◇今回予告
キルディア共和国主席キルドの依頼を受け、ミースの街で魔族討伐を行なったどら猫な~ん(仮)一行。上級魔族アロケンの一味と名乗るその男は、キミたちに禁書を渡すよう要求する。襲いかかる魔の手を退けたキミたちは、無事依頼を完遂した報告をすべくキルドの元を訪れていた―――。
アリアンロッド2E EYES -another story- 第10話「忠誠と裏切り」
キミたちはもう1つの歴史を体験する。
◇オープニングフェイズ
◆オープニング①
戦いを終え、長老会議所へと戻ってきたキミたち。警備の戦士に連れられて向かった先でキミたちを迎えたのは、今回の依頼主であったキルドの姿だった。
「無事に戻ったようだな。まずは依頼についての報告を聞こうか」
「そうか、またアロケンの手の者が。エルクレストやラクレールでのことは私の耳にも届いている。奴らはどうあっても禁書を手中に収めたいらしい」
オブザーバーのいる街を襲う
犯罪の片棒を担ぐ
「そうか。あの街に向かうのであれば用心は怠らないことだ。今の私の国政について、気に入らないと考える者も少なくないのでな。表立って襲撃を掛けてくるようなことはないにしても、キミたちのことを旨い獲物だと考える者はいるだろう」
「コンディートまでの足にはラクダを使うといい。東正門広場の厩に人数分手配するよう声を掛けておこう。それとこの街にいる間は、宿も自由に使えるようにしておこう」
◆オープニング②
キルドとの話を終えたキミたちを長老会議所の前でエイテルが出迎える。
街の中に魔族が入り込んでいたことを報告。
「皆さん、今日もお疲れ様でした」
キミたちは月明かりが照らす夜道を宿屋に向かって歩いていく。昼間は灼けるような暑さを感じていた砂漠の中も、夜を迎え日が沈むと涼やかな風が頬を撫でる。
「アスセーナ村を出てから、陰の森での襲撃に、遺跡での戦い、そして今回の魔族討伐とゆっくり身体を休める暇もありませんでしたから、皆さんもかなりお疲れなのではないですか?」
エイテルがキミたちの様子を伺いながら労いの言葉を掛けてくれる。
そうしてちょうど話が一区切りする頃、キミたちは宿屋の前に辿り着く。キルドの配慮によって一人一室与えられたキミたちは、それぞれに部屋へと向かっていった。
◆オープニング③【
シェンファン】
シェンファンが室内で思い思いに時を過ごしていると、ふと窓辺から物音がすることに気が付く。
室内へと誘われた小さな客人は、背中に何やら風呂敷を背負っており、シェンファンに対し物乞いをしているように見える。
その客人に食べ物を振舞おうとシェンファンがその手を差し出すと、客人はシェンファンの指にガジッと噛み付いてくる。一瞬だけ感じる鋭い痛みに、シェンファンが咄嗟に手を引くと、指からは血が滲んでいた。
「しまった。これは毒だ」
「チュー」
シェンファンの言葉を意にも介さずに可愛い鳴き声をあげたその客人は、風呂敷をその背から下ろすと一通の書状をシェンファンに手渡す。
「そろそろ潮時ですかね?」
シェンファンがその書状を開くと、そこには『次の指示があるまで、ミースにて待機せよ』と書かれていた。
「こちらを突き放すようなことをしておきながら、どういうことだ」
自らの役目を果たした小さなお客人はとっとこと再び窓辺へと駆け寄ると、そのまま夜闇の中へその姿を消していった。
「まあよいでしょう。こちらがその気なら」
◆オープニング④【
ドラドル】
草木も眠る丑三つ時。ドラドルもまた自室で眠りについていた。深い深い眠りの中、ドラドルの意識にぼんやりとかかる黒い靄。目の前の靄晴れていくと、ドラドルはある光景を目の当たりにしていた。
