最終貞淑妻ケンジ

■キャラクター名:最終貞淑妻ケンジ
■読み方:ファイナルテイシュクヅマケンジ
■性別:男性

特殊能力『わらしべワイフ』

人や物質の持つ秘めた力を解放し、強化する能力。
ただし発動条件として、強化対象となる人や物の所有が、「能力者本人から他者へ移動した」と認識する必要がある。
つまり、自分の妻(非実在)が他人に寝取られると、寝取られた妻(非実在)がパワーアップすることになる。

重度の妄想癖を持つケンジは、妻(非実在)を寝とった間男が自分より甲斐性を持ち、肉体的にはもちろん、妻(非実在)の心の奥底にある不満を見抜く眼力、的確に弱点を突くコミュニケーション力、引き際を心得る抜け目のなさでも勝っている事実に直面したことで、「妻は寝取られたことで、間男によって潜在能力を解放され強化されたのだ」と思い込むようになった。

妻(非実在)が自分には見せないような笑顔を間男に向けていたのは、決して間男のオスとしての能力が自分より高かったからではなく、所有移転に伴い、妻(非実在)自身の潜在能力が解放されたためである、と説明をつけようとしたのである。

この能力のため、所有の移動によって人や物がパワーアップするのは最早自然の摂理に等しくなる。所有さえ移動すれば、強化対象は妻(非実在)に限られず、例えば武器や防具などもパワーアップする。
あと実は「所有が移動すれば強化される」現象は他者の物を逆に自分が奪った場合にも当てはまる。割と使い勝手の良い能力。

なおケンジは独身であり、生まれてこのかた異性と付き合ったこともなければ、勿論妻もいない。
アニメや漫画も読まないし、ゲームもしないため、二次嫁がいるとかいう訳でもない。
というか間男も架空の存在である。

設定

本名は早乙女ケンジ(33)。
都内在住の会社員。商社勤務。
妻(非実在)とアパートで二人暮らし。
なに不自由ない生活を送っているが、妻(非実在)に見知らぬ男(非実在)の陰がチラつくことにほんの少し疑念を抱いている。
居合道の達人で、日課は愛刀レイプ丸の手入れ。

妻(非実在)の名前は木曽路(31)。貞淑で凛とした性格だが、実はケンジの頭の中にしか存在しない別人格。という設定のケンジの妄想。どちらにせよ実在しない。
夫のケンジとは大学の頃からの付き合い。3年前に結婚し、結婚式もちゃんとやった。
しかし区役所には婚姻届を受け取ってもらえなかったので内縁関係といえる。
夫との生活に何一つ不満はないものの、心の奥底に破滅願望を抱えている。
身長は186cm。体重は125kg。体脂肪率は15%。

間男(非実在)の名前はザ・ファック(25)。木曽路が抱える破滅願望を見抜き、付き纏い、神出鬼没に彼を冷酷な殺戮機械へと仕立て上げようとする鬼畜男、だが彼もまたケンジの別人格に過ぎない。という設定のやはりケンジの妄想。
妻(非実在)が寝取られていることも知らずに、妻(非実在)を冷酷な殺戮機械に仕立て上げられているケンジのことを嘲笑っている。
主食はささみ。ベンチプレス220kg。

基本的な立ち回りとしては、木曽路がザ・ファックによって無理矢理殺戮本能を掻き立てられ、悪人を私的に殺戮制裁する最悪のモンスター『最終貞淑妻』の人格に変貌させられる。そしてザ・ファックが導くままに、巷で悪行を重ねる救いのない犯罪者達を犯し、殺戮し尽くすのだ。
という筋書きでしかケンジは興奮できない。
握力は182kg。

なお、この行為でもケンジの認識では充分「寝取られ」にあたるため、『わらしべワイフ』の能力により最終貞淑妻の身体能力は潜在能力を解放され、さらに跳ね上がる。
日課は筋トレ。地道な努力に勝るものはない。

そんな彼にも悲しい過去がある。実はケンジはさる非合法の研究所に幼少時から囚われていた過去があり、そこで非人道的な人格改造を受けていたのだ。その代償行為として、ケンジは己の中に別人格を作り上げていたのである…というのも彼の設定。この設定に騙される人はわりと結構いる。
しかもケンジは大卒である。
月二で茨城の実家に帰る孝行息子。

