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252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 02:31:06.25 ID:ODe+vTZC0 その日一日中、ワルドは杖の修繕に余念がなかった。 かなりの集中力を要するとのことなので、ルイズは邪魔にならないよう、ワルドを一人にして おくことにした。 宿の者を呼んでルイズの荷物をキュルケとタバサの部屋に運び、ベッドをもう一台入れるよう 指示した。 平民から杖を叩き切られた負い目もあったのだろう、ワルドがこの処置に反対することは なかった。 258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 02:36:19.04 ID:ODe+vTZC0 そしてルイズは、ラ・ロシェールの町をベイダー卿と共に散策することにしたのだった。 ギーシュがそうであったように、ルイズもベイダーとは人一人分くらいの間隔を開けて歩いていた。 道行く平民たちは、ベイダーを見るとみなギョッとした表情を浮かべる。 それを連れている自分はどう見られているのだろうか……、少し心配になるルイズであった。 闇の中ではわからなかったのだが、この町の建物は一戸一戸が同じ一枚岩からくり抜かれた ものであった。 それに気づいた時、さすがのベイダーも感嘆の声を上げた。 「『土』のスクウェアメイジたちの技よ。スクウェアクラスともなるとこれくらいのことができるの」 ルイズが、我が事のように得意げに胸を張る。 261 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 02:39:02.08 ID:ODe+vTZC0 「確かに大したものだ。ワルド子爵もスクウェアクラスと聞いたが?」 ルイズは首肯した。 「そうよ。だから、一度不意打ちで勝ったからって油断しちゃダメ」 それ以前に、ベイダーにはメイジの扱う魔法全般を侮りすぎているところがある。 自分が一度出し抜いたように、敵からもその慢心につけ込まれたりしないか、ちょっと心配 なのであった。 「彼は味方なのだろう」 ベイダーがルイズに反論する。 だがそのくぐもった声で言われると、言葉とは裏腹に、味方など誰一人としていないと言って いるかのように聞こえるから不思議だ。 263 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 02:43:05.05 ID:ODe+vTZC0 「そりゃ、この任務の間はあまり無茶はしないでしょうけど、杖は貴族の誇りの象徴なんだから、 それを切っちゃったあんたを許しはしないわ」 ルイズは眉をひそめた。 ベイダーが自分の使い魔である内は、ワルドが表立って彼を襲ったりはしないだろうけど―― そこまで思案したところで、昨晩のことを思い出したのだった。 「ねえ、ベイダー。わたしね、昨日ワルドから結婚を申し込まれたんだけど」 「コーホー」 268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 02:49:52.85 ID:ODe+vTZC0 結婚という言葉を聞いた途端、ベイダー卿は黙ってしまった。 普段から無口ではあるが、今回はかなり不自然だ。 何か秘められた過去でもあるのだろうか、とルイズは未熟ながらも女の勘を働かせた。 「ねえ、何とか言いなさいよ。わたし、ワルドと結婚した方がいいと思う?」 ルイズがそう尋ねた途端、ベイダーは立ち止まり、まともにルイズを見た。 「当人同士が結婚を望むのであれば、そうするのが一番だ。障害となるものは主君 であれ馬鹿げた掟であれ、踏み越えていくがいい」 珍しく饒舌にそう言い切るベイダーに戸惑いつつも、ルイズは内心の憶測を確信に 変えていた。未熟な女の勘も、そう捨てたものではない。 だけど、肝心なことが聞けていなかった。 「あんたはどうなの? わたしとワルドに結婚して欲しいの?」 「二人が望むならするべきだと言っている」 断固としたベイダーの答えに、ルイズは思わず息を呑んだ。 270 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 02:54:58.72 ID:ODe+vTZC0 「ただ――」 ややあって、ベイダーが付け加えた。 「あのワルド子爵は気に入らない。結婚はやめるべきだ」 戸惑うルイズ。 「どっちなのよ? 矛盾してない?」 ベイダーは首を振る。 