「あっ、お買い物……もうちょっと、追い込みたいのに」
ハルカが参考書の山に埋もれて言った。
「私がいきましょうか、ハルカ姉様」
「うん、今書くから、お願い。帰って来たら作るから」
チアキはメモを待つ間、ちょっと外を眺めてみた。
「白い物がチラチラ……いや、わさわさと」
ハルカが参考書の山に埋もれて言った。
「私がいきましょうか、ハルカ姉様」
「うん、今書くから、お願い。帰って来たら作るから」
チアキはメモを待つ間、ちょっと外を眺めてみた。
「白い物がチラチラ……いや、わさわさと」
「参ったなあ、傘もってきてないや」
中学校の下駄箱で、カナが嘆いていた。今朝は晴れてたはずなのに。
「送ろうか?」
「お、藤岡。いいところに湧いた。傘貸してくれ」
声の方を見ると、すぐ外で藤岡が傘を開いてたって居た。
「いや……だから、送ろうか?」
カナは肩をすくめる藤岡を「ふ~ん」と眺め、「しょうがない、たのむよ」と答えた。そして靴を履き替え藤岡の隣りへ。
「遠回りにならないか?」
「みなみんちなら、しょっちゅうおじゃましてるから」
「また夕飯にありつこうって魂胆だな」
「いや、今日はいいよ。塾も有るし」
二人はたわい無ないことを話しながら、学校を後にした。
中学校の下駄箱で、カナが嘆いていた。今朝は晴れてたはずなのに。
「送ろうか?」
「お、藤岡。いいところに湧いた。傘貸してくれ」
声の方を見ると、すぐ外で藤岡が傘を開いてたって居た。
「いや……だから、送ろうか?」
カナは肩をすくめる藤岡を「ふ~ん」と眺め、「しょうがない、たのむよ」と答えた。そして靴を履き替え藤岡の隣りへ。
「遠回りにならないか?」
「みなみんちなら、しょっちゅうおじゃましてるから」
「また夕飯にありつこうって魂胆だな」
「いや、今日はいいよ。塾も有るし」
二人はたわい無ないことを話しながら、学校を後にした。
「じゃあチアキ、お願いね。有希振って来たから、気をつけてね」
「はーい」
メモを受け取り、玄関へ。
長靴を履いて傘を持ち、戸を開く。
「おお、銀世界……」
「はーい」
メモを受け取り、玄関へ。
長靴を履いて傘を持ち、戸を開く。
「おお、銀世界……」
「なあ藤岡。これってアイアイ傘だよな」
訊かれた藤岡は、暫く「ん~」と悩んだ後「そうだね」と、苦笑した。
「そういや、高校決まったんだってな、藤岡。で、どこ?」
「春香さんと同じ所」
「姉はもうすぐ卒業だ。残念か?」
藤岡はすこし俯き「ちょっとね」とだけ言った。
カナが「ふ~ん、モテるなハルカは」と傘のホネが揺れるのを眺めた。
そしてふと横に視線をずらすと、藤岡の顔が赤くなってるのに気がついた。
「おい、風邪引いたか? この寒さだしなあ。無理しないで、真っすぐ帰れよ」
「平気だよ。それに、もうここまで来ちゃった」
気がつけば、マンション近くの川原を歩いていた。
「なあカナ、もうすぐ卒業だし……」
もう、こんな風にカナと一緒にいられる時間は、取れなくなるな。
藤岡はそう思いつつ、大きく息を吸った。
「あの、ほら、もう一度言っておきたいことが」
「なんだ、急に改まって」
「スキ……」
藤岡が言いかけた所で「のわっ!」と盛大にカナが滑った。
咄嗟に傘が放り出され、背中を抱きかかえるようにして、その体が支えられた。
「あははっ、たしかに、スキだらけだ。サンキュ」
立ち直って吹っ飛んだ傘を拾いに行こうとしたカナだが、支えた腕が巻き付いてて手が届かなかった。
「ふ、じ、おか?」
「あの、卒業しても、ずっと仲良くしてくれるかな?」
「あ、ああもちろんだとも。どうしたんだ、さっきから」
「ほんと?」
「ほんとだって。だからその手……んーーーーー!?」
訊かれた藤岡は、暫く「ん~」と悩んだ後「そうだね」と、苦笑した。
「そういや、高校決まったんだってな、藤岡。で、どこ?」
「春香さんと同じ所」
「姉はもうすぐ卒業だ。残念か?」
藤岡はすこし俯き「ちょっとね」とだけ言った。
カナが「ふ~ん、モテるなハルカは」と傘のホネが揺れるのを眺めた。
