「──僕が今見ているこの世界に、色はもうない。…けれど、この世界とも今日でお別れだ。
…ようやく、君の所に行ける。やっと…君に会える」
日の出が近付き夜が明ける間際、あるビルの屋上に立っていた中性的な少女はスマホで時刻を確認した後にそう、決意を再確認するように、或いは浮足立っているかのように呟いた後…足を踏み出そうとした所で古い懐中時計を見つける。
そして何気なくそれを拾った結果…少女、朝背悠理は目的を果たす寸前で聖杯戦争へと巻き込まれる事となって"しまった"。
僕には、大好きな相手が居た。
物心ついた頃から彼とはよく一緒にいて、楽しい日々を過ごしていた。当時は彼にも両親にも…色々迷惑かけちゃってたっけ。
…最初は、好きとかそういう目では見てなかったけど…10歳くらいの時に、僕の目の前で両親が車に撥ねられて…殺されて、理解できなくて、ただ両親"だった"ものに縋って泣くしかできなかった僕に彼はこう言って、励まそうとしてくれたんだ。
『2人ともきっと夜空の星の何処かに居て、俺達を見守ってるよ』…と。
…彼だって、つらい筈なのに。なのにそれでも…僕なんかを気遣って……気付いたら僕は、彼に抱きついて…泣きじゃくってしまっていた。申し訳なくなって、情けなくて…涙が止まらなくって…でも…嬉しかった。そして…これが好きって気持ちなんだって、『恋』なんだって、僕は理解した…してしまったって、言った方がいいのかな。
…それもあって、迷惑ばかりかけてた自分から、変わらないとと…そう強く思った。
両親が遺してくれた遺産と、彼が支えてくれたのもあって僕はどうにか、小学校を卒業して、中学校も卒業して…それで、高校に入った。
…伝えれるチャンスはいくらでもあったのに、僕は彼に想いを告げる事は出来なかった。ずっと胸の内に秘めていた。奥手のヘタレだって言われると…そうだねとしか言えないや。
ただ彼と一緒にこの日常を過ごせるのなら…それだけでもう、十分だって思ってたのもあったけど。
けれど…その日常は続かず、崩れ去った。そうなると知っていたら…なりふり構わずに勇気を出せてたのかもしれない。
…2人で映画館に行ったある日、そこで突然爆発が起きて…彼に突き飛ばされた事に気付いた時…全てはもう終わっていて…どうやら僕の意識も一度途絶えていたらしく……目覚めた後、彼が死んだ事を知らされた。
最初聞かされた時、「……は?」と言葉が漏れ、僕の脳が理解を拒んだ。
彼は意識が戻らないまま、僕が目覚める少し前に息を引き取ったらしい。
そこから遺体を見て、受け入れ難い現実と直視させられた僕は、言葉を失くし立ち尽くした後、崩れ落ち泣いた。目に映る何もかもが、歪みだしたような…そんな錯覚までしてしまうくらいに、悲しみに打ちひしがれていた。
事故かテロかは不明だとか、沢山の人が亡くなったとか、意識が無かった時にあの爆発について判明した事を言われた気がしたけど、興味を惹かれずよく覚えていない。
ただ泣いて、喚いて、縋って…どれだけ泣いても、涙は枯れなかった事と、彼の死に顔が、安らかな表情だった事が…僕の脳裏へと残り続けている。
…僕なんかを助けたせいで、彼は死んだ。…僕が彼を…っ…殺したような物じゃ、ないか…!!なのに…どうして君はっ、そんな顔で…!!!
──そして気が付くと、いつの間にか僕の目に映る物全ての色が、モノクロへと変わっていた。
僕は色無き世界しか、見る事が出来なくなったらしい。いや、彼が居たから…この世界が色づいて見えていたのかも知れないけれども。
……言えるのは、今となってはもう、どちらなのかはわからなくなってしまったという事と、彼は僕を助けたせいで意識不明の重体の末に死んでしまう結末を迎えたという事実、それが僕に遺ったって事だ。
彼が居なくなってからの僕は、表面だけのハリボテになってしまった。
立ち直ったかのように自然に振る舞えてしまうくせに、心はずっと自責と絶望に浸されて、生きながら死んでるように、色の消えた世界をのうのうと過ごす毎日。
酷く空虚で、乾いた日々だったなと、今なら思う。それまでに積み上げて来た物も、築き上げて来た繋がりも浅くはなくて確かにあった筈なのに…その全て、何もかもに上っ面だけの興味しか持てなかった。
…それ程までに、彼の死は僕の心に塞げない孔を開け拡げていた。どうしようもないくらいに僕は彼を…愛し大切に思っていた。
そしてわかってしまった。僕はもう……ひとりで、生きれないんだって。自分の人生なのに、自分の為にはもう生きれなくなってしまっていたんだって。その事をこんな形で再認識なんて、したくなかったよ。
いっそ彼と、出逢わなければ良かったのかもとすら思えてしまって…自業自得だと言われたら……返す言葉も文句も無いけれど。彼が死んだのは僕のせいで、僕が殺したのと同じ。人殺しにはお似合いの罰だろうさ。
そんな内心が擦り減り続ける虚無の日々を続ける中、かつて彼に言われた励ましの言葉を不意に夢に見て思い出した僕は…星空に手を伸ばした。
