+ | これまでのこと |
“神の御蔵”セフィリア神聖帝国にある寒村、“リノマ”に生を受けた。
生まれた家は、騎乗用の馬を育て、農業も営む貧しい家だった。 ヴァルキリー故、祝福された者として歓迎と、ある種の畏怖をもってプラチナは迎えられた。
しかし、貧しさ故か否か、両親は愛情深く子を育てるという事をしなかった。
飢饉などなくとも貧しいその家は、度々貧困に喘ぎ、歳の離れた兄は5歳の時に売られていった。 顔も覚えていない、しかし儚げで優しかったその兄は、プラチナに一つの約束を残していく。
「リヴルを助けてあげて欲しい。あの子は、とても優しいのにとても苦しいものを背負っている」
「だから、あの子を、そしてお前の大切な人を守って、助けてあげて欲しい」
自らが売られることを語らず、兄は朝焼けの中に消えていった。
その約束を胸に、強く生きようと決めて。友人を助けて生きようと決めて。 兄との思い出があったから、そう生きようと思えたから……両親を、それでも大切な人達を護ろうと。 家族を守り助けようと、家の仕事を手伝い、足りないながらも必死に考えて友と共に生きようとした。 仲のいい友も出来た。一つ下のアンナ。二つ下のフェス。
アンナやフェスを遊びに連れ出して、リヴルとも一緒に笑いあったり。
お姉さんの様に振舞って、アンナやフェスを可愛がったり。 リヴルを怒られないように家から連れ出して、一緒に狩りをして獲物を持って帰らせたり。 時折こっそりとリヴルにご飯を持って行っては、親に怒られたり。
決して幸せだけではなかった。だが、充実していた日々だった。
……4年で、その生活が終わりを迎えるまでは。
その年は、飢饉の年だった。だが、決して乗り越えられないようなものではなかった筈だった。
なのに……彼――リヴルは、唐突に村から追放されてしまった。 ……ある日、唐突に大切な人がいなくなる。死ではなく、その人以外の身勝手な都合で。
リヴルの笑顔を思い出す。優しい目。
過酷な生き方を強いられながらも、優しさを失わない事が、どれほど尊い事か。 そして、最後にリヴルに会った時――前の日の別れ際を思い出す。
「オレ、頑張って強くなるよ。…プラチナやフェス、アンナと一緒にいたいから」
「私も、頑張るよ。リヴルも、アンナやフェスとも、皆で一緒にいられるように。わかってもらえるように」
そう笑って、誓い合った。――それなのに。
それは、今まで抑えてきた憤りを……怒りを、不条理に対する憎しみを想い起こさせるには充分だった。
彼女は、村のただ中で、怒りをぶちまけ、泣きながら叫んだ。 その生まれ故に。悪夢と称された種族に生まれついたことは、彼に何の罪があったというのか。 彼が受けてきた酷い仕打ちこそ、村の者の、家族の冷たい目こそが、悪夢に他ならないだろう。 涙に濡れ、怒りの衝動に突き動かされながら、自分に背を向ける村の者達に、夜通し叫び続けた。
わかっていた。彼らが、自分を優遇しても、リヴルを蔑み続けていることを。
自分がどれだけ止めに入ろうと……彼を虐げる事をやめようとはしなかった。 いつかこんな日が来るかもしれない事を。兄が居なくなった様に、リヴルも居なくなるだろう事を。 リヴルと友人でいるからこそ、村の者が自分たちをあまり良く思っていなかったことを。 ついに、両親すら自分から背を向けたのを見て、彼女は理解した。 大切な者を護りたいのであれば。自分自身に、それだけの力が必要なのだと。
怒りと嘆きの衝動が終わる頃、プラチナの脳裏に、二人の笑顔がよぎる。
幼いながら誇り高く、強く生きるアンナ。 賢く、様々な知識を得ていこうとするフェス。 彼らを護らなくてはいけない。そのために力をつけなくてはいけない。 表情の豊かだった顔は冷たく、目は光を失い。狩りの様も、苛烈になった。 何を失い、何を賭してでも、残された大切な者を護る為に、一人の力ですべてを成そうとした。
その後8年。
村の中で、家の手伝いを、狩りをして生計を立て、村の中の仕事も積極的にやるようにした。 しかし、表情の豊かさを失い、苛烈ともいえる狩りの様子、そして嘆き叫んだ時の事もあり 村の人々との距離は、徐々に離れていった。 アンナやフェスに会う時だけは、心休まっていた。 だが、アンナの様子も変わっていった事、それを支えられず、フェスに任せたままの様である状況が さらなる無力感が苛む、そういう日々を過ごしていたが、17になる年、終わりを迎える。
大飢饉の年。村は貧困を窮めた。
再び口減らしをすべきかという村の大人たちの話を聞き、プラチナは戦慄する。 だが、あの悲劇を再び起こすその話は、領主の布令によって止められる。 その内容は、村のヴァルキリーを差し出せば、今年の年貢を免除する。 ……何という僥倖だろう。自分が領主の元に行けば、口減らしで寄る辺も無く野山を彷徨う者は出ない。 そして、良い機会でもあった。村を出て力を手に入れられれば。大切な人を護る術が手に入るのでは。 どこかで生きているかもしれない彼を探しに行く事も出来るのではないか。 そう上手くいくわけでは無い。だが、この機を逃せば、何かを永遠に失う。
そう思い、両親に……愛が貰えたわけでは無い。だが、それでも大切な人達に、自分の意志を伝えた。
領主の元に行く事を告げた後、最後の挨拶を、せめて大切な人達にだけはしようとするが、 アンナだけは最後まで見つからなかった。
そうして、出発の時、予定の時間になっても迎えの使者は来ず、見送りのフェスと共に
使者を迎えに行ったところ、その場所にいたのは使者ではなく、姿が見えなかったアンナと、 風変わりな男が立っていた。それは、8年ぶりに再会したリヴルだった。 (何故そこにアンナやリヴルが居たのかは、そちらのキャラシーと参照!) 一人ですべてを成そうとして、一人で戦い続け、……一人の無力さを知る。 そして、自分が守ろうとしたように、自分もまた沢山の人に守られていたことを知るのだった。
村から出て、4人で旅をする事を決め、彼らは育った村に背を向け歩き出す。
戦乙女の翼が、狭い世界からようやく広い世界へ羽ばたいた。
向かう先は、混沌の大地。未踏の未来。 大切な者達と、幸せを掴むために。 |
+ | 交友関係 |
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+ | セッション記録 |
セッション回数:7回(失敗:回)(死亡:回)
GMB投入回数:2回
GM名は敬称略
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+ | 他PCとセッションで同行した回数(前後は1回づつカウント) |
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+ | 備忘録 |
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