闇に包まれていた意識が、急激に引き戻される。
回復呪文の暖かい感触に、
ピピンはゆっくりと目を開けた。
剣を振りかざし、見下ろすように立っていたのは、スライムに乗った異形の騎士。
「う、うわぁあああああああああ!!」
思わず悲鳴を上げた彼に、スライムナイトは慌てたように言った。
「ピピン殿、落ちついてください。私です、
ピエールです!」
「……え? ぴ、ピエールさん?」
よくよく見てみれば、確かにピピンが忠誠を誓ったグランバニア国王の仲間モンスター、ピエール。
ピピンは心の底から安堵し、そして悲鳴を上げてしまったことを詫びた。
「いえ、お気になさらず。こんな状況では仕方のないことでしょう」
「でも、良かったわ。気を失っていただけなんて、本当にラッキーよ」
その時、ピピンは初めて彼の後ろに少女が立っていることに気付いた。
王女と同じくらいの年齢だろうか。 頭に、小さな角がついている。
「…ピエールさん、そちらの方は?」
「え、
エーコのこと?」
少女は、目をぱちくりさせながら言った。
「エーコ殿は、『白魔法』という力で、介抱を手伝ってくださったのです」
「そうか……ありがとう。君にも迷惑をかけてしまったね」
「や、やーねぇ。そんな、困っている人を助けるなんて、当然じゃない」
エーコは少し照れた様子で、わざとそっぽを向いて答えた。
「さて、私はご主人様達を探しに行かなければ」
ピエールはそう言って立ちあがった。
「あ……」
自分も一緒に行く、……そう言おうとして、止めた。
唯一の武器だった
ナイフが無くなっていた。――武器の無い戦士など、ただの足手まといに過ぎない。
「……気をつけて」
二人はしばらくピエールの姿を見送っていたが、やがてエーコが口を開いた。
「ねぇ、ピピンって、こんなモノ使える?」
「え?」
エーコが袋から取り出したのは、大鋏。
ピピンでさえやっとのことで装備できそうな重量。こんな少女には、扱えるわけもない。
「エーコね、これから大切な人を探しに行くんだけど……
協力してくれるなら、貸してあげる」
「え? …えええ?」
武器を手に入れることができる、というのは有りがたい申し出だが…しかし。
「どうせ、エーコには使えないしね。持ってたって重いだけだし」
「だ、だけど……本当にいいのかい?
僕は武器を持って逃げるかもしれないし、その……」
殺すかもしれない、という言葉を飲み込む。
「大丈夫。エーコには強い味方がいるから。
それに、これでも人を見る目はあるつもりよ」
少女は年相応の、あどけない笑顔を浮かべた。
【ピエール 所持品:
珊瑚の剣
第一行動方針:DQ5主人公を見つける】
【現在位置:ナジミの塔地下→岬の洞窟】
【ピピン 所持品:大鋏
第一行動方針:
ジタンを探す】
【エーコ 所持品:なし
第一行動方針:ジタンを探す】
【現在位置:ナジミの塔地下付近】
最終更新:2011年07月18日 06:39