外伝

=外伝=

そして彼らの今いる世界とは異なる…そう彼ら本来の世界では何が起こっているのだろうか?

海辺に面した小さな村の一角でクリフトはブライと対峙していた。
ソロたちが忽然と姿を消してから半年以上がもう経過している、

「クリフト…ワシはお前には期待しておった…何故人類全体の幸福を願うワシの心が理解できぬのだ」
悲しげに問いかけるブライだったが、クリフトはそれを拒絶する。
「何が…人類の幸福ですか、あなたのやっていることは幸福どころか破滅そのものだ」
「破壊無くして再生はありえん、辛い事じゃがな」

ソロらが消えうせてから何が起こっていたか…それはブライ率いる1派による魔族狩りである。
しかし、こと行動を起こして見るとブライらは拍子抜けした、すでに多くの魔族たちの姿が地上から、
消えうせていたのである。
それはブライらの動きを寸でのところでキャッチした、クリフトとマーニャの手によってのことであったが。
だが別に魔族の味方をしたというわけではない、ただ彼らは世界の混乱を防ぎたかっただけである。

だがそれでも、2人で出来る事には限界がある、結果的にやはり多くの魔族たちが討たれてしまった。
そして表向き地上から魔族は存在しなくなった、これで終わったと誰もが考えた。
討つべき対象がなくなれば、こんなことも起こるまいと…しかしそれは甘い認識だった。

そう、彼らの魔手は魔族だけにはとどまらず、次はその矛先を同朋たる人類に向けたのだった。
もうこの半年で世界の人口の1/5が彼らによって処刑された。
まずは先天的障害者や精神病患者といった社会的弱者がその対象となり、
そしてさらには肌の色が違う、瞳の色が違うなどというおおよそ常軌を逸した理由によって、
次々と人々は「浄化」されていった。
しかし、人々も彼らのやることに表立って異を唱えることはなかった。
それだけ人々にとって魔族は脅威だったのである。

まあ、たとえ異を唱えたとして、世界規模である彼らの一団に逆らう事などできなかったし、
逆らえばその瞬間「人類の敵」として「浄化」されてしまうのである。
人々はただ黙って嵐が通り過ぎるのを待つしかなかった。


ブライは揺るぎ無い自信を持ってクリフトへと叫ぶ。
「間違い無くこのブライの名前は後世、悪鬼羅刹として残る事となるじゃろう、だがそれでも構わん!
誰かがやらねばならぬのじゃ!この世界から全ての魔族を抹殺し、人間の世界を取り戻すためならば
ワシは喜んでその悪名を受けようではないか!」

「だからといって肌の色や瞳の色が違うだけで三族皆殺しは無いでしょう…
 まして3歳で九九が出来ることや、7歳でベギラマを唱える、それだけでも魔族ですか!?」
クリフトの言葉は正論だが、そんなことで動じるブライではない。
「今は人間でもその子供、その孫が人間として生まれてくるとは限らん!たとえ僅かでも異質たるものは
浄化せねばならん、災いの芽は1本たりとも残すわけにはいかんのだ!…」
さらにその口から恐るべき言葉が次々と飛び出してくる。

「そう、全ては青き清浄な世界を作るための尊い犠牲じゃ!、それを乗り越えてこそ世界は我らの手に戻る、
 そして至福の千年王国が、ユートピアが、人間の人間による人間のための楽園が生まれるのじゃ!」
「どうじゃ!完璧じゃ!そこには苦しみもない、争いもない!永遠に滅びない!至福が、楽園が誕生するのじゃ!」

「狂ってる…」
クリフトの傍らにいたマーニャが化け物を見るような眼でブライを見る。
「いいえ、この人は正気です、でなければこんなことは考えない」
悲しげに呟くクリフト。

「さあ!ロザリーの居場所を吐け!…ロザリーをギロチンにかけて、デスピサロめをおびき出すのじゃ」
「言せません!」
「クリフト…失望したぞ、貴様もトルネコライアンの毒気にあてられおったか…」
「魔族だから、人間だから…そんな理由なんかじゃない、この世界に生きる住人として、私はあなたを許せない」
「ならば貴様らは人類の裏切り者だ」
ブライの声と共に、白い頭巾をかぶった騎士たちが進み出る、ブライが密かに組織していた実戦部隊だ。

その時であった、猛スピードで馬車が彼らの方へと突進してくる。
騎士たちが一瞬それにひるんだスキに2人は馬車に飛び乗り、瞬く間に脱出していた。

馬車の中でクリフトは突如現れた救い手に戸惑いつつも感謝の言葉をかける。
ライアン団長からもしものときはよろしくといわれていたもので、と手綱を取る若い騎士は応えた。

とりあえず難儀は逃れた…だが、クリフトは頭を抱える。
敵は人間ばかりではない、魔王の妻であるロザリーを担ぎ出し、未だ無益な抵抗を試みようとする、
魔族たちからも彼らは逃げなければならないのだった。
彼らの行く手に、未だに未来は見えなかった。


←PREV INDEX NEXT→

最終更新:2010年03月08日 15:15
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。