バッツは食堂まで戻った後、すぐさまアビリティを白魔法に変更した。
一口で変更したといっても、これがなかなかカンタンな事ではない。
眠っている『心』を引き出すという常人には計り知れないプロセスが必要なのだ。
バッツも、クリスタルの力を得て初めて身につけた能力である。
変更し終えると、早速石化した
クーパーにエスナをかける。
石化だろうが、あらゆる状態不良を癒す魔法。のはずなのだが、
「治らない…?」
クーパーの体は石のままだ。
諦められずに二度三度、エスナを重ねがけしてみたが、状況は変わらない。
「くそ、どうすれば」
もしかしたら、もう手遅れかもしれない――――
そんな不吉な想像を頭を振って追い出し、バッツは次の手段を考えた。
視界の隅に、シチューの鍋が映る。
アレに毒が含まれていた――――アレを使って、解毒剤は作れないか?
薬師にクラスチェンジすれば可能かもしれない。
だが、クラスチェンジは自分のあり方そのものを換えてしまう。
剣が振れなくなり、無力になってしまう。それは、あまりにも危険だった。
「だが、そんな事に迷ってる暇はない」
だが今は、クーパーを助ける事が第一だ。
意を決すると、意識を集中してクラスチェンジを行おうとする……
その時だった。
「クーパー様っ!キサマーッ!」
食堂の中に飛び入ってきた、奇妙な生物の上に乗った小人のナイト、
ピエール。
バッツは集中を止めて剣を抜く。と同時に、ナイトの斬撃が降り注いだ。
バッツは慌てて剣を返して受け止める。
「キサマ、クーパー様に何をしたッ!」
「俺じゃない!クーパーは俺の仲間だ、そんなことしない!」
「問答無用!」
ピエールはバッツの剣をはじく。バッツは素早く飛び離れる。
と、飛び離れたちょうどすぐ隣に、クーパーの石像があった。
「やめろ!俺たちの巻き添えで石像が壊れたら、取り返しがつかなくなるぞ!?」
「く、ぬぅ…!」
忌々しげにバッツを見るピエール。
バッツは緊張を解かないまま、自分とクーパーの事を話し始めた。
ゲーム開始時から一緒にいること、アクシデントで双子の
アニーと離れ離れになったこと。
母親を失ったクーパーの様子、湖の祠での一幕、そして
エリアのこと…
話が進むにつれて、ピエールもバッツがクーパーに危害を与えたわけではない事を認めた。
そして、あの女性の言葉の意味もわかった。
知らずのうちにクーパーに毒を持ってしまい、この青年に討たれた。
ちゃんと説明しなくてはいけないのに、命を惜しんで逃げ出した報いを受けた…
そういうことだろう。
ピエールは剣を収めた。バッツは心なしかほっとした表情を浮かべる。
「どうやら私の誤解だったようだ。謝罪する」
「いいさ、わかってくれたのなら」
「だが、あなたも誤解しているようだ」
「??」
疑問符を頭に浮かべるバッツに、ピエールは先程死を看取った女性の言葉を伝える。
最初、バッツは混乱したようだが、不意に肩を落とす。
「それが本当なら…俺は勘違いで人を殺したのか…?」
「さあ…真実はわからない。だが、最後の時までつき続けるほどの嘘ではないと思う」
「………」
「ともあれ、クーパー様が石になられた事は紛れもない事実。一刻も早く解呪して差し上げなければ」
「…ああ。だが、白魔法では直せなかった。普通の石化じゃない」
「うむむ…何かの呪いか。アニー様とストロスの杖があれば」
以前それで、ピエールの主人であるとんぬらの石化を解いている。
だが、アニーは何処にいるとも知れず、ストロスの杖は存在するのかスレ知れない。
物言わぬ少年を前に、二人の剣士は頭を抱えたのだった。
【バッツ@魔法剣士(アビリティ:白魔法)
所持品:
ブレイブブレイド
第一行動方針:クーパーの治療
第二行動方針:
アリーナ(アニー)、
とんぬら、パパス、
エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、
ゾーマを倒す】
【ピエール 所持品:
珊瑚の剣 エストック
第一行動方針:クーパーの治療
第二行動方針:神殿内探索
最終行動方針:ゲームを脱出し、諸悪の根源を断つ】
【クーパー(石化) 所持品:
天空の盾
第一行動方針:?
第二行動方針:アリーナ(アニー)、とんぬら、パパス、エーコの仲間(名前しか知らない)を捜す
最終行動方針:ゲームを抜け、ゾーマを倒す】
【現在位置:神殿食堂】
(数時間後自動的に回復)
最終更新:2011年07月18日 06:34