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【千秋の日記】
店を出てどれくらい歩いただろうか…出た時は15分も歩けば着くと言っていたが、
私の歩くスピードが遅いせいで、20分以上歩いても海には到着しなかった。
私の歩くスピードが遅いせいで、20分以上歩いても海には到着しなかった。
「千秋ちゃん疲れたんでしょ? 少し休憩しよう。」
「だ…大丈夫だから! 早く行こう!」
「駄目だよ、さっきからずっと辛そうじゃないか。少しだけ休もう…ね?」
「……わかった…じゃあ少しだけ…」
「だ…大丈夫だから! 早く行こう!」
「駄目だよ、さっきからずっと辛そうじゃないか。少しだけ休もう…ね?」
「……わかった…じゃあ少しだけ…」
そう言って、私たちは階段に腰をかけた。
とりあえず座っている限り、足はそんなに痛くないんだけど…私は立ち上がれるか不安だった。
なんだか足に心臓が付いている様にドクドクいっているような気がする…
…その時、藤岡の右足が、ほんの少し…私の左足首をかすめた。
とりあえず座っている限り、足はそんなに痛くないんだけど…私は立ち上がれるか不安だった。
なんだか足に心臓が付いている様にドクドクいっているような気がする…
…その時、藤岡の右足が、ほんの少し…私の左足首をかすめた。
「……イッ…!! …うっ…うぅ……」
「え?! ごめん!踏んだのかな…大丈夫?!」
「……ッ…! …だ……大丈夫…」
「? …千秋ちゃん、少し見せてもらってもいい?」
「え?! ごめん!踏んだのかな…大丈夫?!」
「……ッ…! …だ……大丈夫…」
「? …千秋ちゃん、少し見せてもらってもいい?」
そう言うと藤岡は私の靴と靴下を脱がし始めた。
抵抗しようと思ったが、足が痛くて動けないし…口を開けば悲鳴を上げそうで喋れなかった。
抵抗しようと思ったが、足が痛くて動けないし…口を開けば悲鳴を上げそうで喋れなかった。
「なっ…どうしたの?! 凄く腫れてるじゃないか!」
「だ…大丈夫だ……これくらい…」
「大丈夫って……駄目だよ、今日はもう帰ろう!」
「なっ…これくらい大丈夫だって言ってるだろ!」
「だ…大丈夫だ……これくらい…」
「大丈夫って……駄目だよ、今日はもう帰ろう!」
「なっ…これくらい大丈夫だって言ってるだろ!」
私はそう言って、手すりに掴まり階段を5段程上った。
「いいか藤岡!良く見ておけ!! これくらいの腫れなら…階段だって簡単に降りれるんだ!」
「そんな…駄目だよ! 危ないだ……」
「うるさい! 黙って見てろ! バカ野郎!!」
「そんな…駄目だよ! 危ないだ……」
「うるさい! 黙って見てろ! バカ野郎!!」
そう言って私はそう言って階段を降り始めた。
手すり無しでもコレくらいなら…藤岡と海へ行くためだ…大丈夫!
心ではそう思ったが、実際左足は体を支える事も出来ず下へ転落した…。
しかし私は、その場にいた藤岡にキャッチされて怪我が無くてすんだ。
手すり無しでもコレくらいなら…藤岡と海へ行くためだ…大丈夫!
心ではそう思ったが、実際左足は体を支える事も出来ず下へ転落した…。
しかし私は、その場にいた藤岡にキャッチされて怪我が無くてすんだ。
過程はどうあれ、私は偶然のアクシデントのおかげで藤岡と抱き合う事が出来た。
顔が真っ赤になり、足が痛いのも気にならなくなった。
顔が真っ赤になり、足が痛いのも気にならなくなった。
「あ…あの…藤岡。…これは……その…事故と言うか……」
「何でこんな危ない事するんだ! もし受け止めていなかったら大怪我する所だったんだよ!」
「…え……その…ごめんなさい……。」
「…もういいから靴はいて…家に帰るからね。」
「……はぃ…」
「何でこんな危ない事するんだ! もし受け止めていなかったら大怪我する所だったんだよ!」
「…え……その…ごめんなさい……。」
「…もういいから靴はいて…家に帰るからね。」
「……はぃ…」
正直、藤岡が怒るなんて予想もしていたなった……でも、普通に考えてみればそうか。
散々わがまま言って、大丈夫って嘘をついたり…無茶して怪我しそうになったり……
私は藤岡に迷惑をかけてばかりだった。
散々わがまま言って、大丈夫って嘘をついたり…無茶して怪我しそうになったり……
私は藤岡に迷惑をかけてばかりだった。
