暗闇の藪の中、
竜王のひ孫(以下竜王)は地図を片手にレーベの村へと向かっていた
「何で竜王たるこの私がこんな苦労をせねばならんのだ・・・全く」
藪が開けると村の姿がみえる・・・もう少しだ
ふっ・・・と気を抜いた竜王だったが、1歩踏み出した瞬間、足下に違和感、何だ?
見ると、ちょうど藪の出口に糸が張られている、そしてその糸の先は・・・・・・
次の瞬間、竜王のちょうど側面から黒衣の騎士が剣を振りかざし襲いかかった。
竜王も呪文を唱えて反撃しようとするが、騎士の動きが速すぎる
大振りの一撃は控え小技でひたすら牽制し、集中をそぐ
魔法使いとの戦い方を熟知した動きだ。
やがて竜王は追い詰められ、行く場を失う
「死ね・・・・」
黒衣の騎士-----
レオンハルトは竜王へ剣を突きつけ、無慈悲に告げた。
「ま、待って・・・待ってくれ!、私は脱出の方法を知っているんだ」
どうしてそんな言葉が出たのかは分からない、が興味深げに騎士は竜王を見つめる
「ふ、舟・・・舟がさっき私の通った入り江にあったぞ、地図でいうとここだ」
その言葉を受けてレオンハルトは考える
確かに興味深い話だ、
ゾーマはああ言ってはいたが、実際首輪の効果を見たわけではない
試して見るのも悪くは無いだろう
剣を突きつけたまま、レオンハルトは竜王に命令する
「いいだろう・・・案内しろ」
嘘から出た真というやつか、幸運にも舟は入り江にあった
もちろん竜王は舟があると思ってあのようなことを言ったわけではない
何とかして時間を稼ぎ生き長らえたかっただけだ。
「先に乗れ」
舟があった事に安堵しながらレオンハルトに従い竜王は舟に乗りこんだ。
続いてレオンハルトも乗りこみ、舵を取って船出する
みるみるうちに海岸が遠くなっていくが、10分ほど漕ぎ出したところで
2人は身体に違和感を覚え始める、さらに進んでいくと違和感は身体の軋みへ、痛みへと変わっていく
見ると首輪が鈍く輝きはじめている、それでも進む・・・が首輪の輝きはますます鮮やかになる
これ以上は無理のようだった。
「ぐっ・・・」
レオンハルトも限界のようだった、後退を始めようとするが・・・身体が言う事を聞かない
大きく体勢を崩し、荷物をいれた袋を落としてしまう
袋から落ちたのは
デルコンダル王に支給されていた
キメラのつばさだった。
それを見た竜王の目が輝く、舟の事といい、今夜の私は運がいいようだ。
彼とて体力を消耗し、反撃なぞは望むべくもなかったが、それでも魔族の血が流れている分
レオンハルトよりは動ける、すばやくキメラのつばさを手に持つとこれみよがしに見せつける
「はっはっは、この愚か者め!騙されおってからに!私は一足先に帰らせてもらうぞ」
得意げに竜王は叫び、キメラのつばさを夜空に放り投げたが-------何も起こらない
「あら?」
もう1度投げるが、それでも何も起こらない。さらにもう1度、またもう1度
「あららら・・・・」
やがて我に返った竜王が見たものは、体力を回復したレオンハルトの姿だった
レオンハルトは竜王の襟首を掴み、あくまでも静かな声で告げる。
「とりあえず外部への脱出は99.9%不可能だということが分かった
ただ、俺は結果を見届けないことには満足できない男でな」
そう言うなりレオンハルトは竜王のひ孫を境界線めがけて投げ飛ばした
「ぎゃぁぁぁぁぁっ」
まるで蜘蛛の巣に捕らえられた獲物のように竜王のひ孫の身体は境界線に貼りつき
さらに首輪がまぶしいまでに光輝き、そしてその身体は爆発四散した。
「愚かな奴だ、いっそ船底に穴でもあけてれば俺も少しは慌てたかもしれんのに
さてと、やはり戦って生き残るしか無さそうだな」
そう1人ごちると、再びレオンハルトはアリアハンの方角に舵を取った。
【竜王のひ孫 死亡】
【残り 94人】
最終更新:2011年07月17日 20:52