【以下、ドラドルだけに提供】
ドラドルの見ていた光景が再び黒い靄に包まれていくと、ドラドルは自室で目を覚ます。
「最近こんな感じの夢ばかり見る」
「もしや、俺の記憶の…。いや、俺は俺だ」
◇ミドルフェイズ
◆ミドル①
翌朝。目を覚ましたキミたちは1Fの食堂に降りて朝食をとっていた。
しかし、ふとそこでエイテルがまだその場に姿を現していないことに気が付く。
ナミキがエイテルの部屋に踏み込むと、ベッドに横たわるエイテルのか細い息の音が聞こえてくる。
ナミキがエイテルに近寄って様子を窺ってみると、エイテルの顔色は蒼白く、衰弱しきった様子が見てとれた。
【知力】判定:達成値18
(適用スキル:【ヒストリー】【マジックノウリッジ】【オンミョウドウ】)
成功 ⇒ エイテルに外傷や病気といった類のものを見て取ることはできなかったが、こういった症状を引き起こすとされる術式が存在することをキミは過去に聞いたことがあった。残念ながら詳しい知識までは持ち合わせていなかったが、これが“呪い”と呼ばれる類のものであることはわかった。⇒ ナミキに経験点+10
失敗 ⇒ エイテルに目立った外傷や病気の類を見て取ることはできなかった。
【PCにその後の行動を話し合ってもらい、状況に合わせてキルドを登場させる】
キルドに助力を求める
ナミキはエイテルのもとに残る
「なるほど。私もそういったことに詳しいわけではないから、直接的にキミたちに何かをしてやれるわけではないが、そういったことに詳しい者の当てなら、あるにはある」
「キルディア共和国一の呪術師で、名をメディアと言う。しかし彼女はなかなかに変わり者でな。この街に暮らしていると言われているが、誰も彼女の所在を正確には知らないのだ」
「彼女の所在を示す様々な噂が街中には流れているのだが、示された場所に行ってみても彼女に出会えた者は誰もいない。彼女を見付けることさえできれば、呪いを解くこともできるだろうが…」
「わかった。そういうことであれば、私が聞いた噂をキミたちに話そう。“彼女は戦を嫌い、研究熱心であったことから、キルディア国立学校に姿を現すことがある”そうだ」
「もしメディアに無事出会えたら、これを彼女に見せるといい。快くキミたちに協力してくれるはずだ」
キルドはそう口にすると、キミたちに5人分の身分証を手渡す。
「この国にいる間はそれがキミたちの身分を証明してくれる。持っていて損をすることはないだろう」
「では私の方でも何かわかったことがあれば伝令を遣わす。キミたちの幸運を祈っている」
ナミキと合流するため、一旦宿に戻る。
「のんびり時間をかけていてはいけませんよ」
人海戦術で手当たり次第、当たることに。
エイテルは宿屋のおばさんに看病を任せる。
◆ミドル②
キルディア国立学校。キルディア共和国の文官を育成するために建設されたこの機関では、幅広く高度な教育がなされており、卒業生の多くは政府の官僚として雇用されている。そんな前途有望な若者が多く集うこの場所に、キミたちは足を踏み入れた。
そんなキミたちの前をキャピキャピとしたパリピ風の学生たちが横切っていく。
「何この子ぉ~かわいい~」
【精神】判定:達成値20(適用スキル:【インサイト】【オピニオン】)
成功 ⇒ 「あぁ~そんな噂なら聞いたことありますよぉ~?でも実際に見た人は誰もいないんですよねぇ~誰か見たことある人いる~?」その場にいた全員が一様に首を振る。「だよねぇ~wwwでも私が聞いた噂だとぉ~“その人は政府の官僚が嫌いでぇ~氏族を嫌がったとか何とか。だから今は建国記念公園の中で浮浪者をやってる”って聞きましたぁ~」
