のもじTHEアキカン・クイーン・ヘッドSS(第二回戦)

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dangerousss

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第二回戦第四試合 のもじTHEアキカン・クイーン・ヘッド

名前 魔人能力
のもじTHEアキカン・クイーン・ヘッド 超強奪拘束裁判~DP奪取ver
伝説の勇者ミド おもいだす

採用する幕間SS
【クイーン・のもじ幕間SS『貴方の注目の選手を教えて!』】
(のもじ、クイーンから地獄のしごきを受ける)
【† 勇者ミドの伝説 幕間 『めいれいさせろ』】
(勇者ミド、石田歩成への「1日めいれい」権(?)を得る)
【クイーン・のもじ幕間SS『貴方の能力を教えて!』】
(のもじ、サバイバル準備完了&謎のパルプンテ能力論を唱える。
 女王、「頭の使う作業」はこちらでやる発言)

試合内容


キャーキャーキャー。独特な動物の鳴き声が鳴り響く異境の密林。
四方を網で張り巡らされた、そこではいかな死闘が繰り広げられるのだろうか…

フィールド『ジャングル』―試合開始。

◆勇者、一人旅に出る。
2回戦開始の合図と共に出場者はそれぞれのフィールドに各々テレポートされる。

――どっ。

ワープからジャングルに放り出された渡葉美土は着地の体勢をとったが、バランスを崩し
結局、地面にお尻で接吻した。前回に続き、スカートの中があらわになる。
しまパンだった。
今回は初戦とは違い、パンツを履いていた。これは何を意味しているのか。

「いたた。まあ、昨日はひとんちだったから、出掛けに履き忘れはなかったけど
しかし、竹林に続いてジャングルなんて、なんでこう野外プレイが続くかな。」
ランダムワープで放り出された件の参加選手・渡葉美土(以下ミド)は一通りぼやいて
から、こめかみに手を当てる。それは彼女が能力発動をするさいの仕草だった。

――『おもいだす』! ―

†††

同時刻。対戦相手となる阿野次のもじもバランスを崩し、地面に突っ伏していた。
ただし、めくれ上がりさらけ出したスカートの中身は、あろうことかスパッツだった。
つっぷしたまま、のもじがいつになく真剣に呟く。

「…風(こうぎ)の音が聞こえる。」

それは普通なら聞こえるはずのない音、だが、のもじの超聴覚はその声を聞き分け…
『ここは既に戦場だ!アホなこといっていないと即作業に入れ!ひんぬー娘!
1秒も無駄にするな!』…女王の突っ込みを受けた。

「アラホラサッサー♪」
のもじは軽快な返事で答えるとともにリュックのチャックに手をかける。
そしてそれは勢いよく開けられた。

◆接敵運動
試合開始から2時間が経過していた。
この時点でお互いそれぞれの準備は終えている。そして最初に敵の領域と接触を果たし
たのは、先に索敵を始めたミドのほうだった。正確には敵側の仕掛けた罠にかかったと
いう若干、不名誉な出だしであったのだが。

ジャングルで周囲をうかがいつつ歩を進めていた矢先、何気なく踏み込んだ先に落とし
穴が仕掛けてあったのだ。穴は片膝が入りきる程度、大きさは直径20cmもないが―
踏み込んだ片足は地をぬけ嵌ってしまい、足の裏に鈍い痛みが走る。
ミドは反射的に体を浮きあがらせようと手近な蔓を握りひくが、今度はぴんとした手ご
たえと共に手にちくりとした痛みが走った。注視すると蔓に削った小枝がくっつけて
ある。

ぃって―

そして、間髪いれずひゅんと横手上方から握りこぶし大の石が彼女の頭めがけて飛んで
くる。蔓に連動した投石トラップだ。
ただ、これは運よくミドの頭上を掠め通り過ぎ、そのままむこう側の木にぶつかる結果
のみで終わり、その音と衝撃に驚いた小鳥たちがバサバサバサと一斉に飛び立つ

あぶな―、

冷や汗ものだった。前方の蔓に注意を奪われていた分、今のは完全に無警戒だったのだ。
打ちどころ悪くこめかみにでも投石が当たろうものなら即昏倒しかねないところだ。
足を抜き、穴中を覗き込むと掘られた底に尖らせた木の枝が設置されているのが見える。
体重の軽い自分だから軽傷ですんだが、これが体躯のいい男性―例えばバロネス夜渡や
練道なら自らの自重で足を貫かれていた可能性がある…。

「ん?ってことは」
石も狙いが甘かったのではなく『想定より』『頭の位置が低かった』から外したのか?
その可能性の意味を検討し始めたミドだが、その思考を推し進めることはできなかった。
ヒュンという音とともに今度は肩に鈍い痛みが走ったのだ。

痛ッ!

