第31話「狂王とは」
ショウ少佐は、ページをめくる手を止め、眉をひそめた。
「ロ・チの凶王の剣…黒き炎…そして不死の力…」
この記述が、どこか黒城死瞳の「黒の色彩」と通じるものがあるように感じた。
黒城の力も、ただのエネルギーではなく、精神や生命そのものに干渉する特性を持っている。
もし、黒城がロザーの力を研究し、そのエネルギーの源を利用しようとしているとしたら…?
「黒城とロザー…何か繋がりがあるのか?」
ショウ少佐は独りごちた。
アル・ヴァーレ帝国が滅びたのは遠い過去の話だが、その遺物が今も生き続けている可能性はある。
黒城が求める「色彩の支配」は、もしかするとロザーの求めた「力こそ全て」という思想と同じ道にあるのではないか?
「…この剣、本当にもう消えてるのか?」
もし、ロ・チの凶王の剣がまだどこかに存在していたら?
黒城や暗黒のシドがその力を手にしたら…?
最悪のシナリオが頭をよぎる。
「やばいな、これは…」
ショウ少佐は、
ロザー黙示録のページを閉じ、静かに息を吐いた。
この情報を放っておくわけにはいかない。
黒城の動向を改めて調査する必要がある。
ショウ少佐はページをめくり、ロザーの動機について書かれた部分を見つけた。
「ロザーはなぜアル・ヴァーレを憎んでいたのか?」
かつてアル・ヴァーレ帝国は、強大な軍事力と魔法技術を誇る国だった。しかし、その繁栄の裏には、王族内部の血なまぐさい権力闘争があった。ロザーは王族の一員として生まれながらも、幼少期から疎まれ、冷遇されていた。
彼の母は、正統な王位継承者ではなく、側室の一人だった。だが、彼女はロザーに類まれなる知識と力を授けようとし、密かに禁忌の魔導書を研究していた。
それが発覚した時、アル・ヴァーレの王家は彼の母を「魔女」として処刑した。彼女は火刑に処され、ロザーの目の前で炎に焼かれながら絶叫した。
「決して許さない…アル・ヴァーレも、そこに属する者たちも…!」
ロザーの心に芽生えたのは、母を奪われた憎悪だった。彼は自らの才能を極限まで磨き上げ、アル・ヴァーレの支配層を破壊し、自らが世界を支配することを誓った。
「なぜバド王国を襲撃したのか?」
ロザーはやがて、自らの王国を作り上げるために動き出した。だが、アル・ヴァーレを滅ぼすためには、さらに強大な力が必要だった。彼はバド王国が所有していた「古代の色彩技術」に目をつけ、襲撃を決行した。
バド王国は長らく中立を保っていたが、隠された秘宝「色彩の結晶」を有していた。この結晶は、膨大なエネルギーを秘め、神々すら凌駕する力を持つと言われていた。ロザーはこれを奪うために、軍を率いて襲撃を仕掛けたのだ。
だが、その戦いの最中に**「ある人物」が脱走した。
それが黒城俊光(過去の黒城)**だった。
「バド王国を滅ぼしたのは黒城…」
ショウ少佐の脳裏に、黒城死瞳の野望と、彼がかつてバド王国の王であった事実がよぎった。
ロザーによる襲撃は、結果として黒城が脱走し、後にバド王国を滅ぼすきっかけとなった。
ロザーと黒城の因縁…
単なる偶然ではない。
「やっぱり…何か裏がありそうだな。」
ショウ少佐はページを閉じ、立ち上がった。ロザーの記録が、黒城の計画とどう繋がるのか…その真相を突き止める必要があった。
黒城の企み – ナノマシン型色彩兵器の調整
その頃、黒城俊光は、玲美、暗黒のシドと共に、新たな兵器の調整を行っていた。
赤黒い光を放つ無数のナノマシンが、空間を漂いながら収束していく。まるで意思を持つかのように、うねりながら形を変えていた。
「ついに完成したか。」
黒城が静かに呟く。
「レッドコード・オブリビオン…この兵器が完成すれば、我々の勝利は確実だ。」
玲美が冷静に報告する。
「ナノマシンは標的の細胞に侵入し、色彩エネルギーを直接侵食・吸収します。仮に敵が強力な色彩能力者であっても、体内の色彩エネルギーを根こそぎ奪い取ることが可能です。」
「素晴らしい。」
暗黒のシドが笑う。
「これを使えば、学園都市の色彩能力者どもも無力化できる…そして、黒の色彩の完全支配が成される。」
黒城は薄く笑った。
「…だが、まだ調整が必要だ。レッドコード・オブリビオンは、色彩の力を食らうが、その影響を我々自身が受けない保証はない。」
