アイがもう一度瞼を開けた時、そこには無明の闇があった。
 一面の黒。何も見えない。
 ただ、不思議と恐ろしくはなかった。
 ここは真っ暗だけど、でも何もないわけじゃない。
 何故だかそう感じることができた。

(ああ、これは……)

 それまで心を圧迫していた恐怖や不安が、徐々に薄らいでいくのを自覚した。
 多くの傷を受けたこの身には胸を破るような苦しみがあったけど、それこそが自分達の手で成し遂げた結末であることを知っていた。

「本当に、私達は勝ったんですね……」

 多くの人の願いによって呼び出された黄錦龍の存在は、今や明滅のさなかにある。消えたのでもなく、死んだのでもなく、託されたのだ。
 誰に? その明確な答えをアイは持たないけれど。
 確かなことは、アイは彼を殺したりしたくなかったという、ただそれだけ。

 何故なら彼はやはり、誰かの願いの末に至った夢なのだから。
 願いは歪み、あるいは最初から歪んでいて、こうして多くの不幸を生み出してしまったけれど。
 でも「世界を救う」という彼の願いに嘘はないと思うから。
 それを踏みにじりたいなどと、アイは考えることはなかった。

 ただ、気付いてほしかった。
 未来を幸福を尊厳をと、ひたすらに人の光しか見ていなかった盲目の彼に。ふとした時に足元や後ろをほんの少しでも振り返ってもらいたいな、と。ただそれだけ。
 だって、アイと彼は似た者同士だったから。
 同じ夢を抱いた者同士、変わり者同士だったのだから。

(不思議ですね……)

 つい今しがたまで意識は完全に闇に沈み、自我さえ崩落していたはずなのに。意識を取り戻した今は少しだけ、今度こそ間違いなく終わる自らの生を悲しいと感じる。
 1%にさえ満たない可能性にかけた自分達の勝利を嬉しいと思う気持ちは確かにあるのに、素直に祝福することができないのは、今になって自分という存在を惜しんでいるからだ。
 人の思い描く想念そのものであるアイは、厳密には死と呼べる現象は起こり得ない。
 ただ、消える。
 この世の理に溶けて消え、過ぎゆく時と共に流される総ての命に散らされる。

 生きたいと願った。全てに決着をつけるためにこの命を投げ出そうとした。
 そのどちらもが本当であり、嘘偽りのない真実だった。
 生きたかった。体は衰え魂はやせ細り、自然と死の声音を聞く日がやってくるまで、誰もがその生を途絶えることなく続けていければ良いと考えていた。
 その願いが偽りや欺瞞であったとは誰にも言わせない。
 自分の命を惜しいと感じると同時に、この世に在る人々を、生にしがみついた彼らを、心から愛おしいと思った。アイ・アスティンという名と、人の体を得て触れたもの、感じたもの全てが、かつて廃神と呼ばれた自分に許された真実だった。

 真っ暗闇の視界の中に、不意に光の線が走ったのを見た。それは窓を伝う雨だれのように曲がり、くねり、幾何学的な曲線を描いて左から右へと駆けていく。
 アイは手を伸ばし、それに触れた。指先が触れると光は弾け、無数の白い粒子となって舞った。
 パウダースノウのように降り注ぐその一つ一つがこの世界に生きる人々の記憶であり、魂の欠片であり、いつか必ず訪れる死の兆しであった。
 生と死は決して同義語ではないが、この世に生まれ落ちた瞬間から死への旅路も始まる。この光の粒子は、そんな旅路の記録の欠片だった。
 アイの肩に、目に、瞼に落ちる光の粒。その全てが、人の生の尊さを教えていた。

(ああ、なんて、綺麗な……)

 いつしか苦しみは失せ、代わりに何か暖かいものがアイの胸にこみ上げてきた。
 暖かく、懐かしいもの。それをアイは抱きしめ思う。

 私の人生は、こんなはずじゃなかったことばっかりだったけど。
 でも、最後にこんな気持ちになれたなら、それは……

「きっと、救いなんでしょうね……」

 ただ、それだけを想った。

 そして、アイは静かに瞼を閉じ、意識は二度と戻らぬ闇の底へ───





















「いや、なに勝手に浸ってんだお前は」

「あだっ!?」



















 突然頭に衝撃が走って、思わず涙目で見上げた先にはチョップの形に右手を振り下ろした体勢の蓮がいた。
 いや、なんで?

