魔法少女ブルー・サワー(By オシリス・キー)
作者 オシリス・キー(ID:g4NYk3ye)
取得元 オリジナル魔法少女陵辱スレ,http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1156666135/
取得日 2007年11月06日
タグ 魔法少女
概要&あらすじ ぽよよんロックの魔法少女下敷きから、生み出された二次創作。その1/5
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ご注意:以後の作品の著作権は、作者(書き込み主)にあります。
110 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:04:53 ID:g4NYk3ye
去年の冬コミケかな? のカタログ買ったときにどっかの店でついてきた、
ぽよよんロックの魔法少女下敷きが妙にエロくて、
それ主人公にしたSS書いてたんで投下。
結局魔法少女的なエロさは書ききらないまま終わってるんだがね……。

111 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:07:38 ID:g4NYk3ye
●甘味葵(かんみ あおい)
 星結中等学園二年A組。ひょんなことから魔法少女ブルー・サワーとなり星結市を守ることに。
 成績優秀、眉目端麗だが異性との交友関係はなく、経験もなく、そもそも興味がなく、
異性を頭の悪い獣のような存在と信じて疑わない。
 というのも兄がデブキモオタニートで、しかし肉親が父と兄しかいない為、
単身赴任をしている父のいない今、面倒を見なければならないのは葵だけだからだ。
 日々自慰に耽って何もしようとしない兄にほとほと嫌気がさしている。
 ちなみに胸がないが、お尻が大きい。
●ユッピ
 魔法の王国ブルーハワイに生息する動物で、種族名をエーテルイーターという。
 普段はエーテルを食べて寝る事しかしない無能だが、少女と同化することによって魔法少女ブルー・サワーに変身させることが出来る。
 ユッピは星結市を守ることをブルーハワイの王様、ブルー・サマー・ビフォアに命じられており、ここ数年星結市で生活している。
●魔法少女 ブルー・サワー
 代々星結市を救い続けてきた魔法少女の総称。前代は甘口苗。
 地球上に浮遊するエーテルを集めることで、悪意を四散させる楽園を一時的に作り出す。
●甘口苗(あまくち なえ)
 星結中等学園三年D組。ブルー・サワーを一年で引退した少女。
 いじめられっこで引っ込み思案、眼鏡っ子で超乳。
 敵の超人の罠にかかった過去がある。
●甘味正樹(あまみ まさき)
 甘味葵の兄。妹物、魔法少女陵辱物のエロゲーをよく使用する。
●辛子優治(からし ゆうじ)
 星結中等学園三年D組。甘口苗とクラスメイト。学園の生徒会長を務め、眉目流麗。

112 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:15:37 ID:g4NYk3ye
 星結中等学園に通う二年生の甘味葵は若干美少女である。
 いや、見た目は掛け値無しの美少女なのだ。背は低く胸も控えめだが、
それを魅力に変える幼さという名の魔法をまとっている。
 淡く青い髪はツインテールで、目は大きいが躍動感のある作り、
血色のいい唇は小さく、まるで人形のような顔立ちである。
 紫を基調にした学園の制服は気持ちダブダブで、それがまた彼女のいじらしさを際だたせている。
 しかし、その幼い体のつくりにギャップを生み出しているもの、それは臀部だ。
 一見中学生然とした体つきではあるが、臀部だけは人並み以上に大きく、
 脚も張りこそあるものの太めである。太っているわけではない。
 何故なら彼女は陸上部、特にマラソン分野のエースであり、足腰が鍛えられているのである。
 そのアンバランスさがまたマニア受けするらしく、
マラソン大会に出場するたびにカメラ小僧が集まるほどだった。
 全体的に見て、それは幼さの上で成り立つ美貌であり、それはひどく危ういバランスの上で成り立っていて、
見ているだけでハラハラさせる何かがあった。
 それはつまり、今の美貌が完成された美しさであることを示していた。
 さて、それでは見た目以外の問題とはなんなのか。
 それは彼女の内面、男が大嫌いなことに起因している。
 通っている星結中等学園は共学であるが、彼女は男と話しをすることすら拒んだ。
 教師であろうともそれは同様で、何が何でも断固無視(あるいは無視よりも傷つく罵声の連続)
であることに誰もが呆れ、授業中に彼女を指名する男教師などこの学校には存在しない。