実際は純然たる趣味をエンジョイしてるだけである。悪人は殺して良いと思っている。
趣味に散財するタイプ。

ケンジを倒すと「わらしべワイフ」の効果が発動し、超強化されたケンジが仲間になってくれるぞ。
被害は拡大するばかりである。

プロローグ

一、
 玄関の扉から妻の叫ぶ声が聞こえる。
 その声は泣き叫んでいるようで、しかし笑っているようにも聞こえた。

 俺は部屋の片隅に蹲り、震えながら妻の声を聞く。
 まるで男のような野太い叫び声。獣の遠吠えにも似たそれは、俺の心に後悔と恥辱を齎す。

 愛する妻、木曽路。しゃぶしゃぶみたいな名前の妻はそこにいない。
 今やそこにいるのは、見知らぬ男の手で堕落させられた一匹のメスだった。

 今や妻はメスなので、俺は泣きながら髭を剃る。メスブタの妻には髭は似合わないためだ。
 その間も妻の鳴き声は聞こえ続ける。
 スネ毛も処理しなければならない。

 まさか木曽路が俺以外の男なんかと……
 一体、どうしてこんなことに…

「がああああああ、がああああああ」

 鏡に写るのは妻を寝取られた哀れな夫。
 だから、この顔も隠さないといけない。

 妻はこんな顔をしていない。

「ゲッヘッヘ。さあ木曽路さん、このフルフェイスマスクを被っちゃおうね」

 震えは痙攣となる。俺の名前は早乙女ケンジ。
 33歳の商社マンだ。
 妻の木曽路とはアパートの一室で二人暮らし。

 木曽路は気立てがよく、貞淑で、凛とした大和美人だ。いや、そうだった。
 常備薬を水無しで飲み込み、ぎこちない手付きで、箪笥の中を漁る。箪笥の二段目から、フルフェイスマスクが見つかった。

「さあ、木曽路さん。フェイス・オンして変身しちゃおうか…しろよ!この雌豚がっ!亭主の前でフルフェイスマスクを被るんだよ!オラっ!」

 俺は俺を鞭で叩く。
 苦痛と快楽の入り混じった木曽路の叫び声が反響した。

「ごおおおああああーーーーッ!ごおおお」

 鏡に写るのは常に自分自身。
 だが、俺は妻を寝取られている真っ最中なので部屋の中には入れない。俺は情けないからだ。
 だから、早乙女ケンジは玄関の外にいる。
 今、この部屋の中にいるのは木曽路と間男のザ・ファックだけだ。

 俺はザ・ファックの顔を知らない。
 だから、鏡に写っているのが俺自身でも、それは木曽路だった。

「いやっ!やめて!見ないでケンジさん!こんな私を見ないで!ゲッヘッヘ良いじゃねえか木曽路さん。ケンジさんに愛する奥さんの姿を見せてやれよ。見ないでケンジさん…フォオオオオオオオーーーーーーーっ」

 木曽路とザ・ファックの声が入り混じる。
 渾然一体となったそれは、俺を置き去りにしてトランスフォームの彼方へとメルトダウン。

「フォオオオオオオオ」

 フルフェイスマスクが視界を覆い、俺は服を引きちぎり、拘束具で体を着飾る。
 最早そこにいるのは一匹の獣に過ぎない。

 ニーソックス!!

 レザーコート!!

 拘束具!!

 フルフェイスマスク!!

 そして、般若面を被れば、そこにいるのはれっきとした殺戮者だ。

「フゥゥゥゥ…フォウッ」

 愛刀レイプ丸を手に取り、俺、いや、木曽路は窓ガラスを突き破って夜空を駆け抜けてゆく。

 すべての悪人に裁きを与えるまで。



二、
「都内で見つかった3人の死体は、いずれも10代のチャラ男で、警察は…」

 昨夜起きた惨殺事件のニュースが流れる。私はニュースを聞きながらささみプロテインジュースを食べる。

「惨殺事件だってさ。この近くだよ」

 愛する夫、ケンジがテレビを見て独り言を言う。
 私はささみプロテインジュースに集中し、夫の言葉を聞き流す。

「ケンジさん。そういやさ、今日は雨らしいよ。傘忘れないでね。ああ、そうするよ。ありがとう、木曽路」

 ごく何気ない夫婦の会話。こんなやりとりでもお互いの言葉が渾然一体となって、愛を感じられる。
 彼の正義感に満ちたところが好きだ。
 今だってそうだ。家の近所で事件が起きたことで、私を気遣ってくれた。

「なあ木曽路、今回の仕事のヤマを越せば、土日は休みが取れそうなんだ。だから、休日は久しぶりに二人で出かけないか?」

 最近、二人の時間が少なくなったように感じているのは、ケンジさんも同じようだ。
 私はニュースを聞きながら、一人分の朝食を片付けて、出勤の準備をする。

「ごめんなさいケンジさん。その日は予定があるの。そうか…それは残念だ。まあいいや、また今度、都合のつく日にな!」

 私はケンジさんの言葉を聞き流し、昨晩の事件に思いを馳せる。
 ニュース番組が引き続き事件の報道をする。

「惨殺されたチャラ男はいずれも鋭利な刃物で胴体を切断されており、中には強姦された形跡も……警察は近頃この辺りを騒がせている『最終貞淑妻』の仕業と判定し………いってらっしゃい、ケンジさん」