彼が言ってくれた言葉が真実なら、両親…お父さんやお母さんだけじゃなく、彼もきっとどこかにいるはずで。
だから、手を伸ばせば迎えに来てくれるんじゃ…なんて、馬鹿な事を考えた。この地球(生地獄)から星空に、いくら手を伸ばしても届くはずなんて無いのにね。それでも縋らなきゃ、後は緩やかに死ぬか即座に終わらせるかしかなかった。
…当然来てくれる筈も無く、そこからは虚ろな日常の一幕に、夜中外に出ては星空を見ては、涙を流すという行動が組み込まれた。
そんな無為で虚しい生活を続ける最中に、彼がいるだろう星空にいくら手を伸ばしても、生きている限り届く筈も無いという至極当たり前の結論に僕が至る迄には、そう時間はかからなかった…と思う。彼の命日…一周忌が近付く中、僕の欠けて腐り落ちていく心も限界を迎えそうになっていた。
…結局は、自分も星空へと旅立つ以外、彼と再会する術なんて無かったんだ。それから目を逸らして縋った結果、僕は生き恥を晒し続けている。…終わりにするには、彼が旅立った日は丁度良いと思った。
僕がこの世界から旅立とうと、誰も気にする人は居ないだろう。彼とは違って、僕にはいくらでも代わりが居る、替えがきく程度の存在なのだから。
そして僕は日が昇り始めた時間に、事前に目を付けてたビルの屋上へと登って…スマホで時刻を確認した後、彼の元へと飛び立とうと足を踏み出す……その寸前に、何故かあった古そうな懐中時計に目が移った。
…スマホがある上、この世界に未練なんてない僕が、こんな懐中時計を持っても意味は無い。けれど気付いたら、踏み出さず僕はその時計を手に取っていて──意識を失った後気付いたら僕は…ビルの屋上、それも先程まで居たそれとは別の見知らぬ所に飛ばされていた。
意識を取り戻したと同時に、何か聞き覚えのない情報が脳内に叩き込まれたような…そんな感覚がした。けれど、僕はそれを忘れ去る。
ようやく彼に会いに逝けるというのに、こんな情報を記憶しておいても…何の意味も無いのだから。余計な情報を持って行く気にはなれなかった。
そしてそうしようとした矢先…全身を突然激痛が襲う。
思わず崩れ落ちそうになるけれど……きっと、僕を助けた時の彼の方が…今際の際の時の彼の方がずっと…ずーっと痛かった筈だ。そう思うと…この痛みにも耐えれる気がした。
息を荒げながら一歩、また一歩と着実に足を踏み出し……屋上から身を投げる。そして僕は彼の所へ旅立つ事は…出来なかった。
地面に激突する事なく気付くと僕は、いつの間にか現れていた外国人の男に受け止められ…お姫様だっこを、されていたからだ。
最初に思考に浮かんだのは…いつの間に、しかもどこから現れたんだという混乱。
そして次に浮かんだのが「なんで僕の邪魔をした(助けた)んだ」という怒り。あと少しで…あと少しで彼とまた会えたのになのにこの男は…!!
「…聖杯から知識は得た筈だ、だと言うのに…自分が何をしようとしたのか、理解しているのか…??」
僕の感情を意に介さない様子で、その外国人の、取っ付きにくそうな男は僕を下ろした後にそう言い放ってきた。心なしか、額に青筋を立てているような気がする。
けれど…そんな事はどうでもよかった。ただ僕の事情を知らない奴に、後一歩だったのに邪魔されたのが悔しくて。
「理解していないのは貴方の方だ!
後もう少し、もう少しで僕はっ、彼の所に旅立ててたのに!…どうして邪魔をしたんだ!!
…どうして僕をっ…死なせて、くれなかったんだ…!!」
気付くと僕は激情のままに、頬を伝うものを無視して叫んでいた。
「…もう彼が…大好きな人が居ない…モノクロの世界でっ、死んだように生きる事に僕は…ぼくは…っ…耐えれない…」
そう零した僕に対し、男は「…そうか。お前は……」と呟き少し考え込む仕草をした後、再び語りかけてくる。
「…まずは謝らせて貰いたい。あなたの事情も知らず、勝手にこのような行動に出て。
しかし俺…ゴホン、私には……先のような行為は見逃せなかったのです。
それともうひとつ、あなたに何があったのかはわからないが……自ら身を投げなくても、あなたの願いを叶えられるかもしれない方法がある。そう言えばあなたは…踏み留まってくれるだろうか」
そう続ける男に僕は、この人は何を言ってるんだろうと思った。まさか……死人を生き返らせれるとでも?…そんな事、有り得ない。
「彼はもう…居なくなった。死者の蘇生なんて出来る訳が無い以上、もう一度会うなら死を選ぶ他に…方法なんてある筈もない…!」
「……この世界に来た時に、脳に知識が与えられた筈ですが」
「忘れたよ、そんなの。彼の元に行く為には、そんな余計な知識は要らない」
「……となると、私が説明しなければいけないようですね。仕方がない。
まず最初に言わせて貰うと、あなたは死者の蘇生なんて出来る訳がない、と言いましたが…そもそも私自身、死者のような物なのです」
言い合いになる中、男はそんな巫山戯た事を言い出す。死者のようなというならゾンビか、幽霊とでも言い出すつもりなんだろうか?