走り出しつつ周囲を見渡すが、対戦相手の姿は確認できない。いや木々の間に影が
ちらりと見えた!木の上にいるのか―そして続けざま、2発目の礫がとんでくる。

こちらの間合いには…まだ、かなり遠い。2発目を身に受けた時点でミドは決断する。

コマンド ⇒にげる
ゆうしゃはにげだした!!

†††

小鳥の飛び立つ様子から、対戦相手の位置を把握したのもじは、続け三撃目を放とうと
紐を絞ったのだが、そこでぱちくり手が止まる。敵はあっさり戦域離脱をし始めたのだ。
「…おう?」
『いや深追いは避けろ。あちらの方向には沼もあったはず、罠に誘導される率も高い。
踏む込まず、根競べが正しい選択じゃ。今回のようなケースは先にしびれを切らし、
”下手をうった”ほうが負けだと心得ておけ。』
「らじゃー」

†††

事前にセレクトしていた予定ポイントまで逃げ込んだミドは、対戦相手が追ってこない
ことを確認すると、まず自分の手を開き、握っていた中身を検分し始めた。
それは逃亡する直前拾っておいた、彼女にぶつかってきた礫。
正体は木の実だった。衝撃で既に砕けている。そこから、攻撃手段は類推できる。

―使用武器は恐らく手製のスリングショット。

日本ではパチンコといったほうが馴染みが深いだろう。Y字型の枠構造にゴム紐を張って
手を離すと弾が飛んでいく仕組みの道具だ。構造が簡単なので、ある程度馴れている
人間ならゴムなど必要部分を持ちこんで即席で作ることも可能。弾は別段、パチンコ玉で
ある必要はなく、石ころやドングリなど、そこらへんに転がっているものを使用できる。
つまり―
「このジャングルという地形では無限に『弾』が調達できるということ。
そしてジャングル環境を利用しトラップを配置することで対象の動きを封じた上、
中距離射撃メインの持久戦に持ち込むというのが相手の基本戦術。」
ということになる。
「深追いしてこなかったのは罠に嵌められるのを警戒して。いや実際用意してあるんだから
警戒されてるのは大変よろしくない。中距離射撃は罠への警戒とこちらの攻撃手段がナイフ
による近接主体とみぬいてのセレクト。焦れて近づけば例の能力が発動…」
得た情報を列挙しつつ、靴を脱ぎ、足の傷を確認する。
バロネスに貰ったスカーフを使おうかと一度首元に手を伸ばすが結局止めて、手持ちで
持っていたハンカチを取り出し足に巻き、応急処置とする。

結論『戦い方が ガチ過ぎる』。
1回戦の対戦相手二人を「喧嘩屋」とすると今回の相手は「戦争屋」という感じだ。
華もない、火力もない。
ただ環境への適応力は半端ない、なるほど1回戦世紀末のだまし討ちが成功するわけだ。

「ただウイークポイントがあるとすれば」
微妙にトラップを外している点。恐らく対バロネス夜渡・練道戦を想定してトラップの訓練を
積んだのはいいが、大穴の自分が来てしまい、細かい修正まで手が回っていないのだろう。
そういう意味では戦場工作のプロというよりプロに習った人間という表現があってるかも
しれない。そもそも本職なら銃や火薬を使い最初の1発で蹴りが付いているはずだ。

どちらにしろと、とミドは締めくくる。今回の作戦上、自分は一度は彼女に接近戦を
仕掛ける必要がある。しかもあのよく判らない『パルプンテ』もどきを発動させずにだ。

「さてさてさて」
このままではジリ貧だ。運よく見つけた相手方の罠を”自分用に”仕掛け直しながら
ミドは次の一手を考える。方針転換は完了、あと必要なのはきっかけだ。

―その時―

遠方からリリリィィィンという鈴のような音が聞こえて来た。明らかに人口的な響きだ。
罠か?一瞬過った考えを彼女は否定する。いやこれは恐らくチャンス。
そして彼女は走り出す。