「むしろなんでいないと思ってたんだ。あそこにはきっちり6人全員いただろうが」

「いや、それはそうですけど……こんな意味深なことされたら"ああ、今度こそ終わりなんだろうなー"とか考えるじゃないですか普通は」

「思わねえよ。お前生きたいって言ったんならきっちり責任持ってもっと生き汚くなれよ、頼むから」

 蓮の言葉にぶー垂れて、それにしたって暴力はもっと控えめにしてほしいとかそんなことを言ったりして、気付く。

 え? 6人?

 私と、セイバーさんと、キーアさんにすばるさん、そして騎士のセイバーさん。どう考えても5人しかいない。
 えっと、あれ?

「初めまして……で、いいのかな」

 声に振り向いた先には、小さく手を振るキーアとおろおろするすばる、微笑ましげに見守る騎士のセイバーさんと、それと。
 見たことない男の子がそこにいた。

「えっと、誰?」

「こらこら、挨拶はきちんとしなくてはいけないよ」

「あ、はい」

 騎士のセイバーさんが笑いながら窘めてくれる。
 というわけで改めて。

「初めまして、アイ・アスティン。
 僕の名前はみなと。すばるの……えっと、友達かな」

「とっても大切な人だよ」

「確か、以前お聞きしたことがあります。恋人でしたっけ」

 遠慮がちなみなとに被さるように念押しするすばるの言、そしてそれら全てを台無しにするアイの反応であった。
 なんというかもう色々と駄目だった。

「ともかく」

 結局その場はキーアが全部とりなしてくれて、何とか全員落ち着くことができた。
 全員というか、主にすばるが、だったけど。

「ミナト、話したいことがあるのよね」

「……ああ。これは僕達全員に関わることだ」

 彼は吹っ切れたような顔をして、滔々と話しだす。

「既に聖杯戦争……夢界で行われた魔術儀式は完全に破綻した。聖杯の持ち主は消え、ルーラーは去り、黄錦龍は再度封神台へ送り返された。
 もう僕達にできることも、やるべきこともない。だから本当はもう、僕達は消えてなくちゃいけない。そのはずなんだけど」

「なんだけど?」

「もう一つだけ、行かなきゃならないところがある」

 行くとはどこへ?
 その疑問が口をついて出るより早く、周囲の景色が一変した。

 それは、例えるなら光の大河だった。
 先ほどアイが見た光の線。それが何千何万、もっと多く無数の数が集まり、束となって絡み合っている姿だった。
 無数の支流が合流した大河のようでもあり、無数の枝葉が寄り集まった大樹のようでもある。
 それはアイたちより遥かに大きく、視界の端から端までを縦横に貫き、上を見上げれば限りなく、下を見下ろしても限りなく続いているのだった。

「光の、線?」

「これは宇宙に生まれたあらゆる運命線の形だ」

「どういうこと?」

「一つの弦が様々な音色を奏でるように、これもまた僕達の宇宙の一つの形なんだ。
 あの光の一つ一つが誰かの命であり、何かの可能性でもある。人間、昆虫、魚、鳥、他にもたくさん……僕達の運命線もまた、この膨大な可能性の一部ということだ」

 みなとの言は難しくて、アイにはよく分からなかった。ただ、単純に綺麗だと思った。
 多くの命、多くの可能性が寄り集まり、一つの形を成している。それは目を焼きかねないほどの輝きに満ちて、眩く、そして暖かかった。

