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「…………」
「…………」
「…………」
しばし無言で互いの呼吸と心音を堪能していると、窓の外でびゅうと風が強く吹き、部屋の窓をガタガタと揺らした。
その音で夢見心地になっていたカナが我に返る。
その音で夢見心地になっていたカナが我に返る。
「……は、はは、えっと、も、もう十分身体は温まったよな! そ、そろそろ……」
いよいよ恥ずかしさに耐えられなくなり、カナが離脱を図る。
しかし、膝にも腰にも力が入らず、横倒しになり、それを咄嗟に支えようとした藤岡も道連れになる。
しかし、膝にも腰にも力が入らず、横倒しになり、それを咄嗟に支えようとした藤岡も道連れになる。
「わっ」
「うわっ」
「うわっ」
仰向けに倒れこんだカナに、藤岡が覆いかぶさる。
「――あっ、」
「わっ、ご、ごめ、」
「う、うん、い、いいけど」
「わっ、ご、ごめ、」
「う、うん、い、いいけど」
カナはなんだかとても久しぶりに藤岡の顔を見た気がした。
まだこの部屋に入ってから数分しか経ってない気がするが、段々と時間の感覚が曖昧になってくる。
同様の思いは藤岡にも訪れていた。そして思いが通じ合ってから見るカナの顔は一段と魅力的に見える。
まだこの部屋に入ってから数分しか経ってない気がするが、段々と時間の感覚が曖昧になってくる。
同様の思いは藤岡にも訪れていた。そして思いが通じ合ってから見るカナの顔は一段と魅力的に見える。
視線が交錯する。藤岡が口を開いた。
「もうちょっと……温まろうか?」
「……うん」
「……うん」
しおらしくカナが答える。
恥ずかしさで逃げ出したい気持ちと、もっと藤岡を感じたいという気持ちが拮抗する。
恥ずかしさで逃げ出したい気持ちと、もっと藤岡を感じたいという気持ちが拮抗する。
「ふ、布団を」
「わ、わかった」
「わ、わかった」
藤岡が足元の布団を引っ張りあげ、二人で被る。
枕は一つしかないので、距離が近い。というか、ほぼ抱き合う形になる。
枕は一つしかないので、距離が近い。というか、ほぼ抱き合う形になる。
「ふ、藤岡」
「な、なに?」
「お前、すご、すごい顔真っ赤だぞ。大丈夫か?」
「カ、カナだって」
「わわ、私はいいんだ」
「な、なに?」
「お前、すご、すごい顔真っ赤だぞ。大丈夫か?」
「カ、カナだって」
「わわ、私はいいんだ」
カナは顔を隠すようにして藤岡の首の辺りに額を当てる。
そんな仕草に藤岡は心を奪われ、つい抱きしめてしまう。
そんな仕草に藤岡は心を奪われ、つい抱きしめてしまう。
「ひゃっ」
「カ、カナ」
「ふ、ふ、ふ、ふじ、」
「い、イヤだった?」
「…………」
「カ、カナ」
「ふ、ふ、ふ、ふじ、」
「い、イヤだった?」
「…………」
カナは所在なさげだった手をおずおずと藤岡の背中にまわした。
「……もっと強くして」
自分で言っておいて、恥ずかしくて沸騰しそうになる。
藤岡はというと、もう耳まで真っ赤にして、興奮のあまり唇がぷるぷるしていた。
藤岡はというと、もう耳まで真っ赤にして、興奮のあまり唇がぷるぷるしていた。
「……ね、ぎゅって」
「う、うん」
「う、うん」
言われたとおり強く抱きしめると、カナの口から切なげな吐息がわずかに漏れ、藤岡の脳髄を刺激した。
「カナ」
名前を呼ばれただけで、胸が一杯になる。
「うん」
「好きだよ」
「好きだよ」
そう口にするだけで、自分の中でカナの存在が大きくなっていくのを藤岡は感じた。
そう言われただけで、胸がぽかぽかしてくるのをカナは感じた。
そう言われただけで、胸がぽかぽかしてくるのをカナは感じた。
