―起―
ありふれたいつもの日常。
夏奈、千秋、冬馬、藤岡の四人は、リビングでテレビを観ながらまったりと過ごしていた。
そんないつもの場所で、事件は始まった。
夏奈、千秋、冬馬、藤岡の四人は、リビングでテレビを観ながらまったりと過ごしていた。
そんないつもの場所で、事件は始まった。
藤岡
「南、ちょっとトイレ借りるよ」
夏奈 「おー、ちゃんと返せよー」
藤岡はトイレに行こうと立ち上がった。
藤岡 「痛っ」
急に痛みを感じて、左足を手でおさえた。
千秋 「藤岡、どおした?」
藤岡 「ちょっと左足が痛くてね。でも大丈夫だよ」
大丈夫と言いつつも、やや左足を引きずりながらリビングを出ていった。
夏奈 「なんだ藤岡、怪我でもしたのか? だらしのないヤツだな~」
千秋 「おい、カナっ」
呑気な言葉を口にした夏奈を、千秋はギロッと睨みつける。
千秋 「藤岡の左足、もしかしたらお前のせいかもしれないんだぞ」
夏奈 「何言ってるんだよ、私は何もしてないぞ」
千秋 「思い出せよ、あの時のことを」
夏奈 「あの時? あの時ってどの時だ?」
千秋 「藤岡から恋文をもらった時だよ」
冬馬 「ホントかそれ!? カナ、藤岡からラブレターもらったことあるのか!」
夏奈 「いやんっ、ウに濁点でlove letterなんて恥ずかしい!」
冬馬 「いや、ヴとは言ってないから」
夏奈 「で、その時と今この時に何の関係があるんだよ?」
千秋 「もっとよく思い出せ。そのラブレターをもらった後、お前は藤岡に何をした?」
夏奈 「え? あー……蹴ったね」
千秋 「どこを?」
夏奈 「黄金の右足を封じるために、左足を…」
千秋 「蹴ったんだな」
夏奈 「うん、蹴ったけど…」
千秋 「そして今さっき、藤岡は左足を痛がっていた」
夏奈 「…まさか、藤岡の左足の痛みの原因は、私だと?!」
千秋 「そういうことだ!」
夏奈 「そ、そんなまさか…」
千秋に指摘されて、夏奈の表情が一気に曇った。
夏奈 「でも、蹴ったのってけっこう前のことだし…」
千秋 「蹴られたショックが今になって症状に現れたのかもしれないぞ」
冬馬 「ちょっと待てよ、左足って…軸足を蹴ったのか!?」
夏奈 「うん、まあ…チアキに教えてもらったとこなんだけど」
冬馬 「なんてことをするんだよ!!」
冬馬の怒りの混じった声に、夏奈はビクッと身を震わせた。
冬馬 「サッカー選手にとって軸足がどれだけ大切なものかわかんなかったのかよ!!」
夏奈 「ご、ごめん。サッカーあんまり詳しくなかったから…」
何も言い返すことができず、シュン…と縮こまる夏奈。
冬馬 「もしも深刻な怪我だったら、大変だぞ!」
千秋 「いや、もう大変かもしれない」
夏奈 「もうって…」
千秋 「藤岡は足を引きずっていた。すでに致命傷で、いずれ二度とサッカーが出来なくなってしまう可能性がある」
夏奈 「二度とサッカーが出来ない体に?! 球蹴り番長の威厳も何もかもゼロに…」
千秋 「ゼロじゃない、無だよ。藤岡の人生のこれまで、そしてこれからも全て水の泡になるんだよ!」
夏奈 「水の泡っ、私のせいで…!」
驚愕の事実に、夏奈は絶句するのだった。
冬馬 「…なあチアキ、それ本当かよ?」
千秋 「いや、色々と誇張した。これくらい言ってやれば、カナも少しは反省して態度を改めるだろうと思ってな」
冬馬 「なるほど、そんな思惑があったのか」
千秋 「これで少しは大人しくなってくれるだろう」
夏奈が絶望する隣で堂々と話す二人。
夏奈 「はああ…そんな…」
幸か不幸か、夏奈には聞こえていなかった。
夏奈 「私に…私が藤岡にしてやれることは…」
夏奈 「おー、ちゃんと返せよー」
藤岡はトイレに行こうと立ち上がった。
藤岡 「痛っ」
急に痛みを感じて、左足を手でおさえた。
千秋 「藤岡、どおした?」
藤岡 「ちょっと左足が痛くてね。でも大丈夫だよ」
大丈夫と言いつつも、やや左足を引きずりながらリビングを出ていった。
夏奈 「なんだ藤岡、怪我でもしたのか? だらしのないヤツだな~」
千秋 「おい、カナっ」
呑気な言葉を口にした夏奈を、千秋はギロッと睨みつける。
千秋 「藤岡の左足、もしかしたらお前のせいかもしれないんだぞ」
夏奈 「何言ってるんだよ、私は何もしてないぞ」
千秋 「思い出せよ、あの時のことを」
夏奈 「あの時? あの時ってどの時だ?」
千秋 「藤岡から恋文をもらった時だよ」
冬馬 「ホントかそれ!? カナ、藤岡からラブレターもらったことあるのか!」
夏奈 「いやんっ、ウに濁点でlove letterなんて恥ずかしい!」
冬馬 「いや、ヴとは言ってないから」
夏奈 「で、その時と今この時に何の関係があるんだよ?」
千秋 「もっとよく思い出せ。そのラブレターをもらった後、お前は藤岡に何をした?」
夏奈 「え? あー……蹴ったね」
千秋 「どこを?」
夏奈 「黄金の右足を封じるために、左足を…」
千秋 「蹴ったんだな」