失敗 ⇒ 「私たちそんな話聞いたこともないですぅ~。あぁ、でも噂好きのマレだったら知ってるかもしれないよねぇ~」その場にいた他の学生たちも彼女の言葉に賛同の声を挙げる。「だよねぇ~wwwマレだったら新聞部なんでぇ~あの目の前に見える部室棟の3Fにある新聞部の部室にいるんじゃないですかねぇ~」
キミたちが部室棟へと向かって行くと、他の校舎に比べやや古めかしいその建物は、照明の調子も悪いのかやや薄暗く感じられる。キミたちが新聞部の部室の前に訪れ、その扉をノックしようとしたその時、こちらに歩いてきた女子学生から声を掛けられる。
「うちの部室に何か用ですか?」
三つ編み髪に眼鏡というその風貌からは、先程の学生たちとは打って変わった雰囲気を感じた。
「私がマレですけど…あなたたちは誰ですか?ここの学生じゃないですよね?」
【危険感知】:達成値15
成功 ⇒ キミは上空から降り注ぐ粘性の高い糸の束に気が付くと、素早く行動を取った。
「きゃっ…!何あの化け物…?!」
マレは人と蜘蛛が融合したような身体を持った目の前のモンスターに驚愕し立ち尽くしている。
【戦闘】土蜘蛛Lv38(ディスカバリーP124)×2
戦いを終えると、蜘蛛の化け物は煙に包まれていき、人型の紙切れだけがその場に残る。
「助けていただいてありがとうございました」
「助けていただいたお礼をぜひさせていただきたいんですが、何か私にできそうなことはありますか?」
「そういうことでしたら、私が知っている噂についてお話します。“その人は政府の官僚が嫌いで、氏族を嫌がったとか。なので今は建国記念公園の中で浮浪者をやっている”そうです」
「いえ、私にもお力になれることがあってよかったです。皆さんもお気を付けて」
◆ミドル③
建国記念公園。ミース神殿前にあるこの公園は、常設の市場としても機能しており、商人から冒険者まで様々な人で賑わっていた。
「浮浪者のことなんて俺は知らないね~。この公園のむこうにある森の一角に浮浪者が暮らしてるって噂を聞いたことがあるぜ?」
【感知】判定:達成値20(適用スキル:【トラッキング】【アニマルエンパシー】【ネイチャーサバイバル】【ネイチャーノウリッジ】)
成功 ⇒ キミたちは森の中に残る情報を辿って浮浪者が暮らしていると言われる一角へと辿り着いた。そこには一人の老人が昼寝をしているだけで、他の人の気配は感じられなかった。
「んんぁ?あんたらは誰じゃ?」
「ワシは長いことここで暮らしておるが、そんな名前のやつは知らんの~」
「ん?いんや、そういえばそんな名前のやつの噂話なら、何やら聞いたような気もするのぉ~」
「何だったか…?“そやつは商人が嫌いじゃが、武器防具店のエルウッドをいたく気に入って、砂漠の鷹というギルドに加入した”とかいう話だったような?」
失敗 ⇒ キミたちが森に入って浮浪者探しをしていると、何やら森の中にざわざわと不穏な気配が漂い始める。キミたちが即座に周囲へ警戒を張り巡らせると、キミたちに向けて樹上からクナイが飛んでくる。
東方の装束を身に纏った老人が目の前にスッと姿を現し印を結ぶと、その姿が分裂しキミたちに襲い掛かってきた。
【戦闘】上忍Lv30(ディスカバリーP122)×3
戦いを終えると、老人の姿が煙に包まれ、再び人型の紙切れだけがその場に残った。
◆ミドル④
エルウッド武器防具店。多くの店が立ち並ぶ商業地の中でも冒険者の間で特に有名なこの店では、冒険者が必要とするほとんどの装備品を揃えることができる。店主のエルウッドはミースでは珍しいエルダナーンの男性であり、ギルド“砂漠の鷹”のリーダーでもあった。
「いらっしゃい。今日は何をお求めかな?」