「急に太くなったり、細くなったり」

「あそこ、途中で終わってる……」

「枝分かれが減っていってる?」

 みなとが指差し、先導するのは運命線の遥か下だった。下っていくにつれ、あれだけ膨大、巨大、煩雑だった運命線は徐々に細くなり、数を少なくしていった。
 枝分かれが減り、無数に分岐していた線が一つに収束していくかのように。

「無数に枝を広げる運命線の連なりも、過去を辿るといつかは一つの点となる」

「それが行先?」

「そう、全ての可能性の源へ───」

 振り返るみなとは笑顔で、アイたちを歓迎するかのように。
 そして、長いトンネルを抜け出るかのように、彼方の光がアイたちを出迎えて───


 ───そこは、黄昏の浜辺だった。
 後ろには陸地が、前には海が、果てしなく広がっている光景だった。地平線も水平線もそこにはあり、日が昇る間際の鮮やかな陽射しが世界を照らしている。

 けれど、そこには命の気配は何もない。
 魚は泳がず、空に鳥の姿はなく、大地に緑は何もない。
 ひたすらに岩と水だけが占める惑星。ここが行くべき最果てなのか。

「あ、月……」

 キーアが何かに気付いたように、空を指差す。
 そこには確かに月があって、でもおかしい。それはあまりにも大きくて。

「大昔、月は地球のすぐ近くを回ってたから大きく見えたって言うけど……」

 すばるが当惑の声で言う。
 大昔。この、あまりにも原始的な光景。それが示すのは、すなわち。

「ここにはまだ、最初の一つの可能性すら生まれていない。
 巨大な月が空を覆い、海はようやくできたばかり。まだ一片の命のカケラすらない、原初の惑星。
 40億年前の、まだ何者でもない地球だ」

 みなとは笑って告げる。その言葉の壮大さに、アイは最早理解の範疇を超えていた。
 だから、ただあるがままを受け止めていた。
 この光景を、ただ美しいものと受け止める。だってそうだろう。
 朝焼けの眩しさも、肺に取り込む空気の涼やかさも、アイはようやく本物を体験しているのだから。

「だからこそ、今ここにはあらゆる生命の可能性がある。
 此処からなら、どんな生き方だって選び直すことができるんだ。
 何になってもいい、どこからやり直したっていい」

 何になっても。
 どこからでも。

「それが錦龍を連れていった、三人の盧生から君達への贈り物だ。
 さあ、君達は何を選ぶ?」

 アイは、すばるは、キーアは、何を返すこともできなかった。
 ただ、少し振り返って、蓮やアーサーに振り向いてみた。
 けれど彼らは少しだけ笑って、黙ってアイたちを送り出していた。何を選んでもいい、その選択を俺達は肯定する。そう言っているかのようだった。

