第2章
オレが契約者だと?ユキは、なぜオレの契約魔になったんだ?謎だらけの一日が過ぎ、事務所に訪れたユキと話し始めた。さぁ、教えてくれ、ユキ。
過去の跡形を探して
オレ:
さあ。本当のことを話してほしい。オレが契約者だったということも、まだ信じられない。
ユキ:
初めてお会いした時からお聞きしたかったんですが、あなたは10年前も契約者だったんじゃないですか。なのに何で「普通の人」だと言ってるんですか?契約者としての義務を放棄するつもりなんですか?
オレ:
10年前?君はオレの過去を知っているのか?教えてくれ。オレは契約者だったのか?
ユキ:
一体今、何を言っているんですか?あなた…もしかして契約者だったときのことを覚えてないのですか?
オレ:
オレは10年前までの記憶がないんだ。…つまり、オレにはこの10年間の記憶しかないんだ。
ユキ:
…そんな!冗談でしょ?
オレ:
冗談なんかじゃない。そもそもオレがこんな「何でも屋」みたいな仕事を始めたきっかけも、少しでも記憶を取り戻すためだったんだよ。
ユキ:
…どうやって影も形もなく消え失せてしまったんだろうと思ったら、記憶を失っていたから…ですか…
オレ:
教えてくれ。オレについてどこまで知っているんだ?オレはいったい誰なんだ?
ユキ:
あなたが記憶を失くしているのなら、私が教えられる情報にも限りがあります。
まず本論に戻りましょう。実は、ある悪魔を探すことをあなたに頼みたかったんです。
オレ:
悪魔?
ユキ:
正確に言いますと、私がずっと前からお世話をしている方です。記憶を失くした今のあなたに名前は言えません。
オレ:
記憶を失くす前だったら、問題がなかったというのか?
ユキ:
その通りです。詳しい事情は教えられないんですが、あの方とあなたは10年前に契約を結んだことがありました。そして、私の知っている限りあなたは、この世であの方と契約した唯一の人間です。
オレ:
…10年前…オレと契約を結んだ悪魔だと?
ユキ:
10年前にあった、人間の間ではいわゆる[悪魔大戦]についてご存知ですか?
オレ:
知らないわけないだろう。悪魔たちが光の都市を襲って、闇に覆わせた戦争のことだろう?当時、政府と宗教団体が力を合わせて悪魔を倒したというくらいは知っている。
オレ:
ヤマタ…何だって?何だ、どれは?
ユキ:
今、人間たちがS1と呼んでいるところを支配している悪魔です。
オレ:
S1?普通の人であるオレがあんなところにいる悪魔のことを知るわけないだろう。
ユキ:
いいえ、現在のあなたは知らないかもしれないけど、過去のあなたならよく知っているはずです。
それは、私がお世話をしていたあの方と契約を結んだあなたが、過去にヤマタノオロチを撃退したことがあるからです。
オレ:
どういうことだ?
ユキ:
話が長くなりそうですね。
……
オレ:
悪夢をよく見る。
ユキ:
悪夢?
オレ:
毎回、同じ夢なんだ。その夢の中でオレは契約者なんだ。そしてオレは…。
分からない。夢から覚めるとそれ以上は何も覚えていない。
オレは、なぜ夢の中でオレがずっと契約者の姿で現れるのかが気になっていたんだ。
しかし今は…その夢はオレの過去のことかもしれないと思う。
ユキ:
あなたの過去について知りたいですか?過去のあなたが誰だったのか、そしてその悪夢が何を意味するのか。
オレ:
もちろんさ。さっきも言ったけど、オレは過去の自分についての手がかりをつかむために、この仕事を始めたんだ。
ユキ:
じゃ、これであなたの過去へとつながる、はじめの一歩を踏み出したことになりますね。最初はあなたを通じてあの方に会おうと思ったのですが、仕方ありません。
あなたが過去の記憶を思い出せるよう、お手伝いします。それがあの方に関する手がかりにもなるんでしょうから。
かわりに、記憶を取り戻したら、私をあの方のところまで連れてってください。既に契約済みですが、そういう契約でいかがですか?
