※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

プロローグ(悠久への誘い、鮎阪千夜)

闇と少女があった

「ねえ、お姉ちゃん」

少女は妹の姉であり、妹は姉に話しかけ、姉は妹をじっと見つめ微笑んでいる。

「ねえ、お姉ちゃん。私、50m泳げるようになったよ
ねえ、私、お姉ちゃんの好きな歌、歌えるようになったよ
ねえ、私、お姉ちゃんとノートに書いた物語、完成させたよ」

姉は何も喋らず、ただ静かに妹に微笑みを返す。

「ねえ、おねえちゃん。私も今年で18歳になるよ、お姉ちゃんとお揃いになるね
え、お姉ちゃん、行ってしまうの?」

隙間から夕日が差し込み、照らされた姉の微笑む姿は白く霞んでいく。

「ねえ、おねえちゃん!」

妹は呼びかける

『ねえ、おねえちゃん!』

その声に答えるのは自身の声の残響音のみ


「ねえ、おねえちゃん」

      『ねえ、おねえちゃん』


姉の姿は消え去り、ただただ只管に自分の声が鳴り響く
それでも妹は呼びかけを続ける。


「ねえ、おねえちゃん」
      『ねえ、おねえちゃん』
           「ねえ、おねえちゃん」
                『ねえ、おねえちゃん』
                     「ねえ、おねえちゃん」
                          『ねえ、おねえちゃん』
                               「ねえ…」

妹の、鮎阪千夜の声が幾重にも重なり鳴り響く、
そしてここには最早千夜の声以外のものは何もない。

また伝える事ができなかった。
これは現実ではなく夢だ、そう、夢の中ですら伝える事ができなかったのだ
姉への自分の気持ちを。





「落ち込んでいるようだな千夜!そういう時は俺に任せな!」

闇の中一人取り残された千夜の目の前に突如騒々しい声と共に
ローブに身を包んだ一人の不審な男が現れた。

「え…っ!?お…お兄さん……誰…?なんで私の名前を…や、それより
私のお姉ちゃんがどこ行ったか知らへん?さっきまでそこにおったんやけど」」
「おっと俺が誰か分からないか?はははは、まあ…ってお姉ちゃん?」
「ん?」
「ちょっとアンタの兄弟構成について教えてくれないか?」
「えっと、私と私のお姉ちゃんの二人やけど…?」
「…ふーむ……まあいいや!まずお前の姉ちゃんの事だが残念ながら知らん!
そして俺の用件を簡潔に言うとだな、これをお前に渡しに来た!」

「(なんや、勢いで勝手に話を進めようとするなこの人は)これは…カード…?」
「そう、そのカードはお前をイイトコ連れてってくれる切符であり、
約束の待つ夏へと続く扉であり、舞踏会へ連れて行ってくれるガラスの馬車だ!!」
「…カボチャの馬車?」
「そう、それだ!」

千夜は胡乱な男に白けた表情を向けつつ、渡されたカードへと視線を落とす。

「これって…もしかしてテレビでやってたC2カードって奴ちゃうん…?」
「そうそう!そいつをアンタに渡す代わりに頼みたいことがあんだ。」
「頼み事?C2バトルに参加しろって?」

千夜はなぜ自分がそんな事しなければいけないのかという様子で答えた。
そしてそんな事お構いなしに男は話を進める。

「それもなんだけどさ、C2バトルの他の参加者のC2カードを手に入れてほしい。
たぶん俺が渡した一つとほかの奴から一つの合計二つあれば十分だと思うが
一応できれば多くあった方が良いかな」
「んー、なんでお兄さんはC2カードが要るん?
それと戦いに参加する事に私のメリットとかはなんかあるん?」

千夜の態度は不信感に満ちている。

「まずC2カードを集める理由だが、俺は今ちょっと非現実の世界に囚われの身で
それを脱するのにC2カードが使えそうだったんだが、こっちで手に入れれるのは1つが限界で
後は現世にいるお前に集めてもらおうって魂胆なんだ。
そしてお前のメリットについてだが、勝てばC2バトルの賞金が貰えるし、優勝すれば願い事が叶う
しかも負けても金が貰えるんだ、参加するだけでメリットだらけだろ?
まあC2カードをパクったらその試合の分の賞金は貰えないらしいけど」

「ふんふん、んーまーそっかー」
小さく頷き若干悩みながらも、懐疑的眼差しに変わりはない。

「ああ、そうだ。それとお前、お姉ちゃんがどうとか言ってたな?
さてはお前のお姉ちゃんとやらは既に亡くなってるんじゃないか?」

「うっ………うん…」
千夜は思わずたじろぎ固唾を飲んだ。

「やっぱなあ!ここが夢の中だってのはお前もなんとなく気づいてるだろ?
そんな中で人を探すなんてのはよっぽど会いたい人間なんだろうなって思った訳よ。
いや、それよりもさ、もしかしたらC2カードを集めてくれりゃお前をお前の姉ちゃんと
会わせてやる事も出来るかもしれないな、まあ生き返らせたりは無理だけど」

「ホ、ホンマ!?そ、それって私の中の記憶や無意識のお姉ちゃんを夢として出現させるって事!?
それとも死後の霊的なホンマもんのお姉ちゃんを呼び寄せるとかそういうの!?」

姉と会わせてくれるという男の話を聞いた途端に千夜は先ほどまでの
態度と一変して、男の話に目を輝かせ始めた。

「お、おお。やっぱこの話題には食いつくんだな。勿論本物さ、
霊的って訳じゃないけど生前と同一個体のお前の姉ちゃんと会わせてやるよ」

「わーっ!ホンマ!?それやったらやる!絶対参加する!!」
「じゃあ決まりだな!そろそろ限界みたいだから俺はこの辺でお暇するよ」
「あ、折角やしお兄さんの名前教えてーや」

「……そうさな、俺の事は《プラナーカオスタイムシフター》とでも呼んでもらおうか!」
「ぷ、ぷらなー…?」
「まあ、次に俺がお前と会うのはおそらくC2バトルが終わった後だから
それまでC2カードを集める事に専念して俺のことは忘れてくれてかまわないんだけどな!」



翌朝目を覚ました千夜は枕元に置かれたC2カードを手に取るとじっと見つめ考え事を始めた。
あの変な男を本当に信じて良いのだろうか、今まで戦闘経験のない自分にC2バトルで勝利する事は出来るだろうか
あの男はどうやって現実世界の枕元にこにカードを置いたのだろうか。

どうでも良い小さな疑問から参加への不安まで色々な考えが頭を過ったが、結局深く考えずに
C2バトルの準備をする事にした、お姉ちゃんとまた会えると思うと他の事なんてどうでも良く思えたから。