男の人って、一度女を愛したとなると、その女のためなら何だってしてくださるでしょ。
たった一つ、してくださらないもの、それはいつまでも愛し続けるってことよ。

オスカー・ワイルド

◇◇◇◇

東京 上野 高級風俗店『テキーラ』

「ありがとうございましたぁ」

ゆるく間延びした声で客を送る言葉が店舗に響く。客が嬢に手を振り、それに返答するように手を振りかえした。

「『ロディーヌ』ちゃん、休憩入ります!」
「はぁい」

ロディーヌと呼ばれた女は先ほどまで仕事をしていた部屋へと帰っていく。

ロディーヌは源氏名であるが、彼女は日本人である。しかし彼女はその名前がしっくりくるような外見だ。目を引くのは体躯。身長は180cmほどだ。『太腿』と言う言葉はこの形のためにあると思えるほど迫力があり、それでいて決してバランスが崩れているように見えない脚、傷ひとつなく整った男を優しく包み込む美手、薄い化粧だけで輝く尊顔。

日本人離れした特徴はそれだけではない。全てを押しつぶさんとベッドを軋ませるほどに圧力を持つ巨尻、掴みやすく身体のバランスが崩れない程度に括れている腰、そして水風船のように柔らかく餅よりも弾力があり、計量器具に乗せたら針が振り切れるほどに大きな胸を持っている。

つまりは行く先々の人間、特に男を振り向かせるような風貌をしているのだ。

(さっきのお客さん、話し方乱暴だし私の扱い方雑だったなぁ。白人ってこと鼻につけて見下す感じ?私嫌な態度出してなかったかしら………)

『テキーラ』、この高級店は昨今の外国人観光客増加に合わせ、珍しく観光客OKの嬢を雇っている。ロディーヌはその一人であり、英語などの複数語を習得しているので外国人からの人気も高い。

しかし、来る客の質までも高級とはいかない。時々嫌な客も来る。その客に対してもプロの対応ができるか、そこが売上にもつながっていく。

ロディーヌは口コミサイトを開く。すると先ほどの横暴な客のレビューが早速載っていた。読んだロディーヌは肩を下ろす。星4.6、5段階で高評価を獲得していたからだ。

(でもあんな客ばかりも飽きますわ………今日は後一人ですわね。どんな人が来るんでしょう?)

ロディーヌは憂鬱な思考を振り払い、まだ来ぬ客に思いを馳せる。ロディーヌの仕事のモチベーションである。

世界最古の職業にロディーヌは仕方なく就職した訳ではないし、深い理由がある訳でもない。溜まり切ったストレスの発散のためである。

彼女は元々不特定多数の人間と交流するのが好きだった。バーで横に座り、ゲーセンでカップルと混ざり、カラオケにいつの間にか参加している。そうして全く知らない人間の人となりを知り観察することが趣味だった。

しかし大学に進学した直後パンデミックが直撃、人と会う機会が激減する。ロディーヌはこの時多大なストレスを感じた。いろんな知らない人と話したい、遊びたい、触れ合いたい。

感染対策の制限が緩和され、再びできる様になった時、ロディーヌは今まで自分のやってきた交流では全く満足できなくなっていた。

『不特定多数の人間ともっと深く繋がりたい』。それが彼女を嬢へ就職するきっかけを作ったのだ。幸い彼女には抜群のプロポーションと高い教養があり、あっという間に人気嬢へと階段を駆け上がることとなる。

(さて、ベッドも仕上げたし、少し水でも飲みますか………あら?)

シーツを整え、客を迎える準備をしたロディーヌは小型冷蔵庫からペットボトルを取り出し口につける。その時床に何かが落ちているのに気がついた。

ペットボトルをしまい、拾い上げるロディーヌ。それはハイカラな懐中時計の様なものだった。

(さっきの観光客が落としたのかしら?)

蓋を開き時間を見るロディーヌ。その時少しばかり違和感が彼女を襲った。

(なんか………今変だった様な?)

しかし漠然としたものだったのでロディーヌは気のせいだと思い、懐中時計をクローゼットにしまう。そして次の客の名前を再度確認した。ホワイトボードに書いてある名前は「イヴァン」である。

◇◇◇◇◇

架空の東京 上野 高級風俗店『テキーラ』

「ここは………」

現代的な室内に場違いな男が現れた。黒い西洋の鎧を着込む騎士である。顔に兜は被っておらずその顔は金髪碧眼、典型的なイギリス人の美男子である。腰に剣はつけておらず、あらゆる武器を彼は持っていなかった。

「何故俺が召喚された?」

彼はライダーのクラスを受け、今回召喚された。聖杯の力で彼は現代の知識を得ていく。今いる場所はどうやら東京という極東の国の都市をモチーフに作られた架空の都市らしい。マスターは目の前にいないし、パスも不安定な感じを受ける。

(何故俺がここにいる………)

ライダーは考える。彼は人に呼ばれたとしても基本的には召喚に応じない英霊だ。彼が召喚されるとするならばそれは彼が生前愛した妻が関係する場合のみである。

(まさか指輪でも奪って召喚したのか?)