「メディア?そんな名前の人は私のギルドにはいないと思うが。その人がどうかしたのかい?」
「呪術師…そういえば前にその人についての噂話をお客さんから聞いたな」
バンッ!突如、店の扉を乱暴に開く音が店内に響く。
「はーいっ♪注目ー!」
猫の扮装をした少女と、剣を腰に差した2人の男が店内に立ち入ってくる。
「さあさあ、これよりお楽しみマジックショーをはっじめるっにゃー♪今日皆さんにお見せするマジックは~…これっ!バラバラマジックショー!これより私の助手たちが、この刀を使ってこの場にいる皆さんをバラバラにしていこうと思いますにゃー♪このマジックには種も仕掛けもございませーん、にゃっ♪」
少女の掛け声と共に、助手と呼ばれた男たちが剣を抜き、キミたちに襲い掛かってきた。
【戦闘】化け猫Lv32(ディスカバリーP122)
剣豪Lv32(ディスカバリーP122)×2
「ちぇー負けちゃったかにゃー。まあ仕方ない。ここはドロンさせていただくとするにゃ。さらばっ!」
ボフンッ!少女と男たちは煙に包まれると、その場には人型の紙切れだけが残っていた。
「助かった。一体今のやつらは何だったんだ?キミたちが探してるという呪術師と何か関係が?」
「とりあえずキミたちのおかげで店の被害も甚大なものとなった。この請求はどこにすればいいのかな?⇒身分証を提示する。
さっきまで話をしていた噂話とやらを教えよう。“メディアと呼ばれるその呪術師は、信仰の中央を辿り、砂漠の真理へと行き着いた”らしい。まあこの話だけ聞いても、何を言っているのかよくわからないがな。私から話せることはそれだけだ。あとは自分たちで頑張って探してくれ」
【店を出た後、次にどこへ向かうかPCに決めてもらう】
ミース神殿。ミースの街の中心に建つこの神殿は、キルドがグランアインの啓示を受けたとされる場所が聖地とされ、そこを囲むように建てられている。神殿の周囲には冒険者のための宿泊所や依頼所もあり、多くの冒険者で活気づいていた。
「ようこそ、ミース神殿へ」受付の女性
◆ミドル⑤
砂漠のウサギ亭。再び訪れたその場所では、まだ日も翳り始めたばかりだと言うのに、大勢のお客で賑わっている。酒を片手に騒ぎ立てているのは、一仕事終えて食べ物にありつこうとした冒険者たちの姿だった。
「いらっしゃいませ~♪あれ?お客様、お帰りでしたか!今日も1日お疲れ様でした!皆さんお部屋に戻られますか?それともお食事をしてからにしますか?」
「うーん…私ではちょっとわかりかねますね。マスターに聞いてみるといいかもしれません。どうぞ!カウンター席へご案内します♪」
キミたちがカウンター席に着くと、それに気付いたクリーガーがキミたちの方へ向かってくる。
「いらっしゃい。何にする?」
「メディア?そんな女のことは知らねえな?…ん?猫耳に、二丁拳銃の少年…お前さん、もしかしてリーフか?」
「やっぱりそうか。…まあそういうことなら、合言葉なしでも取り次がねえわけにはいかねえか…お前さん、ダチに感謝することだ」
「お前が何か困ってるようだったら助けてやってくれと大金を置いていったやつがいるんだよ。神出鬼没な猫野郎がな」
「さて、してら俺から話を通そうと思うが…ちょっと待ってな。もうじき向こうから姿を現すからよ」
すると店の中の喧騒が徐々に止んでいき、客は皆ステージの方に注目し始める。ステージがスポットライトで照らされると、猫の扮装をしたセクシーな女性たちが独特な動きと掛け声で踊り始めた。
「くるっと回ってにゃんにゃかにゃーん♪くるっと回ってにゃんにゃかにゃーん♪にゃんにゃか楽しいにゃんにゃかダンス♪くるっと回ってにゃんにゃかにゃーん♪」