「確かに。対策として、適応ナノバリアを搭載するのが良いかと。」玲美が提案する。
「問題ない。我が色彩の支配は、絶対のものだ。」
黒城は、実験場に立つ。目の前には、捕らえられた実験体…無数の戦闘兵たちが鎖に繋がれ、色彩の力を奪われていた。
「では、試運転といこうか。」
赤黒い光が渦を巻き、実験が開始された。
新たな破壊の幕が、静かに上がろうとしていた。
第32話「レッドコード・オブリビオン」
古代の廃墟、「アル・ヴァーレ帝国」の滅びた遺跡。その最深部に一人の男が立っていた。黒いマントが揺れ、暗闇の中で炎のように赤く輝く瞳を持つ者――暗黒のシドだった。
シド:「久しいな、黒城 死瞳。貴様も私と同じく、この文明の残骸に惹かれたのか?」
暗がりからもう一人、優雅な足取りで近づいてくる男が現れる。彼は冷ややかな笑みを浮かべ、視覚を失った瞳を覆うカラーヴァイザーを調整していた。
黒城:「お久しぶりですね、シド。どうやら私たちの目的は一致するようです。『色彩エネルギー』の完全なる支配……そして、この学園都市の掌握。」
シドはその言葉にうっすらと笑みを浮かべ、手にした黒炎の剣「エクリプス・デバウアー」をかざす。
シド:「そうだ。だが、単なる支配ではつまらん。もっと劇的に、奴らに絶望を味わわせようではないか。そのために、これを用意した。」
彼の手元に現れたのは、漆黒のデバイス――ナノマシン兵器「レッドコード・オブリビオン」の制御装置だった。黒城は興味深そうにそれを見つめる。
黒城:「なるほど、ナノマシンと色彩エネルギーを融合させた新たな兵器か。さすがはシド、狡猾ですね。」
シド:「この兵器はただのウイルスではない。都市のネットワークに侵入し、人体にも感染する。意識を支配し、肉体を破壊する。これを投下すれば、学園都市は我々のものとなるだろう。」
黒城:「ふふ、楽しみですね。では早速、計画を始めましょう。」
第一章:狂乱の都市
数時間後、学園都市の空には謎の黒雲が広がり始めていた。突然、電子機器が一斉にダウンし、都市中のモニターに謎のメッセージが映し出される。
「Ooops, your important files are encrypted. Pay the price or face oblivion. - The Dark Shid」
混乱に包まれる都市。その中心に、バイクを走らせながら通信機を操作する一人の男――ショウ少佐がいた。
ショウ:「おいおい、どうなってやがる!?これは単なるサイバー攻撃じゃねぇ、何かが街全体に撒かれてるぞ。」
通信機越しに、いつもの相棒の声が響く。
レウス:「ショウ少佐、これはナノマシン兵器だ。『レッドコード・オブリビオン』ってやつだぜ。」
ショウ:「くそっ、あのシドの仕業か。ランバルド、お前も聞いてるか?」
通信機から、少し間の抜けた声が返ってくる。
ランバルド:「おう、ついやっちゃうんだよな!まさかの大事件ってわけか、面白そうじゃねぇか!」
ショウはため息をつきながらも、バイクのスピードを上げる。
ショウ:「ランバルド、今は遊びの時間じゃねぇ。レウス、やつらの居場所は?」
レウス:「色彩エネルギーの反応を追跡中だ。……いた!中央広場だ。急げ!」
第二章:死闘の幕開け
中央広場にたどり着いたショウ少佐、レウス、そしてランバルド。そこには、黒い霧に包まれたエリアが広がっていた。
ショウ:「くそっ、この霧……ナノマシンの煙幕か!」
レウス:「気をつけろ、ショウ少佐。このナノマシンは触れるだけで感染する。俺の魔力フィールドで防御するが、長くは持たないぞ。」
ランバルドは笑いながら前に進む。
ランバルド:「なら、俺の『ランバルドマジック』でこいつらを笑顔にしてやるさ!」
ランバルドが手をかざすと、彼の洗脳能力が発動し、ナノマシンの煙幕が一時的に薄れた。
ショウ:「今だ!行くぞ、レウス!」
レウス:「SWEEP!」
レウスがモップを振り回し、ナノマシンの集団を掃き散らす。だが、その瞬間、黒城 死瞳の冷たい声が響く。
黒城:「愚かな者たち。私の『レッドコード・オブリビオン』を止められると思うのですか?」
