「すべて本来の持ち味をこわさないことが料理の要訣である」
北大路魯山人(芸術家)
◇◇◇◇
俺はハサン・サッバーハ。偉大なる先達と区別するために、華麗のハサンを名乗っている。
華麗。暗殺術に相応しくない名前だと君は思うだろうか?俺もそう思う。殺しの技が華やかで美しいとはなんかのジョークだな。しかしこれはあくまで俺が名乗り始めたわけじゃないことを明言しておこう。
。
さて俺が彷徨っているのは英霊の座と呼ばれる世界だ。この世界で活躍し、信仰を集めたもの英霊が招かれる時間軸から外れた空間。そんな場所で俺はぼーっと座っていた。うるさい鳥も砂も人もいない。過去を思い出すにはいい場所だ。
暗殺教団を知っているか?もしくは山の翁の名前。俺はその教団のリーダーを曲がりなりにもやっていた。楽しいもんじゃない。人を使うのには神経がいる。他人の関係性を考慮してやらなきゃならないのは血反吐を吐くほど嫌だった。性格の不一致で殺し合いするんじゃないよ馬鹿どもめ。
愚痴はここまでにしよう。暗殺教団という名の通り、俺は暗殺を生業としていたぜ。異教徒、死徒、反対勢力を殺しまくった。あまり気持ちの良いものじゃなかった。
華麗。それは俺の殺し方からきている。俺は料理人だった。自慢するがその腕は当代一と自惚れてもいいほどにな。だから俺は知っている。何を食べれば体に害を為すか、何を飲めば人が死ぬかをだ。毒は入れない。毒見役をすり抜けなきゃならないからだ。俺が使ったのは香辛料と食い合わせ。少しだけ食っても平気だが多量に取り込むことで後日臓器を破壊し、死に至らしめる。料理の手際の美しさと証拠を残さぬ完璧さ故に長老どもから華麗と呼ばれたんだ。
だが年はとりたくないもの。料理の味が落ちたその時に俺は死ぬことを決意した。加齢による腕の痺れと舌の異常、これが痛い。次代のハサンを決め霊廟へ赴き初代様に首を落とされ………俺はこの場に来た。
中々に大したことをしていない人生だと振り返りながら俺は思う。結局のところ俺は現役時代、証拠を掴まれることはなく、標的を必ず殺すことに成功していた。反乱や造反も俺の代では起きることはなかったし、長老どもからの覚えも良い。ライバルなんざついぞおらずあっさり仕事を完了させて、終ぞ、障害というものに当たらなかったのだ。
あー………次の人生があるのなら苦難と試練にまみれたハサン・サッバーハになりたい。
◇◇◇◇◇
528:未熟な果実 ◆tsGpSwX8mo:2024/07/10(水) 10:20:41 ID:Wc3tS.3E0
架空の東京 ホテル キッチン
現代の東の国に俺は召喚された。今の時代の台所はすごい。このコンロがあの時代にあれば火加減の調整も簡単だった、この泡立て器があればもっとふわふわの生地を作れた、この食洗機があれば頑固な汚れとて一瞬で落ちるだろう。
冷蔵庫から俺はサーモンを取り出す。丸々と太ったそれに俺は刃を入れた。綺麗なオレンジ色である。近くの瓶を俺は手に取った。オリーヴでできた油、植物はいい。フライパンに入れると半透明の緑が広がる。切ったサーモンを調理液に浸し、香辛料を振りかける。温めた油にサーモンを引き、フライパンを揺らした。香ばしいジューシーな匂いが鼻をくすぐる。香味野菜もフライパンに投入して、青い火の上で踊らせる。火が通ったか?よし………この白い皿に飾り付けてやるか。
死んだサーモンがまた蘇ったように盛れたな。自画自賛で俺は笑みを止めることができない。焼けたパンをバケットに添え、付け合わせに豆のスープ。現界して1度目の料理は全盛期の出来だ。俺は全ての皿を右手に乗っけ、運ぶ。腹ペコマスターに献上するために。
ちょこんと椅子に座る子供が1人。金髪と白い肌、ギラギラと光る虹の目。身長と若さに似合わない青い大胆なドレス、俺の子供には絶対着させたくないやばいデザインだ。腰には剣。銀の刃と青い宝石が特徴的なものだ。
手塩をかけた料理を俺は舌舐めずりするマスターの前に並べた。
「この料理達はなんですの?」
「右からサーモンのムニエル、アボカドのサラダ、枝豆のスープ、焼いたフランスパンになりますマスター。」
マスターは白魚のように細い手でナイフとフォークを持ち、俺の料理を口へ運ぶ。口に放り込むと虹色の目が十重にニ十重に輝く。
「美味しい!」
「お喜びなら幸いです」
まさかこんな子供がマスターになるなんて正直思っても見なかったってところである。しかし餓鬼が目光らさせて口に料理を頬張る姿はいいものだ。
「次はカツ丼お願い!あっ豚無理なんだっけ………」
「食べないならヘーキですよ」
「えっそうなの?」
「ここにお偉いさんはいませんから多分ヘーキですぜ」
「わーい!お願いアサシン!」
「何なりと」
カツ丼………この国の料理か。うまく作ってマスターに献上しなければな。
◇◇◇◇◇
自分の呼んだサーヴァント、アサシン。その料理が美味しいのが嬉しい。私のことを子供のように見るのは納得できないけど。
この鉱石科および天体科の超天才美少女『セレーン・カーリア』。12歳だけどもう大人顔負けの実力があるのよ!
