ドン!!
ドアが弾けた。のっぺりとした機械の塊がこちらをのぞいている。
「あ、あ…」
そんな、導師はうめいた。こんな最悪の状況で来なくてもいいのに。利用するどころか、エリアのことで動転して逆に追い込まれてしまった。
どうする、ちらりと背後のエリアを見る。答えは、決まっていた。
「くそ、くるならこいっ!」
天罰の杖を構える。お世辞にも戦闘力があるとは言えない自分だが、エリアを見捨てるわけにはいかなかった。
あの時、あの洞窟で。自分たちをかばってこうして冷たくなっていく彼女を、ただ見ていることしかできなかった。
それをまた繰り返すのは、ごめんだった。
天罰の杖を翳し、エアロを唱える。杖から生まれた旋風がキラーマシンに吹き付ける。
やはり、キラーマシンに効いた様子はない。
ボウガンが内蔵された腕を上げると、導師に照準をあわせようとする。
「この、このぉっ!」
導師は杖を魔力を送り込んだ。正直、度重なる魔法の連発で魔力は底をつきかけている。杖を握った手が果てしなく重い。
だが、諦めるわけにはいかなかった。
風を巻き起こす一方で、導師は自分の
切り札の準備をする。
ゴォォォォ!!
風が更に威力を増す。
生まれた余波が、ただでさえ荒れていた室内を更に滅茶苦茶にしていく。
キラーマシンもさすがにその勢いに飲まれ、身動きが取れなくなっていた。
そして――――魔法は完成した。
「ホーリーーーッ!!!」
天罰の杖が一際強く輝き、光の奔流がキラーマシンを飲み込んだ。
「はあ、はあ…」
導師は天罰の杖から手を離すと、膝を付いた。
完璧に魔力を使い果たしてしまったようだ、思考が遠くなり、まぶたが重くなる。
だが、まだ気を失うわけにはいかなかった。キラーマシンを倒した事を確認するまでは――――
〔各部損傷チェック。70%超過。任務の続行は可能〕
そんな。どうしようもない絶望の中で、導師は意識を手放した。
キラーマシンはボロボロになった腕を振るい、床に倒れた導師に振り下ろそうとする。
…だが、導師の命運はまだ尽きていなかった。
ガキン!と甲高い音が鳴り、劣化した金属の腕が落ちる。
振り向いたところに、顔面に剣が突き刺さった。
「邪悪に操られた機械人形。悪いが、壊れてもらおう」
各部から火花が飛び散る。
スライムナイトの
ピエールが
珊瑚の剣を引き抜くと、キラーマシンは崩れて壊れたのだった。
ピエールは珊瑚の剣を収めると床に横たわる導師を見た。
エビルマージを一蹴した後。
ピエールは
フライヤの遺体を丁重に葬り(ちなみにフライヤの
エストックは形見代わりに回収した)、神殿の中に入っていた。
すぐにでもとんぬら、
クーパー、
アニーを探しに行きたかったが、日を暮れてから、外の気温はみるみるうちに下がっている。
ただ出歩くだけでも命の危険があった。
それで、一晩休める場所を探していたのである。
「命に別状はないようだが。あちらのお嬢さんは…」
傍目からでも良くわかる。すでに生気がまったくなかった。
ただでさえ魔法の効きは悪くなっている。もう、手の施しようはないだろう。
「聞こえるか。最後に言いたいことがあるのなら、私が聞こう」
ピエールはエリアに近寄ると、口元に顔を寄せる。
エリアはゆっくりと瞼を開けた。
その瞳は、もう焦点があっていない。
「私は…違う…」
「違う?何が」
「そんなつもり…なかった…そう…伝えなくちゃ…でも…逃げちゃ…って」
つぅ、と涙が伝う。
「死ぬこと…怖れていない…はずなのに…恐くなって…生き、たい…と…願って」
はぁ、エリアはと息を漏らす。最後の時はもう近い。
「それを、誰に伝えればいい?」
「風の戦士に……あの子に、クーパーに、ごめんな、さい…と――――」
「!!…クーパー様だと!?どこにおられる、ごめんなさいとはどういう意味だ!?」
ピエールはエリアの肩を揺さぶる。
だが答えが返ることはなく、彼女の表情は悲しみに満たされたまま、変わることはなくなった。
永久に……
【ピエール 所持品:珊瑚の剣 エストック
第一行動方針:
とんぬら・クーパー・アニーを探し、守り抜く
最終行動方針:ゲームを脱出し、諸悪の根源を断つ】
【現在位置:神殿一階医務室】
【導師(MP0、気絶)
所持品:天罰の杖 首輪
第一行動方針:ハーゴンの補佐、看病
最終行動方針:不明】
【現在位置:神殿一階医務室】
【エリア 死亡】
【残り 45人】
最終更新:2011年07月18日 06:33