闇を塗り潰す光

マダンテ。それがどんな意味を持つのかわかるものは少ない。
ただ、バーバラの様子からしてそれが只事ではないことだけはわかった。

真っ先に動いたのはアイラだった。身を翻し、一直線で後退していく。
次に動いたのはアルスで、彼女とは逆にデスピサロに突撃した。
マダンテの発動を防ごうと王者の剣を振るう。
バッツ、パパス、アーロンリュックといった面々もアルスに加勢するが、
呪文の詠唱を止めることはおろか、傷一つ与えられない。
その前に空間が歪んで弾かれてしまう。

「闇の衣……!」
サマンサは歯噛みした。やはり、ゾーマになったデスピサロは万能結界を持っていた。
ミナデインのような絶技ならとにかく、生半可な攻撃ではアレを貫くことはできない。
状況は絶望的、力尽くでデスピサロを倒すことはほぼ不可能。
このままでは成す術もなくやられるだけ、だから。
サマンサは呪文を唱えつつ、駆け出す。

唱える呪文はルーラ。
空間の次元を歪めて一瞬だけ距離をゼロにすることで移動する呪文だ。
極めて強引な呪文ゆえに制御が難しく、一度も行ったことがない場所を目的地とするのは禁忌とされる。
この呪文に失敗した術者がどうなるかは定かではない。
一説には、時限の狭間に捕らわれてしまう、とも言う。

確実なのは、失敗した者は二度と帰ってこないということだ。

ルーラは対象だけを強制的に移動させることはできない。
自分と、それに属する者だけを移動させる。
それはどういう意味か。しかし、これしかないとサマンサは思う。
もっと良い方法があるかもしれないが、今この状況ではこうするしかないではないか。

クーパーは再び手を上げた。
一度で効かないなら、もう一度放つだけだ。
間に合うかどうかは微妙だが。

「みんな、もう一回行くよ!」
少年の言葉に少女たちは頷く。
それでも諦めることなんてできないから。
たくさんの犠牲の上に生きてきたのだから。
戦わずに負けるなんて結末を、認めるわけにはいかない……!






そして。
何処までも闇の広がる空間に、
何処までも深く沈む闇の底に、
全てを塗り潰すような、眩い光が溢れた――――


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最終更新:2010年03月09日 18:41
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