†††
ジャングル別所。
そのけたたましく鳴り響くベルに驚いたのかジャングルの肉食獣ヒョウは、狙った標的を
諦め、密林の奥にと駆けていく。そして狙われた方―のもじは『特製目覚まし時計』の
ベルの停止ボタンを押し音を止ませると、ペンダントの要領で胸にかけ直す。

「わちゃ、今のは不味かったかなー女王」
『止むをえまい。活動範囲が広い以上、獣とのエンカウント率はこちらが圧倒的に上。
おまけに、わらわが認識できていなければ能力も発動できない。貴様のミスではない。
気持ちを切り替えろ。今ので恐らく位置がバレた、乗じて仕掛けてくるぞ。』

そうミドの聞いた音は彼女の予測通り罠ではなかった。
それはのもじの「ドラミング(Draming)」獣避け用に備えていた目覚まし時計の音なのだ。
そして両者は再び激突する。

◆勇者、幾つか『思いだす』
―10分後―
そしてたった10分後、

「ところがどっこいごらんの有様ですよ。」
ミドは蔓のロープに足を取られ、綺麗に逆さ釣りになっていた。
恰好よく強襲と見栄を切ったところまでが良かったが、割と冷静に迎撃態勢をとられ遁走、
散々逃げまくったあげく敵側が仕掛けていた罠にひっかかったのだ。
「まるごし」こそ無事だが、戦闘の経緯で肝心のナイフを落としてしまっている。

「のもじーちゃーん、いらっしゃいますかー」

この現状を打開するため、とりあえず手を頭の上(正確には下)にホールドして周囲に
呼びかけてみる。恐らく近くにいるはずだ。
無論、この状況から延々スリング射撃で撃たれ続けたら負け必至ではあるが、直に接触
したのもじの性格を考えるとそれは考えにくかった。なにより人というものは自分の出した
成果は直に自分自身で確認したいものだ。そして、それが日が浅く経験が薄い人間ならば
それは尚更の心理で…

「いらっしゃいますよー」
案の定、アキカン帽子を被ったのもじがひょっこり奥から顔を出し、捕縛者を見上げる。
反対にミドは彼女を見下ろす形になる。両者の目線の高さは1m程度の高低差。
二人とも見上げるような形で視線が合わさる…あまりお目にかかれないレアな光景である。
ミドは息が少し詰まって来たのか、少し苦しげに声をかける

「…これは個人的な意見なんだけど、こういう不必要な萌えシーンは『死亡フラグ』が
立ちそうなんで、一刻も解消して早く次のステップに進みたいんだけど、どうかな」

油断なくスリングを構えつつも、のもじは首肯する
「それには全くの同意、縞パンであるところのゆうしゃさま。えーと、降参する?」
ミドはその問いかけに苦笑する。
「んー一応、私は勇者職なんで『最後まで諦めない』なイベント選択肢をしようかなと
思ってるんだ。所謂、無駄な抵抗ってやつ?」

のもじが首をかしげた。言葉の意味がわからなかったのだ。そして実際に意味はない。
彼女の待っているのは相手の返事ではない、その反応なのだから
そして何かいいかけたのもじは中途、何かに邪魔されたように息を大きく吸い込み

「はっ~」
「は?」 

「ハックショーン!!テ゛ィストロイ」
ひとつ、大きなくしゃみをした。

ゆうしゃは、くしゃみざいをつかった!!―こうかはばつぐんだ!!

ゆうしゃのはんげきがはじまった。

†††

石田歩成から譲り受けた旧日本軍開発の『くしゃみ剤』の効果は抜群だった。
散布型くしゃみ剤が効果を表したのを確認するとミドはバロネスから受け取ったスカーフに
手をやり2本目のナイフを抜き出す。
そして蔓を切りとりあっさり罠を抜け出すとくるりと地面に降り立つ。元々はのもじが仕掛
けた罠だが、先ほど見つけた時に”自分に都合のいいように”仕掛け直した。
そういう罠だから、あっさり解除も当たり前。そして、対戦者はこの”仕掛け直し”を
見抜けなかった。やはり、応用力うんぬんに問題があったのだ。
ミドは降り立つ時には既に抜け目なくマスクを着用している。

