白濁

しまった、と思ったときはもう遅かった。
右肩から左腹部まで刃が通ったと知覚できた時には、鮮血が舞っていた。
ロックは二度三度飛んでセフィロスから離れ、傷を押える。

止まらなかった。撫でて止められるほど、その傷は浅くなかった。
全身の力が見る見るうちに抜けていき、ロックの意識は白く濁っていく。

「か、は…!」
「ほう、まだ動くか」
ロックは傷を押えて前屈みになりながら南に向かう。
まだ、まだ奇襲ポイントまで届いていない、セフィロスに追いつかれないよう必死に走る。

ぼたぼたと、雫ではなく塊として血が落ちていく。
顔を上げることは出来なかった。上げたが最後、中身までイッてしまいそうだから。
「い…ってぇなあ…」
歯を食いしばり呟く。
ロックは、これまでにも何人もの人に死を看取ってきた。
戦いの中に、危険の中に身を投じるという事はそういうことだ。
ここでもファリスの最後を看取ったが、さて、何と言っていただろう?

「そうだな、後を託す人がいるなら何も心配することなんてないんだ。
 わかるよ、ファリス。君が死んだことに意味があるように、俺がやったことにも意味がある。
 それがわかるから…」

もう、足に感覚はない。食いしばっていた筈の口はどうなったのだろう?
腕は、ちゃんと傷口を押えているだろうか。そもそも、まだ血は出ているのか?

「俺は一人の女にすら、何もしてやることが出来なかった。でも、今は違うと思う…。
 この手で、アイツを抱くことはもう出来ないけれど、あいつを守ることは出来たと思う。
 こんな、生き方しか出来なかったけど…いや、こんな場所だからこそ。
 こんな生き方が出来たことに、胸を張りたい」


あれ、と。ロックは何時の間にか地面が目の前にあることに気付いた。
背後に閃光と爆発が起こっている。それはつまり、自分は役目を果たしたということだ。
誰かが走ってくる。自分を助けようとしているのだろうか?無駄なのに?

「いや、無駄だからこそ、意味があるのさ。表面的なモノだけが結果じゃない。
 隠されたものにこそ、真実の宝がある。それを探すのが――――」


エアリス癒しの杖を手に、ロックに駆け寄っていた。
作戦は成功した…のだろうか。ロックは手筈どおりにセフィロスを連れてきた。
満身創痍のロックに飛び出そうと従うを押し留め、もっとも近付いたところでデスピサロマリベルの魔法で先制攻撃。
ラグナは矢を射かけ、ギルガメッシュ、ライアン、ティーダ、ガウが一斉に飛び出した。
そしてエアリスは、奇襲ポイントを過ぎて少しした場所で倒れたロックの元に向かったのだが。

癒しの杖を翳しても、傷は癒えない。
ロックはすでに生命力を使い果たしていたのだ。
それでもエアリスは必死にロックに呼びかける。
「しっかりして!まだ死んじゃダメよ!」
「………」
ロックは虚ろになった視線をエアリスに向けた。

「え…何?」
「…………」
何かを繰り返し呟いているようだった。何と言っているのだろう?
しゃがみこんでロックの口元に耳を寄せる。

「何!?ねぇ、何が言いたいの!?」

だが、エアリスの問いかけにロックが答えることは、永遠になかった。

【セフィロス(負傷) 所持品:正宗(損傷)
 基本行動方針:全員殺す
 最終行動方針:勝ち残る】
【現在位置:東の平原、森の突き出したあたり】

【ギルガメッシュ 所持品:正義のそろばん
【ラグナ(両足欠損・チョコボに騎乗) 所持品:エルフィンボウ
【エアリス 所持品:癒しの杖】
【マリベル 所持品:なし】
【ティーダ 所持品:いかづちの杖】
【デスピサロ 所持品:『光の玉』について書かれた本】
【ライアン 所持品:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)】
【ガウ 所持品:なし】
 以上、第一行動方針:セフィロスを倒す
【現在位置:ロンダルキア南東の森、奇襲ポイント】

【ロック 死亡】
【残り 43人】


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最終更新:2011年07月17日 16:44
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