「別に女がこう……好み、ってわけじゃないんでしょう?」

 星結中等学園二年A組の教室。
 放課後の黄昏の中、新聞部副部長、赤原理香のインタビューを受けていた葵は溜息をついた。

「なんでこう、何でもかんでも色恋沙汰にしようとするのかな。女の方が話しやすいってだけだし。
変な目で見てくる女がいたら、それもそれで嫌がるから。そう、ちょうど今の貴方みたいにね」
「そりゃ結構、こっちも仕事だしね」
「たかだか部活動でしょ?」
「あら、心外ね。部活動だからって馬鹿にしないでよ」
「部活動なら人に不快感を与えていいって訳?」
「あ~……はい、ごめんなさい」

 よろしい、と目を閉じて腕を組み、胸をそらす葵。
 現在、『雑誌にも目をつけられる我が校が誇る美少女、甘味葵の謎に迫る!?』
という題名のインタビューを受けている最中である。
 学生新聞である月結マンスリー新聞にこの記事が載るのは、
夏休みを前に控える来月号の事らしく、発行部数が一年の内で一番伸びる号なのだそうで、
どうしてもスクープ記事が欲しいの! と新聞部の下っ端をしている親友、
同じクラスの星野林檎に土下座されたのは昨日の話。
 その新聞でさらし者になる私にとってみれば、
たくさんの人の目に触れる新聞で見せ物パンダになるのは遠慮したい所だったが、
友人たっての頼みということで、嫌々ながらもこうしてインタビューを受けている、
という次第である。

「じゃあ改めて」咳払いをする理香。「では、男が嫌いな理由は何なのでしょう?
聞くところによると、雑誌にも登場するほどに人気が出ているそうですが」
「だからさっきも言ったけど、それだけは書かないで。記事名も変えて」

113 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:18:56 ID:g4NYk3ye
 葵は身を乗り出して頼み込むものの、理香はばれっこないわよ~と言ってなかなか要望を聞いてくれない。
確かにそれは事実だし、ばれっこないという理屈もわかる。
 しかし問題は葵自身のプライバシーに関する点なのである。
 葵が取り上げられた雑誌、それは一八歳未満購入を禁止されているいかがわしい雑誌なのだ。
 いわゆる投稿写真を載せるだけの雑誌であり、そんな雑誌を購入する連中、
及び雑誌に投稿する連中の人間性を疑う内容に違いないのだが、
その雑誌に毎月のように葵が登場していることが判明したのである。
 主に葵がマラソン大会に出る際に体操着を着ている写真だ。
 葵自身は知らなかったのだが、月結中等学園の体操着は他校と違いブルマーが未だ採用されており、
それがマニア心をくすぐるらしい。
 また幼児体形でありながら臀部が大きく、また太ももが筋肉質な葵がブルマーを着る姿は、
一部の変態にとって非常に扇情的に映るらしいのだ。
 あんないやらしい雑誌に何の許可もなく毎月掲載され、
更に多くの変態共に観察されていると考えると、吐き気すら覚える。
 確かに、その雑誌は一八歳未満が購入することを禁止されているし、
また学生新聞も中等学園内のみで配布する為、
取り上げられている雑誌がいかがわしい雑誌であることがばれることなどありえないはずだ。
 しかし、現に新聞部の連中には調べがついているではないか。
 今はインターネットもあるし、また学生でも法律を守ろうとしないアホがその雑誌に手を伸ばさないとも限らない。
 また、教師や学内で勤める大人の存在も気がかりである。
 もちろん、教育の場で勤める大人達がモラルを持っていると信じたい。
 しかし最近は教師のセクハラなんて珍しくないし、パン食堂や購買に勤める大人は教師という訳ではない。
 そもそも葵はその気性から、少なからずの男性教師から嫌われているし、
 実際いやらしい目で教師から見られることも少なくなかった。
 故に、雑誌に登場していることを公表したくなかったのだ。