彼女の『思いだす』ストックは今回も3つ。

■セリフ2(石田歩成)
「旧日本軍の散布用しゃみ剤は対ゲリラ用途に開発された薬剤です。
かなり強力なものでそのまま使えば長期間激しいくしゃみに襲われ続けます。
くしゃみ中はその音で自分の場所を知らしてしまうので潜伏や隠密行動が
不可能になるほか、声を出して指示を出したり、腹式を使う運動、全力移動や
激しい戦闘も阻害されることになります。
具体的使用方法は―」

これが彼女の今回用意した奥の手。
彼女は初戦敗退した石田歩成に接触し、彼から徴収した『戦利品』を上空から散布すること
でのもじから行動力を奪ったのだ。くしゃみでまともに声も出せない状態になるため、
あの要注意なおかしな掛け声も発生しない。否、したくてもできない状態においこんだ。
トラップへの警戒心も、方針転換しのもじ自身が仕掛けた罠を逆活用、本人の油断を誘う
ことでクリアー、彼女をおびき寄せることにも成功した。後は予定通りに…

彼女の行動はすばやかった。

カパッ。
ミドはのもじAから「ふしぎなぼうし」を盗んだ。

スタッ。
ミドは落ちている「すりんぐしょっと」もひろった。

そして
タタタタッッ、ゆうしゃは、さんたび、にげだした。

「はっくしょん、まてーー」
ゆうしゃ三度目の遁走。背後からは、のもじのくしゃみの音がもう一度だけ聞こえてきた。

†††

『思いだす』残りのストック2つ。

■セリフ3(某希望崎学園生徒)
「ヒャハー!阿野次の能力?。あいつは 確か唄う曲の内容が実現するという完奏現世術
(フルソンブリンク)の使い手だったはずだぜー。DPなんちゃら?なんだそれマジ意味が
分かんないぜ」

■セリフ1(阿野次のもじ)
「よくぞ聞いてくれました。実は私こといっちゃんにもよく判っていません!!」
『パルプンテ』以降の台詞は思いだすだけで頭が痛くなってきたので割愛。

ここから読みとれるのは、彼女の固有の能力は別にあり、そして彼女自身の発言を信じる
ならあの能力を本人も理解し切れていないということ。ミドはこれは『パルプンテ』もどきが、
阿野次のもじ固有の能力ではなく自分の「まるごし」と同じ、アイテム依存型の能力である
からではないかと当たりを付けていた。

その場合最も怪しいのは―――ここ最近、彼女の被っているアキカン帽子である。
対戦者の追跡音(くしゃみ)がしないことを充分確認しミドは盗んだアイテムを見やる。
次の対戦候補二名の能力を考えると、アイテム没収能力のあるらしいDP戦略という能力は
自分の手札に加えておきたかった、破壊するつもりは今のところない。
とりあえずコンコンと叩いたり、全体をじっくり眺めて見る。―おかしな動作などはない。

「ホント何のへんてつもない玩具帽子に見えるけど…これを被って叫んでみればいいのかな。
―ん、いや何か、奥の方に書いてある。説明書き?」

ミドは「しらべる」を選択し、あきかん帽子を太陽に当て、中に書かれた文字をのぞき見る。
目を細めると、そこには油性マジックで、こう短く書かれていた。






―でぃれでぃれでぃれー♪
脳内に嫌なBGMが響く
―偽物!―
とっさに記憶をリプレイする。この局面で、このサイズ大を隠せそうなモノというと……

「本物は…リュクサックの中!?」

「Exactly!!」
振り返ると茂みの中から対戦相手ののもじが姿を現していた。のもじの頭上には
クイーンヘッド(本物)。ミドは既に能力発動に十分なほど接近をされている。

してやられた!ミドは慄える。
しかし、だが、おかしい。何故、彼女は自分に感付かれずにここまで接近できるたのだろう
石田歩成の発言によれば、くしゃみ剤の効果で彼女は「長期間激しいくしゃみに襲われ行動が
阻害され」ているはずで、追尾や静かな接近など到底無理な話…”できるはずがない”。
『おもいだし』の能力は一字一句正確無比に台詞を再現できる能力なのだ。
一体、自分はどこで何を間違えたというのだろうか。その動揺を読みとったのか、のもじは
ウィンクしてこう言葉を続けた。