その場合、出るとこ出るとライダーは考え、自分とマスターを繋ぐパスを追う。薄く今でもちぎれそうなパスを辿り、着いた場所はドアであった。
この奥にいる。ライダーは心を沈黙させ、ドアノブを回した。

「あっ、いらっしゃいませ~イヴァンさん、ロディーヌです。本日はよろしくお願いします~」





ライダーは脳髄に電撃を打たれた。

ロディーヌは入ってきた客の格好に驚いたが、その驚愕を顔に出さず、丁寧に挨拶を行う。

どうやらお客様は何かに驚いている様だった。ロディーヌの挨拶に反応し、彼は口を開く。

「ど、どーも。貴方が俺のマスターであるか?(あれ自己紹介したっけ?)」

ライダーの質問の意図がわからないロディーヌ。少し考え、彼はイメージプレイがご希望なのだろうと結論づけた。

「あっそうですよ~イヴァンさん。私が貴方のマスターですわ!」
(多分この人は受け身でプレイしたいわけね。ならばマスターとしてしっかり可愛がってあげましょう。)

ライダーは自分の意図が全くロディーヌに伝わっていないことに気づいていた。しかし気づいていたが気にしなかった。何故ならロディーヌから目を離せなかったからだ。

(そんなまさか!いや顔も体型も何もかも違うのにやはり雰囲気と底が似ている。まさか偶然!?そんなことが?!)

「あのおイヴァンさん?大丈夫ですか?」
「あっ、いや………なんでもないです」

ライダーはロディーヌの胸に目が吸い寄せられている。

(デラデケェ!当世の女性って皆発育がいいのかぁ?!てかここもしかして娼館かよ!)

ライダーは考える。このマスターとしっぽりプレイをするかどうか。思い浮かんだのはかつての仲間たち。

頭の中の腹違いの兄はこういった。
「胸いいですよね!」

頭の中の赤髪の弓使いはこういった。
「やはり胸ですよ、ユーキャンフライ………」

頭の中の湖の騎士はこういった。
「据え膳食わぬは男の恥。つまりレディに恥をかかせちゃなりませんよ」

(パスも貧弱だし………魔力供給だうん。それにさほら俺を召喚したってことは妻の生まれ変わりか何かだろうし)

「ではよろしくお願いしますよ、マスター」
「はあい」

ライダーは鎧を脱ぎ、ロディーヌと向き合ってベッドの中へ飛び込んだ

◇◇◇◇◇

「すごいよかったです………」
「ありがとうございます~(私もすごく気持ちよかったな………)」

3時間後、二人は同じベッドの中に入っていた。ライダーは手をグーパーと動かす。魔力が潤沢に行き届いているのがわかる。パスの再構成に成功した。

(それにしても………すげえな当世のベッドテクすげぇ………完全に翻弄されちまった………)

感慨にふけるライダー。その時彼の『友人』が何かを感じ取る。声のない報告を脳内に受け取り、ライダーは戦闘体制を整えた。

「どうしましたかイヴァンさん」
「敵ですマスター。俺の後ろへ」
「敵?」

ロディーヌの疑問はその数秒後に解決する。突如骸骨の仮面を被った変質者が出現し、ナイフを振り下ろす。

「それはダメだろ」

ライダーはそのナイフを片手で掴む。変質者はぴくりとも動かないナイフに焦りを見せる。

「comeon!」

ライダーの一言で変質者は悲鳴をあげた。その肩はばっくりと裂け、首には歯形がつく。ロディーヌは腰を抜かした。日本では檻越しでしかまず見ない動物がいつのまにか変質者を襲っていたのだ。それはライオンである。しかもその体毛は絹の様に白い珍しいものだった。

「グハァ!?」

断末魔と共に変質者は光の粒となって消える。その様子を呆然としつつ食い入る様に見ていたロディーヌ。

「この状況はいったいなんなの?」

ライダーに問うロディーヌの顔はオモチャを前にした幼児の様に口角が上がっていた。

「聖杯戦争だ。貴女はそれに巻き込まれた」
(護らなくては………俺がこの人を)