オレ:
さっきからずっと[あの方]と言っているけど、いったい誰なんだ?正直、オレと契約していたということだけじゃ、納得できない。
ユキ:
あの方があなたと契約していたという一番確かな証拠は、契約の儀式もしてないのに、私があなたの契約魔になったということです。
オレ:
それだけじゃ足りない。オレは何で「あの方」という悪魔と契約を結んだんだ?
ユキ:
それは私にもよく分かりません。当時はここにいなかったので…ただ、あなたと契約を結んだあの方は、あなたと共に今のS1に向かっていました。そして、あの方はその後姿を消してしまいました。
オレ:
信じがたい話だな。S1は東京でも一番危険な闇だろ?だって、政府や宗教団体すら手が出せない場所に、どうしてオレが…?
ユキ:
あなたは、S1についてどこまでご存知なんですか?
オレ:
東京で一番大きな闇。それ以外は知らない。S1に関する情報は完全に統制されているじゃないか。
ユキ:
他の人間よりは詳しいですね。普通の人は、情報が統制されていることすら知りませんから。
S1は他の闇とは違います。根源から流れてくる闇ではなく、巨大な力の衝突から生まれた闇なんです。
オレ:
そんなことがあり得るのか?闇というのは、突然生成された核から広がるものじゃなかったのか?
ユキ:
はい、それが普通です。「ナイトフォール」以降、永遠の夜が訪れて1年後、東京タワーの周辺で巨大な力の爆発が起こったんです。
その爆発がS1を創りだしたんです。あっという間に大きくなった奇形な闇、それがS1です。
オレ:
はぁ…、どこまで信じればいいのか分からないよ。
ユキ:
さあ、行きましょう。
オレ:
話が終わってないのに、いきなりどこに行くんだ?
ユキ:
どこって、S1に決まってるんじゃないですか。そこで直接説明した方がいいですよ。さあ、早く。
― S1 ―
オレ:
もうとっくに「立ち入り禁止」の標識を通り過ぎてきた。バレたら、速攻ムショ行きだってこと分かってるよな?
ユキ:
私は悪魔ですよ。多分、刑務所行きになるのはあなただけでしょう。まあ、契約者だから、あまり悪い扱いはされないと思いますよ。
オレ:
…はいはい、そーですか。
それにしても、ホントいやな雰囲気だな。あの闇の中で光ってるのは、全部悪魔の目じゃないか?こんなに近づいて本当に大丈夫なのか?
ユキ:
大丈夫です。彼らは闇の外には出られない弱い悪魔ですので。
闇に染まった悪魔が闇の外でも動くためには、ある程度強い力を持っていないとダメなんですよ。
そして、そんな悪魔は普段、深い闇の中にいます。わざわざこんなところまで出てくることはありません。
オレ:
そうなのか?まあ、そんなことはどうでもいい。結構奥まで入ってきてるんだから、そろそろ話してくれたらどうだ?なぜ、オレをこんな殺伐としたところまで連れてきたんだ?
ユキ:
あなたは私がお世話をしていたあの方と契約を結んでいました。
オレ:
で?
ユキ:
その方が最後に存在していた場所が、このS1の中心。つまり、闇の根源がある場所でした。
オレ:
君のいう「あの方」が姿を消したのがこのS1で、その時の出来事のせいでオレは記憶を失くしたということなのか?
それに、その出来事はヤマタノオロチという悪魔と関係があるということか。
ユキ:
そのとおりです。
オレ:
作り話だとしても、スケールがデカすぎないか?オレがここでS1の支配者だった悪魔と戦ったと?
そんな悪魔の存在は聞いたことがない。いや、このS1の中心まで行ったという契約者の話すら聞いたことがないんだ。
ユキ:
まさか、私の話が信じられないというのですか?
オレ:
当たり前だろう。あまりにもバカバカしいじゃないか。
ユキ:
分かりました。入りましょう。
オレ:
どこに入るっていうんだ?
ユキ:
当然、S1でしょう。さあ、急いで。
― ユキがオレを掴む ―
オレ:
うわっ!!離せ!!ここに入って何をする気だ?
ユキ:
私の話を信じてくれないからですよ!ちょっとでも入ってみたら何か思い出せるかも知れないんですよ。
オレ:
ああああ、誰か助けて!
ストーリー条件・報酬
最終更新:2014年02月01日 12:40