「私は……」
「あたしは……」
「わたしは……」

 ぎゅっと、服の裾を掴む。
 あまりに身の丈を超えすぎて、何を言っていいのか分からない。

 けど、考えてみよう。
 なんでも叶う自分がいて、なら自分は何になりたいのか。

 ───無限の可能性なんて壮大過ぎて分からない。

 ───想像できるのは、自分とそんなに変わらない女の子。

 ───何の変哲もない、ありふれた女の子。

 ───キーアさんみたいに、お淑やかであれたらいいな、とか。

 ───アイちゃんみたいに、強くて真っ直ぐな気持ちであれたらいいな、とか。

 ───スバルみたいに、笑顔で素直になれたらいいな、とか。

 ───そういうふうに、思うけど。

 ───みんなを羨ましく思うのはきっと、困ったとき、道に嵌り込んだとき、手を差し伸べてもらったから。


「完璧な誰かになりたいってことじゃなくて」

「みんながみんなだったから、あたしがあたしだったから。一緒にいたあの時間が愛おしかった」

「だったら、わたしはわたしがいい。そしてその時傍にいる人の綺麗なところ、良いところをたくさん見つけてあげたい」


 ───私は/あたしは/わたしは。

 きっと何者にもなれなくて、でも確かに此処にいる"わたし"なんだ。

 だから、わたしはわたしになる。
 自分は自分のまま生きていくんだと、胸を張って叫びたい。

「決めたようだね」

 三人を見守っていたみなとが言う。それはどこか儚げな憂いを帯びて。

「盧生からの伝言だ。君達が君達自身の可能性を収斂させたら、各々のイドへと帰還する。
 全ての記憶を失って、ね」

「そんな……」

 キーアが惜しむように、悲しむように反応する。
 そしてそれは、すばるもアイも同じことだった。

「思い出がなくなっちゃう……みんなと一緒にいた思い出が」

「心配はいらないさ」

 涙さえ流しそうになるアイの肩を、蓮がぽんと叩く。
 見上げれば、そこには変わらない笑顔があって。

「たとえ、記憶がなくなってしまったとしても。心を動かされた事実までは消えないさ」

「その通りだとも」

 蓮の言葉をアーサーが引き継ぐ。迷いも未練もない、晴れきった顔で。

「過程と結果はワンセットじゃない。数多の苦難という過程を経て、今この瞬間という結果に行き着いたその事実は消えない。
 大丈夫、君達は確かに此処にいた。それは誰にも消せない真実だ」

「残された時間は少ない。今は自分のことだけを考えるといい」

 みなとの言葉に、三人は改めて向き直る。
 ええと、なんてどもったりして。

「こういう時って、なんて言ったらいいのかな……?」

「きっと大丈夫。"あたし"に戻っても、みんなと出会って変われた"あたし"なのだもの」

「ええ、私も信じます。みんなと私を」

 名残惜しむように、皆の口調が早くなる。
 涙の気配も混じっていた。これが最後だと知っていたから。

「わたしたち、変われたかな?」

「きっと、絶対!」

「な、泣かないでくださいよ皆さん」

「アイ、あなただって」

 三人は手を合わせる。
 悲しみによってではなく、ただ嬉しさと誇らしさとして。

「ありがとう、さようなら」

「こういうときは"またね"って言うんだよ」

「それじゃあ、みんな───」










「良き青空を!」










 それが最後だった。
 気付けば、キーアは黄昏の浜辺にたった一人で立っていた。
 三人と掌を重ねた姿勢のまま、自分以外の誰もが消えていた。

「……」

 そっと、自分の右手を胸に当てる。

「まだ暖かい……」

 それはもう、二度と触れられないと諦めていた感触。

「生きてるって、あったかいのね……」

 そして堪えきれず、膝から蹲る。
 その口からは、僅かな嗚咽が漏れだしていた。










「じゃあ、わたしたちも行こっか」

 袖で涙を拭い、すばるは努めて快活に言う。
 そこには、すばるの他にただ一人残っていたみなとが、黄昏の浜辺に腰掛けていた。

「すばる、それは……」

「言ったでしょ? わたしはみなとくんと一緒にいるって」

「僕はただの案内人だ。その役割も終わって……」

「わたし、約束したよ? みなとくんを幸せにするって」

 すばるはみなとの手を取り、笑いかける。

「それがわたしの答え。わたしの生きる意味。
 わたしがずっと、傍にいるから」

 だから、あなたも生きることを諦めないで。
 そう語りかけるすばるに、みなとは───

「……ありがとう、すばる」










「私、決めました」

 誰もいなくなってしまった黄昏の浜辺で。
 アイは高らかに宣言した。あるいは単なる子供のように、見果てぬ夢を語った。

「私は天国を作ろうと思います」

「それは、お前の母親のようにか?」

「ええ。お母様の夢を継ぐ、というわけではありませんが。ひとまずそれを目標にしてみたいと思います」

 アイの言葉を聞く蓮の顔は、どこか穏やかなものだった。
 最初に私の夢を聞いた時は凄く怒ってるっぽい顔だったのに、とアイは少しだけおかしな気持ちになってしまう。

「私の世界は死後の世界です。死んだ人が歩き回り、墓守が埋葬しなくては動くことをやめられない。
 だから、私はそんな末期の世界で、死んでしまった人たちの寄る辺になれる場所を作りたいと思います。
 お母様みたいに、一つの村を幸せにすることは難しくても……
 一つの家族や、一人の大切な人くらいは、私でも幸せにできるかもしれません」