夏奈 「うん、蹴ったけど…」
千秋 「そして今さっき、藤岡は左足を痛がっていた」
夏奈 「…まさか、藤岡の左足の痛みの原因は、私だと?!」
千秋 「そういうことだ!」
夏奈 「そ、そんなまさか…」
千秋に指摘されて、夏奈の表情が一気に曇った。
夏奈 「でも、蹴ったのってけっこう前のことだし…」
千秋 「蹴られたショックが今になって症状に現れたのかもしれないぞ」
冬馬 「ちょっと待てよ、左足って…軸足を蹴ったのか!?」
夏奈 「うん、まあ…チアキに教えてもらったとこなんだけど」
冬馬 「なんてことをするんだよ!!」
冬馬の怒りの混じった声に、夏奈はビクッと身を震わせた。
冬馬 「サッカー選手にとって軸足がどれだけ大切なものかわかんなかったのかよ!!」
夏奈 「ご、ごめん。サッカーあんまり詳しくなかったから…」
何も言い返すことができず、シュン…と縮こまる夏奈。
冬馬 「もしも深刻な怪我だったら、大変だぞ!」
千秋 「いや、もう大変かもしれない」
夏奈 「もうって…」
千秋 「藤岡は足を引きずっていた。すでに致命傷で、いずれ二度とサッカーが出来なくなってしまう可能性がある」
夏奈 「二度とサッカーが出来ない体に?! 球蹴り番長の威厳も何もかもゼロに…」
千秋 「ゼロじゃない、無だよ。藤岡の人生のこれまで、そしてこれからも全て水の泡になるんだよ!」
夏奈 「水の泡っ、私のせいで…!」
驚愕の事実に、夏奈は絶句するのだった。
冬馬 「…なあチアキ、それ本当かよ?」
千秋 「いや、色々と誇張した。これくらい言ってやれば、カナも少しは反省して態度を改めるだろうと思ってな」
冬馬 「なるほど、そんな思惑があったのか」
千秋 「これで少しは大人しくなってくれるだろう」
夏奈が絶望する隣で堂々と話す二人。
夏奈 「はああ…そんな…」
幸か不幸か、夏奈には聞こえていなかった。
夏奈 「私に…私が藤岡にしてやれることは…」
藤岡
「いたた…、昨日の練習で張り切り過ぎて左足が筋肉痛だ。でもこのくらいなら明日には治るかな」
藤岡は足をさすりながら、リビングの扉を開けた。
夏奈 「藤岡!」
藤岡 「え?」
扉を開けた先には、正座した夏奈の姿があった。
夏奈 「ごめんなさい!」
藤岡 「ええっ、なんで土下座してるの!?」
深々と頭を下げる夏奈に驚く藤岡。
夏奈 「ああっ、立ってちゃ駄目! 足痛めちゃうから!」
慌てて藤岡を座らせようとする。
藤岡 「えっ、なんで?」
夏奈 「いいから! ほらチアキどいてっ、藤岡座れない!!」
千秋 「おいカナっ、そこまでする必要ないよっ」
夏奈 「いや待てよ、普通に座っても足に負担が掛かるかも…」
藤岡 「あの、南?」
夏奈 「そうだっ、寝るんだ藤岡! 私が膝貸してあげるから!」
藤岡 「えええ!?」
膝を貸すということは膝枕ということか。
いくらなんでもそれは恥ずかしくてできない。
藤岡 「いやっ、そこまでしなくても…」
夏奈 「いいからっ、どうぞ自由に使って!」
藤岡 「ほ、本当にいいからー!!」
夏奈 「あっ、走っちゃ足に悪いからー!!」
思わず逃げだした藤岡。
それを追いかける夏奈。
『おじゃましましたーー!!』
『送っていくからーー!!』
玄関の開く音と閉まる音の聞こえたのち、南家はやっと静かになった。
冬馬 「全然大人しくなってなかったな」
千秋 「はぁ…騒がしい姉を持つと苦労するよ」
藤岡は足をさすりながら、リビングの扉を開けた。
夏奈 「藤岡!」
藤岡 「え?」
扉を開けた先には、正座した夏奈の姿があった。
夏奈 「ごめんなさい!」
藤岡 「ええっ、なんで土下座してるの!?」
深々と頭を下げる夏奈に驚く藤岡。
夏奈 「ああっ、立ってちゃ駄目! 足痛めちゃうから!」
慌てて藤岡を座らせようとする。
藤岡 「えっ、なんで?」
夏奈 「いいから! ほらチアキどいてっ、藤岡座れない!!」
千秋 「おいカナっ、そこまでする必要ないよっ」
夏奈 「いや待てよ、普通に座っても足に負担が掛かるかも…」
藤岡 「あの、南?」
夏奈 「そうだっ、寝るんだ藤岡! 私が膝貸してあげるから!」
藤岡 「えええ!?」
膝を貸すということは膝枕ということか。
いくらなんでもそれは恥ずかしくてできない。
藤岡 「いやっ、そこまでしなくても…」
夏奈 「いいからっ、どうぞ自由に使って!」
藤岡 「ほ、本当にいいからー!!」
夏奈 「あっ、走っちゃ足に悪いからー!!」
思わず逃げだした藤岡。
それを追いかける夏奈。
『おじゃましましたーー!!』
『送っていくからーー!!』
玄関の開く音と閉まる音の聞こえたのち、南家はやっと静かになった。
冬馬 「全然大人しくなってなかったな」
千秋 「はぁ…騒がしい姉を持つと苦労するよ」
この時はまだ、いつものことだからまあいいか…と千秋は思っていた。
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