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次の担い手

ライアンよ…頼みがある」
廊下でデスピサロはライアンを呼びとめる。
「もし私が死ぬようなことになれば、その時はお前が私に代って指揮を取ってくれぬか」
デスピサロの口から出た意外な言葉にライアンは面食らった。
「突然何を…わしはそんな器ではないでござるよ」
ライアンの否定の言葉をさえぎるようにデスピサロは続ける。
「お前の力量は私が1番よく知っている、お前がいなければ我々は易々と勝利を手にしていただろう」

デスピサロは考える、自分たちは勇者がいたから破れたのではない、勇者はいわば神輿にすぎない、
肝心なのはその担ぎ手だ。
その生まれも違えば目的も境遇も違う担ぎ手たちを、上手くまとめたのはライアンの力あってのことだ。
これは剣の腕や魔法に長けているからといって出来ることではないし、修行したとて身につくものではない。
そう、何者にも惑わされない公正な心を持ち、人望を集める力こそが、
ライアンの生まれ持った真の能力であることを、デスピサロは見ぬいていた。

「それに重ねてお前には頼みたいことがある」
デスピサロは胸ポケットから懐中時計を取り出して、文字盤を開く。

「あの大広間で奴らに武器を奪われたとき、とっさに飲みこんだ…それよりも見ろ」
デスピサロはライアンに時計を見せる。
「!!」
文字盤を見たライアンは驚きを隠せなかった、なんと時計の針が常識では考えられない速度で、
ぐるぐると回っているのだ。
「これがおそらく本来の世界での時間だ…ここにいるのはせいぜい23日だが」
そこで言葉を切り、デスピサロはもう1度時計を見る。
「元の世界ではもう半年…いやそれ以上の時間が経過しているだろう」

「ピサロ殿が心配しておるのは、ブライ殿のことでござるな…」
暗い表情でライアンが云う。

ブライの挙動がおかしいことはライアンも悟っていた、やたらと方々に連絡を取っていたし、
それになにやら怪しい一団と密かに会合を持っていたというのも知っていた。
だが…正直多寡を括っていたのだ。
自分たちが睨みを聞かせている限り、いかに彼といえども暴発は出来ないだろうと…
しかし、こうして自分たちが異界に流され、しかも半年以上の時間が経過しているとなれば話は別だ。
あの老人の力ならば、事を起こすには充分過ぎる時間だ。

そしてブライが何をたくらんでおり、そして今何をしているかも彼らは手に取るように理解できた。
「クリフトとマーニャではブライを止められまい…せめてお前かトルネコが残ってくれさえいれば」
デスピサロは嘆くように呟く。

今の魔族の勢力で人間と戦っても勝ち目は無い、だからこそ自分がいなければならない。
自分ならば一族を守れる、いや王として守らねばならない。
いや…自分がいたとて同じ、か。
所詮、運命は個人の奮闘では止める事は叶わない、もはや自分たちの命運は、
宿敵である人間の動向にかかっていることをデスピサロは痛感していた。
手が無いわけではない…が。
(進化の秘法、か)
それとて一つの種を滅びから救うには膨大な年月が必要だ、そしてそれが達成される日が来たとして、
もはや自分はこの世にはいないだろう。

だからこそ、ライアンには生きて帰還してもらいたかった。
トルネコのいない今、人の側から魔族の命運を託せうるのは彼以外にはいなかった。
個人の出来うることなぞ、細い蜘蛛の糸にも等しいことだというのに、それでも彼はライアンに賭けるしかなかった。
いや、賭けるしかないのではなく、賭けてみたいというのが正直なところなのかもしれないと、
デスピサロは思っていた。

ロザリーはマーニャが命に代えて守ってくれるだろう、あの踊り子は自分には憎まれ口ばかり叩くくせに
ロザリーとは何故か仲が良い…彼女はロザリーのことを親友とさえ言っているのである。
そのことを1度トルネコに尋ねたことがあるが、トルネコはにやにや笑うだけで答えてくれなかった。
ただ、ピサロさんもロザリーさん以外のことになると鈍感なんですねと言われたのみだ。

(もし…ロザリーが討たれたとして、私はまた人を憎むのだろうか?)
憎むには憎むだろう…しかしそれはかつての憎しみとはまた種類が違うことになると思えた。
今度は種の生存をかけた戦いである、そこにはかつての怨恨なぞもはや存在しないし
存在する余地も恐らくはないのであろう。

(思ったよりも冷静だな…しかし、それでも願わくば生き延びて、もう1度我が妻をこの手に…)

【ライアン 所持品:大地のハンマー エドガーのメモ(写し)
 第一行動方針:サマンサバーバラを守る
 基本行動方針:来る者は拒まず、去るものは追わず】
【デスピサロ 所持品:『光の玉』について書かれた本
 第一行動方針:呪術の実行・マジャスティスを完成させる
 第二行動方針:魔法使いを探す・腕輪を探す・偵察
 最終行動方針:ロザリーの元に帰る】
【現在位置:神殿ハーゴンの自室の前】


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最終更新:2011年07月18日 00:15
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