君の目的だな」

「…………」

「そうだろう?」 

 最優先すべき目的は、ノクト・サムスタンプの追撃。
 しかし河二の理由は違う。それを、征蹂郎は察している。

「仲間を救う……そうだろう」

 その理由に、彼は共感する事ができた。
 身勝手でも今更でも、彼もまた、今もそれを願い続けているのだから。

「君は行け……ノクト・サムスタンプは……俺が殴っておく」
「…………」

 その突き放すような、ぶっきらぼうな気遣いに、河二は暫し目を閉じて。

「ありがとう……でも、それは僕の分も残しておいてください。必ず、追いつきますから」

 非常口を開け、闇に包まれた廊下の奥へ進んでいった。

「……さて」

 一人、階段室に残された征蹂郎は螺旋の奥を見上げている。

「ならば俺は……俺の仲間を救う……」

 ぎちり、がちがち、と。
 見通せない闇の中から、新たに排出された敵の鳴き声が降ってくる。
 虫の歯鳴りに混じり、今も聞こえる人の残骸。

「せい……じゅろ……くん」

「……ああ」

「かえって……きた……の?」

「ああ、帰ってきたよ」

 少し遅くなってしまったけれど。
 もう取り返しは付かないけれど。
 それでもまだ、果たすべき責任があるはずだから。
 全員、斬(すく)ってやるから。


『―――生きて。ずっとずっと、アルマナの行けなかった幸福(ところ)まで――』


 再び上階へ駆け出そうとして。
 ふと、仲間であった少女の言葉が耳元を過ぎる。

 彼女がたどり着きたかった場所は、彼女に願われた場所は、この螺旋状にうねる闇の先にあるのだろうか。
 幸福とは、ハッピーエンドとは、果たして何処に。 
 分からなかった。それでも、いま足を止めることだけは、違うと知っていたから。 

「―――『抜刀』」

 己の腕(けん)を抜き放つ。
 誰かの面影が両断され、血飛沫が舞い散り、コンクリートの壁を赤黒く染め上げた。



◇



「―――ジュリエットオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!」

 進行線上の柱が砕け散り、車両が次々と跳ね飛ばされていく。
 暴走特急とはこのことか。
 地下駐車場にてアンタレスはひとり、突貫する狂戦士の相手をさせられていた。

「―――っ」

 すんでのところで直撃をかわすも、押し寄せる衝撃の余波と巻き上がる障害物によって、大きく真横に弾き飛ばされる。
 赤い槍と3対の腕を盾にしてダメージを抑えるが、体制を整える間もなく次の突撃が開始されていた。

「!!ッッッッッオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオトッエリュジ―――」

「めちゃくちゃ―――だ―――!」  

 アンタレスは歯噛みしながら空中で身体を捻る。
 多腕であるからこそ可能となる軌道で必殺の射線から身体をそらす。

「―――ぐぅ―――あ―――」

 ほんの数センチ真横をバーサーカーの身体が通り過ぎていった。
 それだけで、膨大な衝撃波(ソニックブーム)がアンタレスの身体を打ち据え、吹き飛ばす。
 後方に跳ねた勢いそのままに、地下駐車場の柱を三本へし折り、乗用車のフロントガラスを粉々に割砕いて、ようやくランサーの身体は停止した。

 車の警報音が合唱を奏でる中、アンタレスは身を起こしながら思考する。
 敵対するバーサーカー。
 その真名は並み居るサーヴァントの中でも類を見ぬほどわかりやすい。

 ロミオ。悲恋演劇『ロミオとジュリエット』の主役。
 恋に狂する青年騎士。
 戦友が自らの愛を自覚したことで、彼の出力は明確に上昇していた。
 そこにロジカルな理論は必要ない。
 狂戦士とはそういうものだ。価値基準、常識がズレているのだから、常人の価値観で図ることそのものが誤っている。

 だが、それでも―――

「なぜ―――彼はこれほどまでに強い―――?」 

 ガイアの抑止力たるアンタレスはその疑問を禁じ得ない。
 感情やシチュエーションによって出力にムラのあるバーサーカーというクラスは、扱いにくさと引き換えに単純火力に秀でる。
 故に、想い人との離別、戦友の愛による触発、複数の要因が上手くハマった今のロミオが、最高潮の出力を発揮する現象そのものに疑問はない。