 玄関でケンジさんを見送り、私はまたニュース番組に耳を傾ける。この家にテレビやラジオはないから、ニュース番組は貴重だ。

「そうだ、朝食を片付けなきゃ。続いてのニュースです。東京湾にある人工島では…」

 口からニュース番組をたれ流しながら、私はフルフェイスマスクを箪笥から取り出す。

「ゲッヘッヘ、楽しそうだなあ奥さん」

 日常の貞淑を破る声。
 いつの間にか、部屋の中にあの男がいた。

「ザ・ファック!いつのまに入ってきたの!?」

 私は息を荒げて俺の手を掴む。
 俺の手が俺の手で捻りあげられる。

「おー怖。つれない態度はやめてくれよ。もうとっくに勝手知ったる仲だろ?」

 自分の体に拘束具を取り付けながら、私はザ・ファックを睨みつける。
 正体不明のゲス外道。その姿を想像するのは至難の業だ。そういうときは黒いシルエットのイメージを固める。
 人間の心に潜む闇、その辺りがザ・ファックのイメージに相応しいだろう。

 ザ・ファックのイメージを浮かべた俺は、改めて鏡を睨みつける。

「っ…!言わないで!もう私は人を殺したくないの!!」

 俺は俺の頬を叩こうとする。その手を、俺は素早く掴んだ。

「よく言うぜ。昨晩はあんなに楽しそうにチャラ男達を強姦殺人しておいてなあ?もうお前は俺に使役されるだけの殺戮機械なんだよ!黙って俺に従え!」

 投げかけられた残酷な真実。
 俺が罪の意識にさいなやんだ隙に、俺は俺の首に薬物を静脈注射する。

「くっ!今何を注射したの!?ゲッヘッヘ…ご存知ドーピングさ!さあ、恐怖の殺戮ショーの始まりだぜ木曽路ぃ!?ごあああああ」

 オリジナルカクテルのドーピングを注射された俺は、みるみるうちに興奮してゆく。
 目が白目を剥き、体は痙攣し、女物の服を引き裂き、拘束具を身につけて、レザーコートを羽織り、ニーソックスを穿きながら反復横跳びをし始める。

「いやぁーっ!やめて…私はもう殺戮機械なんかじゃない…組織は抜けたの!!やめて…やめ…フォオオオオオオオ」

 そのときチャイムが鳴った。

「ごめんください、隣部屋に住んでる青芝です。回覧板を届けに来ました」

「うるっせ〜な、今いいところなんだ。ぶっ殺すぞ!!!」

 大慌てで俺は裸エプロンに着替えて、玄関の扉を開ける。
 扉を開けると、そこにはお隣の住人、青芝さんがいた。

「あら早乙女さん、お一人ですか?随分と騒がれていたようですけど」

「ああ、いえ、へへ…すいません」

「大概にしてくださいね。お互いご近所様なんですから」

 青芝さんが去っていくのを見届けると、俺は再びフルフェイスマスクを被る段に取り掛かった。

「フォオオオオオオオーーーーっ!フォウフォウフォウッ!」

 俺は窓を開けて、貞淑な住宅街に飛び出す。
 全ての犯罪者をレイプし、殺戮し尽くすまで…!



三、
 会社に出社した。

 まさか、私も愛する夫の会社に出社させられるとは予想もしてなかった。
 ザ・ファックは嬉しそうに笑っている。

「ゲッヘッヘ…なあ木曽路さん。朝っぱらからこんな格好を旦那さんに見られたら、変態だってバレちまうなあ…?ゲッヘッヘ…」

 上にコートを羽織っているからギリギリバレないものの、コートの下が返り血まみれだとバレでもしたら通報されかねない。

「くっ…この変態男…!こんな姿を誰かに見られでもしたら…!!」

 ザ・ファックの導くままに廊下を徘徊していると、警備員さん達が心配そうに駆けつけてくれた。

(良かった…!今ここでザ・ファックを逮捕して貰えば、私は解放される…!)

 しかし、そんな私の浅はかな考えを見抜いていたザ・ファックは、下卑た笑いを浮かべた。

「逮捕してください!…ゲッヘッヘ…ゲッヘッヘ…さあ早く!」

「大丈夫ですか貴方?ちょっと警備室まで来てもらいましょうか」

「クックック…木曽路さんよお。ここで俺のことをバラしたら、あんたがこんな格好をしている変態だってことまで皆んなにバレちまうんだぜ?そんな…そんなことになってしまったら!」

「とにかく警備室に来て貰おうか。おいみんな!この変態を捕まえてくれ!」

 あたりは既に人だかりが出来ており、もの見たさに観衆達が集まっていた。
 私はまんまとザ・ファックの邪悪な奸計にハマってしまったのだ。

「ゲッヘッヘ…大勢の人に見られて興奮するなあ?そんなっ!そんなことありません!ああケンジさん、来ないで頂戴…このスリルを愉しもうぜぇ?」

「おい、大人しくしろ変態野郎」

 具合の悪そうな見た警備員さんの一人が、恐る恐る私の腕を掴もうとする。
 私は警備員さんの太ももに手を当てた。

「なにこれ…体が勝手に!!ゲッヘッヘ…」

「ひいっ!こいつ触ってきやがった!」

「木曽路さん…お前はビッチだ。さあその本能を剥き出しにして、警備員さんを誘惑してやろうぜ…!無理よ!そんなことできない!!」

「やめろ!抵抗するな変態!!」

 私は必死に抵抗しようとする。
 このままじゃ、衆人環視の中で大勢の人たちに…!