「……さて、こんなもんかな。どうもありがとうございました!」
「ちょ、待ってよ! その見出しを訂正するって約束して!」
「じゃあ部長と相談の上でってことで、さようなり~~~!」

 そう言って理香はテープレコーダーと筆記用具を片付けると、逃げるように教室を出て行った。
 葵は大きく溜息をついて下校の準備をすませると、もはや人影まばらな校舎を出る。
(……あ、部室)
 今日は陸上部は休みだったが、陸上部の部室に体操着を置き忘れていたことを思い出す。
 夏前とはいえ六時を過ぎれば太陽は低く、
暗い中を校舎裏の部室棟にまわるのを不安に思わないわけではなかったが、
汗のしみついた体操着を放っておいては明日の体育の時に不快である。
 鍛錬ついでに小走りで部室棟に向かった。

 部室棟につくと、陸上部の部室は明かりがついていなかった。
 しかし、その隣の水泳部の部室の明かりがついていた。
 通り道だったので興味本位にそのガラス戸を覗き込むと――。

114 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:21:25 ID:g4NYk3ye
 二人の男女が抱き合っていた。女性は向こうを、男性がこちらを向きながら。
 女性は、一学年上にあたる水泳部の選手、甘口苗さん。
 水泳部の中ではぱっとしない選手であり、大会などにも出たことのない人だったけれど、
部室棟周りの掃除をよくしている事から葵とよく話す間柄になっていた。
 性格は引っ込み思案で、人と付き合うことが苦手そうだったが、礼儀正しく、
口だけ達者な社交的と呼ばれる連中よりもよっぽど付き合いやすいと葵は思っていた。
 顔立ちは可愛いというよりも美しく、どこか退廃的なムードを漂わせており、
葵にはない大人の魅力を持っているように見えた。
 何より目を引くのは胸が豊かな所であり、葵より若干高い程度の背には似つかわしくないほどに豊満で、
女である葵が言うのもなんだが、見ていてドキドキしてしまうほど扇情的な体のつくりだった。
 対し、その彼女を抱き留めている男性は、苗さんと同じく一学年上にあたる、バスケ部の辛子優治だ。
 当然のごとく話しをしたことはなかったが、クラスメイトの噂を聞くにおおむね好評で、
背は高く顔の作りも端麗、一部の女生徒からは王子様扱いされているようだった。
 まあ葵にとってみればどうでもいいことだったが。
 葵はどうしてか、その二人の抱擁に魅入られていた。
 二人がこういう関係にあったということを知らなかった(皆には知れ渡っていたかもしれないが、
葵自身はそういう情報に興味がなかった)というのもあるし、
こういった場面を直に見たことが初めてだったから、というのもあったのだろう。
 さっさと立ち去るべきだとわかっていながら、どうしても動けずにいると――。
 ――男が顔をあげ、ガラス越しに葵を睨んだ。
 葵は陸上部の部室に立ち寄るのを忘れ、鍛錬の時以上のスピードで校門をくぐっていた。
 とにかく恥ずかしい。男と女の絡みを必要以上に嫌い、色恋沙汰を聞いたところで無関心を装ってきた甘味葵。
 しかしそれは、必要以上にそういった話に敏感であることの裏返しだったのである。
 今まで隠し通してきたその事実の片鱗を、あろうことか色男である辛子優治に見られてしまったのだ。
 思わず奇声を発してしまいそうなほどに恥ずかしい失態。
 うかつな自分自身の行動に、葵は胃が痛みそうなほどの後悔を覚えていた。
 公園あたりまで走ったところで、やっと疲れを自覚する。
 ペースを崩して走るなんて、マラソン選手にとって一番やってはならないことだ。
 葵は自省しながらベンチに座り込む。

「うわ……あ~もう、嫌ぁ……」

 未だ後悔が残る中、大きく体を伸ばして溜息をいくつか吐く。

(興味がある……それは、事実。でも、そうなりたいって訳じゃない)
(仕方がないのよ、環境がそうさせたの。だから私がそういう事をしたいって訳じゃ、決してない)
(全部、お兄ちゃんのせいなんだ。お兄ちゃんが悪いんだ……)