 だとしても、これほどの馬力を実現できること自体が異常なのだ。
 世界で最も著名な戯曲の一つとはいえ、近世の創作物の主役に過ぎぬ筈の彼が、神代の英雄(カドモス)すら圧倒する力を見せていた。
 そして疑問はもう一つ、『恋は盲目(ブラインド・アローレイン)』、"際限のない"ステータス上昇。
 簡単に説明されているが、冷静になって見返せば有り得ぬ無法だろう。

 本当に、本当に彼の力に際限が無いのだとしたら――それは―――

「違う―――今考えるべきは、そんなことじゃ――ない―――」

 此度の戦いに挑むにおいて、ノクト・サムスタンプを討伐するべく彼らが立てた一つの方針。
 作戦の要はアンタレスだ。
 しかしアンタレス自身がアクションを起こすことは出来ない。

 彼女は耐える必要があった。
 彼女のマスター達が、とある条件を満たすまで。

 今のロミオを単純な出力勝負で倒すことは不可能に近い。
 よって、ひたすら状況を引き延ばす。
 だがこの調子でロミオの力が上昇し続ければ、いずれ切り札を切らざるを得なくなる。

 宝具、『英雄よ天に昇れ(アステリズム・メーカー)』。
 可能性という神秘を膨張させ、致死に至らしめる蠍の毒。

 戦闘開始時点で、ひと目見て分かった。
 ノクト・サムスタンプの可能性は最大限使い切られている。
 今が全盛を越えた最盛期、後一撃で確実に屠る事が可能だろう。
 敵もそれが分かっている故のこの布陣だ。
 ロミオをカドモスでなくアンタレスにぶつけ、最大限の距離を稼いでいる。

 ガイアの怪物の扱う毒は強化を促すデメリットこそ存在するが、如何なる存在にも可能性の限界がある。
 どれほど才に溢れた若芽であろうと、毒を送り続ければいずれは破裂の時を迎える。
 例外はない、そう例外はない、筈なのだ。

 しかし今、アンタレスは潜在的な恐怖を感じている。
 目前のサーヴァントへ、この毒を送る事に対し。

「……悪いが今の僕に、先の戦いのような迷いはない。
 友がようやく己の渇望に向き合い、踏み出したんだ。
 相棒として、応えぬわけにはいくまいさ」

 土煙の向こう、狂戦士が再び突貫の体制に入る。
 必ず保たせる。仲間の準備が整うまで。
 だが、もし、使うしかない場面に直面したとき。

 己はどうするべきなのか。
 現在の仲間を信じ、待ち続けるか。
 抑止力としての己の使命を優先するか。

「あなたなら―――」

 つい、アンタレスは考えてしまう。
 彼女に道を示し、使命を遺した、かつての主の後姿を。

「あなたなら、どうしますか――マスター・ジャック」







◇



 その部屋は、深い闇と夥しい血の匂いに満ちていた。
 階段室の非常口から細長い廊下を進んで、暫く歩き続けた先に辿り着いた場所。

 鉄の扉を押し開いた河二は、吹き抜けた腐臭に思わず腕で鼻を覆う。
 耳元には、ゔゔゔ、と。
 蝿の群れが飛び回る音が滞留している。

 一歩、部屋の中に踏み込む。靴底が粘性のある液体を踏みつけた。
 べちゃりという音と共に、持ち上げようとした足に重量を感じる。
 乾ききっていない血溜りだと、直感的に理解した。

 部屋の中に明かりは見当たらない。
 廊下から差し込む蛍光灯の光が、その場所が簡素なラウンジルームになっていることを知らせていた。

 河二の視線の先。
 部屋の中心には、一人用のソファが置かれている。

 そこにゆったりと腰掛けた人物は、こちらに対して背を向けており、顔を見ることが出来ない。
 体つきからして、おそらく女性であることは分かる。
 ただ、河二の足元まで伝う生暖かい液体は、ソファの下から流れ出たもののようだった。