 しかし、ザ・ファックの甘い言葉によって、私の確固たる抵抗の意思は脆くも崩れ去ってゆく。

「良いじゃねえか…木曽路さん。お前は生来のビッチなんだ。そのご手淫で警備員さんをおもてなししてやるんだ。ああそんな…」

「がああああああーーーーー!」

 必死に抵抗しようともがくが、手は勝手に警備員さんの太ももをまさぐろうとする。
 そんな…私はビッチだったの?

「いやっやめて…!私はこんなことしたくない!!よし良いぞ…もっとおもてなししてやれ…!」

 他の警備員たちが取り押さえようとするが、わらしべワイフの効果でパワーアップした私を止めることは出来ない。

 警備員さんは恐怖で震え上がり、縮こまっている。私はといえば、巨大な岩盤すら粉々にする圧倒的なパワーで、いやらしく荒々しい手付きで警備員さんの下半身を責める。コブラツイストファック!警備員さんはとても苦しそうだ。

「ああ…とても苦しそう……駄目…こんなこと…」

「があああああ」

「ああ、そんな…よし、チョークスリーパーで寝かしつけてやれ」

 ザ・ファックの命令で、ビッチ欲が満たされようとしていた私は、警備員さんの首を絞めて気絶させた。

「ごがぁっ」

「嫌ぁーーーーー!駄目ぇーーーーー!」

 警備員さんは気絶した。
 そんな…!ビッチ欲が満たされる寸前で、警備員さんを気絶させてしまうなんて!
 しかも警備員さんはあくまで悪人ではないから、殺すことも出来ない。
 これじゃ、ビッチ欲も殺戮本能も満たせない…!どうしたら…!

「クク…殺戮本能が高まってきただろう?さあ、市場調査の時間だぜ?部長!出張に行ってきます!!」

「へっ!?あっおお」

 私は偶然居合わせた部長に出張を告げ、スクラムを組む警備員さんたちを蹴散らしながら市場調査に出かけた。

 後で部長にはフォローを入れとかないと。



四、
 研ぎ澄まされたビッチ感覚に突き動かされるまま、私は衝動的に街中をぶらつく。

 ひとえに、犯罪者は許せないという気持ちのまま…!

 盗んだバイクで走り出した私は、わらしべビッチの効果で性能を底上げしたバイクにまたがり、盗んだバイクで走り出す。時速600kmの超スピードで目的地に辿り着いた。
 盗まれたバイクもまた人妻といえる。渡り歩くことで、その隠された性能を覚醒させる。

「フォオオオオ…この街で犯罪の臭いがするわ」

 東京都ふしだら区。貞淑な住宅街の並ぶこの街は、昼間人口が少なくなるため、盗みなどの軽犯罪が多発する。
 人気のない住宅に押し入ると、案の定、ゴロツキの集団が家の住人たちを殺そうとしている真っ最中だった。

「えっ!?」

「えっ!?」

 まず驚いたのは私。
 まさか、不法侵入した家宅で、その家の家族たちがゴロツキの集団たちに縄で縛られて惨殺されようとする寸前だとは夢にも思ってなかったからだ。

 そして、それはゴロツキ集団や縄で縛られた家族たちも同じだった。

「何ですか貴方は。ゴロツキたちに家族を縄で縛られたと思ったら、また新手の犯罪者ですか」

 幸いにも、家の人たちは縄で縛られているだけで、まだ危害を加えられている様子ではなかった。
 家族構成は4人。いや…2階にいる気配も合わせると5人か。視界に写るのは父、母、おばあちゃん、そして小学生の息子さん。

 そして、ゴロツキ達が14人。金髪でジャージとか着てるし、皆が一様にリボルバーを携えている。
 佇まいから見ても、ただのチンピラではないことがわかる。手練れのガンマンのようだ。

「何よあなた達…!やめて、私に近寄らないで」

 このままじゃゴロツキ達に酷いことをされる。
 危機感を抱いた私はゴロツキたちを牽制しようと、静かに抜刀した。

「ゲッヘッヘ…良いじゃねぇか良いじゃねぇか。おい!アンタたちもこっちにきて一緒に遊ぼうぜ!」

 しかし、ザ・ファックは私の警戒心を見抜き、ゴロツキたちを誘ってしまった。このゲス男…!