「…突然何のおつもりで」
「幽霊やゾンビだって言い出すなら、幽霊ならそもそも触れない筈で、ゾンビなら動いてる死体だから体温は低い筈って思った…それだけだよ」
男に手を触れてみるけれど、すり抜ける事は無くまた冷たくもなかった。
「触れなくするのは、やろうと思えば可能ですよ。この通りに…」
そう言うと同時に男の姿が突然消え…先程まで感じていた感触も、体温も感じ取れず、いつの間にか僕は虚空に手を当てる形になっていた。
「…えっ、…隠れて…どこに…!?」
『我々英霊(サーヴァント)はかつて生きた英雄の影法師。だからこうして霊体化して姿を消す事も可能で、また聖杯を使い受肉すればあなた達今を生きる人間のような、第二の生を得る事も出来るのです。
…幽霊やゾンビというのも、まあ…当たらずも遠からずと言った所でしょう』
そう、男の言葉が発信源である口が見えないままに、頭の中に流れ込んでくる。
…こんな事が出来るのなら、少なくとも目の前の男の人の言う事は真実なのかもしれない。なら……そう思った僕は、先程余計な知識と断じた情報を思い出しにかかる。
お父さんとお母さんが亡くなったあの日から僕は、理由はわからないけど記憶のある程度の取捨選択を行えるようになった。…だから、あの時の彼の言葉も、姿も…まだ色があった世界も、見ようと思えば、聞こうと思えば何時だって鮮明に映り聞こえるようになっていた。…彼の下に行きたいって気持ちを抑えれなかった通り、所詮過去は過去でしかないけれども。
…聖杯戦争、魔術師、マスター、サーヴァント、願望器、念話……捨て去った情報を再び知識として取り込む。さっきの激痛は、魔術回路という物を無理矢理開いた結果らしい。
どうやら1時間以内なら、忘れ去っていても思い返せるみたいで…最初流れ込んだ時から10分も経ってないのだからか、余裕で思い出す事が出来た。
「…大体は思い出せたよ。それと…ごめん。
サーヴァントとして呼ばれたのなら、貴方にも叶えたい何かの願いがあるだろうに…身を投げて、止めてくれたのに僕は…」
申し訳なく思い、そう謝る。
彼がさっき言った、願いを叶える方法…この戦争を勝ち抜いて手に入れた聖杯に望みを願う…その権利はマスターだけでなく、サーヴァントにも等しくあるらしい。そうでなきゃ、死した英雄の影法師だろうと…なんのメリットも無しにマスターに仕えてはまずくれないだろう。故に目前の男の人にも…何らかの叶えたい願いがある筈…そう考えると、とても申し訳なく思えて…折角のチャンスを、踏み躙るような真似をしそうになってたのだから。
謝らなきゃダメだろう、どう考えても。
「…いえ、いいのです。私はまだ…聖杯を手にした時、何を願うのかすら決まっていないのだから」
対し、霊体化を解いた上で男の人から帰って来たのは、少し困ったような様子の返し。
「…じゃあどうして、貴方は僕を…?
最初に選ぶのが自殺なマスターなんて放って置いて、別のマスターを探して鞍替えを狙う事も…貴方には出来た筈だ」
「…そうですね…単に、見たくなかっただけと云うのは可笑しいでしょうか?あなたのようなまだ若き少女が自らの命を絶つような様を…」
「…ええ…?…そんな事を言い出すような人には、貴方は見えなかったけど…」
「…らしく無い言い方なのは承知の上、だがこれは俺の経験上から来る…!……失礼。兎も角、そんな事は私は見たくなく、極力させもしないと決めているのです」
詳細を思いっきりはぐらかされたって気はしたけど……何か過去にあったんだろうというのは伺えて、何を願うのか決まってないというのも含めて、本心からの言葉な気がした。
……根本的に優しいんだろう、この男の人は。
「…深くは、聞かないよ。
ただ、ひとつ言うと…あなたの言う、『願いを叶えられるかもしれない方法がある』。って言葉…信じても…良いかなって…そう、思えた」
『…それとそうだ、貴方は…どのクラスの、どんな名前のサーヴァントなんだ?』
男の人の言う事を信じても良いかもと、思いながら僕は先程男の人がしたように…知識で思い出した念話に切り替える事とした。
『失敬、そういえば名乗るのを忘れていましたね。…私はセイバーのサーヴァント、名は──』
クラスを名乗った後名前を言う前に男の人…セイバーは念話を中断し突然、帯刀してた剣を……投げた!?
『いきなりどうしたんだ、セイバー…!?』
『敵が来た為迎撃を行いました。トドメはさせて無いでしょうから、相手のマスターをこれから殺しに行きます。よくも邪魔をしてくれたな…!』
剣が飛んで行った方向を見ると、それが刺さった壮年の男が、此方を睨んでいる。そして狼狽えた様子の、制服を着た青年くらいの相手も…多分、マスターがサーヴァントを伴って奇襲を仕掛けてきたんだろう。
一方セイバーは念話で僕にどうするかを伝えたとほぼ同時に、有無を言わせる間もなく距離を詰めに行った。
『待って!仕掛けてきたのは相手からな以上、叩きのめすのは良いけど…流石に直ぐに殺そうとするのはっ……』
念話で制止を試みようとした時にはもう遅かった。
セイバーが籠手で、相手マスターの首元を思いっ切りぶん殴って……ゴキリと折れる音がする。それと同時に相手の首が回るはずの無い方向を向き…勢い余ってか千切れて、胴体からさよならしてしまっていた。
セイバー…剣士のクラスのやる事なんだろうか、これが…??
……そのままセイバーは、マスターを撲殺…撲殺って言っていいかはわからないけど殴った結果だからそう言う。
…兎に角そうされて呆然とするサーヴァントに、何処から取り出したのか短い剣を突き立て、そのまま何回も刺した。
既に相手はマスターの喪失で消え始めているみたいにも関わらず、何度も、何度も…怒りのままに振り下ろしているかのように、僕には映った。
やがて、サーヴァントが消滅した後セイバーは…首を失い血を吹き出し斃れてるマスター"だった"肉塊の心臓に、短剣を刺そうとして──
『セイバーっ…、セイバー!!