115 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:24:08 ID:g4NYk3ye
 眉をひそめて乾いた唇を舐めていると、不意に視線を感じる。
 閉じていた目を開くと、正面にサラリーマン風の男が立っていた。
 彼の視線を追って下を見る……と、スカートから伸びた葵自身の脚があった。
 注意していなかった為、スカートがはだけており、
あと少しでショーツが見えてしまうほどに太ももがあらわになっていたのだ。
 葵は慌てて脚の間に両手を入れて男を睨みつけると、男はへこへこと頭を下げてその場を去っていった。

「最低」

 やっといつものペースを取り戻して、葵は一人ごちる。
 まったく、雄という生き物は救いようがない。死んだ方がいい、と冗談ではなく思う。
 何故なら葵はその外見からして告白ラブレターストーカーといった一方通行的恋愛行為の被害には事欠かない為、
男性との思い出で心地よかったことなど生まれてこのかた一度も無かったのである。
 そして何より、兄の存在が大きい。まったく彼こそ、救いようのない男なのである。
 葵の家は父子家庭であり、また父は東京に単身赴任しているため、
駅に近いだけが取り柄の六畳二間のアパートに住んでいるのは、葵とその兄である甘味正樹だけである。
 正樹は高校卒業後、定職につかず、現在ニートをやっている。
 引きこもりという言葉をフリーターという言葉で誤魔化していたとすれば、
ニートはなんという言葉を誤魔化しているのだろう。
 わからないが、もしそんな言葉があるとすれば、
その枕詞に「死んだ方が良い」とつけたところで違和感のない言葉に違いない。

(あいつみたいな男が全員、ってわけじゃない。それは、わかってる)
(でも、少なくとも魅力的な男に会った事が今まで一度もない)
(悪い、普通まで会ったことはあっても、良い男に会ったことがないんだ)
(そりゃ、格好良いとか、そういうのはわからなくないけど、そういう奴に限ってろくな男いないし)
(やっぱり、男は嫌い)

 気づけば呼吸が整っていたので、立ち上がって家路につくことにする。
 公園を抜けて、人気のない住宅街を進んでいると――。
 ――後ろから足音が聞こえてきた。
 ざっ、ざっ、ざっ……一糸乱れぬテンポで聞こえてくる足音。気味が悪くなり少し早足になると、その足音もテンポが早まった。

(やば……これ、マジ?)

 更にスピードを速めるものの、足音はやはり離れていかない。
 ここまで早足になってしまった以上、後ろを向いて確認するのも気が引ける。
 不自然とはわかっていたが、駆け足になって――。
 ――足音が、どんどん近づいてくることに気がついた。

(ウソ! 結構本気で走ってるのに……!)

 周囲を見わたすが、人影は不気味なほどにない。
 月明かりと街灯が照らすアスファルトは不自然なほどに明るく、逆に夜闇が色濃く感じられる。
 更にスピードを上げる。同時に近づいてくる足音もスピードを上げる。
 もはやなりふりかまっていられず、ペースも何もなく全力疾走すると――。
 ――背中を掴まれた。

116 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:25:09 ID:g4NYk3ye
「ひっ!」

 慌てて後ろを向く。そこには先ほどのサラリーマン風の男がいた。
 ただ、その瞳は先ほどまでの人間味はない。
 光を反射しない瞳は、葵の顔に向いてこそいたが、見ているようには思えなかった。
 その男は抗いがたいほどの力で葵の体を引き寄せると、唐突に抱き寄せてきた。
 情熱的、と言うのに無理があるほどに無理矢理な抱擁。

 葵は嫌悪感に体を震わせて、男を突き放そう、とするものの、力が足りずになすがままになってしまう。

「ちょっ、離して! 離してよ! 誰か、助けてぇ!」

 いつもの気丈な態度を崩し、必死に助けを求める、ものの、
不気味なほどに人の気配の感じられない住宅街に、声は空しく吸い込まれて行く。
 ついには押し倒されてしまう。背中に感じるアスファルトの低い温度。
 男は相変わらず無気力な瞳で葵を見つめ、しかし動物的な動きで葵の制服に手をかけ、上着を力の限り引っ張った。
 引きちぎられる制服。布の裂ける音を聞いて、葵は恐怖に身を強張らせた。

「い……いや……」

 あらわになる白いブラジャーを両腕で覆いながら、男に懇願の目を向ける。
 しかし男は動きを止めない。もはや瞳は意思を持っておらず、
筋肉だけが機敏に動き、葵のブラジャーの紐を掴むと、力の限り引っ張って――!