「……私も、好き、かな」
そう口にすると、曖昧だった自分の心が形づくられていくのをカナは感じた。
そう言われると、カナが益々愛おしくなるのを藤岡は感じた。
そう言われると、カナが益々愛おしくなるのを藤岡は感じた。
しばらくの間、チッ、チッ、という時計の針の音だけが部屋の中に響く。
しかし、二人は互いの脈動しか耳に入ってこない。
しかし、二人は互いの脈動しか耳に入ってこない。
と、突如カナに沸く悪戯心。目の前の藤岡の首筋を軽く噛んでみた。
すると、藤岡が「ひゃん」と女のようなかわいい声を上げたので、カナは思わず笑ってしまった。
すると、藤岡が「ひゃん」と女のようなかわいい声を上げたので、カナは思わず笑ってしまった。
「――っく、く、く」
「……っ! このぉ」
「……っ! このぉ」
気恥ずかしさを紛らわすように、藤岡は反撃としてカナの耳たぶを軽く噛んだ。
「ぁんっ!」
思わず甲高い声を上げ、自分の声にびっくりして口を押さえるカナ。
真っ赤だった顔をさらに染め上げて、カナは黙り込んでしまう。
声を上げさせた張本人である藤岡も、初めて聞く声音に驚いて赤くなった。
真っ赤だった顔をさらに染め上げて、カナは黙り込んでしまう。
声を上げさせた張本人である藤岡も、初めて聞く声音に驚いて赤くなった。
「……かわいい」
「……!」
「……!」
カナはさらに身を縮め、顔を隠した。
「カナ? 隠れないでよ」
「い、いやだ。恥ずかしい」
「い、いやだ。恥ずかしい」
顔に手を当てたままイヤイヤをする。
「顔を見せて」
「イヤ。意地悪するんだもん」
「意地悪なんて……」
「か、かわいいなんて、バカにして……」
「バカになんかしてない」
「じゃあ、なんで」
「本心からそう思ったんだよ」
「イヤ。意地悪するんだもん」
「意地悪なんて……」
「か、かわいいなんて、バカにして……」
「バカになんかしてない」
「じゃあ、なんで」
「本心からそう思ったんだよ」
ふひぃー、と言う声を上げてカナは益々小さくなった。
「カナ」
「イヤだ。嫌いだ、お前なんて」
「カナはかわいいよ」
「わ、私みたいな不細工を捕まえて、お前は」
「何で卑屈になってるのさ……」
「ハルカとかに比べたら、ガサツだし、女の子らしくないし」
「カナは女の子だよ」
「そ、それに……」
「あーもう!」
「イヤだ。嫌いだ、お前なんて」
「カナはかわいいよ」
「わ、私みたいな不細工を捕まえて、お前は」
「何で卑屈になってるのさ……」
「ハルカとかに比べたら、ガサツだし、女の子らしくないし」
「カナは女の子だよ」
「そ、それに……」
「あーもう!」
少し乱暴に、藤岡はカナの手首を掴んで手を顔の前からどかした。
「ふ、ふじ、……んむっ」
そして、その唇を重ねた。
暴れようとしたカナだったが、その瞬間大人しくなり、カチンコチンに身体が固まってしまった。
暴れようとしたカナだったが、その瞬間大人しくなり、カチンコチンに身体が固まってしまった。
重なっていたのはほんの数秒だったろうが、カナにとっては永遠にも感じられた。
唇が離れる。なんだかとても名残惜しい。
唇が離れる。なんだかとても名残惜しい。
「落ち着いた?」
「……うん……」
「……うん……」
照れと抗議の視線が藤岡に突き刺さる。
「お、お前、いきなり、なんの、断りもなく」
「うん」
「その、もうちょっと雰囲気とかだな」
「うん、ごめん」
「……ダメだ。許さない」
「……どうしたら、許してくれる?」
「…………」
「うん」
「その、もうちょっと雰囲気とかだな」
「うん、ごめん」
「……ダメだ。許さない」
「……どうしたら、許してくれる?」