まさかもう一度観ることになるとは思わなかったこの店の名物“にゃんにゃかダンス”をひとしきり楽しむと、踊り終えた女性たちの方へクリーガーは向かって行く。
「サティア!“お前に”“お客さん”だ!ちょっとこっちに来てくれ!」
サティアと呼ばれたその女性は、踊り子たちの中でも群を抜いて妖艶な雰囲気を漂わせている。
「初めまして。貴方方、私に御用だそうですね?ねえマスター、奥の部屋をお借りしても?」
「おう」
「それでは奥の個室でお話しましょうか?沢山の殿方に囲まれて個室に入るだなんて、私もドキドキしてしまうわ」
フフフッと微笑を浮かべたサティアは、キミたちを奥の個室へと案内していく。
「どうぞ?」
サティアが案内したその部屋は応接室か何かなのか、華美な装飾品で飾り立てられ、室内には不思議な香りが充満していた。
「お掛けになって?改めて自己紹介しましょうか。私はサティア…というのは仮の名前で、本名をメディアと言うわ。この店では“私に”“お客さん”と話をすると、呪術師としての私に来客があったという意味合いになるの。それがこの店で私を呼び出すための合言葉。覚えておくといいわ」
「1つ忠告しといてあげるわね?この部屋では、貴方たちは私を欺くことも、力づくでねじ伏せることも敵わない。この部屋には私の様々な呪術の術式が張り巡らせてある」
「ふぅん、そうなの。それで貴方たちのその望みを叶えたとして、私には一体どんな見返りがあるの?」
「…!貴方、それを私みたいな者に向けることがどんな意味を持つのか、わかってやっているのかしら?いや、どうやら知らないようね。そういうことなら、教えてあげる。この国の長であるキルドの名が入ったその身分証を、私のように特殊な契約で国への滞在を許された者へと向けることは、首長の名のもとに無条件で指示に従うことを強制する意味合いがあるのよ。それだけに使い方を誤れば、キルド諸共、身を滅ぼすことになるわ」
「いいわ。キルドも含めて貴方たちにそこまでの覚悟があると言うのなら、貴方たちの望みを叶えてあげる。ただ、気を付けなさい?私はかつて“砂漠の魔女”と呼ばれ、一国の軍隊をたった1人で壊滅状態に追いやった呪術師。私が本気になれば、貴方たちを殺すことなんてわけないわ」
「さて、じゃあ早速掛けられた呪術とやらについて調べるとしましょうか。まず、調べるまでもなく、貴方たち4人には強力な呪術が掛けられている。そこの猫耳の坊や、私に両手を差し出しなさい?」
「何を怯えているの?別に供物に捧げろと言ってるのではないわ」
メディアがリーフの両手に向けて片手を掲げると、殺気と共に黒い煙が漂い始める。
「フフッ、臆病な坊や。…ほら、見てみなさい?貴方の両手に浮き出てきたその紋様。それが貴方たちに掛けられた呪術よ。他の3人にも同じ紋様があるんじゃない?」
「さて、まずはこの紋様について貴方たち何か心当たりはある?」
「そう、祝福…ね。肩書きはどうだっていいわ。確かにこの呪術によって貴方たちが強力な力を得ていることは確か。でも貴方たち次第で、この術は毒にも薬にもなる。そして、どうやらこの呪術によって貴方たちは他のあらゆる呪術からその身を守られている。…はぁ、貴方たち厄介ね。私の呪術も、貴方たちには通じない。私、この部屋に入った人には必ず記憶操作を行なうことにしているのよ?うっかり他言されて、私の存在が表沙汰になるのは困るの。だから私に会ってから、この店を出るまでの私に関する記憶は必ず消すことにしている。それなのに…。仕方ないから、私に関する情報が他所へ漏れるようなことがあったら、意識操作で軍隊を差し向けるか、記憶操作をして貴方たちを大罪人にでも仕立て上げようかしら?」