「ケーキかクレープかどっちがいいマスター?」
「ケーキ!」
そう、この甘いものをパクパク食べて止まらないなんてのは別に子供ぽいことじゃない!アサシンのケーキが美味しいすぎるから仕方ないのだ。
「コーヒー淹れました。砂糖とミルクは?」
「いらないわ」
「本当に?」
しつこいアサシンね!クビっと黒い液体が私の喉を少し通る。にっがぁ!
「淹れます?」
生暖かい目線から私は顔を逸らして砂糖を入れてもらった。うん美味しい!
「そういえばマスター。一つ質問しても?」
「ええいいわよ」
「なぜ貴方は聖杯戦争に?」
アサシンの問いに私は答えるまで一拍置いた。食後のコーヒーは全て喉を通り口の中は綺麗さっぱり流されている。何か緊張している?私が?………らしくもない。
「見返すためよ!」
カーリア家はざっと10世紀は存在している名家。私はそこの血筋から生まれた1000年に一度の天才的美少女なのだ。なのにパパやママは私にはまだ早いと研究から遠ざけて基礎を学べと時計塔にいれやがりました!私ほどの天才なら基礎なんか勉強しなくたってパパやママの手助けなんて余裕でできるのに!
時計塔の授業は正直退屈だったし、嫌な日々だった。その時に聖杯戦争の話を聞いたのよ!なんでも叶う願望機。正直魔術式の論理的な問題や叶えるまでのプロセスとか考えるとあまりに眉唾だけど、私は優秀だからゲットした後のことを考えればいいと思った。後パパとママに褒められると思ったしムカつく親族をギャフンと言わせられる!
そんなことをアサシンに伝えると彼は天を仰いだ。なんでかしら?
◇◇◇◇◇
ダメだこのマスターアマちゃんすぎる。
これはある種の試練だな………。この餓鬼をなんとか生き残らせて脱出させた方がいい。
あまりに考えなしすぎる。もし俺が敵のサーヴァントでこの料理に死が盛られてたらどーするんだよ!
なまじ半端に実力があるから始末に置けない。日常生活を通して挫折して成長するべきなのに、この場じゃ躓きが死に直結する。
………だが餓鬼が死ぬなんて目覚めが悪い。なんとかしなきゃならねぇ。ちぃ、予定変更だな
俺の懸念に気づかないマスターの目は驚くほどに無垢でこれから起こる残酷を受け止めることができるか心配だ。
キャスターあたりに稽古つけてもらうか?いやいやそんなこと出来るのか聖杯戦争で!