「…………」
カナは目を逸らして、
「…………。……や、やり直しを」
「うん」
「うん」
ぐっ、とカナの肩を掴む。カナがびくりと震えたあと、視線が交錯し、唇が重なった。
やわらかい。こんなに気持ちのいい感触があったのかと感激する。
しかし、二人とも気分が昂揚するあまり、身体がカタカタと震えている。
やわらかい。こんなに気持ちのいい感触があったのかと感激する。
しかし、二人とも気分が昂揚するあまり、身体がカタカタと震えている。
「ん、ふ、ふ、む」
「ん、ん、ん」
「ん、ん、ん」
興奮でじっとしていられない。今にも暴れだしそうなカナを、藤岡が制する。しかし、その腕も震えている。
「ぷはっ……」
唇を離し、ほぅ……とため息をつく。
「…………」
「…………」
「や、やり直しだ」
「う、うん」
「…………」
「や、やり直しだ」
「う、うん」
やり直しは何度も何度も繰り返された。まるで飽きが来ない。
二人とも経験不足により、息継ぎが上手くできず、苦しくなってすぐに離してしまう。
だが、何度も唇を離し、またやり直し、と繰り返していくうちに次第にコツを掴んでゆく。
二人とも経験不足により、息継ぎが上手くできず、苦しくなってすぐに離してしまう。
だが、何度も唇を離し、またやり直し、と繰り返していくうちに次第にコツを掴んでゆく。
「ちゅ、んむ、ちゅぅ……」
「は、ちゅ、ん、ふぅ……」
「は、ちゅ、ん、ふぅ……」
唇を重ねるたびに、少しずつ意識がぼんやりとし始める。
息継ぎをするたびに現実に少し意識が戻り、重なるとまた夢の世界に引きずりこまれる。
息継ぎをするたびに現実に少し意識が戻り、重なるとまた夢の世界に引きずりこまれる。
「ん、はぁっ、はむ、ちゅ……」
「ん、ふ、ふ、れろ、はっ……」
「ん、ふ、ふ、れろ、はっ……」
段々と自分が藤岡の中に溶けていくような感覚に襲われ、カナは心地よさと不安が混じった感情を抱いた。
段々とカナという沼に溺れて沈んでいきそうな感覚に囚われ、藤岡は昂揚と焦燥が混じった感情を抱いた。
段々とカナという沼に溺れて沈んでいきそうな感覚に囚われ、藤岡は昂揚と焦燥が混じった感情を抱いた。
自分のなかに湧き出た負の感情を打ち消そうとして激しく唇を吸い、嬲り、舐る。
すると、段々と深い悦びにだけ浸っていられるようになり、心地よいので、さらに重なる。
そうしているうちにまた現実と夢が曖昧になり、ふとした瞬間に気づくと、また不安と焦燥に襲われる。
すると、段々と深い悦びにだけ浸っていられるようになり、心地よいので、さらに重なる。
そうしているうちにまた現実と夢が曖昧になり、ふとした瞬間に気づくと、また不安と焦燥に襲われる。
「はぁ……」
少し休憩。部屋の冷えた空気が肺に満たされると、泥のようににごっていた思考が澄んでいく。
藤岡の手がカナの髪を撫でた。
新たな発見。
「――あっ」
唇だけでなく、身体のどこを触られても気持ちがいい。
カナはぴくりと震えたものの、細い嬌声を上げるだけで抵抗はしない。
代わりにカナは藤岡の背中をなでさするように抱きしめた。
カナはぴくりと震えたものの、細い嬌声を上げるだけで抵抗はしない。
代わりにカナは藤岡の背中をなでさするように抱きしめた。
「は……ん、あ、うん……」
髪を撫でられるたびに、カナの背中を微弱な電流が流れる。
首筋をくすぐると、カナはびくりと身体を反らせて嬌声を上げた。
藤岡の手が触れるところすべてがやたらと熱い。まるで自分の身体ではないよう。
首筋をくすぐると、カナはびくりと身体を反らせて嬌声を上げた。
藤岡の手が触れるところすべてがやたらと熱い。まるで自分の身体ではないよう。
