劇薬

「案外すんなりと入れたな」
バッツたち3人はぼろぼろに荒れ果てた裏門から、神殿の中へと侵入していた。
「土の戦士はこの丁度反対側の場所にいるようです」
エリアの言葉を聞き、早速移動しようとした一行だったが、ここで3人のお腹が同時にぐぅ~となる。
3人はそれぞれ顔を見合わせて笑う。
さらに自分たちが今立ち止まった場所が何処なのかを知って、彼らはまた笑う。
そこには【食堂】と書いてあったのだ。

「まずは食事にしようよ…もうぼくお腹ぺこぺこだよ」
お腹を押さえてクーパーが言い、そのまま彼は食堂の中に入っていく。
「そうだな」
バッツも賛成する。
「よろしいのですか?」
エリアは少し首をかしげている。
「ここまで来ればもう大丈夫だろう、土の戦士とやらにも、まずは気分を落ち着けてから会いたい」

本当は一刻も早く、という気持ちだったが、それを押さえて、バッツも食堂の中へと入る。
ここまで緊張の連続だった、自分も一息つきたいし、クーパーを休ませてやりたい、
それに一行の中にはようやく辿りついたという安堵感もあったし、
ここまで来ればもう大丈夫という達成感もあった。
とりあえず空腹のままでは不測の事態の時に機敏に反応できない。腹が減っては戦は出来ないのだ。


それからしばらく経過し、食堂の中には美味しそうな匂いが漂いはじめている。
エリアは本来ファリスの支給品であった干し飯を鍋の中に入れると、お湯で戻し、
さらに、道々で摘んだ野草や木の実も放りこんで、リゾットを作っていく。

クーパーは待ちきれないといった様子で、厨房を眺めている。
一方のバッツは目を閉じたまま、イスにもたれて何か考えごとをしているようだ。
(ファリス…レナ…)
彼は失った仲間たちのことを考えていた。
(そういえばファリスは荒っぽいくせに薬とかにもかなり詳しかったよな)
そのまま彼はファリスとの思い出を回想する。

『すごいな、これ全部薬かよ』
『俺たち海賊は生傷がつきもんだし、職業柄まっとうな医者にもかかれやしないからな、自然と詳しくなっちまった』

現実の世界では待ちきれなくなったクーパーがエリアに催促をしている。
「ねぇ、早くぅ~」
「そう急かされても、まだ味見もしていませんよ」
「だったら、僕が味見をするよ、いいでしょ、ねぇ」
「仕方ないですね、わかりました。ちょっと待ってください」

そんなやり取りを聞きながら、バッツはさらに思い出の中へと沈んでいく。
『でもよ、俺が持っているのは傷を治す薬だけじゃないぜ、こんな珍しい毒薬もあるぜ』
そう言ってファリスが見せた薬ビンの中身は、無色透明でバッツの目には水にしか見えなかった。
『だろ…ちょっと待ってな』
ファリスはそう言うと、ビンの中身をフラスコにとって熱を加える。
『どうだ…うまそうな香ばしい匂いがするだろ…知らなきゃそのまま食べてしまうぜ』

(そうそう、ちょうどこんな香ばしい…!!)
バッツは慌てて立ちあがり、味見をしようとしているクーパーを止めようとするが、
しかしすでに手遅れだった、クーパーは皿に盛りつけられたリゾットをもう口にしていた。

バッツの声に振り向くクーパーだったが、毒の効果は劇的だった、
彼の身体が瞬時にして灰色になったかと思うと、もう次の瞬間には彼の身体は石になってしまっていたのだ。

石像と化したクーパーの前でバッツは己の迂闊さを深く後悔する。
こんな大事な事をここまでどうして失念していた?
そうだ、この戦場にエクスデスの息がかかったものが紛れ込んでいないと誰が保証できる。
エクスデスの1派ならば、当然クリスタルのことも知っていて然りだ。

一方のエリアは何が起こったのかも理解出来ず、金魚のように口をパクパクと開閉している。
言いたいことはあれど、言葉が出てこないのだ。
(どうして?どうして?どうして?)
だが、今、目の前で起こった事は紛れも無い現実だ、自分の料理を口にしたクーパーは物言わぬ冷たい石像と成り果ててしまっている。

バッツはエリアを睨みつけ、その手を剣へと伸ばす。
毒を盛られたのが自分ならば、まだ落ちついていられた、
だが、無関係なクーパーを巻き込んだことだけは絶対に許せない。
そう、バッツを突き動かしていたのは、エリアに対しての怒りだけではなく、
クーパーを守る事が出来なかったふがいない自分への怒りだった。

「油断した俺が馬鹿だった…だが、お前だけは許せない!」

そしてその言葉が終わるか終わらないかの間に、
エリアは脱兎のごとく厨房を飛び出し逃げ出していた。
もはや自分の言葉では彼を納得させることはできないだろう、
こうなったら土の戦士であるあの少年になんとかとりなしてもらうしかない。
そうする以外に自分の身の証を立てる方法は無いのだから…。