黒城が姿を現し、ディメンションクローを構える。彼の目は冷徹そのものだ。
第三章:色彩の瞳と暗黒の炎
戦場の裏側、異次元の空間にて、暗黒のシドと黒城 死瞳が対峙していた。
シド:「ふん、奴らはなかなかやるようだな。しかし、我々の計画に狂いはない。」
黒城:「ええ、ただの抵抗にすぎません。ですが、ショウ少佐たちは予想以上の力を持っている。色彩エネルギーを完全に支配するには、彼らを排除する必要があるでしょう。」
シドは不敵な笑みを浮かべ、暗黒の杖「ナイトフォール・スタッフ」を掲げる。
シド:「ならば、もっと闇を解き放とう。漆黒の炎で、この世界を焼き尽くしてやる。」
最終章:決戦、そして希望
学園都市の中心部、ナノマシン兵器の中心核にたどり着いたショウ少佐たち。レウスが渾身の一撃を放つ。
レウス:「これで終わりだ!『モップラッシュ・フィニッシュ』!」
ナノマシンの中心核が破壊され、黒い霧が消え去る。だが、その瞬間、黒城が再び姿を現す。
黒城:「ふふ、見事ですね、ショウ少佐。そしてレウス、ランバルド。ですが、これは始まりにすぎません。」
ショウは黒城を睨みつける。
ショウ:「てめぇ、まだ何か企んでるのか?」
黒城は淡々と答える。
黒城:「色彩エネルギーの支配は、まだ終わっていないのです。では、また会いましょう。」
黒城は空間を切り裂き、姿を消す。ショウは深いため息をつき、空を見上げる。
ショウ:「まったく、厄介な奴らだ。だが、これでしばらくは平和だな。」
レウス:「ああ、だが次に会う時はもっと厄介かもな。」
ランバルド:「ついやっちゃうんだよな!まぁ、楽しみにしてるぜ!」
エピローグ:陰謀の残響
異次元の空間に戻ったシドと黒城。シドは微笑んでいた。
シド:「奴らの成長は予想外だったが、面白いことになりそうだ。」
黒城:「ええ、これからが本番です。色彩エネルギーの支配まで、あと一歩。」
二人の陰謀は、まだ終わっていなかった――。
漆黒の異空間――暗黒のシドと黒城死瞳は、静寂の中で対峙していた。レッドコード・オブリビオンの計画は阻止されたものの、彼らの野望は揺るがない。
シド:「ふん……奴らめ、なかなかしぶといな。」
シドは不敵に笑い、杖を軽く回す。闇の波動が広がり、空間を歪ませる。
黒城:「予想以上に迅速な対応でしたね。だが、問題はありません。レッドコード・オブリビオンはただの前哨戦。本番はこれからです。」
黒城は静かに手を掲げる。指先から黒の色彩が揺らめき、空間に新たな門を開く。
シド:「次の手は?」
黒城:「『アル・ヴァーレの奈落』を起動します。」
その名を聞き、シドは興味深げに微笑む。
シド:「ほう……あの禁忌の遺産を?」
黒城:「はい。アル・ヴァーレ帝国が滅びる直前に封印した色彩の墓所――そこには、かつてこの世界を滅ぼしかけた『奈落の色彩』が眠っています。」
シドは楽しそうに頷いた。
シド:「ならば、目覚めさせよう。黒の色彩と暗黒の炎……それを混ぜ合わせれば、完全なる混沌が生まれる。」
黒城:「ええ、その混沌の中でこそ、新たな秩序を築けるのです。」
二人の間に微笑が交わされる。次なる舞台は決まった――アル・ヴァーレの奈落。
学園都市:迎撃準備
一方、学園都市ではショウ少佐たちが戦いの余韻に浸る間もなく、新たな危機に備えていた。
ショウ:「くそっ、黒城のやつ、何か仕掛けてくるのは間違いねぇ。」
レウス:「ああ、さっきの戦いはただの前哨戦だった気がするぜ。」
ランバルド:「ついやっちゃうんだよな……って、おいおい、マジでヤバい雰囲気じゃねぇか?」
ショウは通信機を操作し、学園都市防衛本部と連絡を取る。
ショウ:「こちらショウ少佐。至急、情報部に黒城とシドの動向を調べさせろ。」
通信の向こうから、オペレーターの緊迫した声が返ってきた。
オペレーター:「了解!……ですが、少佐、厄介な情報が入っています。」
ショウ:「なんだ?」
オペレーター:「アル・ヴァーレ帝国の遺跡から、異常なエネルギー反応が発生。おそらく、黒城たちが何かを起動させようとしています!」
ショウは舌打ちし、バイクのエンジンをかけた。
ショウ:「ちっ、やっぱり動きやがったか。レウス、ランバルド、行くぞ!」
レウス:「SWEEP!」