せっかく藤岡と仲良くなったのに…これで嫌われちゃったのかな……
そんな事を考えていると悲しい気持ちでいっぱいになり、下をうつむいていた。
そんな事を考えていると悲しい気持ちでいっぱいになり、下をうつむいていた。
(ダメだ…私……今…泣きそうだ……)
私は唇をかみしめ、痛みと泣きそうなのを我慢して靴を履いた。
靴を履き終わる頃には藤岡は、下まで3段ほどの階段を降り、私に背中を向けて立っていた。
水族館で転んだ時は、真っ先に走ってきて手を差し伸べてくれたのに…まぁ自業自得か…
そう思い、私は一人で立ち上がろうとした。
靴を履き終わる頃には藤岡は、下まで3段ほどの階段を降り、私に背中を向けて立っていた。
水族館で転んだ時は、真っ先に走ってきて手を差し伸べてくれたのに…まぁ自業自得か…
そう思い、私は一人で立ち上がろうとした。
すると、その時藤岡がその場にしゃがみこんだ。
「そんな足じゃ歩けないでしょ? …背中に乗って。」
「え…でも……」
「いいから。」
「……はぃ。」
「え…でも……」
「いいから。」
「……はぃ。」
私はこれ以上藤岡に嫌われるのが怖くて、言う事を聞いた。
「落ちると危ないから…しっかり掴まっててね。」
「…ぅん。」
「…ぅん。」
そう言うと、藤岡は駅へ向かって歩き出した。やはり怒っているみたいだ…
その証拠に駅へと向かっている最中、藤岡は一言も話さなかった。
その証拠に駅へと向かっている最中、藤岡は一言も話さなかった。
しばらく歩くと、さすがに藤岡も疲れて来たのか呼吸が荒くなってきた。
「藤岡…疲れたなら私歩くよ…もう大丈夫だ。」
「だ…大丈夫。」
「いや…でも、周りの目もあるし…」
「だ…大丈夫。」
「いや…でも、周りの目もあるし…」
確かに街中で背負われていると、周りの視線は私たちに集中していた。
私は別にそんな事は気にならなかったが、これ以上藤岡に迷惑をかけたくなかった。
すると藤岡は大通りを外れ、細い道へ入った。
私は別にそんな事は気にならなかったが、これ以上藤岡に迷惑をかけたくなかった。
すると藤岡は大通りを外れ、細い道へ入った。
「藤岡? こっちは来た道じゃないんじゃないか?」
「…うん。でもこっちの方が少し遠くなるけど…人目が少ないから…千秋ちゃん恥ずかしくないでしょ?」
「バ…バカッ! それじゃあ余計お前が疲れちゃうだろ!」
「あははっ…大丈夫……これでもサッカーで鍛えてるんだから…!」
「…うん。でもこっちの方が少し遠くなるけど…人目が少ないから…千秋ちゃん恥ずかしくないでしょ?」
「バ…バカッ! それじゃあ余計お前が疲れちゃうだろ!」
「あははっ…大丈夫……これでもサッカーで鍛えてるんだから…!」
そう言うと藤岡は黙々と歩き始めた。
私は自分勝手な事ばかりしたのに…藤岡はいつも私の事を気遣ってくれている。
さっき怒られた時も、藤岡は私の事を気遣って怒ってくれたのかな……
そう思うと、自分が情けなくなった。
私は自分勝手な事ばかりしたのに…藤岡はいつも私の事を気遣ってくれている。
さっき怒られた時も、藤岡は私の事を気遣って怒ってくれたのかな……
そう思うと、自分が情けなくなった。
「藤岡……怒ってない?」
「……そりゃ怒ってるよ。千秋ちゃんがあんな無茶するんだもん。」
「そっか…。……じゃあ私の事嫌いになっちゃったか?」
「……え?」
「……そりゃ怒ってるよ。千秋ちゃんがあんな無茶するんだもん。」
「そっか…。……じゃあ私の事嫌いになっちゃったか?」
「……え?」
藤岡はほんの5秒ほど黙ったまま歩き続けた。
嫌いって言われたらどうしよう……この5秒ほどの時間が、私には恐ろしく長く感じた。
嫌いって言われたらどうしよう……この5秒ほどの時間が、私には恐ろしく長く感じた。
「なんて言うかさ…階段の件は千秋ちゃんが悪いと思うよ?」
「…うん。」
「でもさ、それまでに怪我に気づかなかったオレがもっと悪かったんだ。」
「うん……って、何でそうなるんだよ!」
「…うん。」
「でもさ、それまでに怪我に気づかなかったオレがもっと悪かったんだ。」
「うん……って、何でそうなるんだよ!」
「…だってさ、転んだ時もオレがちゃんと手を握っていれば怪我なんてしなかったはずだし…」
「それは私が…一人で勝手に走って行っちゃったからだろ!」
