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ゼロの剣士-01

01

#1

灼熱の溶岩の中、彼は不思議に穏やかな気持ちで己の過去と向き合っていた。
思えば、生きてこれたこと自体が奇跡のようなこれまでだった。
物心もつかぬうちに捨て子になった時。
育ての親を失った時。
師に刃を向け、返り討ちにあった時。
いつ野垂れ死にしてもおかしくなかったが、どの時も彼には救いの手が差し伸べられた。
つい先ほどだってそうだ。
……マァム。慈愛の天使。
見当違いの復讐に囚われていた自分を、彼女は救ってくれた。
だからこそフレイザードの奸知によって溶岩の中で死にゆく今でさえ、彼の魂は穏やかでいられる。
本当ならもっと手助けしたいところだが、勇者ダイ達は十分に強い。
彼がいなくても、きっとその使命を果たすだろう。
……マァム。
どうか無事で。どうか幸せに。さようなら……。
そして彼の意識は真っ白な闇の中に落ちて行った。


#2


「……え~と、これはどういうことかな?」

ところかわって緑の草原。
トリステイン魔法学院の教師、コルベールは何かが決定的に足りない頭を掻いていた。
魔法を一度も成功させたことのない女生徒がサモン・サーヴァント、使い魔の召喚に成功させたことに喜んだのも束の間、
その生徒が召喚したものは「人間の男」、しかも「死にかけ」だった。
使い魔のレベルは主のレベルに比例すると言うが、これはあんまりな結果である。
いつもなら我先に彼女をからかう級友達も予想の斜め下の展開に慌てふためき、
当の生徒、「ゼロのルイズ」も言葉も発せずわなわなと震えている。

「あの、ミス・ヴァリエール……?」

――いっそのこと男が死ぬのを待って、もう一度やりなおそうか?

そんな危険な誘惑を払いのけ、コルベールは言葉を続けた。
「とりあえず、契約済ませちゃおうか?」
目の前のこの男は、瀕死のくせに何故か絶対に死なないような気がしたのだ。

あまりに的確、且つ呑気なコルベールの言葉にようやくルイズが振り向き、
猛烈に反論しようとした時、コルベールの頭よりも輝く何かが降ってきて、その目の前に深々と刺さった。

見たことのない光沢をたたえた、抜き身の長剣。
主を追って現れた、鎧の魔剣。

あまりに散々な事態に涙ぐむルイズには知る由もなかった。
その剣がどれほど凄いものなのか。
その剣の使い手が、どれほど強い人なのか……。

ともかくも彼、魔剣戦士ヒュンケルはこうして異世界に召喚された。

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最終更新:2010年11月27日 19:18
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