「藤岡……」
「カナ、かわいい」
「カナ、かわいい」
ただ一言そう言われただけで、カナの全身に悦びが満たされる。なんて現金なんだろう。
しかし、同時にある疑問が脳裏を掠める。
しかし、同時にある疑問が脳裏を掠める。
「お、お前、もしかして」
「うん?」
「私以外にも、こういうことしてるんじゃないだろうな?」
「うん?」
「私以外にも、こういうことしてるんじゃないだろうな?」
カナの疑惑の視線。
「ええっ!? しないよ」
「だ、だって、あまりにも慣れすぎ……」
「な、慣れてなんか……今も、ずっと、必死だったよ」
「だ、だって、あまりにも慣れすぎ……」
「な、慣れてなんか……今も、ずっと、必死だったよ」
藤岡は慌ててそう言った。その言葉は事実で、藤岡もカナと同様必死で、夢中だっただけである。
しかし、カナにはそれを確かめるすべがないのも事実である。
しかし、カナにはそれを確かめるすべがないのも事実である。
「本当か?」
「本当だよ。俺はずっと、カナだけが好きだったよ」
「本当だよ。俺はずっと、カナだけが好きだったよ」
どき、と心臓が跳ねた。
「や、やめろ。恥ずかしいから」
「やめない。何回でも言わせてもらうよ」
「やめない。何回でも言わせてもらうよ」
藤岡が怒ったような調子になったので、カナは不安になった。
「ふ、藤岡?」
「大体、カナには1回や2回言っても伝わらないって理解させられたからね」
「な、なんの話……」
「ラブレター渡して、直接告白して、もう一回言ってようやく伝わるって、ひどいよ」
「ひどいって、そんな……」
「いーや、カナは男心を弄んだんだ」
「え、えええ」
「大体、カナには1回や2回言っても伝わらないって理解させられたからね」
「な、なんの話……」
「ラブレター渡して、直接告白して、もう一回言ってようやく伝わるって、ひどいよ」
「ひどいって、そんな……」
「いーや、カナは男心を弄んだんだ」
「え、えええ」
藤岡の迫力に、カナは身をよじって逃げようとしたが、覆いかぶさられ、身動きが取れなくなった。
「ひゃ……」
「俺は、カナが好きだ」
「俺は、カナが好きだ」
カナは頭の中が溶かされていくような感覚を味わった。
「ふ、ふじ、」
「カナが好きだ。誰よりも」
「カナが好きだ。誰よりも」
カナは目をつぶって、耳を塞ごうとした。しかし、両手も藤岡の手によって押さえつけられる。
「やーめーてー!」
「元気なカナが好きだ。ずっと隣にいて欲しいと思う」
「ひゃあー!」
「伝わった?」
「つ、伝わった! 伝わったから!」
「本当に? また誤解してない?」
「してない! 確かに伝わりました!」
「良かった」
「元気なカナが好きだ。ずっと隣にいて欲しいと思う」
「ひゃあー!」
「伝わった?」
「つ、伝わった! 伝わったから!」
「本当に? また誤解してない?」
「してない! 確かに伝わりました!」
「良かった」
藤岡が押さえつけていた手を離すと、すかさずカナは藤岡の胸に拳を見舞った。
「ごほっ。痛いよ」
「お、お前、女の子になんてことを……」
「カナが信じてくれないから……」
「…………」
「お、お前、女の子になんてことを……」
「カナが信じてくれないから……」
「…………」
カナが黙って俯いてしまったので、藤岡はしまった、やりすぎたか、と不安になった。
「…………」
「……あの、カ、カナ」
「……あのさ、じゃあ、その……」
「……あの、カ、カナ」
「……あのさ、じゃあ、その……」
ごくりと生唾を飲んで、上目遣いで、
「……さっきの、私の告白は、信じてくれる……?」
藤岡の脳の機能が緊急停止した。
(か、かわいすぎる……!)