「青い夏を過ごせなかった憐れな子よ」

 唐突に、女性の声が周囲に響き渡った。男は紐を引っ張る手を止めて、ゆっくりと後ろを向く。
 葵が男の肩越しに見た女性。街灯の逆光で顔こそ見られなかったが、容姿は観察することができた。
 肩からは、紫を基調にしたローブが伸びている。その下にはスクール水着と見まがう露出度の高い肌着。
 豊満の胸の下にはコルセットのような作りの鎧を装着しており、その下からひらひらした紫の布が、
ちょうどスカートのように伸びている。
 短めのスカートの下からは細い脚が伸び、ちょうど膝の上部からタイツ地らしい白のオーバーニーが覆っている。
 靴は丸みのあるデザインだが丈夫そうな作り。
 そして何より特徴的なのは、華奢な手が握る長いホウキ。

「神が許さなくても、私が許しましょう。だから目を覚ましなさい」

 女性は一歩前に出た。それにより逆光が解かれ、顔を直視できるようになる。
 紫色の大きな帽子をかぶったその女性は――見たことのある顔だった。
(苗、さん……?)

117 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:27:22 ID:g4NYk3ye
 ついさっき、バスケ部の色男、辛子優治と抱き合っていた甘口苗さん。
 彼女の名をつぶやいたつもりだったが、恐怖で喉が動いていなかった。
 彼女は葵を一目見たが、反応は見せず、男の一挙手一投足を見逃さないように睨みつけた。

「ブルー……サワー……」

 意思を持っていないと思われた男だったが、その女性を見て確かに単語を口にする。

(ブルーサワー?)

 状況を読み込めない葵をよそに、男は葵から手を離すと、油断無い動きで立ち上がり、女性と向かい合う。

「貴方、まだ意識があるのね? ならまだ救いようがあるわ」

 そう言って女性はホウキを上に振り上げると、男の目先に向かってホウキの先を突きつける。
 竹の枝が詰まっていると思われたホウキの先だったが、その中央には赤みがかった水晶が見え、
その周囲は布で覆われていた。
 その玉の中には五芒星が描かれており、それは淡く明滅しているように見える。

「ブルー・サマー・オブ・レイニー・ブルー。メランコリック・レイニー・ブルー……」

 彼女が英語の言葉を唱えた途端、その五芒星の明滅が激しくなった。
 淡い白の光だったそれは、だんだんと青い色合いを混ぜてゆく。

「ノー、ノー、ブルー・オブ・レイン・イズァ・サイン・オブ・クリア・ウェザー。
アンド・ザ・サマー・オブ・ユー・フー・ヴィジッツ」
「あ……あ……!」

 男はその光を見てたじろいでいるようだった。
 もはや葵のことなど忘れているようで、逃げるように後ろへ退いている。
 しかし女性の詠唱は止まらず……やがて赤みがかった水晶は、完全に青い光に支配される。

「イッツ・プロミスドゥ・スィート・サマー」

 その言葉が放たれるや否や、その水晶から青い光が一気に解き放たれる。あまりの光量に目を閉じる葵。
 やがて。時間をおいて、恐る恐る目を開くと――
――ちょうど足下に、男が倒れ込んでいた。
 慌てて脚の間に手を入れたが、どうやら男は気を失っているらしく、微動だにしない。
 念のため顔を覗き込むと、穏やかに寝息をたてて眠っていた。

「なんだったの……?」

 まだおさまらない動悸に深呼吸していると、男の向こうに立っていた女性がこちらに歩み寄ってきた。

「怪我とか、ない?」

118 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:32:44 ID:g4NYk3ye
 その声は、やっぱり苗さんの声に聞こえた。
 だから葵は唾を飲み込んでから、まるで漫画に出てくる魔法少女のような服装をした苗に問いただしてみる。