「…まあいいわ。次、そこのもう一匹の猫さん、こちらにいらっしゃい?」
「貴方には皆に掛けられた呪術とは他に、呪術を施された形跡がある。すごく微弱な形跡でわかりにくいけれど…指、かしら?何か心当たりは?」
「これは東方世界で使われる式神を併用した高等呪術。術を掛けた対象を24時間後に衰弱死させるもの。この感じ…貴方に掛けられた呪術が、別の呪術を掛けた術者のもとに置き換えられている」
「つまり、貴方たちが森の女神の祝福と呼んでいる呪術を掛けたその仲間が、本来この猫さんに掛けられるはずだった死を呼ぶ呪術を代わりに引き受けたということよ。貴方たちは正確には呪術を受けないわけではない、ということね」
「さて、それでどうしようかしら?この術を解くには術を掛けた者の命を奪うか、術者に術を解かせるかしかないわ」
「術者の位置を割り出すのは簡単よ。これだけ強力な呪術を行使するためには、色々と面倒な手筈や厳しい条件がある。特に東方世界の強力な呪術では、“龍脈”と呼ばれる世界を形作る大きな気の流れを利用するはず。この街でその恩恵を最も得られる場所、それはミース神殿よ」
「いってらっしゃい。せいぜい貴方たちが上手くやることを祈っているわ」
◆ミドル⑥
再び訪れた神殿には、日が暮れたこともあり、人気がなくなり閑散とした雰囲気が漂っていた。
キミたちが神殿に踏み込もうとしたその時、目の前にいくつかの人影が現れる。
【戦闘】上忍Lv30(ディスカバリーP122)×3
◇クライマックスフェイズ
◆クライマックス①
日が沈み、世闇が辺りを包み始める。街の者は皆、それぞれの帰路につき、閑散とした雰囲気が神殿の周辺には漂っていた。キミたちが閉鎖された神殿内へと立ち入ると、大聖堂の奥の奥、神殿によって赦された者だけが立ち入ることのできる大広間に、1つの人影が映っていた。
「来たか…久し振りだな、シェンファン」
東方世界の陰陽師の装束を身に纏ったその男は、シェンファンも見知った人物だった。
「あぁ、忘れたとは言わせないぜ?」
「何で?それは自分の胸に手を当ててよく考えてみることだな。それにしても俺の掛けた呪術は確かに機能しているはず…何でお前、そんなにピンピンしてるんだ?」
「…あぁ、そういうことか。確かあの人だけは殺さないようにと皇帝からは言われてたな。そういうことなら…解ッ!」
「さて、と。今、お前に掛けるはずだった術は解いた。これで死ぬようなことはないだろう」
ジャラララ…ブンッ!タダユキは袖から取り出した鎖の束をシェンファンの顔面目掛けて飛ばしてくる。
「俺が受けた命令は、そのエイテルという人を国に連れ帰ることと、もう1つ…シェンファン、お前を殺すことだ」
「出でよ、白虎。この地を穢す彼の者を、その力を以て打ち倒せ!」
【戦闘】タダユキ=カモノ
白虎Lv45(ディスカバリーP125)
◇エンディングフェイズ
◆エンディング①
戦いを終えると、傷付き倒れた白虎の姿が光となって散り散りになっていく。術者であるタダユキの姿もまた心なしか薄くなっていくように感じられた。
「ちっ…いくら龍脈を利用したとはいえ、さすがに遠隔で四神の召喚はやりすぎたか」
「想像よりお前たちは楽しめた。また機会があれば、その時は覚悟しておくんだな」
そう言い残したタダユキの姿は煙と共に消え、その場には人型の紙切れが残った。そしてシェンファンの手元には、一通の書簡がひっそりと握り締められていた。
さっきとはまた別の書簡を受け取っている。
なるほど邪神を倒しましたか、さすがですね。リン。
なるほど、こうなると次はどうしたものか…。
最終更新:2019年01月05日 20:08