 ゴロツキたちは欲望を剥き出しにした目で此方を見る。
 ゴロツキたちは青ざめた顔で銃をこちらに向けた。

「え…何お前。近寄らないで欲しいのはこっちなんだけど」

「嫌っ!そんなものこっちに向けないで!駄目だぜ木曽路さん…こういう時は優しくおもてなししてあげるんだ。さあ……こいつらを誘惑しろ!!」

「おいこいつヤベエよ」

 恐怖したゴロツキの一人が思わず発砲する。
 しかし、恐怖に駆られた一撃など何の意味もない。

 一閃。
 強化された反射神経は発砲の予備動作を的確に見切り、発砲よりも速く身を動かす。

 次の瞬間、ゴロツキの目に映ったのは、マズルフラッシュに焚かれたセクシーな人妻のアラレもない肢体だったろう。

 迸る筋肉。抜き放たれたレイプ丸の刀身は既にゴロツキを袈裟斬りにしていた。
 軽快なステップで振り返ると、さらに一閃。二閃。光。燦然とした世界へ到達。

 三千世界の烏を殺し、ぬしと朝寝がしてみたい。

 14人いたゴロツキはあっという間に10人に減った。
 何が起きたのかも理解できていないゴロツキたちに向けて、私はもはや殺戮本能を隠そうともせずに優しく笑いかける。

「貞淑にお縄につけ犯罪者ども。私は生まれついてのビッチだ。レイプされたくなくばな」

「ちくしょお、こんなおっさんのビッチがいてたまるかよおおお」

 ゴロツキたちは号泣しながら一斉に発砲しようとする。その手を刀の鞘で押さえて動きを封じつつ、抜き身の刀をゴロツキの一人に押し当てる。

「動かないで。私だって本当はこんなことしたくないの。ゲッヘッヘ…さあ、こいつらを誘惑するんだ木曽路…駄目よ…そんなことできないわ」

「ひいいいいなんか一人でぶつぶつ言ってるよお」

 恐怖のあまり、人質に取ったゴロツキはリボルバーで自らの頭を撃ち抜き自殺してしまった。余程自責の念に駆られたのだろう。

 自殺したゴロツキの死体から銃を奪い、私は生き残りのゴロツキ達に向ける。

「うふふ…かかってらっしゃい♡遊んであげるわボウヤ達」

「まさか我らが遊ばれる立場に回るとはな。これも天命と言うものか。良いだろう。最期の華を咲かせて見せようか」

 何を勘違いしたのか、誘惑したのにゴロツキたちは一斉に銃を構えてしまった。
 こうなっては全員殺すほかないではないか。

「フォオオオオオオオーーーーーっ!」

 乾いた発砲音が数十発民家の中で反響する。
 私は生意気なゴロツキたちを一人残らずこらしめた。



五、
 次の瞬間、あたり一面に死の貞淑が訪れた。

 わらしべワイフの能力で強化されたリボルバーは、あっという間に残りのゴロツキ達の脳天に風穴を開けた。
 リロード時間を差し引いたとしてもレイプする余裕はなかっただろう。

 私は捕まっていたご家族の縄を解いてあげた。

「ああああ、どこの変質者さまかはご存知ありませんが、命を助けていただきありがとうございます」

「例には及ばん。たまたま不法侵入した家でお前達が殺されそうになっていただけだ。水でも飲んで落ち着くと良い」

「私たちは警察に通報した方がよろしいのでしょうか?」

「それはやめてほしい」

 話を聞くと、どうやらゴロツキたちは有名な押し入り下着泥棒の犯罪者集団で、民家に押し入っては、そこで暮らす家族たちを縄で縛り、普段の生活態度について5時間くらい説教してから一人ずつ惨殺し、痕跡を完全に消滅させてからあらかじめ持ち込んだユ◯クロの下着を庭に干し、別の下着泥棒を呼び寄せて未使用の下着をわざと盗ませ、その様子を撮影してYouT◯beにアップする行為でしか興奮できないタイプの下着泥棒たちのようだった。
 しかし構成員全員が銃の早撃ち大会で賞を取るほどのガンマンで、今まで誰も捕まえることが出来なかったそうだ。

「勝手に人の家に上がり込むなんて許せない!」

 その時、小学生の息子さんが絶望した表情で叫び始めた。

「ああ!大変だよ変態さん!!まだお姉ちゃんが2階にいるんだ。きっと残りのゴロツキに説教されてる途中なんだよ」

「何っ!それは大変だわ。悪人は一人残らず成敗しないと。ゲッヘッヘ」

 もはや私はザ・ファックが囁くまま、己の殺戮本能に従い、懐に忍ばせていた強めのスタンガンを起動させて小学生の息子さんの両手にしっかりと握らせた。
 母親がすごい形相で睨んでくる。