ああ、なんという反則なんだろう。女の子は男にとって不公平にできている。
「……し、信じれないっていったら、どうする?」
「…………」
「…………」
カナは抗議の視線を向けた後、言うか言うまいか迷った様子でもじもじしてたが、
「……や、やっぱり、信じてくれるまで、何度も好きって言うしかないね」
藤岡はもうだめだと思った。結局、先にイカレてしまったほうの負けなのである。
「カナ!」
「ひゃっ」
「ひゃっ」
藤岡はカナを抱きすくめ、唇を奪った。
「――んぅーッ!」
カナははじめ怒って離れようとしたが、抵抗むなしく、力では到底敵わなかった。
そうしているうちに唇と身体の触れているところから段々と力が抜けていき、脳髄が悦びに浸蝕されていく。
そうしているうちに唇と身体の触れているところから段々と力が抜けていき、脳髄が悦びに浸蝕されていく。
「……はぁ」
「ふ……あ……ん」
「ふ……あ……ん」
唇が離れる。藤岡は満足といった風に晴れやかな顔。対照的にカナは熱病にかかったかのような状態。
「お、お前……普段、ふにゃふにゃしてる、クセに、妙に強気だな」
「ふにゃふにゃって……」
「ナヨナヨでも、いいよ。……でも、好き」
「ふにゃふにゃって……」
「ナヨナヨでも、いいよ。……でも、好き」
唐突にカナが愛を囁いたので、藤岡は一瞬理解できず、次の瞬間心臓がどきーんと高鳴った。
言った本人も唐突すぎたことを自覚しているようで、真っ赤になった。
言った本人も唐突すぎたことを自覚しているようで、真っ赤になった。
「ど、ど、ど、どうしたの、いきなり」
「い、いや、その、念を押して言っといたほうがいいかなあ、と……」
「い、いや、その、念を押して言っといたほうがいいかなあ、と……」
藤岡はキョトンとした顔をし、次第に笑い始めた。
「わ、笑わないで……笑うなっ」
「ご、ごめん……くくく。いや、ホントごめん。もう笑わないよ」
「ご、ごめん……くくく。いや、ホントごめん。もう笑わないよ」
顔を上げ、カナの顔を見つめる。しかしはっきりと見えない。
そこで藤岡は初めて、薄暗かった部屋がいつの間にか完全に真っ暗になっていることに気づいた。
そこで藤岡は初めて、薄暗かった部屋がいつの間にか完全に真っ暗になっていることに気づいた。
「もう真っ暗だ」
「え? ……あ、ホントだ」
「え? ……あ、ホントだ」
カナも今気づいたようだ。
二人とも夢中になって絡み合っていたので、日が落ちたことに気づかなかったのである。
二人とも夢中になって絡み合っていたので、日が落ちたことに気づかなかったのである。
「外の風もいつの間にか弱まってるね」
「そうだ、停電は直ったかな」
「そうだ、停電は直ったかな」
カナが立ち上がり、照明のスイッチを入れた。部屋に光が満たされる。
蛍光灯の白い光が目を焼き、二人は痛みから目を瞑った。
蛍光灯の白い光が目を焼き、二人は痛みから目を瞑った。
「うわっ」
「わっ、まぶしい」
「わっ、まぶしい」
目をつぶった藤岡の胸に、カナがダイブした。
「げほっ! どうしたの」
「布団から出たらすげえ寒かった。もっかい入れてくれ」
「布団から出たらすげえ寒かった。もっかい入れてくれ」
もぞもぞと潜り込んでくる。その感触に藤岡は大いに喜んだが、ポーカーフェイスをなんとか保った。
次第に痛みが引いてきたので目を開けた藤岡が見たのは、
すでに目を開けて藤岡の顔をじっと見つめてくるカナのアップだった。
すでに目を開けて藤岡の顔をじっと見つめてくるカナのアップだった。
