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ヘルボックル

在来生物界ヒューマノイド類亜人目切り株小僧属。

「へぇ……そりゃまた随分と業の深い子供ですねぇ」

ヘルボックルというモンスターについて釜飯作りの名人に聞かせるも、彼の手は止まらない。シュッ、シュッという規則正しい音が、薄暗い厨房に響く。
名人は、ヘルボックルの噂話を、米の研ぎ汁を捨てるかの様な気軽さで受け流した。

名人の目の前に置かれた古びた図録には、その奇妙な怪物の姿が描かれていた。

切り株をすっぽりと頭に被った、子供の様な姿の妖精は、人間の「魂」を養分として吸い取り、寄生した魔界樹を急成長させる。
凄まじい魔力消費ゆえ、わずか一年でその木は枯れ果てる。
生き永らえるために、一年に一本、貴重な魔法樹が伐採され、切り株が「新調」される。

「魂を喰って木を育てる、か。効率がいいんだか悪いんだか」

名人は愛用の羽釜を火にかけながら、フッと鼻で笑った。

「いいかいこの『釜』と同じさ。
中に入れるもんが上等でも、火加減を間違えりゃ焦げ付くし、器がボロけりゃ旨味が逃げる。
その悪餓鬼は、器(切り株)を一年で使い潰さなきゃならないほど、中身(魂)の火力が強すぎるんだろうよ。
魂を贅沢に使いすぎて、自分自身の根っこを焼いてるのさ」

名人はしゃがみ込み、薪の隙間から覗く炎を見つめる。

「一年で枯れる木を何十本も切り倒して、魂を啜って歩く……。
そんなもん、どんなに極上の魔法樹を使ったところで、『炊き立ての飯』の匂いに比べりゃ、ちっとも羨ましくなか」

パチパチと薪が爆ぜる。
やがて、釜の蓋の隙間から、真っ白な湯気と共に、醤油と出汁、そして山の幸が混ざり合った至高の香りが立ち上った。

「ほら、食べる準備しな。
魂だの魔法樹だの、そんな物騒なもんより、この一合の米に宿る命の方が、よっぽどアンタを元気にしてくれる」

名人が釜の蓋を開ける。そこには、ヘルボックルがどれほど魂を捧げても決して手に入らない、温かくて優しい「黄金色の景色」が広がっていた。

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6世代
最終更新:2026年05月16日 08:11