…もう、その人は死んでるよ…』
気付くと念話でそう叫んでいた。対しセイバーはゆっくりとこちらを向いて、不思議そうにしている。
『何故ですマスター?魔術師な以上、首がもげた程度で死んだと判断するのは早計かと。
少なくとも私の一番良く知る魔術師は…殺しても死ななさそうな、特に幻術に長けた人物でした』
『…皆が皆、そんな凄い魔術師とは限らないさ。…僕みたいに、巻き込まれた一般人だったかも知れないだろ』
そう応えながら、何が起きたか理解出来ないと言った様子の死に顔を浮かべた相手の生首に近付く。
…僕らを殺そうとした可能性は高いだろうけど、だからといって…叩きのめした後に交渉なりなんなり、出来る余地はあったかも知れない。
ひょっとしたら、こちらの力量を測った上で話し合いに持ち込もうとしてた可能性もある。…どうにせよ、殺す以外の方法も無くはなかった筈だ。ならば…セイバーにそれを許させてしまった僕に非がある。
……せめてものと思って、僕は生首の目を閉じさせた。
『…セイバー、この人の遺体を消す事って…出来るかな』
『跡形も無く消す事は出来ます』
『…そうか、なら頼むよ…』
セイバーが自分の宝具─冒険好きの剣と呼ぶらしい─の、魔力転用により放った斬撃波で、生首と胴体を消し飛ばす中…ごめんと、そう死んだマスターに内心謝る。
さっき思ったように交渉の余地等はあったかも知れないし、それが無くとも彼にも、今の僕のように…聖杯に縋りたい程に叶えたい願いがあったのかも知れない以上は、そうするべきと思った。
…まあ死体が残ると、僕が疑われる可能性が上がるから…消して貰う他に無いんだけども。
そう思った矢先、急に疲れが来た気がして、身体がふらつき……僕はセイバーに受け止められる形になった。
「…あれ…身体が…」
「どうやらあなたは…お疲れの様子なようで。ひとまず離れましょうか、マスター。
与えられた拠点が何処にあるのかさえ言って貰えれば、そこまで運ぼう」
『…待ってくれ…貴方の名前、だけでも…』
多分、無理矢理魔術回路を開かれた激痛に耐え切った時の消耗のせいかな…なんて思いながら、強い倦怠感から意識を手放しそうになりつつ僕はセイバーに念話で、そう聞く。
『改めて…私はセイバーのサーヴァント、真名はベイリン。アーサー王にかつて騎士として仕えた者ですよ。…あなたは?』
『…よろしく、ベイリン…僕は…悠理、朝背悠理…』
セイバー…ベイリンにそう言葉と、自分の名前を告げた上で、僕は拠点として充てがわれた自宅の位置を教えた後…少し眠る、おやすみとだけ言って眠りについた。
……アーサー王は、聞いたことがあるけど…ベイリンなんて配下が居たのは、知らなかった。…そういうのは彼の方が詳しかったから……もし彼だったら、どんな反応をしたんだろう。…なんて、有り得ない夢想を浮かべながら僕の意識は闇へと落ちた。
夢の中、寡黙そうで近寄り難い青年は、恐らく自らに放たれただろう刺客を返り討ちにし立っていた。
するとそこに少女が現れ…息絶えた刺客の姿を見て泣き喚き、嘆く。
刺客にとって大切な相手だったのだろうかと思ったのか、青年は声を掛けようとするが…少女は呟いた。
『…ベイリン卿、これから私が行う事は、貴方への復讐等ではありません。
ただ私は…彼の居ない世界に、耐えられないだけなのです』
そう言うと同時に少女は、自らの胸に剣を突き刺す。血が飛び、咄嗟に止めようとしたが間に合わなかった青年に付着する。
そのまま少女は、刺客の隣に倒れ息絶え…それを呆然とした様子で青年は見、そして崩れ落ちた。
王の意に背いてでも、己の復讐を成した結果がこれかと、青年は激しい後悔と悲しみに襲われる。
嘆き悲しみ続ける中、別れていた弟と再会した青年は、これ以上刺客が差し向けられる事により、このような悲劇が起こってはならないと…王の許しを得る為に行動する事を決めたのだった。
…今のは…サーヴァントとマスター間で偶にある、互いの過去を夢で見る現象…かな。
…セイバーが…ベイリンがあの時僕を止めた理由がわかった。単純に情深いのもそうだろうけど…女に目の前で死なれるのが、彼にとっての地雷、トラウマの類だったんだろうね。
……余計に申し訳なさが来るけれど…とりあえずセイバーに…僕がこの聖杯戦争でどうするかを、話さなきゃ。
そう思い、無駄に広い家の中を歩くと…僕のサーヴァント、セイバーは居間に居た。
先に起きて僕を待っていたようだ。
「おはよう、セイバー」
「おはようございます、マスター。…それともユウリと、そう呼んだ方が宜しいでしょうか?」
「どちらでも僕は良いよ。セイバーに任せる」
「ではユウリ。……ひとつ質問をさせてもらおう」
丁寧語から口調を変えて、セイバーは聞いてきた。…よく見ると、片手を剣に添えて直ぐにでも引き抜けるようにしている。これは…僕がセイバー…ベイリンの過去を夢に見たように、彼もまた僕の夢を見たのだろうか?