「矛盾などしていない。僕が障害になるのなら、僕を倒せばいい。それだけのことだ」 「そんなの無理に決まってるじゃない! わたしがあんたに勝てるわけないでしょ!」 ベイダーは小さく頷いた。 「そうだな。無理だ。つまりはそういうことだ」 そうとだけ言い、ベイダーは再び歩き出す。 ルイズは必死に頭をめぐらせた。 ベイダー卿は、自ら乗り越えんとしても乗り越えられない障害であると知りながら、結婚に 反対であると言う。つまり―― 結局の所、ルイズとワルドの意志がどうあれ、結婚は絶対に許さないと言っているのだ。 「なあんだ」 小さく呟き、ルイズはいつの間にかずいぶん先まで行っているベイダーの背を追った。 相変わらず交わす言葉は少ないが、並んで歩く二人の距離が、ほんの少し縮まった。 273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 02:57:51.73 ID:ODe+vTZC0 宿に着くと、ベイダー卿はさっさと部屋に引っ込んでいった。 「ちょっとヴァリエール、いきなり部屋が狭くなったじゃない!」 一人でいるルイズの姿を認めると、ロビーでくつろいでいたキュルケが真っ先に憎まれ口を 叩いた。 ルイズの手荷物とベッドが運び込まれたため、二人部屋では多少窮屈になったのだ。 「そう、ごめんね。ま、一晩の辛抱だし」 対するルイズの口調には、いつもの刺々しさがない。 キュルケは毒気を抜かれたようだ。 「どうしたの、あんた? ちょっと機嫌がよさそうだけど……あ、もしかして昨夜、あのダンディな 子爵様といいことあったってわけ?」 ルイズは慌てて首を振る。 「ないない。全然ないわよ、そんなこと」 「どうだか。ねぇ?」 キュルケが隣のタバサに視線を向けた。 タバサはじっとルイズの顔を見ながら、ポツリとこぼした。 「怪しい」 その視線に耐えかねて、ルイズも部屋に退散することにした。 275 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:03:22.43 ID:ODe+vTZC0 その晩……。 ベイダー卿とワルド子爵を除いた四人で夕食を摂った後、ギーシュは浮かない足取りで階段を 上っていた。 年代もののガリア産ワインによる心地よい酔いも、また一晩ベイダー卿と相部屋で寝なければ ならないことを思うと、あっという間に冷めてしまった。 部屋の前まで来て、大きく深呼吸。 おそらくベイダー卿はまだ起きているだろうと考え、自分の部屋でもあるのに一応ノックをする ことにした。 「誰だ」 扉越しの、くぐもった誰何の声。 「ぎ、ギーシュです、ベイダー卿」 「入れ」 恐る恐るギーシュがドアを開け、部屋の中に滑り込む。 ベイダー卿はバルコニーに立って、一つに重なった月を眺めていた。 277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:05:57.54 ID:ODe+vTZC0 さっさと眠るに越したことはない――ギーシュがマントを取ろうとした時、ベイダー卿の手から 一条の赤い光が伸びた。 「 ひ、ひいッ!」 ギーシュにとってそれはもはやトラウマである。 逃げ出すこともできず、扉に背を預けたまま床に座り込んだ。 280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:09:09.10 ID:ODe+vTZC0 だが、ベイダー卿がギーシュの方を振り向く気配はなかった。 じっと外を見ている。 そこでようやくギーシュも異変に気づいた。 先程まで煌々と輝いてバルコニーを照らしていた月が、何かにさえぎられて見えない。 よろよろと立ち上がってバルコニーの際まで進み、目を凝らせば、その何かとは巨大な 人型であることがわかった。 巨人の肩に、誰かが座っている。 その長い髪が、遠くアルビオンの方から吹く風にそよいでいた。 「ま、まさか……」 直接見たわけではないものの、こんな巨大なゴーレムを操れるのはギーシュが知る限り たった一人だ。 だけどその人物は、遥か遠方、トリスタニアの牢獄に収監されているはずだった。 一人ゴーレムと対峙するベイダー卿が、そこでようやく口を開いた。 「フーケ、といったか」 283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:12:40.09 ID:ODe+vTZC0 「感激だわ、使い魔くん。覚えててくれたのね」 フーケの目が吊り上がる。 口を衝いて出る皮肉はともかくとして、その心中は怒りで一杯だった。 