 かつて、人は天国という場所があると説いた。
 それは死んでしまった人が行く、幸せな場所だそうだ。
 なら、私のやりたいことは決まった。
 死んだ人が彷徨う世界で、私は誰かを幸せにしたい。

「結局、最初とあんまり変わってないかもしれませんが」

「いや、いい夢だと思うぜ。お前にしちゃ上出来だ」

「そ、そうでしょうか……えへへ、ちょっとだけ嬉しい」

 照れたようにアイは言う。嬉しい、というのは紛うことなき本心だ。

「それで、なんですけど」

「どうした?」

「できれば、そこにあなたも来てほしいんです」

「……」

「……駄目、ですか?」

 返事は聞こえなかった。
 でも、それでいいと思った。
 結局それは未練でしかなくて、夢ではないから叶える必要もなくて。
 でも、ほんの少しだけ傷になってしまう。そういうものだから。

「40億年って、どれくらい長いんでしょう」

「何、大したことじゃない。ほんのひと眠りだよ」

「あんまり眠りたくないです。だって、ようやく落ち着いて話せるようになったじゃないですか」

「最後の最後だったけどな」

 言って蓮は辺りを見渡す。
 世界がゆっくりと動き始めていた。未だ命なき原始の海は静かな波の音だけを湛え、日は黄金の午後を迎えようとしている。
 午前零時から動きだし、大いなる正午を越えて、それでも時計の針は進んでいく。
 此処は黄昏の浜辺であって、時間なき無間の地獄ではないのだ。

「そろそろ時間だ。お前はお前の居場所に戻れ」

「……あなたはどうしても、私の作る天国に来てはくれないのですか?」

「ああ、そこはもういい。だってそこはもう、とっくの昔に行ってるからな」

「え?」

「天国ってのは、死んだ人間が行く幸せな場所なんだろ?
 だったら俺にとっては、ここがそうだった。お前と一緒に歩いた道や、眺めた景色がそれだった。
 永劫回帰に呑まれた俺が、サーヴァントとしてお前と一緒にいた時間。これが天国でなくてなんなんだよ?
 だから俺は消えるだけさ。悪いな、アイ。やっぱり俺は、お前と一緒には行けない」

 蓮は最後にやっぱり笑って、
 アイの心にほんの少しの傷を残した。

「なら、最後に一つだけお願いしてもいいですか?」

「なんだ? 言ってみろ」

 だから、アイは最後に一つだけ我儘を言ってみた。
 微睡みつつある視界の中、彼の横顔を映して。

「一緒にいてください。私が眠りにつく、その瞬間まで」

「ああ、一緒にいてやるさ。お前が目を覚ますその時まで」

 そして、アイの意識は消えた。
 瞼は閉じられ、果てのない眠りについた。
 最後に何かを言っていただろうか。
 最後に、何かを言えただろうか。

 それはもう、覚えていることはできないだろうけど。
 きっとそれは私にとっての救いなのだと、そう思うことができた。



【第二次聖杯戦争封神陣 終結】

【次なる《月の王》の兆し 未だ現れず】

【自己確立対象:キーア、アイ・アスティン、すばる】

【次の目覚めまで 残り40億年】




 ならばこそ、全てを見つめていた赤い瞳は、何か眩しいものを見たかのように目を細め、告げるのだ。

「待て、しかして希望せよ」と。
最終更新:2020年05月06日 08:16