そしてふと横に視線をずらすと、藤岡の顔が赤くなってるのに気がついた。
「おい、風邪引いたか? この寒さだしなあ。無理しないで、真っすぐ帰れよ」
「平気だよ。それに、もうここまで来ちゃった」
気がつけば、マンション近くの川原を歩いていた。
「なあカナ、もうすぐ卒業だし……」
もう、こんな風にカナと一緒にいられる時間は、取れなくなるな。
藤岡はそう思いつつ、大きく息を吸った。
「あの、ほら、もう一度言っておきたいことが」
「なんだ、急に改まって」
「スキ……」
藤岡が言いかけた所で「のわっ!」と盛大にカナが滑った。
咄嗟に傘が放り出され、背中を抱きかかえるようにして、その体が支えられた。
「あははっ、たしかに、スキだらけだ。サンキュ」
立ち直って吹っ飛んだ傘を拾いに行こうとしたカナだが、支えた腕が巻き付いてて手が届かなかった。
「ふ、じ、おか?」
「あの、卒業しても、ずっと仲良くしてくれるかな?」
「あ、ああもちろんだとも。どうしたんだ、さっきから」
「ほんと?」
「ほんとだって。だからその手……んーーーーー!?」
チアキは川原の道をスーパーに向かって歩いていた。
「あ、カナだ。藤岡もいる……なんだ、どっちか傘わすれたのか」
雪で視界が悪い中、身内だけが辛うじて判別できる距離でその姿を見付けた。
「あ~~、カナったらコケてるし。あのバカ野郎、藤岡が居なかったら雪まみれじゃないか。あ~、なんか怒られてるみたいだし」
「あ、カナだ。藤岡もいる……なんだ、どっちか傘わすれたのか」
雪で視界が悪い中、身内だけが辛うじて判別できる距離でその姿を見付けた。
「あ~~、カナったらコケてるし。あのバカ野郎、藤岡が居なかったら雪まみれじゃないか。あ~、なんか怒られてるみたいだし」
「……今のは、なななななななな、なんだ? 顔がその、異様に近かったけど」
この寒い中、ほんの数秒の間、唇だけが暖かかった。
「あ、あの……まだ、仲良くしてくれる、って気、ある?」
藤岡は、試合の後よりも息切れしながら、とぎれとぎれに訊いた。
「ほほほら、もちろん。あたしだってほら、藤岡のこと、キライじゃないし」
カナはころげるようにして傘を拾った。
「ところでそこの二人」
にょっきり。
傘を持ち、藤岡のもとに戻るカナの背後から、チアキの声がした。
「おかしなことを、していなかったか?」
硬直する二人。もちろん、チアキではない。
「なななな、なんにもしてないよなー、藤岡」
「カナがコケただけさ。あは、あは、あは、はゴホッ」
「顔が赤いな。風邪か? カナもだ。伝染したか」
「いやこれは、そんなんじゃない。チアキもほら、赤いぞ。寒いからsだ」
カナがあたふたしながら言い訳する。
「ならいいけど。それじゃ、私は買い物に行って来る」
チアキは少し首を傾げつつ、去って行った。
この寒い中、ほんの数秒の間、唇だけが暖かかった。
「あ、あの……まだ、仲良くしてくれる、って気、ある?」
藤岡は、試合の後よりも息切れしながら、とぎれとぎれに訊いた。
「ほほほら、もちろん。あたしだってほら、藤岡のこと、キライじゃないし」
カナはころげるようにして傘を拾った。
「ところでそこの二人」
にょっきり。
傘を持ち、藤岡のもとに戻るカナの背後から、チアキの声がした。
「おかしなことを、していなかったか?」
硬直する二人。もちろん、チアキではない。
「なななな、なんにもしてないよなー、藤岡」
「カナがコケただけさ。あは、あは、あは、はゴホッ」
「顔が赤いな。風邪か? カナもだ。伝染したか」
「いやこれは、そんなんじゃない。チアキもほら、赤いぞ。寒いからsだ」
カナがあたふたしながら言い訳する。
「ならいいけど。それじゃ、私は買い物に行って来る」
チアキは少し首を傾げつつ、去って行った。
「タワシに網、タマ~ねぎ♪海苔海苔海苔サンマ~♪」
唄いながらちょっと振り向く。
あの二人、腕組んでやがる。
藤岡は私の座椅子だ。返しやがれバカ野郎。
唄いながらちょっと振り向く。
あの二人、腕組んでやがる。
藤岡は私の座椅子だ。返しやがれバカ野郎。