「頼むから汚い手で息子に触らんといてください」

「息子さん、君の名前は?」

 私は母親の発言を無視して息子さんに名前を尋ねる。
 息子さんは私を見る。こんな小学生に見られるなんて…

「えっ……犬飼健治です」

「そうか。奇しくも同じ名前だな。よし健治くん。この強めのスタンガンを私に押し当てるのよ」

 いきなりこんなことを頼めば、ちょっとくらい躊躇うかと思ったが、健治くんは一切の躊躇なく強めのスタンガンを私の首筋に押し当てた。

「アガガガゴガガカ」

「えっ?えっ?何これ」

 健治くんはわけも分からないまま、再び私の顔面に強めのスタンガンを押し当てる。
 強めの電流が脳内に迸る。

「ガガガガガガ!?アガガガガガガガ」

「健治!よく分からないけどもっと強めにやるんだ」

 お父さんの勧めで健治くんは強めのスタンガンの電流をMAXに引き上げて額に押し当てた。

「ガアアアアアアアアッ」

 強めの電流を浴びた私は、これで健治くんの家に身も心も服従する形となった。つまり、わらしべワイフの効果が発動して、私はさらに超パワーアップしたのだ。

「ああご主人様っ!なんなりとご命令を!!!」

「じゃあさっさとお姉ちゃんを助けてきて」

 わりと躊躇なく私を受け入れた健治くんの冷たい命令で、私は二階へと駆け上がった。

 二階では最後のゴロツキが女子高生に正座をさせ、泣きながら必死に算数ドリルを解かせていた。

「なんで分数出来ねえんだよ」

「だって家族殺されそうなときに勉強とか出来るわけないじゃん」

「フォオオオオオオオーーーーー!」

 私は無造作にゴロツキに駆け寄ると、刀を振り上げる。
 そのとき、既にゴロツキはノーモーションで発砲していた。

 マズルフラッシュが弾丸よりも遅れてやってくるほどの錯覚。

 寝取られることで鋭敏に研ぎ澄まされた時間感覚すらも錯覚させる程の早撃ち。
 全てを捉えきる感覚だけが辛うじて「既に撃たれた」事実を認識出来るほどの高速発砲だった。

「フォオオオオオオオーーーーー!」

 弾丸は何とか般若面に仕込んだ鉄板で受け止めたが、脳に直撃すれば即死だった。電流を浴びて犬飼家に服従を誓わなければ死んでいた。
 それでも、心の片隅にはまだケンジさんへの愛が残っている。

 このゴロツキ、さっきまでの奴らとは格が違う。この早撃ちは

 さらにマズルフラッシュが瞬く。
 気がつけば、さらに二発同時に両肩を撃ち抜かれていた。いや、右膝もだ。

 獰猛なまでに、「一瞬」が、既に過ぎ去っている。

 三発同時の弾丸射出。
 これで下手な動きは封じられた。

 ゴロツキはゆっくりとこちらを振り返る。

「下着泥棒を舐めるなよ。俺は家庭に押し入って勝手に下着の枚数を増やして帰るタイプの下着泥棒だ。俺が通過するとき、全てのパンツは過去となる」

「ごめんなさいケンジさん……ああ…なんだか愉しくなってきちゃった♡ゲッヘッヘ…」



六、
「下着をね。泥棒に盗ませようとすると、どうしても絶対に洗濯が必要になるんだよ」

 ゴロツキは立ち上がりながら女子高生の算数ドリルを採点する。
 その佇まいに一切の張り詰めた空気はない。

 だが、そこに付け入ろうとすると、たちまちのうちに弾丸で狙撃されるだろう。

「洗濯しないパンツはただの布だ。パンツ泥棒は洗濯したパンツを盗むだろ?洗ってないパンツを盗むことは難易度が高く機会も稀だ。だから、パンツは履く段階ではなく、洗う段階で初めてパンツになるんだ。ならば、俺たちはその原理をハックしてやればいい」

「そんなことを言っても……心まではあなたに屈しません!!私はケンジさんの妻なのだから!!」

「ほう。中々どうして言ってくれるね。君もかなりその道に通じているようだ。そう。我々おパンツ泥棒は、人のパンツは盗めても、人妻の心までは盗めない。だが君は、目の前の女子高生に算数を教えたいとは思わんのかッッッ」

 男はいきなりキレた。何言ってんだこいつ。
 怖っ。

「誓って言おう!」

 男は弾丸をリロードしながらいきなり宣誓した。
 女子高生は恐怖のあまり、泣きながら算数のドリルを解き直している。早く彼女を算数のドリルから解放してあげないと……時間が経てば経つほど彼女も人妻になってしまう!!