ランバルド:「ついやっちゃうんだ!」
三人は急ぎ、アル・ヴァーレ遺跡へと向かう。だが、すでに黒き闇は胎動し始めていた――。
だ*第33話 「異世界からの使者」
学園都市が一時的に平穏を取り戻した後、ショウ少佐、レウス、アイリス、ランバルドは再びその街での生活を続けていた。しかし、予兆のような不穏な気配が学園都市の空に漂い始める。
ある日、街の中心部で謎の光が瞬き、その光の中から一人の女性が現れる。彼女は全身を深い紫色のローブで覆い、目は深い青色の瞳を持つ。彼女の名は「ダイヤ」。彼女が降り立つと、周囲の空気が一瞬にして重く、神秘的な雰囲気が漂い始めた。
ショウ:「あれ、なんだあの光……?」
レウス:「ただの光じゃねぇな。気配が違う。」
アイリス:「魔力……でも、こんなものを放つ人物は見たことがないわ。」
ランバルド:「おお、俺も感じるぜ!こいつ、ただ者じゃない!」
その人物、ダイヤはゆっくりと足を踏み出し、ショウたちに向かって歩いてきた。
ダイヤ:「ようやくお会いできました、ショウ少佐。レウス、アイリス、ランバルド。私は『ダイヤ』、現代の魔法使いです。」
ショウ:「現代の魔法使い……?お前、何の目的でここに現れた?」
ダイヤは微笑みながら、ゆっくりとその場に立ち止まり、周囲を見渡した。
ダイヤ:「私は、あなた方に伝えなければならないことがあります。この学園都市には、もう一つの危険な力が隠されています。」
第二章:ダイヤの警告
ダイヤはその瞳に鋭い意志を宿し、真剣な表情で語り始めた。
ダイヤ:「かつて、この学園都市を支配していた暗黒のシド、そして色彩の兵器。彼らが去ったと思われた時、私が見た未来には、新たな力が目覚める兆しがありました。その力は、今まさにこの世界に向かって動き出している。」
ショウ:「新たな力?それがどんなものか分かっているのか?」
ダイヤ:「私の力をもってしても、正確には分かりません。しかし、何かが目覚めようとしていることだけは確かです。その力は学園都市の一部を根底から揺さぶる可能性があり、我々の世界に深刻な影響を及ぼすでしょう。」
レウス:「お前、知ってることがあるなら、全部話せよ。隠してることがあるんだろう?」
ダイヤは少し間を置いてから、再び話し始めた。
ダイヤ:「その力は、私の世界から来た存在……『ダイヤの鍵』という名前の者が引き起こすものです。『ダイヤの鍵』は、現代の魔法使いが使う魔法を超越した力を持つ、非常に強力な存在です。」
アイリス:「魔法を超越した力……?」
ダイヤは静かに頷き、慎重に言葉を続けた。
ダイヤ:「その者は、魔法だけではなく、現実をも変える力を持っている。私が今ここにいる理由は、その力が学園都市のどこかに封じ込められていると予知したからです。」
第三章:ダイヤの鍵
その後、ダイヤは自分が持っている魔法の力を少しだけ見せ、どれほど危険な力を封じ込める必要があるかを説明した。
ダイヤ:「私が伝えたように、その『ダイヤの鍵』を解放すると、世界のバランスが崩れてしまう。『ダイヤの鍵』は、人間の常識を超越した存在であり、その力を解放した時、私たちの世界はどんな形になってもおかしくない。」
ショウ:「……ああ、分かった。だからお前は俺たちに協力を求めに来たんだな。」
ダイヤ:「はい。あなた方の力が必要です。しかし、覚悟していただきたい。『ダイヤの鍵』を封じ込めるためには、代償が必要となります。」
レウス:「代償……?」
ダイヤはその言葉を濁さずに語り、さらにその力を深く知っている者しか知り得ない、辛い真実を伝えた。
ダイヤ:「それは、私の命のようなもの。『ダイヤの鍵』を封じ込めるためには、私の魔力と命を共に費やす必要があります。」
アイリス:「……命をかけるだと?」
ダイヤ:「私はそれを覚悟しています。けれど、あなた方が私の力を借りるなら、私もできる限りの手助けをするつもりです。」
第四章:ダイヤの覚悟
ダイヤの覚悟を前に、ショウたちはどうするべきか思案する。だが、今は決断を下す時間ではなかった。彼らの前に現れた「ダイヤの鍵」を守るため、まずはその封印場所を探さなければならない。
ショウ:「分かった。お前の覚悟を無駄にはしない。俺たちも全力で協力する。」