「何の用だ。お前にかまっている暇はないのだが」 バルコニーに立ち、ライトセイバーを手にしたベイダーが言い放った。 どこまでも憎々しい使い魔だ、とフーケは思った。 「わざわざお礼を言いに来たのよ。素敵なバカンスをありがとうって――う、げっ……」 嘯くフーケだが、最後まで発言することができなかった。 ベイダーが空いてる方の手を前に伸ばしたかと思うと、見えない力でフーケの細い喉が 締めつけられていた。 294 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:16:04.52 ID:ODe+vTZC0 (くっ、このッ……) 酸素の供給を断たれた脳が悲鳴を上げる中、フーケはかろうじてゴーレムに指令を出した。 ゴーレムの拳が振り上がり、バルコニーに叩きつけられる。 粉砕されたバルコニーに、当然のようにベイダー卿の姿はなかった。 「あ、相変わらずおっかない使い魔ね……」 ゴーレムの肩の上に突っ伏し、ゼェゼェと荒い呼吸で酸素を貪りながら、フォース・グリップから 解放されたフーケは呟いた。 297 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:19:24.81 ID:ODe+vTZC0 階下も修羅場と化していた。 フーケが雇ったと思しき傭兵部隊が、酒場で酒を飲んでいたルイズたちを襲っていたのだ。 ルイズ、キュルケ、タバサの三人は、床と一体化した岩製のテーブルの脚を折り、それを 立てて盾にして魔法で応戦していたが、多勢に無勢、どうしようもなかった。 傭兵たちはメイジと戦うのに慣れているらしく、一、二度の応酬で魔法の射程を見極め、その 範囲外から矢を射かけてくる。 それでいて時おり突入するかのような素振りを見せ、その迎撃のために立ち上がって魔法を 使おうとすると、すかさずそこにまた矢が飛んでくる。 じりじりと精神力を消耗させる作戦のようだ。 299 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:21:49.98 ID:ODe+vTZC0 何度目かのフェイントの際、魔法を唱えるため立ち上がったタバサの目の前に一本の矢が 飛んできた。 (避けられない) タバサだけでなく、ルイズとキュルケも目をつむりかけた。 が、タバサの眉間を射抜くかに見えた矢は、その直前に割って入った赤い刃に焼き尽くされ、 煙になった。 「ベイダー卿」 ハッとして、タバサが恩人の名を呼んだ。 302 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:25:22.06 ID:ODe+vTZC0 「おおお、遅いじゃない!」 ぼうっと突っ立ったタバサをテーブルの陰に引っ張り込みながら、ルイズがわめいた。 ベイダーはそれに答えることなく、飛来する矢を叩き落しながら別のテーブルの脚を折ると、 片手に引きずっていたギーシュをその陰に押し込んだ。窮屈そうに長い手足を折りたたみ、 自らもそこにもぐり込む。 「この数、ラ・ロシェール中の傭兵がやって来てるのかしら」 キュルケが呆れ顔でぼやいた。店の入り口の向こうには、フーケのゴーレムのものらしき 巨大な脚も見える。 306 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:28:50.25 ID:ODe+vTZC0 「どうする、タバサ?」 キュルケの声色から滲み出た決意を感じ取ったのか、諮られたタバサは小さくうなずいた。 「囮」 キュルケは嘆息した。 「そうね。こんな貧乏くじもたまにはしょうがないか」 「ちょっと、何言って……」 「ヴァリエール、あたしたちが食い止めといてあげるから、あんたは使い魔と一緒に『桟橋』に 向かいなさい」 「無茶よ! ベイダーもいるんだし、みんなで戦えばなんとかなるわ!」 しかしキュルケは首を縦に振らない。 「なんだか知らないけど、急ぎの任務なんでしょ? フーケも傭兵たちも、どうやらあたしたちを ここで足止めして時間を稼ぐつもりよ。あいつら、アルビオンの貴族と繋がってるわね」 ルイズの顔がさっと蒼ざめた。 309 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:31:01.06 ID:ODe+vTZC0 散策中に町で仕入れた情報によれば、ウェールズ皇太子を含む王党派の軍勢はニューカッスル という小城付近に追い詰められているらしい。 いつウェールズが捕らえられてもおかしくない状況である。 