「答え合わせは番組の後~~、そういう訳で本日も 元気にいってみましょう。
D・P・戦・略ぅーーーー」

そして、世界(まっぷ)が暗転(るーら)した。

◆君の想いが偽物でも
「強い!強いぃぃぃぃ股の海、先日の欠場を除き~ここまで破竹の11連勝です。」
「いや流石、股の海、力強い取り口ですね」

TVで大相撲秋場所を見ながら、石田は昨日のことを韜晦する。
あの大会では色々と大変な目にもあったけど、その後、なんだかんだでいい思いをしている。
試合に負けてから逆に、運が上向いてきたのかもしれない。

昨日、彼は二人の女性から『めいれい』という名のネゴを受けた。それは…

某「ゆうしゃ」からは「くしゃみ剤の使い方と効果の音読。所有しているそれの譲渡」
某「女王様」からは「もし自分の対戦相手からの接触があったら詳細知らせろ」というもの。

矛盾という言葉があるがこの場合、両方の『めいれい』は相互矛盾せず実行可能なもの
だったので、彼は有難く、王手飛車取り、両方ともの駒を頂くことにした。
利に転ぶ者は当然、利によって寝返る。当たり前の理屈である。そして、手を打つなら
後の先となるよう仕掛けていたほうが圧倒的に有利。今回でいえば勇者の封じ手は
最初から魔王側につつぬけになっていたのである。
石田は薄く笑う。

「なによりミドさん。将棋勝負にぺテンやイカサマを持ち込んだのは酷い『悪手』でしたよ。
いいですかミドさん。僕はズルをしたからでなく魔人化という『とても理不尽な理由』で
奨励会を追いだされたんですよ。一生を賭けた想いを台無しにされた…そんな
『とても理不尽な負けを強要された』棋士に対して貴方は絶対にやってはいけないこと
をしてしまった。だから、ボクも一つ、お返しにぺテンを使わせて頂きました」

元々彼の能力「盛上駒踊り食い」は口の中から駒が飛び出せば、その時点でほぼ勝敗が
決まってしまう性質のものであり、1、2回相手にくしゃみさせればそれで用をなす。
 要するに彼には『旧日本軍が使っていたような強力な効果』など必要なく、薬の効果
を薄め、彼なりに”調整”してアレンジして使っていたのだ。
そして昨日ミドが『心に刻んだ』のは旧日本軍時代の効果と使用方法、つまり最初から
正しく使いこなす伝手が用意されていなかったのだ。

「サービスで”最初のひと吹き”だけ強力に作用するようしておきました。
用心深い貴方なら一度誰かで実験するでしょうしね。まあ、これで”おアイコ”という
ことにしておいてください」

無論、石田はもう片方の女王様側に対してだって含むところはある。だが、こちらは
恐ろしくストレートな手法を用いて、彼を口説き落とすことに成功していた。
それは…
昨晩から並べたままの状態になっている盤上の駒を見て、石田歩成は苦笑する。
しかし凄い力押しだったな、股の海ですかよアンタ…
あろうことか石田の玉は「女王」の一手により詰まされていたのだ。

●間奏曲『Dangerous crossover』    
                      (作詞作曲:阿野次のもじ)
Dange-rous crossover!
Dange-rous crossover!
Beyond this point.no life is in danger ahead!!

   ☆!Ole!☆

散る者問わず、去る者追わず、駆けあがり続けて来た。
敗北を踏みつけ、死亡警告(ふらぐ)を蹴飛ばしながら~
今日も明日も、俺たちは競い合っていく。

水を纏い、ビルを壊し、乙を引きちぎるぅ魂の叫び。
英と知が、宙を舞うデカルチャー☆

爆ぜる、駒を砕き、コインを、弾く、物語のなかで~
今日も ”奴” が、両国で四股を踏む~♪

Dange-rous crossover!
Dange-rous crossover!
Beyond this point.no life is in danger ahead!!

