頂上同士の戦い

爆発と強烈な閃光が島全体を走る。
その中でメルビンロックとガウ、そしてモニカを連れて先刻から作成していた、
イカダのそばへと走っていた。
「今のでやれたのか?」
「まさか、あれはただのこけおどしでござる」
先刻からの連続する戦闘はやはりメルビンの力を確実に奪っていた。
もはや彼に残された力は全力攻撃1回分のみ…確実に仕留めることができぬのなら
無駄撃ちは押さえなければならない。

ともかく、彼らはイカダへと辿りつく。
と、そこでモニカの身体から力が抜け、ふわりと浜辺に倒れこもうとする、慌ててロックが彼女を支える。
モニカにとっても色々なことがありすぎた、彼女の精神力もまた限界に達していたのであろう、
これで助かる、という安堵感が彼女を失神へと導いていた。
だが、安心するのにはまだ早い、彼らの前にまたしても難問が持ち上がっていた。
そう、未完成のイカダにはどうやっても3人が乗るのが限界だったのである。

迷う時間は無い、ロックが剣を構える。
「俺が食いとめる!じいさんたちは早く逃げ…」
だが、セリフを最後まで言う前に、彼もメルビンの当身を受けてやはり気を失う。
メルビンは気絶したモニカとロックをイカダに載せると、ガウにオールを渡し、船出するよう促す。

「ガウ殿!我輩に構わず行くでござる」
「がうううっ、がううう(いやだ!置いてなんかいけない!)」
だだっこのように歯を剥き出しにして、拒絶の声を上げるガウにメルビンは優しく諭す。
「ガウ殿にだけ教えるでござるよ、我輩にはまだ取っておきの必殺技があるのでござる」
「ただし、これは島一つ沈める事が出来るほどの威力なので、ガウ殿たちがいると危なくて使えないのでござる」

「がう?」
「早く行くでござる、我輩もあの男を倒せばすぐに追いつくでござるよ」
「がうがう(本当だよ!約束だよ)」
「我輩は生まれてから1度も嘘をついたことがないでござるよ、だから安心して逃げるでござる」
ガウはようやく納得したのだろう、何度も何度もメルビンに本当だね、約束だよと確認しながら、
イカダを操り湖の沖へと消えていった。

それを見送りぽつりと呟くメルビン。
「嘘をついてしまった…この我輩が、生きて会えるはずなどないというのに」
「だが、これでいいのでござる、老いたるものから先に死ぬのが世の定めでござる」

そこにようやくセフィロスが現れる、その身体は所々焼け焦げ、足元はわずかにふらついている。
こけおどしとはいえ、やはりジゴスパークの威力は強烈だ。
事実、セフィロスに傷を負わせ、今まで足止めすることが出来たのだから。

セフィロスは正宗を鞘に収めると、メルビンへと問いかける。
「何故逃がした?貴様と少年と盗賊と、3人がかりならば私を倒せたかもしれんぞ?」
「そのかわり我輩たちも全滅したでござろうな、それは勝利とはいえないでござるよ」
「それに若者たちには無限の未来があるでござる、お主のような薄汚い殺人鬼の手にかからせる
 わけにはいかないでござるよ」

「なるほど…命を賭けるのは貴様一人で充分というわけか、舐められたものだ…おいぼれ」

口調こそ余裕だったが、セフィロスは奇妙なデジャヴを覚えていた。
アリアハンの山頂で斬ったデブ、ベクタで斬った魔人、そして昼前に洞窟で斬った少年…
そのいずれもが今のメルビンと同じく、一片の迷いも恐怖も無い澄んだ瞳をしていた。

(何故だ…何故死を目前にして、いやこの私を目前にして、こいつらは恐怖しない?)
わずかに頭を振って、そのデジャヴを振り払うと、セフィロスは正宗を抜き放つ。

「ともかくその瞳、斬らずにおれんな…行くぞ!」

セフィロスの突進をメルビンは槍を構えて受けとめ、いや受け止めようとしただけだった。
彼は槍を地面に突き刺すや否や、そのまま空中へと舞いあがる。
セフィロスもまた迎撃姿勢をとるが、わずかだけメルビンの方向が勝った。
メルビンの手から槍が放たれる、セフィロスは何の苦も無くそれを払い落とした、その時だった。
「背後、取ったでござる!」
何時も間に自分の背後に着地していたメルビンが声を上げ、それと同時にセフィロスの両腕関節を極める。
槍はフェイクか…舌打ちするセフィロスだったが、もがけばもがくほど逆に関節は極っていく。
握力が抜けていくそして…ついにセフィロスの右手から正宗が外れる。