「…構わないよ、是非聞いて欲しい」
「……単刀直入に言おう。夢であなたの過去を見た。あなたは…最愛の相手を生き返らせたとして、そこから何を望む?その望み次第なら私は…いや、俺は……あなたの願いを否定せざるを得ないかも知れない」
……バレてしまっていたようだ。
…サーヴァントとして召喚される際、現代の知識が流し込まれるという。それに照らし合わせたら、そういう反応にもなるよね…。
なんて思いながら、令呪を切る選択を脳の片隅に置いておきつつ僕は…セイバーに答えを言う事を決めた。
セイバーのサーヴァント、ベイリンが見た朝背悠理の夢。
それは爆破事件から目覚めた悠理が、最愛の人の死を知らされ、理解できない所から、言葉を失い泣き崩れる所。そして悠理がその最愛の人の死に顔を見た際…ベイリンもまた、その顔を見た。
…後悔など無いと言ったような、安らかな表情だった。生前は後悔だらけの人生だったベイリンからすれば、彼の死に顔は羨ましくまた眩しい物だった。
……しかし、それ以上にベイリンに衝撃を与えたのは、彼の顔立ちや背格好等が──今慟哭している少女、朝背悠理の顔と『殆どそっくりだった』事。
「落ち着いて下さい、貴女は何も…」
「違う!!僕のせいでっ…僕のせいで彼は…僕より、ずっと優秀で…それでも、僕の方が、お姉ちゃんだったのに…弟を守るどころか、守られ、て……僕は、ぼく…はぁ…!!」
宥められるもただ感情のまま泣いて、泣いて泣き続けている悠理の姿と言動、最初に自殺を止めた際の言動、それに現界時聖杯から与えられた現代の知識により…ベイリンは全てを察した。
彼女は…悠理は、双子の弟に恋をしてしまった上で、それを理不尽に奪われ絶望の日々を送る中、自死しようとして……聖杯戦争に巻き込まれたのだと。
(…そういう事、か。……弟と殺し合い相討ちになった俺を召喚したのが、弟に助けられたがその死で前に進めなくなって死のうとしていた少女とは……皮肉か何かかよ。随分とこの願望器は性格が悪いんだな。胸糞が悪いぜ)
夢から目覚めた後、素の粗暴な口調でそう内心悪態を吐くベイリン。
(…マスターはまだ寝てるみたいだな…疲れてたようだから、これは起きるのを待つとして。
…諸々の言動からして、彼女が願いを持つとするなら…間違いなく、最愛の相手…双子の弟の蘇生だろう。
…だが、俺達の生きた時代なら兎も角、今の現代では彼女の想いは決して叶う事が無く叶ってはいけない物。…色欲からくる物であった場合、それは不義の類だ。俺にはとても容認しかねる。
最悪の場合…俺がマスターを斬るのが先か、令呪で俺が自害させられるのが先かになりかねない)
生前、ランスロットとギネヴィアの不義に気付いてしまい逃げるように城から立ち去った事を想起し苦虫を噛み潰したような表情をしながらも、ベイリンはその時になってから考えるとした。
(…助けた命な手前、出来るなら、そうなって欲しくは無いがな…)
「僕の望みは、最愛の人…大好きな相手、そんな…遺ってたたったひとりの僕の弟を蘇らせる事だよ」
「やはり、そうか。…夢でお前が、弟の死に顔を見た所を俺も、見せられたのでな。
それまでの言動からしても…そうだろうと思った。
…それで、蘇らせた後、お前はどうするんだ?」
「……まだ、捕らぬ狸の皮算用って奴でしかないけども、もし…願いが叶ったら僕は……弟と一緒に、ただ一緒に居れるだけで……いいんだ」
「…本当にそれだけか?」
「うん、それだけだよ。…信じて貰えないかもしれないけど、これは純粋な愛だ」
「……最愛の弟が蘇っても、お前のおかしくなった色覚は治らないかもしれないぞ」
「…それでも、いいんだ。彼と一緒に居れるのなら…色のない世界のままでも、十分すぎるくらいさ。無色なままのこの世界が、再び色づくなら…それが一番だけどね」
「そう、か。
……お前は、どうして弟の事を…ひとりの女として好きになったんだ?」
「…昔、父さんと母さんが亡くなった時に…自分も辛い筈なのに、僕を励ましてくれたんだ。それで僕は…姉なのに抱きついちゃって、悲しみのまま泣いて…。
それまでの僕は…今で言う『メスガキ』そのもので、迷惑ばっかりかけるろくでなしだったけど…弟が頑張ろうとしてるのに、自分だけそんなままで居られないって、僕も姉らしく支えなきゃと思って…変わろうと頑張ったのがきっかけ。
……その時、僕は彼に恋をした。
最初は、親愛とかの気持ちを、勘違いしてるのかと思ったよ。或いは、僕よりも弟の方が、基本的に優秀だったのもあって…憧憬とか、そういう気持ちなのかなとも思った。
でも…一緒に過ごす中で…気持ちが積み重なって行く中で、その疑念は僕から消えた。
それに彼は僕と殆ど同じ顔なのに、彼の顔は…鏡に写った僕よりも、ずっとカッコよく見えて…完全に惚れ込んじゃったんだよ、僕は。
勿論、誰にも言わなかったし、彼にも伝えなかった…ううん、彼に対しては伝えれなかったの方が近いかな。…冷静で感情に振り回されない彼が、姉がそんな気持ちを抱いてると知ったら……縁を切られかねないって、怖かったから。
…彼と一緒に、父さんや母さんの分まで何気ない日常を生きて行けたら…それだけで良かった。十分だったんだ。この気持ちは墓まで持って行こうって…決めてた。
…彼が死ぬ事がわかってたら、そしてそれがどうにも変えれなかったとしたら…伝えてたかも知れないけどね」
「………」
「…どうする?ベイリン。僕を斬るのか?」