「我々は女子高生のパンツに興味はない!若者には青春を謳歌する権利があるからだ!!彼女らの明るい"現在"を下着盗難という暗い過去で汚したくない!!故にパンツを増やすのだ!だがッ!権利には必ず義務が伴うッ!わかるか!?つまり俺たちは勉強を教えなければならない!!家族が次々と惨殺され、家庭の下着が勝手に増やされてから殺される状況下に置いてもだ!!」

「つまり…パンツを盗むためにはパンツを増やす。パンツを増やすには…子供に勉強を教える必要がある?」

「改めて第三者に分析されるとそれはそれで怖いな」

 男はいきなり冷静になった。
 そしてリボルバーをこちらに向けた。

「そんな汚いものをこっちに向けないで!変態め!」

 そのとき、しばらく大人しくしていたザ・ファックがニヤニヤと笑いながら私に話しかけてきた。
 まるで私の本性を見抜いているかのように。
 でも最後の一線だけは超えさせてやらないんだから。

「ゲッヘッヘ…木曽路さん。敵の弾丸は六発。能力は未知数。だが、敵はこちらの手足を撃ち抜いたことで余裕が生まれている。馬鹿な野郎だぜ…?なあ?『わらしべワイフ』の所有移転で再生力を強化された肉体は、即座に攻撃体勢へと移行できるぜ」

 ザ・ファックの甘い誘惑。それは、戦闘におけるこちらのアドバンテージを敵に開示しない選択を私に提示することで、「戦闘をしない」という選択を私の頭から消し去ろうとする策だった。
 こんな小狡賢い強制二択なんかに負けてやるもんですか…!ごめんさないケンジさん…

「敵よ聞くがいい。私の能力は『わらしべワイフ』。人妻である私は、寝取り寝取られることで、所有物や私自身の力を加速度的に高めていくわ。つまりあなたが撃ち抜いた弾丸のダメージは既に回復しつつある」

 私は己の殺戮本能に負けてしまった。決闘は公正に行わなければならないという敵の義務感に同調してしまったのだ。これではケンジさんに合わせる顔がない。
 敵が嬉しそうに微笑む。

「ほう…人妻とは中々骨のある男だ。ならば俺からも教えてやろう。俺の能力は弾丸の複製。リボルバーのシリンダーが回転する間、俺は弾丸を自動的に再装填できると言うわけだ。人を殺すのに特殊な能力など必要ないのだよ」

 さっき、この早撃ちの男は一回のうちに三発の弾丸を同時に発射していた。だが、実際は一動作ではない。トリガーを引くと同時に、リボルバーのシリンダーを回転させながら、もう片方の手を超高速で動かし、撃鉄の反動を利用して三発もの弾丸を一瞬で連射したのだ。恐るべきは、三発連射が全て同時に思えるほどの超高速の手淫。

 スポットバーストショット。

 つまり、この男は一度に何発も弾丸を発射するほどのテクニックがある。すると、その圧倒的なテクニックで私はこの男にレイプされてしまうのかもしれない。
 心どこかでそれを期待してしまう私を否定できない。

 そして、さっき男が自分から開示した魔神能力。弾丸の複製。
 魔神能力と早撃ちの脅威的なマリアージュとなる。
 この男は一体、一度に何発の弾丸を連射できる?
 もしそれが理論上六発以上だとしたら。
 浮かび上がる可能性。

 七連発以上のスポットバーストショット。

 もしかしたら、鉄甲仕込みの私の般若面すらぶち破り、脳髄を完全に破壊してしまうかもしれない。
 七発以上の弾丸を全く同じ場所に喰らえば、いかに強化された鉄甲といえども強度がもたないだろう。

 ニヤニヤとザ・ファックが笑う。
 この男は、早撃ちパンツマンよりも、私の殺戮本能が上回ることを確信しているのだ。

「さっきからお二人ともすごい早口で気持ち悪いですね…」

 女子高生が泣きながらなんか凄いことを言った。
 私と早撃ちの男は二人とも押し黙ってしまった。なんてことするんだ。

 おそらく、次の攻撃のタイミングは同時になる。
 沈黙して「次の瞬間」を待つ。

「……」

「……」

 そして、「次の瞬間」はすぐに訪れた。

「勉強頑張っているわね我が孫よ。ちょっと休憩してお菓子の時間にでもしましょう」

 なんと、算数ドリルを頑張って解いている孫娘のために、おばあちゃんがお菓子を差し入れに来てくれたのだ。

「今日はこの弾丸をぶち込んでくれるわ」

 おばあちゃんの差し入れはリボルバーだった。
 次の瞬間、おばあちゃんのリボルバーが火を吹いた。
 おばあちゃんの銃口は早撃ちパンツマンに向けられていた。

 オバァチャァァァン!という乾いた発砲音が女子高生の部屋内に響き渡る。
 次の瞬間、撃たれていたのはおばあちゃんの方だった。

「おばあちゃんッ!」

「馬鹿な…信州の業深き流星と呼ばれたアタシの早撃ちが…」

 おばあちゃんは早撃ちパンツマンにピンポイントで銃本体を狙撃されてしまったのだ。これでおばあちゃんの手は封じられてしまった。

 私はこの絶好の機会を狙って居合の体勢に入る。
 それを見越していたのか、早撃ちパンツマンと目が合った。

 修羅の時は既に訪れた。

「『わらしべワイフ』ッ!」

「『ダーティ・ループス』ッ!」

 私の目に写ったのは、理外の光景。
 磨き抜かれた弾丸速射と弾丸複製の魔神能力のみが可能にする、弾丸装填数をすらも超えた不可能の世界。

 十三連発同時のスポットバーストショット!!