それを見たメルビンはさらに技を緩めることなく、セフィロスの両腕を抱え込むようにして
背中側に伸ばして、羽交い締めにし、さらに右足でセフィロスの膝関節を封じ、
そして左足1本で体重を支えながら、自分の最後の力を振り絞り、自分の全魔力を解放し再び地獄の雷を召喚する。

この銀髪の剣士にはギガスラッシュもアルテマソードも通じないであろう、だからこうするしかない。
仕損じることは許されない、だから自分の最も信頼できる技を選んだ。
「我輩もろとも滅びるでござるよ…逃れる術は無いでござる」

「くくく…はっはっはっ、逃れる術が無いだと、老人よ、老いとは哀れなものよな」
セフィロスは唯一束縛を逃れた左足で、自分の足元に転がる正宗を空に向かって思いきり蹴り上げた。
空中に舞いあがる正宗、その瞬間メルビンの顔面が驚愕に歪む。

そう、ジゴスパークは彼らの身体を焼き尽くす事はなく、避雷針がわりに放たれた正宗を貫いたのみだった。
雷は正宗の刀身を辿り、また正宗も魔力を受けて複雑な軌道を描き、それが相乗効果を産んで
彼らとは離れた位置へと拡散しながら落ちる。

単純なようだが、様々な複雑な条件を全て読み切った上で、寸分の狂いもなくピンポイントで、
魔法の出現位置を特定し、なおかつそれを防ぐのは至難の技だ。
そう、セフィロスにしか、なし得ぬ神業といっても良かった。

「何度も同じ技を見せたのは失敗だったな…他の技ならば私は倒されていただろうに」
「くっ…」
メルビンは自分の完全敗北を悟っていた、もう自分には剣を握る体力も、
魔法を唱える精神力も一片たりとも残っていなかった。

「だが…それでも我輩はここで終わるわけにはいかないでござるぅっ!
未来への灯火は決して踏みにじらせるわけにはいかないでござる!」
「良く分かる話だが、貴様の命はあと3秒だ」
もはやメルビンには構わず、セフィロスはゆっくりとその場から立ち去ろうとする。

「ひとつ」
空中に蹴り放たれた正宗が軌道を変え、落下を始める。
「ふたつ」
メルビンはふらふらと拳を振り上げセフィロスに迫る。
「みっつ」
そして正宗の落下点にいたのは…。

「そのまま…死ね」
 ザシュ!
セフィロスはさらにしばらく歩いてからようやく振り向く、
果たしてそこには頭の頂上から股間までを正宗に貫かれ、地面に縫いつけられたメルビンの
哀れな骸があった。
その無念の表情は、これまでのセフィロスの溜飲を下げるに充分だった。

セフィロスはメルビンの身体から正宗を引きぬこうとするが、その時あることに気がつく。
「正宗が…」
セフィロスの分身とも言える愛刀、この世界に斬れぬもの無しとまで称された唯一無二の名刀、
それにわずかな刃こぼれが乗じているのをセフィロスは見逃さなかった。
「老いぼれもバカにはできんな…ふふふ」
メルビンの死体を湖に蹴りこみながら、セフィロスは不敵に微笑むのであった

【ガウ 所持品:なし
 第一行動方針:メルビンの帰りを待つ 
 第二行動方針:仲間を探す
 第三行動方針:ホフマンの仇をうつ】
【モニカ(気絶) 所持品:エドガーのメモ(ボロ)
 第一行動方針:?
 第二行動方針:仲間を探す】
【ロック(気絶)
 所持品:吹雪の剣
 第一行動方針:?
 第二行動方針:エリアを探す】
【現在位置:祠南の島付近の湖上】

【セフィロス(負傷) 所持品:正宗
 基本行動方針:全員殺す
 最終行動方針:勝ち残る】
【現在位置:祠南の島】

【メルビン 死亡】
【残り 49人】


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最終更新:2011年07月18日 01:23
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