「……いや、斬らない。お前の願いを俺は肯定する。
…不義な気持ちで願うようなら、斬り殺していたかも知れないが…聞いた限りでは、それに見た限りでは……お前は理不尽に奪われた最愛の相手を、取り戻したいと純粋に願っているように見えた。
……その気持ちを俺は否定出来ない。間違ってなんかいないんだ、お前は」
「……ありがとう…っ…そしてごめん…ベイリンっ……」
「泣くなよいきなりどうした!?」
「…僕も、夢で…貴方の過去を見て……貴方が、目の前で女の人に死なれたのを…悲しんでたから……なのに僕は、死のうと…!!」
「……俺の事についてはよく知らなかったんだろう?ならば仕方ない。これから先、本当にどうにもならない時以外に自ら命を投げ出すような真似さえしなければ…十分だ」
「…わかった。それと…僕からも。
…極力、他のマスターやサーヴァントが居た時に、即座に殺しにかかるような事は控えて欲しい。
……交渉の余地とかあるかもしれないから、ね」
「…善処はするが…スキルと化してしまっているから……最悪令呪でどうにかしてくれると助かる。
…コホン。兎に角、これからよろしく頼みますよ、私のマスター、ユウリ」
「こちらこそ…改めてよろしく、セイバー…ベイリン卿」
こうして、許されざる恋を抱きし色無き世界に閉ざされた少女と、ついぞ円卓の騎士にはなれなかった蛮人とすら呼ばれた戦士の戦いが今…幕を開けた。
サーヴァント
【クラス】
セイバー
【真名】
ベイリン@アーサー王伝説及び国王牧歌
【属性】
中立・ 悪
【ステータス】
筋力A+ 耐久B+ 敏捷B+ 魔力C 幸運E 宝具A
【クラススキル】
対魔力:B
魔術への抵抗力を表すスキル。Bランクの為、魔術を発動する際における詠唱が、三節以下のものを無効化する効果がある。
大魔術や儀礼呪法等を以ってしても、セイバーを傷つけるのは難しい。
騎乗:B
騎乗の才能を表すスキル。
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなす事が可能だが、魔獣・聖獣ランクの獣を乗りこなす事は出来ない。
【保有スキル】
怒りと共に生まれし騎士:A
当人が言ったとされる「父は怒りと共に私を生み出した」との言と、それを身を以て表すかのような当人の性質及び辿った人生がスキルとなった物。
Cランク相当の戦闘続行の効果が付与されている他、セイバーが怒りの感情を抱くと、筋力・耐久・敏捷のステータスが1段階上昇し、またAランク相当の勇猛に、精神異常や干渉に対する耐性付与の効果も発動し戦闘続行の効果がBランク相当まで上昇する。
ただしデメリットとして、発動すると怒りにより視野が狭まる他冷静な思考を保てなくなり、大局的な判断が出来なくなる他、状況次第だと令呪を使わねばマスターの言う事すら聞かなくなってしまう効果もある。
セイバーは自分に関わる事については殆ど怒らない(虚偽でもない限りはその通りでしょうとしかならない)が、他者が関わると途端に沸点が下がる。
破滅の呪い:EX
宝具である冒険好きの剣を引き抜いた後、返却せず自分の物とした結果セイバーにかけられてしまった忌むべき呪いが逸話と融合してしまったスキル。
本来使う為に何かしらの資格や条件がある武器を、セイバーは手に取るだけで無条件に振るえるようになっているが、この呪いにより互いに最も親しいと思える相手へと剣を向ける事態になった瞬間、セイバーはその相手を確実に殺害してしまう。
なお、生前その呪いが発動した相手である弟ベイランと相対した場合は、最期の逸話の再現によりセイバー自身も確定で死(消滅)を迎えてしまうようになっている。
妖精殺し(讐):A
自らと弟の母を殺した仇である妖精・湖の乙女を怒りに任せ、その場に居合わせたアーサー王すら反応する間もない内に殺害した逸話から来たスキル。
妖精特攻の効果と、Dランク相当の忘却補正と気配遮断、またAランク相当の心眼(真)の効果を複合している。
なお心眼(真)の効果だが、怒りと共に生まれし騎士が発動した際はDランク相当までダウンする。
独断行動:A
セイバーが生前、主であったアーサー王の意にそぐわない行動(上記の湖の乙女殺害等)を取り一度は追放、そこから独断で王の為に動き結果信頼を取り戻すも、結局は自ら放浪の旅に出てしまい最期を迎えた逸話から来たスキル。
Bランク相当の単独行動の効果に、Cランク相当の反骨の相の効果が複合されたスキルである。
【宝具】
冒険好きの剣(エスペ・アヴァンチュルーズ)
ランク:A 種別:対人~対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:500人
最も優れた騎士でないと引き抜けないとされる、カリバーンとはまた別の選定の剣。一説にはアロンダイトと同一の物ともされている。その為なのか、過負荷を与える事により魔力を攻撃へ転用するやり方(アロンダイト・オーバーロードのように)が可能。
セイバーが引き抜いてから呪いをかけられたのか、それ以前から呪いがかけられていたかは不明だが今は前記の破滅の呪いがかけられた魔剣となってしまっている。
【weapon】
セイバーが元から持っていたとされる片手剣。一説には元はダビデ王が持っていた剣とも、振るうと周辺に災厄が訪れるとも、また冒険好きの剣と同一視・あるいはごっちゃにされる事もあるが、本企画だと少なくとも無銘の剣に過ぎない。
基本セイバーはこちらの剣を振るい使う。