◆魔王城裁判~まおゆうで始まる、コンティニュー~

『HAHAHA!ダブルで、事前にすり替えておいたのさ!』
「オノレ!!許せる!!」

ミドが、目を開けると例によってそこは異空間だった。
そして高台から、朗々と叫んだのは大魔王ルックのクイーン・のもじ。その高笑いと
ネタばらしはまさに地獄からの使者に相応しいモノであり、これには勇者姿のミドも
ガッテンガッテンと納得の連打をあげるしかなかった。

『という訳でさんざ手こずらせてくれたな窃盗犯。DPなくして無罪なし。
あとはカッチリしゃっきり片をつかせて―ってオイ…泥棒猫、貴様は何をしているのだ」

クイーンの呆れた声が響く。勇者であるミドは彼女の口上の間にもそそくさ移動を開始し、
空間中央に存在する「宝箱」に手をかけていたのである。
手錠がされているというのに全く迷うことなき動きだった。「宝箱」があれば「開ける」。
これは勇者の習性ともいうべき基本動作である。

そして
―パカ―
RRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRNNNNN!!!

開いた瞬間、箱から盛大なアラーム音が鳴り響く。とっさに離れ、床に身を伏せるミド。
対しクイーンは悠然と箱まで歩むと、目当てのものを抜きだし、しれっと音を止める。
―正体は”セットされた”のもじの目覚まし時計。

『……』
そのままドン!と足で豪快に箱を閉め、上に仁王立ちで立ち、相手を見下ろす
クイーン、相変わらず感情の篭っていない目が怖い。
ミドはその絶妙なセット時間の読み―自分が宝箱を開けるタイミングなんてどうやって
読みこんだんだよプロ棋士かよ―に苦笑した。そして同時に相手の正体も悟る。

「貴方自体がのもじちゃんの『お師匠さん』でしたか。こりゃ読み間違えちゃったか…」
『おしかったな。今回も相手の下半身だけでなく心まで咥えこんでいればどう転んだか
判らなかった。まあ、そこが小娘の限界といったところではあるがな』

そういいつつ、クイーンは上下にフットワーク、リズムを取り始める

『ふむ、では、ここは一つアラサー(注1)たる、わらわ直々に、恋のイロハ、ABCという
ものをレクチャーしてやろう』

明らかな余計なお世話である。
だが、クイーンは―外宇宙CQC―そう呟くと構わず正拳の構えをとる。

!!!!!!!!【 外宇宙CQC・弐重七式 】!!!!!!!!!!

ホォォォォォォッォオォ

『A!(attackの略/英語で先制の一撃の意)』
神足の踏み込みで放たれた正拳突きが、起き上がり中の相手に決まる。
そう色恋も、何事も先手必勝!押しの一手である。

『Bィィ!(brokunの略/英語で態勢崩しの意)』
そしてそのまま流れるように当て身に繋げる、押した後は相手の懐に入ってこちらの
ペースに持ち込む! ゆうしゃの態勢は崩され、カラダが綺麗に宙に浮きあがる。

そして最後、トドメとなる会心の一撃―――

『Cィィィ!!
(「Corose!Corose!!SUBETEWO COROSE!!
玉座に叛らう者は残らずコロセ! 親族・兄弟・恋人関係ねぇ! 今日は弟の信長をやったぜ!!
明日は浅井と松永やってやる。逆らう輩は一族郎党皆殺し~焼き討ちだまし討ち毒殺上等
お手の物。余は髑髏の杯を希望じゃ。ぶち割れ床を!カチワレロ頭蓋!ぶちまけろ脳髄!
ハハハそのゴミくずのような命を100億の星ボシの頂点たるこの銀河皇帝に捧げるのだ!
下等生物どもめ。く、あははははははははははははははは! 
ん、なんだ、こいつ頭割れたのに手足まだジタバタバタ動かしてやがるぜ。超オモシレー!
あーと、何いおうとしてたっけ途中で忘れちまった。まあ、いいか今日は店じまいだ、の略
/足立区で「スゲえ!ア・キカンX様はホントにメタルモンスターだぜ!!」の意)

―――――――
――――
――

Critical hit!! 勇者は256ポイントのダメージを受けた!

そして優雅にあらぶるアキカンのポーズ・ターンXを決める大魔王もといクイーン。
――――
―――
崩れ落ちるゆうしゃが最後に見たものはその後ろ姿であった。
『その3つを深く心に刻みこめ―そして次は4人パーティで来るがよい。』

ROCK ♪ ROCK  ♪

♪ ROCK in the herat~~♪

『渡葉美土、外宇宙CQC弐重七式「恋のドキドキABC」にて有罪確定。敗訴』

―――――――――― (バタン)=閉廷=(バタン) ――――――――――――


(注1):アラウンド・サウザントの略。


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