「大丈夫?」
クーパーが、
バッツのの足下に歩いてきて心配そうに聞いてきた。
ただ頬を叩かれただけなのに、何だか不自然に慌てている。
「…平気さ。ちょっとした痴話喧嘩だよ」
「え?ち、ちわ…なんて?」
「……」
どうやら冗談で言った言葉の意味が分かっていないようだが。
とにかく、クーパーはほっとして胸をなで下ろした。何しろ彼らを連れてきたのはクーパーだ。
何か、致命的な事があったら完全に自分の責任である。
正直、
デスピサロをここまで連れてきた事に、クーパーは未だ不安を感じていた。
あの時、デスピサロと
サマンサと
デッシュとクーパーとが睨み合いに入った時、ソレを止めたのはデスピサロだった。
「全員、少し黙っていろ」と、彼は放った。冷たく、低い一声を。
リディアの名を叫んでいたクーパーも、クーパーを助けようとしたデッシュも、デスピサロを呼んだ
ライアンも。
神殿の前は一瞬で静寂に包まれ、デスピサロだけが静寂をかき乱した。
サマンサから事情を聞き、デッシュを説得する…説得と言うより半ば脅迫だったが。(何しろ「教えるか死ぬか、どちらか選べ」が説得の内容である)
そして最後に、クーパーに歩み寄り、彼は言った。
背筋が凍るような瞳でこちらを見て。
「手を貸せ。天空の勇者」
簡単な、そして、冷徹な一言。ソレを聞いてクーパーは迷った。頼りになりそうだがしかし、彼は…
「…あの娘を取引の材料にしてもいいんだぞ?」
続けて放たれたその言葉は…ストレートな脅迫だった。クーパーはそうだと確信した。
協力しなければリディアを殺す…そう言う意味にしかとれなかった。
クーパーは、結局その脅迫に屈する事にした。選択肢は、無い。
バッツの所に案内する間に、
バーバラやライアンが「それほど悪い人ではない」とフォローを入れてはいたが、どうにも、不安だ。
自己紹介で少し話しただけだか、バーバラとライアンは信用の出来る人だとは思う。
その2人が信用しているのなら、大丈夫だろうと、クーパーは思いこむ事にした。
別に、リディアの「命」を取引に使うと言ったわけではないのだし(身柄の引き渡し、程度の意味だったかも知れない)
だが、今その思いこみが揺らいでいる。
(…大丈夫だよね。多分)
頭を振ってイヤな考えを振り払う。そうしてから、彼はリディアの方に歩き出した。
リディアが、震えるバーバラの横でオロオロしている。早く助けなければ…
最終更新:2011年07月18日 07:08