レウス:「ああ、今回ばかりは本気でやるぜ。」
アイリス:「私も、あなたの覚悟に応えます。」
ランバルド:「ついやっちゃうんだ!でも、ちょっと怖いぜ!」
ダイヤは少し驚きながらも、微笑んだ。
ダイヤ:「ありがとうございます。さあ、行きましょう。『ダイヤの鍵』が眠る場所へ。」
その頃、学園都市の影に潜む者がいた。
黒城 俊光――かつてバド王国を支配し、今や「黒の色彩」の力を操る存在。
彼は自身の野望を果たすため、ある危険な存在を蘇らせようとしていた。
黒城は巨大な色彩エネルギーの渦の前に立ち、漆黒のローブをまとった男を見下ろした。
その男は長い間封じられていたが、黒城の力によって再び現世に呼び戻されたのだ。
ロザー――かつて異世界の覇王と呼ばれた男。
ロザーの身体はまだ完全には蘇っておらず、仮初めの影のような姿だった。
しかし、その目が開いた瞬間、まるで全てを見透かすような鋭い光を放った。
ロザー:「……ふむ、黒城か。貴様が私を蘇らせたのか?」
黒城:「貴様ほどの男が、ただ眠り続けるのは惜しいと思ってな。」
ロザー:「……貴様の目的は?」
黒城は不敵に笑い、黒の色彩エネルギーをその手に集めながら答えた。
黒城:「我が『黒の色彩』の力をもって、学園都市を完全に支配する。それだけではない……この世界そのものを俺の手中に収めるのだ。」
ロザー:「ふん、くだらん。」
ロザーは腕を組み、黒城を冷徹な視線で見据えた。
ロザー:「貴様のような男が、私を使いこなせるとは思えんが?」
黒城:「俺が貴様を使いこなせるかどうかは問題じゃない。貴様には貴様の目的があるはずだろう?」
ロザーはしばらく沈黙し、やがて静かに笑った。
ロザー:「確かに……この世界がどう変わるか、見届けるのも悪くない。」
黒城:「ならば、俺と手を組むか?」
ロザー:「貴様に利用されるつもりはないが……今は貴様の提案を聞いてやろう。」
こうして、黒城とロザーは手を結んだ。
その背後では、暗黒のシドが静かに笑みを浮かべていた。
暗黒のシド:「ふふふ……おもしろい。この世界は、ますます混沌へと向かっていくようだな……。」
こうして、学園都市には新たなる脅威が迫っていた――。
第34話 ロザーの復活
1. 目覚めし狂王
学園都市の地下遺跡。その奥深くに存在する禁忌の地。
ショウ少佐は、崩れかけた柱や壁に刻まれた古代の文字を睨みつけながら、慎重に足を進めていた。古い石畳の上を歩くたびに、砂と瓦礫が音を立てて崩れていく。
「……こりゃまた随分と古い遺跡だな。」
レウスが呆れたように言いながら、モップを片手に周囲を警戒する。アイリスもまた、その鋭い視線で壁面に浮かぶ魔法陣を解析していた。
「間違いないわ……この場所には、強大な封印魔法がかかっている。でも……」
アイリスは眉をひそめた。
「その封印が、すでに解かれかけている。」
「マジかよ。」レウスが舌打ちをする。「誰かがこじ開けようとしてるってことか?」
「それも、かなりの手練れね。」
「ついやっちゃうんだ!」
ランバルドは緊張感のない声で呟いたが、彼の表情も冗談を言っているわけではなかった。
その時、遺跡の奥で異変が起こった。
石柱の紋様が赤黒く輝き、ゆっくりと振動し始める。そして、地鳴りと共に石柱の中央が割れ、中から黒い霧が溢れ出した。
「……ッ!」
全員が身構える。
次の瞬間、霧の中心に一つの影が浮かび上がった。
鎧に覆われた巨躯、異様に長い黒剣、そして深紅の双眸。
「……我が名はロザー。」
静かに、しかし圧倒的な威圧感と共にその男は名乗った。
「我が帝国を滅ぼした者たちへの復讐……今こそ果たす時が来た。」
2. 狂王の宣告
ロザー・ザ・デストラクター。
かつてアル・ヴァーレ帝国を恐怖で支配し、そして最期には封印された狂王。その存在を歴史は抹消し、忘れ去ろうとしていた。
だが今、再びその名が呼び覚まされた。
「お前がロザーか……。」
ショウ少佐は、静かに構えを取る。彼の目には迷いはない。
「復活早々悪いが、お前が好き勝手暴れるのを見逃す気はねぇぜ。」
「ほう……。」
ロザーは不気味な微笑を浮かべた。そして、黒剣をゆっくりと持ち上げる。
「ならば、その力、見せてもらおうか。」
ドンッ!
