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多数の死体

エリアが事切れたことで、何か知っていたはずのことを聞き出すことはできなくなった。
ピエールため息をつき、とても安らかとはいえないエリアの顔を手で覆うと、目蓋をそっと伏せた。
それからあらためて嵐の過ぎ去った後のような部屋内を見渡した。
「それにしてもこの神殿……どうしたことだ」
ピエールは横で倒れているローブを着た少年の容態を確かめ、命に別状は無いとわかると、彼に癒しの
呪文を軽くかけたのち医務室を出た。

――この人を見つけなければ、医務室へは入らなかったかもしれない。
胸から血を流して死んでいるこの女性。
医務室で破壊した機械人形に襲われたのだろうが、この人はあのフライヤと闘っているのである。
ピエールはあの時キラーマシンとの競り合いですぐに場を離れてしまい、二人がどう闘ったのか
ほとんど見ることはできなかったのだが、実力は確かなものだったのは間違いない。

フライヤと闘った、すなわちフライヤを殺したのがこの女性だという理論はもちろんあり得る。
だが、もうそれを言っても始まらない。
それに、この女性が相手を死ぬまで痛めつけたとは思えなかった。
セーラを討とうと剣を振り上げたとき、止めたのが彼女だ。
あれは、理由はどうあれ目の前で人が殺されるのを黙って見過ごせないという意思でなされた
行為ではなかったか。
そして、ここで無残な殺され方をした彼女を見て、
自分は彼女への不信を超えた、人が死んだという事実に怒りを感じたのではなかったのか。

キラーマシンを倒したことで、この女性の仇を討ったことになる。
もう咎めることなどないのだとピエールは自分を納得させた。
ピエールは頭を垂れて深く祈った。
「どうか、心安らかに」
ピエールは顔を上げ、廊下を歩き出そうとしてふと立ち止まり、思った。
死んだ二人の女性は、あのローブの少年と親しい関係なのだろうか。
ならば、少年は目覚めた時、果たして事実の重さに耐えられるだろうか、と。


廊下はところどころに台座があり、ろうそくが灯されていたため暗闇ではない。
不規則に揺れる小さな炎を頼りにピエールは歩を進める。
(蝋燭の火……管理者でもいるのか?)
だとすれば、それは薄ら寒い企みを持った暗い闇の教徒だろうと、そんな風に思いもした。

場が開けた。
いくつもの柱で支えられる広がりをもった大部屋。
正面入口ということらしい。前方に、強力な力で砕かれたような門が見えた。
ピエールは視線をずらすと、門から左手の、来た方からちょうど反対の廊下と大部屋のつながり付近に
倒れている人間を発見した。

「あれは!」
急に無理な力を加えて走るのに、スライムが何も不満を漏らさないのがありがたかった。
急いで駆けつけて顔を覗いた人物は、確かに見た顔だった。

名前は知らないが、フライヤと戦い寒空の下に放逐された人物であることははっきりわかった。
ピエールが、無礼をしたと謝ったのを、まるで認めず逆上した少年。
それが今は穏やかに眠っているように見えてしまうほどであった。
死を望み、受け入れた、そんな顔だった。

ピエールは複雑な思いで、少年の死を認めるしかなかったが、その刹那、
心臓をわしづかみにされたように戦慄を覚えた。
今まで気付かなかった廊下の隅で、子供が倒れていた。
子供の見開かれたままの目は、怒りなのか恐怖なのか、よくわからない理不尽な色どりで満たされていた。
一刀のもとに切り伏せられた、そんな印象があった。

ピエールはまたも、思った。
皆、狂ってきているのか。


【ピエール 所持品:珊瑚の剣 エストック 
 第一行動方針:神殿内探索
 第二行動方針:とんぬらクーパーアニーを探し、守り抜く
 最終行動方針:ゲームを脱出し、諸悪の根源を断つ】
【現在位置:神殿】


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最終更新:2011年07月18日 06:34
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