「わかったでしょ、行きなさい」 キュルケはしっしと手を振った。しぶしぶルイズは了承した。 「ベイダー卿」 タバサが隣のテーブルに身を潜めるベイダーに向かって声をかけた。 「ご武運を」 「コーホー」 ベイダーは無言でただうなずいただけだった。 315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:34:20.32 ID:ODe+vTZC0 ベイダーが例の人間離れした加速でルイズを連れて行った後、キュルケはおもむろに手鏡を 取り出し、化粧を始めた。 「せっかくの舞台なのに、主演女優がすっぴんじゃしまらないでしょ。『微熱』のキュルケと 『雪風』のタバサの実力、たっぷり見せつけてあげましょ?」 キュルケは傍らのタバサに向かってウィンクをした。 「『青銅』のギーシュもいるんだけど……」 隣のテーブルの陰で、ギーシュが情けない声を上げた。 319 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:38:57.57 ID:ODe+vTZC0 「役立たずどもめ!」 フーケは眼下の光景に思わず歯噛みした。 今度は本当に突入していった傭兵たちが、油を使った火計にひっかかり、火だるまになって 悲鳴を上げていた。 さらに『風』魔法でその炎が四方八方に撒き散らされ、傭兵隊は一気に浮き足立った。 「やっぱり金で動く連中は使えないわね」 いつの間にか隣に立っていた仮面に黒マントの貴族に、フーケは呟いた。 「あれでよい」 謎の貴族は答えた。 「あれじゃあ、あいつらをやっつけることなんかできないじゃないの!」 「倒さずともかまわぬ。分散すればそれでよい」 「あんたはそれでいいかもしれないけど――」 一度恥をかかされたフーケは、その言葉には到底納得できない。 しかしマントの男は耳を貸さなかった。 「俺はラ・ヴァリエールの娘を追う」 「わたしはどうすんのよ」 フーケが呆れた声で言った。 「好きにしろ。合流は例の酒場で」 そうとだけ言い残し、マントを翻して男は闇に溶け込んでいった。 「……ったく、勝手なんだから」 フーケは小さくぼやいてから、ゴーレムに指令を出した。 キュルケたちが立て籠もる酒場ごと、一気に叩き潰してやるつもりだった。 321 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:42:59.12 ID:ODe+vTZC0 ギーシュが説明した通り、ラ・ロシェールの『桟橋』とは空に浮かぶ船のためのものだった。 ルイズの案内で建物と建物の間の階段を上ると、丘の上に途方もなく巨大な樹が立っていた。 ジェダイ寺院の尖塔にも迫る高さだ。 そして大きく張り出した枝の至る所に、巨大な果実のような船がぶら下がっていた。 しばしその光景に見とれていたベイダー卿だが、ルイズに促され、彼女のあとを追った。 樹の根元は、巨大なビルの吹き抜けのホールのように、空洞になっていた。 枯れた大樹の幹を穿って造ったものらしい。 夜なので、人影はなかった。 各枝に通じる階段には、鉄でできた案内板が貼ってあった。 ルイズがその中から目当ての階段を見つけ、駆け上り始めた。 後に続くベイダー卿だが、彼の体重を支えるには、木製の古い階段は幾分心もとない。 324 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:46:33.94 ID:ODe+vTZC0 途中の踊り場で、ベイダー卿は何者かが追いすがってくるのに気がついた。 足音もなく、気配もない。 そもそもそうでなければ、ベイダー卿がここまで接近に気づかぬはずがない。 ベイダーは走りながらタイミングを計り、手にしたライトセイバーで振り向きざまに斬りつけた。 …が、必殺のその一撃は空を切った。 「ぬ!」 珍しく驚きの声を上げるベイダーの頭上を飛び越え、白い仮面と黒マントの貴族がルイズに 迫った。 「きゃああぁぁッ!」 悲鳴を上げ、身をすくませるルイズ。 332 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 03:54:08.93 ID:ODe+vTZC0 (狙いはマスターか) 心の中で舌打ちし、ベイダーは二撃目を放とうとする。 が、それよりも早くルイズを捕まえた仮面の男が彼女の体を盾にしたため、ライトセイバーを 振り下ろす手にためらいが生じた。 その一瞬が命取りだった。 素早く呪文を完成させた仮面の男が、ベイダーに向かって杖を振る。 