「苗さん、だよね? わかる? 私、陸上部の葵だけど」
「わかってるわ。それより、怪我は?」

 やっぱり苗さんだった。葵は安堵に溜息をもらすと、小刻みに頷いて笑って見せた。

「大丈夫。服破れちゃったけど……ま、家に帰るまでならなんとかごまかせると思うし」
「念のために、これをあげるわ」

 そう言って、苗さんはローブの内側にあるらしいポケットに手をさしいれる。
 今気づいたが、そのローブの前を留める部分が、ホウキの先に入っていた赤い水晶と同じ形状をしていた。
 ちょうど苗さんの豊満な胸に傾斜して乗っかっている。

(立派な胸……私とは大違い)

 はだけてしまった自分の胸と彼女の胸を見比べて、ちょっとした無力感を覚える葵。
 葵自身、異性を忌み嫌っている為、セクシーになりたいと考えたことはなく、
胸を大きくするために牛乳を毎日飲んだりお風呂でマッサージをしたりと、
同年代の子がやっているような行動をとったことはない。
 しかし、だからといっていつまでたっても成長しない自分の体をもどかしく思わないわけでもないのだ。
 実際、この幼い容姿がカメラ小僧にとって格好のエサになっているわけであって、
さっさと成長して大人の女性となり、キャリアウーマンにでもなって男に一切頼らずに生きていきたい、とすら考えている。
 まだ中等学園二年生なのだから仕方ないといえばそれまでだが、苗さんは葵とたった一歳しか年齢が変わらないのだ。
 無力感を覚えて当然である。

「葵さん?」
「え? あ、ごめん、気が散ってた」
「これ、着て帰って」

 そう言って渡されたのは、見慣れた巾着袋だった。

「私の体操着……?」
「これ、陸上部の部長から預かったの」苗は若干早口でまくしたてた。「葵さんが体操着忘れていったから、
渡してあげてくれって。ほら、私の家って隣町だから駅使うじゃない? だから、駅に近い葵さんの家は通り道だから」
「はあ……」

119 :オシリス・キー:2006/11/28(火) 02:35:23 ID:g4NYk3ye
 葵は相づちをうったものの、若干それを疑っていた。
 先ほど部室に向かった時、確かに苗さんはそこにいた(何をしていたかは、まあ置いておいて)ものの、
隣の陸上部部室は明かりが消えていたし、そもそも陸上部は今日は休みだったのだ。
 葵と同じように、部長が偶然部室に寄ったと考えれば、済む話ではあるのだが……。
 とりあえず、破れた制服のまま帰るのは気が引ける。人影がないのを利用して、葵は苗さんを盾に体操服に着替えた。

(ちょっと湿ってる……あ~、やっぱり昨日持って帰っておくべきだったなぁ)

 不潔な体操服にうんざりする葵。同時に違和感を感じる――ブルマが小さく思えるのだ。

(やだ、またお尻大きくなっちゃったの? もう、勘弁してよぉ……)

 着替えを終えた葵は、ボロ布になってしまった制服を巾着袋に入れると、かねてから疑問に思っていたことを口にする。

「で、苗さんはいつから魔法少女になったんですか?」

 言ってから、少し後悔する。嫌味のように聞こえてしまうかもしれない、と思ったからだ。
 しかし苗さんは実際に魔法のようなものを使って暴れていた男の意識を失わせたのである。事実なのだから仕方がない。
 苗さんはうつむくと、こちらを伺うように上目遣いで葵を見つめた。
 男だとしたらいじらしく思う仕草に違いない、と他人事のように思う葵をよそに、苗さんははにかみがちに口を割った。

「一年前からなの。ずっと、星結市の平和守ってきたんだ。って言っても、信じないよね?」
「えっと……」葵は目の前で寝息をたてているサラリーマン風の男を一瞥してから、
苗さんと向き合う。「とりあえず、信じます」
「ありがとう」
 苗さんは優しげな笑み……葵では絶対に出来ないであろう柔らかな笑みを浮かべて、
とんでもない事を言ってのけたのである。

「あの、ちょうどよかった。ねえ、魔法少女やってみない?」

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