姿を消す事が出来る騎士ガーロンをセイバーが討伐した際に用いた物。討伐した城内部は武器の携帯を禁じられていたが、セイバーはこれを隠し持っていた。(どうしても必要だからと携帯を許可させた説もある)
アーサー王の従弟を殴り倒した(相手は重傷を負ったとも、死亡したとも言われておりまた殴った理由も自分が馬鹿にされたからとも、アーサー王を侮辱されたからとも言われている、そもそもアーサー王の従弟ではない説も)際セイバーが使用した物。
これで暴力沙汰を起こしたせいでセイバーは一時期牢獄に入れられていた。
なお上記3つはサーヴァントとなった事で、魔力による生成が可能。その為セイバーはこれら武器を損傷や消耗を気にせずに使う。
【人物背景】
アーサー王が円卓の騎士を結成するよりも以前、かの王に仕えていた騎士。
母の仇を討つため、弟ベイランと共に旅をする中アーサー王の配下となった。
双剣の騎士として、また野蛮な騎士として知られており、良くも悪くも感情のままに即決即断しがち、殺しを一切厭わないという気性面での問題こそあれど実力は確かな物で、最強の騎士のひとりとも称される程であった。
しかし彼の運命は、選定の剣を引き抜いて『しまった』事、それを自分の剣にした事から狂い出す。
仇である湖の乙女を怒りのまま首を斬り落とすも、彼女はアーサー王にとっての恩人だった為ベイリンは追放されてしまう。
追って来た弟ベイランの提案と彼の協力を得て、アーサー王と敵対していたリエンス王を2人で奇襲し捕縛する事で王の許しを得る事には成功し、その後は最優の騎士ランスロット卿の元で騎士としての振る舞いを学んでいたものの、ある時彼はランスロットとギネヴィアの不義密通に気付いてしまい、失意と不信のままに城から立ち去ってしまう。
その後は一人旅をしていたが、その過程でアーサー王の配下達が透明になれる騎士の手で次々殺されて行っている事を知り、また目の前で守ると約束した騎士の命をその透明な騎士の手で殺された事もあり、騎士の遺言に従う形で彼が連れていた乙女と共にその騎士・ガーロンを討つ為旅立つ。
そして紆余曲折を経てベラム王の城にてガーロンの殺害に成功するものの、ガーロンはベラム王の弟だった為激怒した王はベイリンらを殺そうとする。
その最中、城にあった槍を手に取ったベイリンが振るった結果…その槍がロンギヌスの槍だったせいで発動した天罰・嘆きの一撃により城は崩壊。それどころか近隣の3カ国までもが壊滅状態へと変わってしまった。
ベイリン自身はベラム王共々瓦礫の下敷きになっていたが花の魔術師マーリンにより助けられるも、乙女は息絶えていた。
そして彼は、罪の意識と自分が呪われてしまっている事を自覚し、アーサー王への元へ帰るのを諦め再び、一人当てのない贖罪と冒険の旅に出た。
最終的に彼は、互いに兄弟だと気付かぬまま弟のベイランと相討ちになる形で死を迎え、遺言により兄弟で同じ墓へと埋葬される顛末を迎えたのであった。
なおマーリン経由でベイリンの訃報を知ったアーサー王は、「あれ」は死ぬ生き物だったのか…!?とまず驚愕し、そして深く悲しんだとされている。
【外見・性格】
外見は金髪碧眼で、"喋っていなければ"寡黙で近寄り難く見えるタイプのイケメン。
性格は外見とは異なり割と喋るタイプで、誰かのために義憤を燃やし、情に厚く自らの正義の下に行動する善人な男…だったが、生前でのあれこれと、自らを召喚したマスターの影響もあって自己評価が地の底に落ちている。アライメントが悪になっているのもこれのせい。
(なお自己評価については基本表には出さないようにしている。「口に出した所で鬱陶しく聞き苦しいだけでしょうが」とは当人の弁)
しかし感情のままに即決即断しがち、かつ対象を殺して解決しようとする選択肢が常に脳裏に浮かんでいる上に、怒りを抱くと沸点が下がり我慢が効かなくなりがちな性質は治っていない(怒りについてはスキルにまでなってしまっている)。
基本的に丁寧語で話そうとしており一人称も私だが、これはランスロットの元で騎士の振る舞いを学ぶ中、身に付けた己を律しようとする仕草。
本来の一人称は俺で、言葉遣いも粗暴寄りである。
戦闘時は一対一の決闘か、そういう作戦でもない限りは、手段を問わず敵を撃滅する事を目的とし暴れるスタイル。野蛮な騎士呼ばわりされたのは戦闘時の手段の選ばなさと気性面が理由である。
彼は自らを騎士だとは思っていない。感情に流され何も守れず取り零し続け、殺す事と壊す事しか出来ない自分は騎士ではなく、内心ただの蛮人でしかないのだと自嘲している。(実際他のクラスで召喚された場合(バーサーカー、アヴェンジャー)は野蛮な側面が強調される)
しかしサーヴァントとして召喚された以上は、(マスターの願い等にもよるが)戦いを放棄する事はせず、出来る限りの働きはしてみせるだろう。
【身長・体重】
187cm、78kg
【聖杯への願い】
自分でもよくわかっていないようである。
使う資格は無いと思ってこそいるが、変えたい過去や無かった事にしたい悲劇はたくさんある。願いを叶えれる段階になって初めて、何を願いたいのか…或いは不要とするかが分かるんじゃないかと考え、一先ずは先送り中。
【マスターへの態度】
理不尽に大切な相手を奪われた被害者だと判断し、彼女の願いを叶えてやりたいと思っている。それはそれとしてどこか危うさも感じている。
聖杯から与えられた知識により、彼女が現代では法に阻まれる禁断の恋をしているのは認識している。