 もう一歩、踏み込む。
 更に、もう一歩。
 跳ね上がる心臓を抑えつけて、頭に浮かんだ名前を呼ぶ。 

「……ナ……」

 部屋の中心にたどり着き。
 ソファの肘おきに手をかけ、ゆっくりと回転させる。

「―――シ――」 

 力なく投げ出された手足が、回転に合わせてだらりと揺れた。

「―――…………」

 ソファの上で、一人の女性が死んでいた。
 頭に浮かんだ名前とは全くの別人だった。
 河二の会ったことのない、おそらく演者(アクター)でもない、誰でもないNPCの一人。
 片腕は多脚に分岐し、顔の半分は複眼で埋め尽くされている。
 名前のない誰か。半端に悪魔の眷属に切り替わった状態で息絶えた一般市民が、苦悶を表情に固定したまま事切れている。

「―――なあ、河二」

 しかし、その直接的な死因は、悪魔によって蝿人間に変えられた事ではないようだった。

「―――お前、どうして来たんだよ」

 女性の額に、1本の刃物が突き刺さっている。
 小振りな柄の、十字を模したような長剣。
 黒鍵と呼ばれる、代行者の扱う武器だった。

 軽い衝撃が、河二の脇腹を押したように感じた。
 体制が崩れて、片膝をつく。

「…………ナ、シロ」
「馬鹿だな……お前は」

 背後に、少女が立っていた。
 声が聞こえた、聞こえていた、先程からずっと。

 生きていた。生きていると信じていた。
 そうでなければ間違いだと、それ以外の結末など許さないと。
 だから生きていると思っていた。
 だけど、それでも、どうしても、この瞬間だけは安堵してしまった。

『もうとっくに殺しちまったよ』

 生きている。
 それがもっとも論理的な想定であったとしても。
 植え付けられていた不安、「もしかしたら本当に?」、という最悪の想定を振り払うことは出来ない。

 故に今、生存が確定した今こそが、躱しようのない。
 敵によってねじ込まれた隙となって現れる。

「なんで来たんだよ。私に……そんな価値はないのに」

 琴峯ナシロが目の前に立っている。
 血塗れの黒鍵。今しがた河二の脇腹を突き刺したそれを握りしめて。

 じわりと黒く染まり始めたシャツを押さえながら、少年は少女に向き合う。
 その瞬間、彼は不覚にも絶句していた。

「逃げろ……河二……すまない。
 私の身体は……もう私の思い通りには動かない……。
 逃げられないなら……いっそ……私を……」

 この状況も、想定はしていた。
 ナシロの身体はノクトとの契約に縛られている。
 ならば敵対を余儀なくされることは理解していた。

 だが――― 

「大丈夫だ……全部、君の意思じゃないことは分かってる……。助けるよ、必ず、君を―――」

「でも、その人を殺したのは……私の意思だ……」

「なにを……言ってる……?」

 連続性のない、支離滅裂に思える言動に困惑する。
 おそらく、背後のソファで死んでいた女性の事を指して、言っているのは分かった。
 状況からして、ナシロが手を下したであろうことも、その理由も。

「きっと君は……彼女を救おうとしたんだろう……?」

 女性の身体は半分まで蝿に変わっていた。
 人としての意思を喪失し、人を襲い始めていたのだろう。

「ああ、痛みに耐えながら、最後にその人は言ったんだ……私に……『殺してくれ』って」

 ナシロの左手は血塗れの黒鍵が握られたまま、彼女の意思に関わらず動き続けている。
 対象的に右手は彼女の顔に当てられ、その半分を覆っている。
 他ならぬ彼女自身の意思に従って。

「だったら、君は誰も殺していないだろう。この人は……もう……」

 "人間じゃなかった"。
 その言葉が、どうしても声にならなかった。

「……だったら、教えてくれよ、河二。
 この人はいつから、人じゃなかったんだ?」

 寄生された蝿の卵が孵り、脳まで悪魔の眷属にされた時か。
 悪魔に卵を産み付けられ、もはや助かる見込みも無くなった時か。

 あるいは、最初から。
 NPCとして影法師として再生された時か。

 人である条件とは何だ。

 人はいつ、人でなくなる―――?