「ど、どうしたの」
「…………」
「…………」
藤岡がそう言うと、カナは目をそらしてもじもじとした。
なんだ? 藤岡が不思議に思っていると、
なんだ? 藤岡が不思議に思っていると、
「……そ、それで、さっきの私の言葉は信じてくれた?」
――! ああ、そうか……
藤岡は自分の気の利かなさを反省した。
藤岡は自分の気の利かなさを反省した。
「うん、信じるよ」
「す、好き」
「す、好き」
ダメ押しをするかのようにまた言う。
「わ、わかったって」
「私は藤岡が好きだよ、うん、好き」
「私は藤岡が好きだよ、うん、好き」
先ほどの仕返しのつもりなのだろうか。しかしどう見ても諸刃の剣である。
事実、攻撃(?)しているはずのカナのほうが真っ赤になっている。
カナの肩を抱き寄せ、藤岡も負けじと言い返す。
事実、攻撃(?)しているはずのカナのほうが真っ赤になっている。
カナの肩を抱き寄せ、藤岡も負けじと言い返す。
「お、俺もカナが好きだよ」
「わわ、私も藤岡が好きだ」
「…………」
「…………」
「カ、カ、カナのいつも元気で、みんなを明るくさせるところが好きだよ」
「ふ、藤岡のやさしくて、いつもワガママを許してくれるところが好きだ」
「…………」
「…………」
「なんか、無理に言葉にしようとすると、嘘っぽくなるね」
「……そうだな」
「わわ、私も藤岡が好きだ」
「…………」
「…………」
「カ、カ、カナのいつも元気で、みんなを明るくさせるところが好きだよ」
「ふ、藤岡のやさしくて、いつもワガママを許してくれるところが好きだ」
「…………」
「…………」
「なんか、無理に言葉にしようとすると、嘘っぽくなるね」
「……そうだな」
なので、無言で抱き締めあった。
「…………」
「……うん……これくらいでいいね」
「――ねえカナ。さっきは冗談で信じれなかったら、なんて言ったけど……」
「うん……」
「信じてるから」
「うん。私も、信じるよ」
「……好き」
「私も……」
「……うん……これくらいでいいね」
「――ねえカナ。さっきは冗談で信じれなかったら、なんて言ったけど……」
「うん……」
「信じてるから」
「うん。私も、信じるよ」
「……好き」
「私も……」
気持ちを確かめるように、本日何度目かのキス。
唇が重なると、今までもやもやしてた部分が晴れていくような気がした。
唇が重なると、今までもやもやしてた部分が晴れていくような気がした。
カナはよし、と気合を入れて、ベッドから出た。
「さあ、停電も直ったし、リビングに戻ろう」
「うん」
「それにしてもハルカたち遅いな。どこほっつき歩いているんだ」
「うん」
「それにしてもハルカたち遅いな。どこほっつき歩いているんだ」
そんなことを話していると、玄関から扉を開ける音がした。
『ただいまー。あれ、なんで真っ暗にしてるの?』
『ただいまー』
『ただいまー』
がさがさと買い物袋がすれる音を伴ったハルカとチアキの声がしたので、
二人は家族を迎えるために玄関へと向かった。
二人は家族を迎えるために玄関へと向かった。
おわり
- すばらしいです -- 名無しさん (2010-04-24 02:20:08)
- いいね -- 名無しさん (2010-07-08 18:47:06)
- 幸せだ… -- 名無し (2011-07-03 12:34:58)
- いいなぁー -- 名無しさん (2011-07-11 20:55:04)
- ふじかなで一番好きかも -- ぴん (2012-09-16 01:35:08)