しかし当の彼女が今のところ色欲を理由として想い人の蘇生を願っているのではなく、あくまで一緒に居ることが出来ればそれだけで十分と思っているのもあって、セイバーは彼女の望みを肯定した上で、再び彼女の世界に色が戻る事を願いその為に戦うと、そう定めた。
マスター
【名前】
朝背悠理/Asase Yuri
【性別】
女
【年齢】
17歳
【属性】
中立・悪
【外見・性格】
髪色は茶髪で、長さはセミショートと言った所。中性的かつ着痩せするタイプで脱ぐとすごい。眼の色は髪色同様茶色にも見え、光の当たり方や角度次第では橙色にも見える。
服装は高校の制服で、下はスカート+スパッツ。一人称は「僕」で、基本男性的な言動で振る舞う。
黙っているとクール系に思われるが、性格は情に深く優しさと面倒見の良さを持った少女。しかしそれ故に感情のまま後先考えず直情的に動いたり、一人で問題を抱え込んで突っ走ったりと精神面に問題を抱えている。
また自己評価が低く自分への好意に鈍感な傾向がある上、他者から見られる姿を取り繕うのは上手な為これらの問題点は他者には見つかりにくい。
他、情の深さ故に、大切な者の為になら、それ以外の全てを踏み躙るような行動も出来てしまう異常性も持ち合わせている。
強い罪悪感等を感じそれを引きずり続けるも、それでも愛する人の為になら彼女は、一度そう決めたら最後、その手を汚す事を辞めずまた退かない。(そもそも彼女は弟が死んだのは自分のせいだと思っているので、既に自分の事を人殺しだと認識している)
両親が健在の頃は子供っぽく自分勝手、かつ寂しがり屋な泣き虫と手のかかるメスガキそのものであったが、死別してからはたったひとりの家族にして最愛の人となった双子の弟を支えながら共に生きる為に奮起し、今の性格へと変わっていった。
最も、興味を持たなかったもしくは持てなかった物を即座に忘れ去ったりと、今でも従来の性格の片鱗を伺える部分はあるが。
弟との死別以降は表面上こそいつも通りだが、内面は自責と絶望に飲まれ無気力極まった状況へと陥って行っていた。
【身長・体重】
170cm、63kg
【魔術回路・特性】
質:A 量:C
後追い自殺する前に落ちていた古びた懐中時計を気紛れで拾った結果こうなった。質がとても高い。
【魔術・異能】
魔術回路は開いたが、どのような魔術を行使可能かは現時点では不明。当人もよくわかっていないと思われる。
また異能かは不明だが、両親と死別した10歳頃から、意識的に記憶の取捨選択を行う事が可能になった。忘れる事にした記憶は1時間以内なら思い出す事が出来る。ただし辛い記憶は捨てて忘れる事が出来ない。
【備考・設定】
裕福な事以外はごく普通の一家(少なくとも当人視点だとそうだった)に一卵性双生児の姉として生を受けた少女。
10歳の頃に両親を目の前で事故で失い、遺された財産を使い弟とたった2人で生きて来た。
その際絶望していた所、弟の「父さんも母さんも、2人ともきっと夜空の星の何処かに居て、俺達を見守ってるよ」との励ましの言葉を受け、自らを省み性格が変わる理由となった他、彼をしっかり者の弟としてだけでなく、ひとりの異性として意識するきっかけともなる。
その後は2人で支え合いつつ、弟への異性としての積もる好意を内に秘め続けていたが、16歳のある時、2人で映画館に訪れた際突如爆発事件が発生。
自分は咄嗟に動いた弟に突き飛ばされた事で爆発の直撃は避けれたものの、意識を取り戻した彼女は弟の…最愛の人にして最後に遺っていた家族を喪った事を知らされ……自分を助けたせいで弟は死んだと思った彼女の世界からは、色が消え失せた。(視力は低くなく低下もしていない、その為全色盲もとい1色型色覚ではなく、ストレスによる色覚異常と見られる)
その後は表面上は立ち直り普通の日々を過ごしてるように見せながらも、色の消えた世界を死んだように生きる日々が続く中で彼女は、かつて言われたように彼自身も、弟も夜空の星の何処かに居るのではという思考に捕われる。
内心では死んだように生を過ごしながらも、夜は星空を眺めながら涙を流す日々の果て、どうやっても生きている限り自分は、星に手は届かないと悟った彼女は……最愛の相手に再び会う為にこの色無き世界から飛び立つ決心を固めた──その矢先、目に留まった古びた懐中時計を偶然拾ってしまった結果、聖杯戦争へと巻き込まれる事となった。
弟を生き返らせたいとは思っているものの、動機は再び彼と共に色のある世界を生きたい。恋は叶わないままで、秘めたままでいいという、性的な要素の無い純粋な愛から来た物である。なんなら弟が居るのであるのなら、例え色のないモノクロな世界から変わらずとも構わないとすら思っている。
また弟の事を大切な愛する人だと他者に言う際や内心で触れる際、名前では無く「彼」や「君」と呼称するのは、ひとりの異性として見ているが故。(弟の存命時はしていなかった)
ちなみに運動能力はかなり高く、剣の心得もある他、家事全般は人並みには出来る。
【聖杯への願い】
最愛の弟を生き返らせ、己が世界に色を取り戻す。
……ただ僕は、彼と一緒に生きたいだけなんだ。
【サーヴァントへの態度】
自分を踏み留まらせ道を示し、自分の許されざる恋を肯定してくれた人。
頼りにしているし、心強いと思っている…が、殺しに躊躇いが無さすぎてそこは少し不安。
最終更新:2024年07月28日 18:20