衝撃波が発生し、遺跡の床が崩れる。ロザーの一撃が地面を引き裂いたのだ。
「ッ……!!」
ショウ少佐とレウスは即座に後方へ跳躍し、衝撃波を避ける。アイリスが詠唱を始め、ランバルドが自身の力を解放しようとする。
「おいおい、いきなり全開かよ……!」
レウスが舌打ちしつつ、モップを振りかぶる。
「だったら、こっちも手加減なしでいくぜ!!」
「青空の彼方まで、俺の戦場だぜ!!」
ショウ少佐もまた、振動剣「ブリッツブレード」を抜き放ち、ロザーへと突撃する――!
第35話 狂王の戦場
1. 戦いの幕開け
「お前ごときが……!」
ロザーの声が遺跡に響くと同時に、狂王の剣が黒い炎をまとい、ショウ少佐へと襲いかかった。
ゴォォォッ!!
その一撃は空間を捻じ曲げるほどの威力を秘めており、ショウ少佐は咄嗟に横へ跳躍する。刹那、彼のいた場所が深い亀裂となり、遺跡の床が崩れ落ちた。
「チッ……!」
ショウ少佐は冷静に**「オールラウンダー・マグナムショウ」**のシステムを展開し、即座に反撃の態勢を整える。左腕の鋏型レーザーソードが光を放ち、右腕のガトリング砲が連射を開始。
ダダダダダッ!!
圧倒的な弾幕がロザーを包み込む。しかし、狂王の剣が振るわれた瞬間、その黒い炎がすべての弾丸を弾き飛ばした。
「そんな小細工が効くと思うな!」
ロザーは獰猛な笑みを浮かべると、狂王の剣を一閃。炎の刃がショウ少佐を襲う。
ズバァァァッ!!!
間一髪で回避するも、ショウ少佐の肩の装甲が焼け焦げる。
「クソッ、こいつは想像以上に厄介だな……!」
だが、ショウ少佐の目は冷静だった。ロザーの剣が振るわれるたび、周囲の空間が微かに歪み、特定のポイントにエネルギーが集約されているのが見えた。
――この剣には、何か仕掛けがある。
2. 狂王の剣の破壊
ショウ少佐は一瞬の隙を突き、狙いを定める。
「終わらせる!」
彼はレーザーソードを構え、狂王の剣の鞘に向かって突撃する。
ギィィィン!!
鋏型レーザーソードが輝き、鞘に直撃する。その瞬間、剣を包んでいた黒い炎が大きく乱れ、ロザーの動きが鈍る。
「貴様……ッ!!」
ロザーは怒りの咆哮を上げ、剣を振り下ろそうとする。だが、その時――
ズドォォン!!
上空から爆撃が降り注ぎ、ロザーの攻撃が遮られる。
「……何!?」
ショウ少佐が上を見上げると、そこには無数の飛行型スラスターを装備した戦士たちが現れた。彼らの装備には、ある紋章が刻まれていた。
スカイファング――かつての空賊部隊、再び現る!
「よぉ、ショウ少佐!」
部隊のリーダーらしき男が、空中から声をかける。顔にはニヤリとした笑みを浮かべていた。
「俺たちもこの剣を狙ってんだよ。そろそろ、お前さんには退場してもらおうか?」
ロザーを討とうとしていたその瞬間、新たな脅威が現れる――!!
次回、第36話:空賊の狙うもの
最終更新:2025年02月28日 20:47