ともかくエリアは必死で逃げる。
「土の戦士というのも当然でまかせか?それとも俺の次はそいつだったのか!」
風の戦士の怒りと悲しみの叫びを背後に聞きながら…

そして場面は表門へと変わる。
自慢気なテリーの声から、少し遅れて土煙の中からゆっくりとソロが姿を現す。
目をやられているのか、両目には眼帯が巻かれているのが遠めでも分かる。
「テリー…先に行っちゃだめだよ…」
ソロは足元を剣で探りながら、ふらふらと声の方に近づいていく。
導師とティファはそんな2人の様子を見ながら、小声で相談する。
「目が見えないのかな?…直してあげればもしかして仲間になってくれるかも」
一方のティファはソロの顔を見ながら首をかしげている。
「あれは…」

その時であった、廊下の曲がり角から悲鳴が聞こえたかと思うと、一人の女性が姿を現す。
さらにそれを追って戦士が剣を振りかざす。
「覚悟しろ!」
止める暇もなかった、その瞬間、戦士の剣は女の背中を見事なまでに斬り裂いていた。
女はスローモーションのように天に向かって手を伸ばし、救いを求めるようにさらに
何歩かふらふらと進むが、そのまま床へと倒れこんだ。

言葉もなく、静まり返る一同だったが、やがてテリーの叫びが均衡を破る。
「ソロ!悪い奴がいたよ!今、女の人を殺そうとしている!」
悪い奴…その言葉を聞いた途端、今まで緩慢としていたソロの動きが見違えるように機敏になる。
「テリー!そいつはどこにいる!」
「ソロの左の方にいる、そのまままっすぐ走ったらすぐだよ」
「分かった!」
ソロに続いてテリーも男の方へと駆けていく。

導師もまた男に斬られた女性が誰なのかを悟り、男を止めようと走る。
「エリアさん!」
床に倒れたエリアは血塗れになりながらも、それでも床を転がり、救いを求め導師たちの方へと手を伸ばす。
だが、バッツは非情にも剣を両手で構え、エリアへと止めの一撃を見舞おうとしていた。
「これで…終わりだ!」

その時であった、空中から鋭く舞い降りる影、
それを察知したバッツは素早く剣を持ち変えると、ジャンプ斬りをしかけたソロの剣を受けとめる。

「許さない許さない…悪い奴は一人残らず許さない…」
ソロは素早く間合いを外すと、剣を鞘に収め、息を潜めて相手の動きを読む。
一方のバッツは完全に頭に血が登ってしまっている。
「邪魔をするなぁ!」
叫びと同時に彼はソロへと斬りかかっていった。


ソロとバッツが斬り結ぶ中、放置状態のエリアの状態を遅れて到着したティファが確認する。
意識を失っている上、背中を深く斬られ、傷は首筋にまで達している、危険な状態だ。
「導師!はやく来て、でないと…」
しかし導師は、やる気まんまんといった感じで、バッツとソロの戦いをまるで隙をうかがうかのようにじっと眺めている。「何しているのよ!」
「だけどっ!この人は僕の知り合いなんだよ!…あいつ!許さない、ちくしょう!」
怒りに我を忘れている導師をティファが嗜める。
「だったら尚更じゃないの!まだ助かるかもしれないのに…あなた言ってたでしょ、自分の役目は戦う事じゃなく助けることだって!」
「でもっ!」
「戦うことは何時でも出来るわ、でも救う事は何度も出来ることじゃないのよ!」
ティファの言葉に、冷静さを取り戻したのだろう、
導師は気を取り直してエリアへと回復魔法を唱える、しかし。
「だめだ、傷は塞いだけど出血が多過ぎる…回復魔法に加えて輸血もしないと持たないよ」
「たしか医務室がこの先にあったと思う…急ごう」
テイファと導師はエリアの体をそっと持ち上げると、そのまま戦場を離脱し、医務室へと向かった。

【バッツ@魔法剣士(アビリティ:時魔法)
 所持品:ブレイブブレイド
 第一行動方針:エリアを倒す・ソロを倒す
 第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
 基本行動方針:非好戦的だが自衛はする
 最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【現在位置:神殿】

【テリー 所持品:なし
 第一行動方針:ソロを助ける
 基本行動方針:謎の剣士の敵(ティナ)を取る】
【ソロ(暗闇もしくは失明)
 所持品:エンハンスソード イリーナの会員証 スーツケース核爆弾
 第一行動方針:バッツを倒す
 最終行動方針:デスピサロ打倒(現在もその気があるかは不明)
【現在位置:神殿】

【導師(MP50%)
 所持品:天罰の杖 首輪
 第一行動方針:エリアの治療
 第二行動方針:ハーゴンの補佐、看病
 最終行動方針:不明】
【ティファ 所持品:ボムのかけら×5
 第一行動方針:エリアの治療
 第二行動方針:クラウドたちを探す】
【エリア(瀕死)
 所持品:ミスリルナイフ 加速装置 食料2ヶ月20日強分&毒薬
     水1,5リットル×2 小型のミスリルシールド フィアーの書×7
 第一行動方針:クリスタルの戦士との合流
 第二行動方針:?】
【現在位置:神殿内部の医務室へ】
※エリアは一度だけ召喚魔法『シルドラ』を行使可能
※現在荷物は全て食堂に放置状態です

【クーパー(石化) 所持品:天空の盾
 第一行動方針:?
 第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
 最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【現在位置:神殿食堂】
(数時間後自動的に回復)


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最終更新:2011年07月18日 02:22
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