「…でも、オレ電車乗る前に千秋ちゃんの手を離さないって約束したのに…」
「それは私が…一人で勝手に走って行っちゃったからだろ!」
「…でも、オレ電車乗る前に千秋ちゃんの手を離さないって約束したのに…」
コイツはバカ野郎…いや、大バカ野郎だ。
100%私が悪いのに、ほとんどを自分が悪いと言っている…
本当に呆れる程のバカ野郎だ…。
100%私が悪いのに、ほとんどを自分が悪いと言っている…
本当に呆れる程のバカ野郎だ…。
「…で、結局嫌いになったのか?」
「…いや、嫌いになんてなってないよ。」
「そっか…。」
「…いや、嫌いになんてなってないよ。」
「そっか…。」
(私は…もっと藤岡の事が好きになったよ…)
「……ん? 今何か言った?」
「…う…うるさい! バカ野郎ー! …私は疲れたぞ! 少し休憩だ!!」
「えぇぇ?! 千秋ちゃん歩いてないでしょ?!」
「うるさい、うるさい!! 疲れたんだ! 休憩だー!!」
「…う…うるさい! バカ野郎ー! …私は疲れたぞ! 少し休憩だ!!」
「えぇぇ?! 千秋ちゃん歩いてないでしょ?!」
「うるさい、うるさい!! 疲れたんだ! 休憩だー!!」
私は「藤岡の為に休憩する」と言っても休憩しないので、自分が疲れたと言ってみた。
すると藤岡は近くの段になっている所に腰を掛けた。
私も藤岡の隣に座ろうとすると、藤岡は私を持ち上げ膝の上に置いた。
すると藤岡は近くの段になっている所に腰を掛けた。
私も藤岡の隣に座ろうとすると、藤岡は私を持ち上げ膝の上に置いた。
「わっ…なっ…なにするんだ!」
「何って…ここが千秋ちゃんの席なんでしょ?」
「そうだけど…いつもと違って横向きじゃないか!」
「だって地面に足がついたら痛いでしょ?」
「何って…ここが千秋ちゃんの席なんでしょ?」
「そうだけど…いつもと違って横向きじゃないか!」
「だって地面に足がついたら痛いでしょ?」
この時の藤岡の抱き方は、いつもと違い膝の上で横向きで…俗に言うお姫様抱っこだ。
恥ずかしい…けど、これも私の事を気遣ってくれているのか…?
藤岡はニコニコしながら私を見ている。
恥ずかしい…けど、これも私の事を気遣ってくれているのか…?
藤岡はニコニコしながら私を見ている。
「…どうかいたしましたか? 姫。」
「なっ…! ひ…姫とか言うなー!! ……イタッ!!」
「ほらほら、暴れると傷に響きますよ! 姫!」
「ふ…藤岡~!!」
「なっ…! ひ…姫とか言うなー!! ……イタッ!!」
「ほらほら、暴れると傷に響きますよ! 姫!」
「ふ…藤岡~!!」
どうせカナのバカが姫の話を藤岡に話したんだろう…あのバカ野郎……
…しかしこのまま言い合いをしても、怪我をしている私に勝ち目はなかった。
私は少し考え、藤岡に最も効きそうな作戦を思いついた。
…しかしこのまま言い合いをしても、怪我をしている私に勝ち目はなかった。
私は少し考え、藤岡に最も効きそうな作戦を思いついた。
「…藤岡。」
「なんでございますか?姫。」
「お前、さっきから左手で私の太ももを触っておるが、どう言うつもりだ?」
「え?! こ…これは…この抱き方だから仕方なく…」
「なんでございますか?姫。」
「お前、さっきから左手で私の太ももを触っておるが、どう言うつもりだ?」
「え?! こ…これは…この抱き方だから仕方なく…」
やはり効き目は抜群だ。これは良い…私はさらに続けた。
「そうか、この抱き方だから仕方なく…右手で私の胸を触っておったのか。」
「え?! ご…ごめん! 当たってたなんて気づかなくて…その……」
「気付かなくて? …そんな事を言って太ももや胸を…私の体を触って弄んでおったのか!!」
「そ…そんなぁ~! もう許してよ千秋ちゃん。オレの負けだよ…」
「アハハハハ! ワラワをからかおうとするから、こうなるのじゃ!」
「え?! ご…ごめん! 当たってたなんて気づかなくて…その……」
「気付かなくて? …そんな事を言って太ももや胸を…私の体を触って弄んでおったのか!!」
「そ…そんなぁ~! もう許してよ千秋ちゃん。オレの負けだよ…」
「アハハハハ! ワラワをからかおうとするから、こうなるのじゃ!」
さっきまでの暗い気持も吹っ飛び、私と藤岡はしばらく笑い続けていた。
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