「やべえぞ、相棒!」 腰のデルフリンガーが叫んだ。 345 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 04:01:31.27 ID:ODe+vTZC0 「『ライトニング・クラウド』!」 ベイダーの周囲の空気が弾ける音とともに、仮面の男から稲妻が走った。 予想だにしていなかった魔法だった。 今までにないフォースの警告に、咄嗟にライトセイバーを出したが、完全に防ぎ切ることが できなかった。 「ぐおっ!」 機械の体に走る衝撃に後ずさったベイダー卿の体は、もろい手摺ごと、遥か下の地面に 転落した。 「ベイダー!!」 ルイズの悲鳴が上がるとほぼ同時に、ベイダー卿が地面に叩きつけられる音がした。 363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 04:11:45.07 ID:ODe+vTZC0 (電撃はまずいな) 指の一本一本に至るまで動作を確認したベイダー卿は呻きながら立ち上がった。 墜落の衝撃は、例によってフォースで和らげることができた。 しかしながら問題は先ほどの電撃の魔法だ。 機械の体にとっては、致命的に相性が悪い。 当然耐電加工は施されてはいるものの、先ほどの魔法は想定を超える電圧だ。 ライトセイバーで部分的に弾くことができなかったら、生命維持装置を破壊されていたかも しれない。 370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 04:18:25.88 ID:ODe+vTZC0 ベイダー卿が頭上を仰ぐと、仮面の男がルイズに当身を食らわせているところだった。 「おのれ」 ベイダーが踊り場まで一気に駆け上がろうとすると、大人しくなったルイズをそのまま さらって行くかに見えた男が、再び雷撃の呪文を唱えた。 「くっ!」 今度は大きく跳んで避けた。 そこにまた稲妻が飛んできた。 フォースで向上した反射神経と跳躍力で、これもかわすことができた。 だが、ベイダー卿の動きにはいつもの余裕がない。 (狙いはマスターではなかったのか?) なぜか仮面の男は、親の仇とばかりに執拗にベイダー卿を狙ってきていた。 388 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 04:27:49.97 ID:ODe+vTZC0 (これでは近寄れん……) ベイダー卿は攻めあぐねていた。 さすがに強力な魔法をそうそう連発することはできないようで、仮面の男の攻撃は止んでいたが、 それでもうかつに近寄るのはためらわれる。 このままベイダーを倒すのは無理と踏んだのか、仮面の男はぐったりとしたルイズを肩の上に 抱えて、階段を駆け上るかに見えた。 意を決してベイダーがその後を追おうとした刹那、突如として現れたグリフォンが男の行く手を さえぎった。 男は思わず飛び退る。 「『レビテーション』」 その肩から、ルイズの体が宙に浮いた。 杖の修繕を終えたワルド子爵が、力強い声と共に『浮揚』の呪文をかけたのだった。 409 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 04:39:46.99 ID:ODe+vTZC0 グリフォンの背に跨るワルドが、ルイズの体をキャッチする。 仮面の男が体勢を立て直して身構えた時にはもう、ワルドの唇の中で次の呪文が完成 していた。 「『エア・ハンマー』」 杖の先から放たれた空気の塊が、仮面の男を吹き飛ばした。 そのままベイダー卿の所へ落ちてくるかに思われた男だが、空中で『フライ』の呪文を唱えると、 手近な枝の中に逃げ込んだ。 「コーホー」 反撃のチャンスに身構えたベイダー卿だったが、その気合は空回りに終わった。 412 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/07(月) 04:42:31.83 ID:ODe+vTZC0 「怪我はないかい、僕のルイズ?」 ベイダー卿が踊り場まで駆け上ると、ちょうどワルドの腕の中でルイズが目を覚ましたところ だった。 「ありがとう、ワルド」 ワルドと見つめ合いながらも、どこか居心地が悪そうなルイズ。 ワルドはそんなルイズににっこりと微笑みかけると、次いでベイダー卿の方に冷ややかな 視線を向けた。 「これでわかったろう、使い魔くん。きみではルイズを守れない」

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