 勝負は一瞬で決着がついた。

 誤算は二つあった。
 まず、一つ目は私の愛刀レイプ丸が柄の部分をいつのまにか狙撃されていたこと。
 全ては、早撃ちパンツマンが初めの交錯の瞬間に撃っていた布石。
 両肩と右膝を撃ち抜いた弾丸以外にも、実はもう一発の弾丸が放たれていた。
 三発ではなかった。四発同時のスポットバーストショット。
 複製の能力がありながら、弾丸をリロードしていたのは、残弾数から発射した弾の数を悟られないようにするため!!

 あの瞬間に、私は刀という最大の武器を破壊されていたのだ。

 そしてもう二つ目の誤算は、早撃ちパンツマンの誤算。
 私が既に、自分の刀を封じられたことに気付いていたこと。

「!!」

 私は居合の体勢を保ったまま、後方に向けて跳躍した。
 リボルバーの射程距離はおそらく10メートル前後。寝取られることで強化された私の肉体は、女子高生の部屋の壁を破壊して、となりの部屋へと移動する。

 全ては一瞬の交錯。
 私の額を狙った弾丸は、有効射程距離を離れて、ギリギリ般若面を破壊する程度の威力に留まった。

 弾丸の射程距離範囲外。
 当然、私の攻撃も届かない。

 そう、早撃ちパンツマンは考えているだろう。
 これが絶好の距離となる。

 私は居合の体勢から、懐に隠していたリボルバーを取り出し、パンツマンに向ける。
 目と目が合う。

 再び、乾いた発砲音。

 届くはずのない弾丸が、早撃ちパンツマンの心臓を貫いた。
 私が使ったのは、一階のリビングで虐殺したパンツ泥棒たちから奪ったリボルバーだ。
 わらしべワイフで強化された弾丸は、当然ながらその飛距離も強化される。

 早撃ちパンツマンの弾丸はこちらに届かない。
 だが、私の弾丸は早撃ちパンツマンの心臓をファックする。

 早撃ちパンツマンは口から血を吐きながら、膝から崩れ落ちた。

「ただ快適に過ごして欲したかっただけだ…パンツを盗む側にも、盗まれる側にもな。新品のパンツで、洗い立ての奴をな……」

 どうやら早撃ちパンツマンはこの後に及んで私をレイプしようとする腹づもりらしかった。

「算数ドリル解けたよ」

 女子高生が泣きながら算数ドリルを早撃ちパンツマンの顔面に乗せた。
 私は算数ドリルを退かした。

「早撃ちパンツマン!良いことを教えてやろう。私の愛刀の名前はレイプ丸という。今からお前におしおきをしてあげるわ!フォオオオオオオオ」



七、
 早撃ちパンツマンにおしおきを執行した私は、その後駆けつけた警官たちに無事に取り押さえられた。

「やめてっ!放して下郎の輩ども!私に酷いことしようとするつもりでしょう!?ゲッヘッヘ…良いじゃねえか」

「おいっ!みんな、早くこいつにスタンガンを浴びせてやるんだ」

 血走った眼の警部補がスタンガンを私に押し付けた。

「こういう輩にはスタンガンが一番よく聞くんだよ!」

「ガァァァァァァァ」

 警察官たちの卑劣な拷問によって身も心も警察のものになった私は、呆気なく陥落してしまった。ごめんなさい、ケンジさん……

「ああヲぁぁぁぁ〜〜!なります!わたしはあなた方警察の犬になります!ならせてください〜!」

「嫌です」

 私は逮捕された。

「待ってよ警察さん!」

 そのとき、警察に連れて行かれる私を引き止めたのは、小学生の犬飼健治くんだった。

「その犬、うちで買っちゃ駄目かな!?僕、人妻になりたいんだ!」

「何言ってるの健治!!馬鹿おっしゃい」

 健治は母親に殴られた。

「僕…般若面のおじさんが犯罪者たちを虐殺する姿を見て、そこはかとない興奮を覚えたんだ!!僕もおじさんみたいに悪い奴らをぶち殺したい!!」

 私は健治くんに微笑みかける。

「健治くん…君ならなれるさ!私のような人妻に!!なれる!!ゲッヘッヘ…!」

 健治くんは静かに頷いた。

 私は既に確信する。健治くんもきっと、貞淑な妻になれると。

 私は最後ではなかった。
 妻の貞淑さは、ケンジたちの間に、連綿と引き継がれてゆく…!

 私は確信する。
 そう、犬飼健治くんこそが真の…
 最終貞淑妻ケンジだと!!!



 最終貞淑妻ケンジ-origin-
 完
最終更新:2021年02月20日 21:51