ライダーは獅子を撫でながら心に誓う。
彼女の笑顔をライダーは曖昧な笑みで見ていた。


サーヴァント
【クラス】ライダー
【真名】サー・ユーウェイン
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力B+ 耐久B+ 敏捷B+ 魔力A 幸運B 宝具A
【クラススキル】
騎乗:A
乗り物を乗りこなす能力。Aランクでは幻獣・神獣ランクを除くすべての獣、乗り物を乗りこなせる。

対魔力:B
魔術に対する抵抗力。詠唱が三節以下の魔術を無効化。大魔術、儀礼呪法などを以っても、傷付けるのは困難。

【保有スキル】
獅子の騎士:EX
相棒の獅子と共に戦った栄光。自らの相棒である獅子の力を自らに重ね合わせる。
クラスがライダーに固定される代わりにAランクの筋力、耐久、敏捷、魔力を自らのステータスにさらに上乗せする。

軍略:C
一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。

心眼(真):A
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。


エスクラドスの鎧:EX
魔法の泉を守っていた騎士エスクラドスを撃ち倒し手にした鎧。雷と嵐の力を宿しており、魔力放出(雷)と矢避けの加護(嵐)に相当する権能が使用可能。

【宝具】

『白獅子(ホワイト・レオ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
ユーウェインと共に竜を破り、ユーウェインの傍に付き従う勇敢なる白獅子。『白獅子』は意志と生命を持つ宝具であり、ユーウェインの為に行動する。
『心眼(偽)』『仕切り直し』『直感』『気配感知』の四つのスキルを使用でき、ユーウェインと意思疎通することで擬似的にユーウェインも使用可能となる。

『宙舞う鴉魔剣(ハンドレッド・ケンヴェルヒン)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:300人

『祖父キンヴォルフがユーウェインに託した』というカバーストーリーの元モルガンが与えた魔剣群。三百本の魔剣は鴉に変化することもでき、偵察も奇襲もお手のもの。その一つ一つに自立した知能が存在し、ユーウェインとそのマスターの状況から判断してそれぞれが行動を起こす。数が減った場合ユーウェインの魔力を消費することで三百本を保つことは可能。

『収束する勝利の剣(エクスカリバー・ケンヴェルヒン)』

ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:20~40 最大捕捉:300人

『宙舞う鴉魔剣(ハンドレッド・ケンヴェルヒン)』の真の姿。三百本の魔剣が一つの姿を取り強力な魔剣とかす。強力なモルガンの加護と魔力をエンジンに青白い炎を纏う。真名解放することで外敵を焼き尽くす地獄の炎の斬撃を解き放つ。

【人物背景】
ユーウェイン。イヴァンともイウェインとも呼ばれている。最初期の円卓の騎士。その出自はモルガンが野望のため出産した生体兵器。最初、感情を持たない人形の様な存在だったが、自らの妻となる女性に会った際、一目惚れの病を患い、感情豊かになった。
竜に襲われていた獅子と出会い共に打ち倒したことで唯一無二の友となる。数々の冒険を行い、妻と結婚した頃、アーサー王に直訴し、円卓を円満にさった。
それ以降彼の姿を見たものはいない。
基本的に彼が召喚に応じることはない。
もし召喚されたとしたら彼の妻の指輪もしくは彼の妻に関連してなければならない。

【外見・性格】
典型的な騎士
金髪碧眼の美男子

騎士として優秀で基本的には真面目な性格。
妻が好きすぎるのとそれはそれとして美女に靡いてしまう。料理は下手。

【身長・体重】
183cm・81kg

【聖杯への願い】
マスターを護る。

【マスターへの態度】
生まれ変わりだ………すげぇ………

マスター
【名前】ロディーヌ(嬢名)
【性別】女
【年齢】21
【属性】中立・善
【外見・性格】
日本人とは思えない美貌とスタイル

ポワポワした天然気質。不特定多数の人間と繋がりたい寂しがりや

【身長・体重】
180kg・90kg
B140・W79・H100

【魔術回路・特性】
正常
質B 量B

広める、広がる

【魔術・異能】
包容力
床上手
英語、広東語などの外国語を複数喋れる。

【備考・設定】
日本人の大学生。授業がない日の夜彼女は自分の趣味のために高級ソープ店『テキーラ』に勤めている。
実は祖母がイギリス人の魔術師でクォーター。素質自体はあるが、魔術の世界に入るきっかけが全くなく、この様な世界があることを知らなかった。
血筋を追うと、ある騎士の妻に行き着く。

【聖杯への願い】
全くない。強いて言うなら税金がかからない資産

【サーヴァントへの態度】
かっこいい人。なんか自分を通して別の人を見ている気がするのは少しやだ。

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最終更新:2024年07月31日 11:29