「なあ、河二、教えてくれよ」 

 ゔゔゔ、と、もう一度、耳障りな羽音が響く。
 ナシロの右手が力なく降ろされた。
 隠されていた顔半分が、廊下から差し込んだ光に晒される。

「……私はまだ、人間か?」

 少女の右眼孔。
 真っ赤な蝿の複眼が、河二を見つめ返していた。 












【月光夢幻神界〈渋谷〉・西部(製薬会社ビル)/二日目・午後】

【高乃河二】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(小)、月の精神汚染(小)、脇腹に刺傷
[令呪]:残り二画
[装備]:『胎息木腕』
[道具]:なし
[所持金]:それなり(故郷からの仕送りという形でそれなりの軍資金がある)
[思考・状況]
基本方針:勝つ。何故? ――もう何一つ失わないために。
0:ナシロを助ける。
1:蛇とノクト・サムスタンプを討ち、ナシロを助ける。
2:蛇は人間だ。ならば倒せる。必ず。
[備考]
※ロールとして『山梨からやってきた転校生』を与えられており、少なくとも琴峯ナシロとは同級生のようです。
※雪村鉄志から『赤坂亜切』、『蛇杖堂寂句』、『ホムンクルス36号』、『ノクト・サムスタンプ』並びに<一回目>に関する情報と推論を共有されています。
※レミュリンから『イリス』に関する情報を得ました。
※レミュリンと"蛇杖堂絵里"の連絡先を得ました。
※レミュリンによる連絡を受け、蛇の本名を知りました。
※致命傷を負いましたが、ノクトによる薬物(蛇杖堂寂句の遺品)を投与されて復活しました。何らかの副作用がある可能性があります。
 →傷は概ね回復しました。今のところ副作用は出ていません。


【琴峯ナシロ】
[状態]:疲労(大)、精神疲労(大)、月の精神汚染(大)、魔力消費(中)、複数箇所に切り傷、ノクト・サムスタンプへの隷属、"蠅の王"による悪魔眷属化
[令呪]:喪失
[装備]:『杖』(3本)
[道具]:修道服、ロザリオ
[所持金]:あまり余裕はない
[思考・状況]
基本方針:教会と信者と自分を守る。
0:―――私はまだ、人間か?
1:アサシン。ありがとな。
[備考]
※少なくとも高乃河二とは同級生のようです。
※琴峯教会は現在、白鷺教会から派遣されたシスターに代理を任せています。
※雪村鉄志から『赤坂亜切』、『蛇杖堂寂句』、『ホムンクルス36号』、『ノクト・サムスタンプ』並びに<一回目>に関する情報と推論を共有されています。
※ナシロの両親は聖堂教会の代行者です。雪村鉄志との会話によってそれを知りました。
※レミュリンから『イリス』に関する情報を得ました。
※レミュリンと"蛇杖堂絵里"の連絡先を得ました。
※ナシロの投影魔術は一般的なものと性質が異なるようです。
 黒鍵を原型とし、解析で読み取った属性をそこに混ぜ込むことができます。まだ先があるかもしれませんが、詳細は後にお任せします。
※レミュリンによる連絡を受け、蛇の本名を知りました。
※ノクト・サムスタンプと契約を交わしました。
 ・高乃河二を救命する対価として、自身とサーヴァントの身柄をノクト・サムスタンプへ委ねる。
 ・両者の指揮命令権もノクト・サムスタンプが持つものとする。
※雪村鉄志の信号弾を使用しました。

※アサシン(ベルゼブブ/Tachinidae)による、宝具が身体に行使されています。
 本来サーヴァントと契約した人間からは卵は孵りませんが、

  • 令呪の全喪失、
  • 繋がっているアサシンの低い対魔力
  • 隷属契約によりナシロ自身に抵抗が許されていないこと
  • その他

以上の理由により、蝿王の眷属化が侵攻しています。


【アサシン(ベルゼブブ/Tachinidae)】
[状態]:スキルによる容姿変化、疲労(大)、全身にダメージ(大)、脇腹に刀傷、各所に弾丸の擦り傷、霊基の成長?、令呪の効果による心神喪失
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:――――。
0:――――。
[備考]
※渋谷区の公園に残された飛蝗の死骸にスキル(産卵行動)及び宝具(Lord of the Flies)を行使しました。
 少数ですが眷属を作り出すことに成功しています。 
※代々木公園での戦闘で眷属はほぼ全滅しました。今残っているのは離脱用に残しておいた一体だけです。
※"蠅の王"の力の片鱗を引き出しました。どの程度操れるのか、今後どのような影響を齎すのかは不明です。
 →渋谷の変貌を感じ取り、説明できない懐かしさを抱いています。

