リュックのマキナマズルが
デスピサロ目掛けて突進する。
迫る巨体に気付き、デスピサロは視線をリュックに向ける。
翻る腕。巻き起こる真空波。
「みんな、下がって!」
マキナマズルはショックウェーブを放って迎え撃つ。
堪らないのは間に挟まれた
アーロンたちだ。
「滅茶をする」
あちこちに裂傷を負いながらも退避できたのは、
彼らが戦士として優れていたからこそだろう。
前衛の戦士たちが離れたことを確認して、
リュックはすぅ、と息を吸い、それからデスピサロを指差した。
「そんじゃ、一気に行くよ!」
マキナマズルが震えだす。全身から青白い燐光が立つ。
「3、2、1……」
デスピサロは、それを超然と見上げる。それがどうしたのか、といわんばかりに。
「ゼロ!」
マキナマズルが吼え、光が溢れた。
それは呆気なくデスピサロを飲み込む、かと思えた。
超兵器の一撃を、生身の存在が受け止められるわけがない。
しかし、それは単なる思い込みに過ぎなかった。大切な事を見落としていたのだ。
デスピサロは魔王だということを。
「うそ」
光の向こうに、デスピサロがいる。掌を向け、平然と立っている。
マキナマズルが放つヴァジュラは全く届いていない、
その前に、デスピサロが呼び出した地獄の稲妻が弾き返しているのだ。
ジゴスパーク。それは神と真の勇者、そして魔王だけが使える神技。
「こ、こんなの、にっ!」
押されている。光が押し戻され、逆にマキナマズルを飲み込もうとする。
自分が想像した最強が圧倒されて、リュックは悲鳴気味に叫ぶ。
そのとき、マキナマズルを登ってリュックの隣りに人影が立った。
「まだ……諦めるな!」
黒髪の勇者が呪文を唱え、剣を掲げる。
剣は雷を浴び、光を散らして輝く。
「ギガディン!」
それを、魂を震わせる気合と共に振り下ろす。
ヴァジュラとギガディンの光が、ジゴスパークを押し返す!
「クッ……」
「うう、キツい」
それで何とか均衡を保つものの、
アルスとリュックは額に玉の汗を浮かべてうめく。
最強技は全てを凝縮した一瞬の輝きでもある、常に使えるものではないのだ。
一方、デスピサロは揺るがない。威光が弱まることはなく、魔力が底に尽きることもない。
このままならば、アルスとリュックは打ち負けるだろう。
それは確定事項だ。……このままならば。
「
クーパー」
「うん、いくよ。みんな!」
双子の分身の
呼びかけに、蒼髪の勇者が頷く。
準備は整った。クーパーは両腕を天に掲げ、呪文を唱える。
アニーの、
バーバラの、
ティナの魔力が集まり、クーパーの体が淡く輝く。
パチン、と。クーパーの手の上の空間が歪んだ。
幾重にも幾重にもそれは重なり、それは見る見るうちに肥大化していく。
それが限界に達した時。飽和した歪みの中から、絶対的な力が生まれ出る。
それは弱い『人』の力を集めた一撃。
なれど魔王や神すらも凌駕する閃光。
人が、運命に立ち向かおうと勇気を振り絞った末に生んだ絶技。
クーパーは前方を睨みつけた。その先に止めるべき存在がいる。
だから、ぶつかり合う光の向こうにいる相手目掛けて、その力を解き放つ!
「――――ミナデイン――――!!!」
最終更新:2010年03月13日 05:16