とにかく俺1人じゃどうにもならん。誰か人の良さそうなやつ利用して同盟を結ぶしかないか………
「アサシン」
「ん?」
「あなた頭抱えながら笑ってどうしたんですか?」
【キャラクターシート】
サーヴァント
【クラス】アサシン
【真名】ハサン・サッバーハ:華麗のハサン
【属性】秩序・悪
【ステータス】
筋力:B 耐久:E 敏捷:A 魔力:D 幸運:A 宝具:E
【クラススキル】
諜報:A+++
気配を遮断するのではなく、気配そのあたりものを敵対者だと感じさせない。親しい隣人、無害な石ころ、最愛の人間などと勘違いさせる。直接的な攻撃に出た瞬間、効果を失う。
華麗のハサンは堂々とターゲットに会い、暗殺していった。
【保有スキル】
直感A
戦闘時に常に自身にとって最適な展開を“感じ取る”能力。研ぎ澄まされた第六感はもはや未来予知に近い。視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
ナイームの手A++
人を快楽へと導くほどの手の技術。剣術、マッサージ、調合術、投擲、裁縫、工芸、料理など手の器用さを伴う技巧にプラス判定。
【宝具】
『夢想味蕾(ザバーニーヤ)』
ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:72人
「本当にもうしわけない。夢想味蕾(ザバーニーヤ)」
数種類の香辛料と食物の食い合わせによる中毒死を昇華させた宝具。
華麗のハサンが作った料理を一口でも口に含んだ者へ真名解放することで毒に似た状態異常を引き起こす。
状態異常の程度はどれだけ料理を食したかにより、一口含むと3秒ほど完全に動きを止める。一皿食べると重体、幸運判定に失敗すれば即死させる。
厳密に毒を使っていないので耐毒スキルの類いを素通りすることができる。
この宝具を使う際には必ず香辛料を使った料理を作成しなければならない。
【weapon】
シミター
【人物背景】
暗殺教団の18人いるリーダーのうちの1人。
『華麗』の二文字は彼の技を見た長老の1人がその手際の良さを評価したところから言われるようになった。
料理人として堂々と潜入し、毒見役をすり抜けて中毒死を引き起こすその技はハサン・サッバーハの名に相応しい。
だがこの技は料理の質あってこその物。加齢により衰えを感じたハサンは歴代の誰よりも若くその座を退き首を落とした。
【外見・性格】
非常に綺麗なローブと白骨仮面をつけた男。
髪はなく、複数個の香辛料を持ち歩いている。
綺麗好きな世話焼き
昔家族を持っていた。子供を大切にしてる
軽いマゾ
【身長・体重】
178cm・43kg
【聖杯への願い】マスターを優勝させる(その間にある苦難試練を楽しむ。)
【マスターへの態度】
もう………諦めて脱出しよう!?
マスター
【名前】セーレン・カーリア
【性別】女
【年齢】12
【属性】秩序・善
【外見・性格】
露出度の高いバカみたいなドレス
金髪、白い肌、虹色に輝く両目
高飛車で自信家
大人ぶっている子供
【身長・体重】
149cm・70kg
B90・H49・H79
【魔術回路・特性】
正常
質A+ 量B
火・水・風
【魔術・異能】
カーリア秘伝召喚剣
魔力の塊から青白い剣を錬成し、発射する。
セーレンは20秒間途切れることなく剣を打ち出せる
カーリア秘伝月の輝剣
触媒に大量の魔力を詰め青白い特大の剣とする。
5秒ほどで霧散するが破壊力が高い
カーリア秘伝双子星
自分の動きを追随する青いオートマタを作り出す魔術。
10秒ほどで消えるが、同時に十数体生み出し攻撃可能。
大三角の剣
カーリア家に保管してある魔術触媒の一つ。トライアングルを描くようにサファイアが配置された剣。カーリアの秘伝魔術の威力を底上げする。
流布の魔眼
宝石級の魔眼。普段は魔眼殺しのコンタクトレンズにより守られている。視界に存在する物質全てに自分の放った物質を当てる。数が足りなければ放った物質が何個にも分かれる。10秒も持たない。それ以上経過すると臓器や脳に深刻なダメージが入る。
【備考・設定】
10世紀つづくカーリア家・貴族主義系統出身の未熟な魔術師。カーリア家は三つの系統に分かれている。高い素質と宝石級の魔眼もちとして生まれた彼女は両親から希少な花のように大切に育てられていたが遅い反抗期により、反発。自分が優秀だということを証明するためだけに聖杯戦争に参加する短絡さを見せた。両親は親心と下心ゆえに行方を必死に追っている
【聖杯への願い】自分が優秀だと証明する
【サーヴァントへの態度】優しいおじさん、料理うまい。
最終更新:2024年07月10日 16:00