※蛇腔内のNPCを狩り、眷属を爆発的に増殖させています。現在百体前後。
※ノクト・サムスタンプの契約の影響を受けていません。これが彼女のいかなる性質によるものかは不明です。
※神寂縁の体内に存在する4423の魂、そのひとつに産卵しています。体外脱出のタイミングは彼女の任意。
※ランサー(エパメイノンダス)のアドバイスを参考に、命中精度の弱点をほぼ克服したようです。

※ノクトに隷属したナシロの令呪行使により心神喪失状態。


【ノクト・サムスタンプ】
[状態]:疲労(中)、腹部にダメージ(大)、魔力消費(中)、魔術の出力向上中、複数の打撲傷(処置済)、右腕欠損、存在昇華、恋――自覚完了、■■■
[令呪]:残り二画
[装備]:『胎息木腕(右腕分のみ。古いもの)』
[道具]:、蛇杖堂邸で回収した幾らかの道具
[所持金]:莫大。少なくとも生活に困ることはない
[思考・状況]
基本方針:祓葉を我が物とする。
0:一切鏖殺。さあ、遅れた分を取り返そうか。
1:神寂縁に協力しつつ、奴が"追われる者達"と相討つように仕向けたい。要するに命の順序付けだな。
2:琴峯ナシロとそのサーヴァント(ベルゼブブ)を利用。特にベルゼブブは、今後を見据える上で絶対に手放せない。
3:↑の理由に基づき、ナシロを助けに来るだろう高乃河二らを討つ。
4:蛇が斃れた暁には輪堂天梨を抹殺し、煌星満天の覚醒を図る。恒星神に化ければ御の字、都市制圧の道具として用いるつもり。
5:あばよ、〈脱出王〉。お前は最高のエンターテイナーだったぜ。
6:何か違和感がある。何かを見落としている。
7:祓葉。お前にも、まだ先があるんだろう?
8:渋谷の神は現状他人に任せる。アレは多分俺と相性が悪い。
9:毒が自分を殺す前に、聖杯を取る。
[備考]
※東京中に使い魔を放っている他、一般人を契約魔術と暗示で無意識の協力者として独自の情報ネットワークを形成しています。
※東京中のテレビ局のトップ陣を支配下に置いています。主に報道関係を支配しつつあります。
※煌星満天&ファウストの主従と協力体制を築き、ロミオを貸し出しました。
※蛇杖堂寂句から赤坂亜切・楪依里朱について彼が知る限りの情報を受け取りました。
※神寂縁から雪村鉄志、琴峯ナシロ、高乃河二、赤坂亜切の現在の動向について連絡を受けました。
※蛇杖堂邸で高乃家の礼装『胎息木腕』を回収しました。これが高乃河二の装備している物と同じ性能かどうかはおまかせします。
※山越風夏のサーヴァントの真名が「ハリー・フーディーニ」であろうことをうっすら察しました。
※ファウストから蝗害調査のデータファイルを受け取りました。中身は確認済みです。
※琴峯ナシロと契約を交わしました。
 ・高乃河二を救命する対価として、琴峯ナシロとサーヴァントの身柄を預かる。
 ・両者の指揮命令権もノクト・サムスタンプが持つものとする。
※月の御遣いと契約を交わしました。これにより、蛇腔及びFWが維持されている限り、ノクトは結界内の月勢力から攻撃を受けません。
※アサシン(ベルゼブブ)の指揮権を一部移譲されています。但しベルゼブブはノクトの契約を無視しているため、常に有効かは不明です。
※ギルタブリル/天蠍アンタレスの『英雄よ天に昇れ(アステリズム・メーカー)』を注入されました。
 強化の代償に抑止の排斥を受けるようになりましたが、具体的にどの程度強化されたのかは後続の書き手にお任せします。
※祓葉への恋情を自覚しました。


【バーサーカー(ロミオ)】
[状態]:恋、全身にダメージ(極大)、霊核破損、複数の刺傷痕、行動に一切の支障なし、ノクトへのシンパシーによる出力向上
[装備]:無銘・レイピア
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:ジュリエット! 嗚呼、ジュリエット!!
0:ランサー(アンタレス)を抑え込む。
1:この城へ攻め入る外敵を迎え撃つ。
2:神寂縁は僕とジュリエットの世界に存在してはならない汚物。後に、然るべく駆除する。
[備考]
 現在、煌星満天を『ジュリエット』として認識しています。
 ファウストと契約を結んでいます。


【ランサー(カドモス)】
[状態]:疲労(大)、月の精神汚染(大)、精神的疲労(中)、マスター喪失
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:いつかの悲劇に終焉を。
1:下郎ノクト・サムスタンプを討つ。
2:神寂縁に対して警戒。
[備考]
※本体は拠点である杉並区・地下青銅洞窟に存在しています。
 →青銅空間は発生地点の杉並区地下から仮想都市東京を徐々に侵略し、現在は杉並区全域を支配下に置いています。
  放っておけば他の区にまで広がっていくでしょう。
※カドモスの宝具『我が撒かれし肇国、青銅の七門(スパルトイ・ブロンズ・テーベ)』の影響下に置かれた地域は、世界の修正力を相殺することで、運営側(オルフィレウス)からの状況の把握を免れています。
※マスター(アルマナ)の死亡により、出力が若干弱体化しています。
 スキルと宝具の効果で魔力供給そのものはカバーされていますが、このままでは半日持たないでしょう。

【悪国征蹂郎】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)、出血(大)、全身に軽度の火傷、頭部と両腕にダメージ(応急処置済み)、右腕損壊(大)、腹部に銃創、〈喚戦〉、ランサー(アンタレス)と再契約、月の精神汚染(大)
[令呪]:残り一画
[装備]:レッドライダー製の極薄ガントレット(左腕のみ)
[道具]:なし
[所持金]:数万円程度。カード派。
[思考・状況]
基本方針:刀凶聯合という自分の居場所を守る。
0:生きる。願われた分だけ。
1:蛇に対する最大限の警戒。
2:ノクト・サムスタンプは討つ。やはり、あの男は危険すぎる。
[備考]
 異国で行った暗殺者としての最終試験の際に、アルマナ・ラフィーと遭遇しています。
 聯合がアジトにしているビルは複数あり、今いるのはそのひとつに過ぎません。
 養成所時代に、傭兵としてのノクト・サムスタンプの評判の一端を聞いています。
 六本木でのレッドライダーVS祓葉・アンジェ組について記録した映像を所持しています。
 アルマナから偵察の結果と、現在の覚明ゲンジについて聞きました。
 千代田区内の聯合構成員に撤退命令を出しています。
 ランサー(ギルタブリル/天蠍アンタレス)と再契約しました。
 警官隊殺害・及び暴動主導の容疑で公開指名手配されています。

【ランサー(ギルタブリル/天蠍アンタレス)】
[状態]:疲労(大)、胴体に裂傷、全身にダメージ(大)、甲冑破損、無念と決意、寂句の令呪『神の箱庭を終わらせ、真の〈神殺し〉を成し遂げてみせよ』及び令呪による一時的な強化、悪国征蹂郎と再契約
[装備]:赤い槍
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:神寂祓葉を刺してヒトより上の段階に放逐する。
0:マスター・ジャックの遺命を果たす。たとえこの身が擦り切れようとも。
1:ノクト・サムスタンプにトドメを刺す。
2:神寂縁は粛清対象。
[備考]
※マスターを喪失しました。令呪の強化を受けていますが、このままでは半日は保たないでしょう。
 →悪国征蹂郎と再契約しました。



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最終更新:2026年10月21日 01:11